第6.5章 ~宝探し~
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2日後——
りおはリビングでテレビをつけた。そこへコーヒーとカフェオレをトレイに載せた昴が入ってくる。
『本日午後、銃刀法違反により逮捕されていた、プロカメラマンの前島翔太さんが保釈されました。
手続きを終えて出て来た前島さんは、拘置所前に集まった報道陣に深く頭を下げると、関係者が用意した車で——』
「前島は無事に保釈されたんですね」
りおの前にカフェオレを置くと昴が声をかけた。
「うん。保釈制度を使ってね。起訴されれば請求できるから……。今回の事件では罪状は銃刀法違反のみ。それも昔の友人に預けられただけで、本人は知らなかったってことになってるからね」
りおはテレビ画面を見たまま答えた。
画面に映る前島は、多少痩せた印象があったものの表情は晴れやかだった。
真っすぐ前を見据えて報道陣の前を通り過ぎる姿は、どこかユーチェンに似ている。
りおは思わず目を細めた。
しかし保釈されたとはいえ、権威ある賞を受賞した前島が事件を起こした。その事実は消えないし、もうしばらくはマスコミも騒ぐだろう。生活が落ち着くのはまだ先のようだ。
「でも……きっと今の彼なら、そんな日々の中でもカメラのファインダー越しに何か光るものを見つけられると思います。
彼の写真は何かこう……物事の本質をとらえているように思えましたから」
昴も、颯爽と歩く前島の姿を見て微笑んだ。写真展や個展での作品を思い出す。やはり彼の作品はどれも素晴らしかった。
危険の中にいる自分たちは、とかく心が無機質になりがちだ。
世の中には美しいものが溢れている。
それもごく身近に。
それを最初に気付かせてくれたのはりおだった。そしてりおと見たいと願う景色が、写真展や個展にはたくさんあったのだ。
「いつか本物をあなたと一緒に見たい。
そう思わせてくれる写真ばかりでしたからね」
「昴さん……」
優しい顔をする昴を見て、りおは微笑む。
「いつか一緒に見に行こうよ。あなたの生まれ育ったイギリスにも行ってみたいし、あなたがFBIを目指したアメリカも、私の仲間が眠るマレーシアも。いつか、全てが終わったら……」
その『いつか』はいつになるか分からないけれど——。
「ああ、そうだな。また一つ、お前との約束が増えたな」
「うん。これからもたくさん、あなたとの約束事を作るの。どんなにピンチになっても『約束を守ろう』と思えば、あなたも私も生きて帰る事を諦めないでしょう?」
名案だと思わない? とりおは笑う。
昴はうなずいた。
どんなに窮地に陥っても。
どんなに絶望的な状態でも。
交わした約束を守る。
それがどんなに自分たちを勇気づけるか。
昴(赤井)にも分かっていた。
「では、前島にはもっともっといい写真を撮ってもらって、私たちが行きたいと思う場所を増やしてもらわないと」
「うん、そうだね。今日が前島の再スタートの日。ユーチェンもきっと応援しているね」
りおは視線を窓の方へ向ける。工藤邸の外は雲一つない空が何処までも広がっていた。
幸せそうに空を見上げるりおを見て昴も微笑む。二人は冬空を見上げ、前島の成功を祈った。
だがこの時、本人たちの知らないところで事態は大きく動き出していた。
この先、二人の運命が大きく動き出すことを、赤井もりおもまだ知らない——。
==第6.5章完==
りおはリビングでテレビをつけた。そこへコーヒーとカフェオレをトレイに載せた昴が入ってくる。
『本日午後、銃刀法違反により逮捕されていた、プロカメラマンの前島翔太さんが保釈されました。
手続きを終えて出て来た前島さんは、拘置所前に集まった報道陣に深く頭を下げると、関係者が用意した車で——』
「前島は無事に保釈されたんですね」
りおの前にカフェオレを置くと昴が声をかけた。
「うん。保釈制度を使ってね。起訴されれば請求できるから……。今回の事件では罪状は銃刀法違反のみ。それも昔の友人に預けられただけで、本人は知らなかったってことになってるからね」
りおはテレビ画面を見たまま答えた。
画面に映る前島は、多少痩せた印象があったものの表情は晴れやかだった。
真っすぐ前を見据えて報道陣の前を通り過ぎる姿は、どこかユーチェンに似ている。
りおは思わず目を細めた。
しかし保釈されたとはいえ、権威ある賞を受賞した前島が事件を起こした。その事実は消えないし、もうしばらくはマスコミも騒ぐだろう。生活が落ち着くのはまだ先のようだ。
「でも……きっと今の彼なら、そんな日々の中でもカメラのファインダー越しに何か光るものを見つけられると思います。
彼の写真は何かこう……物事の本質をとらえているように思えましたから」
昴も、颯爽と歩く前島の姿を見て微笑んだ。写真展や個展での作品を思い出す。やはり彼の作品はどれも素晴らしかった。
危険の中にいる自分たちは、とかく心が無機質になりがちだ。
世の中には美しいものが溢れている。
それもごく身近に。
それを最初に気付かせてくれたのはりおだった。そしてりおと見たいと願う景色が、写真展や個展にはたくさんあったのだ。
「いつか本物をあなたと一緒に見たい。
そう思わせてくれる写真ばかりでしたからね」
「昴さん……」
優しい顔をする昴を見て、りおは微笑む。
「いつか一緒に見に行こうよ。あなたの生まれ育ったイギリスにも行ってみたいし、あなたがFBIを目指したアメリカも、私の仲間が眠るマレーシアも。いつか、全てが終わったら……」
その『いつか』はいつになるか分からないけれど——。
「ああ、そうだな。また一つ、お前との約束が増えたな」
「うん。これからもたくさん、あなたとの約束事を作るの。どんなにピンチになっても『約束を守ろう』と思えば、あなたも私も生きて帰る事を諦めないでしょう?」
名案だと思わない? とりおは笑う。
昴はうなずいた。
どんなに窮地に陥っても。
どんなに絶望的な状態でも。
交わした約束を守る。
それがどんなに自分たちを勇気づけるか。
昴(赤井)にも分かっていた。
「では、前島にはもっともっといい写真を撮ってもらって、私たちが行きたいと思う場所を増やしてもらわないと」
「うん、そうだね。今日が前島の再スタートの日。ユーチェンもきっと応援しているね」
りおは視線を窓の方へ向ける。工藤邸の外は雲一つない空が何処までも広がっていた。
幸せそうに空を見上げるりおを見て昴も微笑む。二人は冬空を見上げ、前島の成功を祈った。
だがこの時、本人たちの知らないところで事態は大きく動き出していた。
この先、二人の運命が大きく動き出すことを、赤井もりおもまだ知らない——。
==第6.5章完==