第6.5章 ~宝探し~
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翌日——
東都大の森研究室は、朝からドタバタと大忙しだった。
「教授! 明日の学会の資料ありましたか?」
「いや、それが~……PCのどこに保存したのか……」
「も~ぉ! 教授っては、いつも星川さんに任せっきりだからそうなるんですよ!」
明日から始まる学会の為、研究室の学生・助手らが総出で準備をしていた。
いつもならさくらが一人でやっているのだが、現在は長期休職中の為みんなでフォローし合っている。
部屋のあちこちで学生や研究生が探し物をしたり、資料を揃えていた。
「あ、そういえば会場での受付、誰がやるんだ?」
「え? 教授が当日現地でやるんじゃないの?」
「確か……森教授そういうの大っ嫌いで、星川さんが現地スタッフに大学から連絡入れていたような……」
「え~! そんなことまで星川さんにやらせてたの!? 教授は何様ですか? それともお子様ですか!?」
研究生の冷たい視線に、森教授は「たはは……」と愛想笑いをした。
「夏の休職の時は、星川さんにリモートで何度もフォローしてもらったのよね。これじゃあいけないと思って、最近は手分けして教授のお世話をしてたけど……」
ボソリとつぶやいた研究生に「お世話って……僕は幼児かい?」と、口を尖らせた森教授が不満げにつぶやく。
そんな教授に、そこに居た全員が冷たい視線を向ける。
「どう見たって幼児以下でしょ!」
「……面目無い……」
当たっているだけに、森はそれ以上何も言えなかった。
「あ~あ~。早く星川さん帰ってこないかな~」
研究生の深田(ふかだ)がさくらのデスクを見ながらつぶやいた。
「なんだよ深田、寂しそうだなぁ。さてはお前、星川さんに惚れてるんだろ~」
からかうように同期の研究生、大石(おおいし)がはやし立てた。
それを聞いて深田の顔が真っ赤になる。
「ば、バカ言えっ!! 星川さんには付き合ってる人がいるんだぞ!」
「へ~ぇ。つまり、付き合っている人がいるから自分は告白できないってことか。泣かせるねぇ~」
泣き真似をしてからかう大石に、深田はゲンコツを一発お見舞いした。
「ぃって~な! ホントのことだろ?」
大石はゲンコツを食らった頭をさすりながら反論する。
「良いんだよッ! 俺にとって星川さんは《高嶺の花》! 遠くから見れるだけで十分……」
「つまり、惚れてることは否定しないってこと?」
「~~~ッ!!!」
そんな同期同士の歯に衣着せぬやり取りに、森教授がストップをかける。
「はいはい、深田君も大石君もそこまで。
今は学会の準備が先だよ。どうにも見つからなければ、星川君に連絡入れるしかないなぁ……」
PCの画面に視線を移し、教授は深いため息をついた。
「そういえば、昔教授のライバルだった島谷教授の研究室も、今修羅場を迎えているらしいわね」
唯一の女性研究生である清水が、教授の出張書類を準備しながら言った。
「ああ~、そういえば徹夜続きだって学生が言ってたなぁ。
もうちょっとで結果が出そうなんだけど、なんせ繊細なものだからなぁ……ウィルスや細菌って。なかなか思うような結果が出ないってぼやいてたよ」
「でも、成功すれば世紀の大発見かもしれないんだろ? すげーよな」
学生たちは口々に島谷教授の実験について話をしていた。
それを聞いて森教授はさらに口を尖らせる。
「アイツの事はいいよ。どうせ《リカちゃん》だの《コウくん》だの菌やウイルスにヘンテコな名前つけてるんでしょ。
『こちらが世紀の大発見《リカちゃん》です』なんて、平気で発表しそうだよ」
「た、確かに……」
それはそれで別の意味で東都大のイメージダウンになりかねない。新聞の一面に踊る《リカちゃん》の文字が容易に想像できてしまい、学生たちは顔を引きつらせた。
プルルルルル…プルルルルル…
ちょうどその時、教授のスマホが着信を知らせた。
「はい、森です」
教授がスマホを手に取り、電話に出る。
「おお、星川君! 体の方はどうだい?」
教授の一言に、全員の視線がそちらに向いた。
(え、電話の相手……星川さん!?)
深田の顔が見る見るうちに赤くなる。
「うん……うん…、え? そうなの? ほぅ~……そうか、分かった。
良かったね。きっとみんな安心するよ。
来週から? もちろん僕たちは大歓迎さ。
うん…うん…。じゃあ、研究室のみんなにも伝えておくよ」
電話をしながら笑顔になる教授を見て、周りにいる学生たちは、それが良い知らせだとすぐに分かる。みんなソワソワしながら教授を眺めていた。
「で、教授! 星川さんはなんて?」
教授が電話を切るのを待って、深田が問いかけた。
「ああ、体調がだいぶ良くなったから来週から復帰するって」
ついでにファイルの場所も教えてもらったよ、という教授の言葉は耳に入らず、さくら復帰の報告で、研究室には歓声が上がった。
「やった~! 星川さん戻ってくるんだ~。これで教授のお世話に手を焼くこともないわ~!」
研究生の清水がもろ手を挙げて喜んだ。
「よしッ!」
深田は渾身のガッツポーズ。
それを見て大石がニヤニヤ笑っている。
その他の学生も皆笑顔を見せ、さくらの復帰を喜んだ。
「さあさあ、みんな! ファイルの場所も分かったし学会の方はだいぶ揃ったから、次の実験の準備に取り掛かって!
こっちもあの『変人』に負けずとも劣らない大事な実験、控えているんだから!」
これから忙しくなるよ~、と教授がパンパンッと手を叩いて全員に喝を入れた。
もっと喜びを噛みしめたかった学生たちが一様に肩を落とす。
皆だるそうに「はーい…」と返事をした。
***
「来週から復帰するんですか?」
電話を切ったりおに、昴は声をかけた。
「うん。チェンシーからも趙(ちょう)の取り調べ進んでるって連絡来たし、前島も送検された。NOC疑惑も何とか解消できたし。そろそろ日常に戻らないと」
大学復帰に喜び半分、昴と離れる時間が出来ることに寂しさ半分。
りおはやや複雑な顔をして微笑んだ。
「確かに体調も万全とはいかないものの、食事も取れていますしトレーニングも欠かしていない。日常に戻っても差し支えないでしょう」
昴は上から下までりおの姿を見ると、「ふむ」とアゴに手をやる。
「しかし、やはり離れる時間が長くなるのは心配ですね。復帰には反対しませんが、しばらくは出来るだけ早く帰ってきてくださいね」
「う、うん……」
文句の一つでも飛んでくるかと思っていたりおは意外そうな顔をした。
「なんです? 何か不満でも?」
「ううん。珍しくあっさり認めてくれたな~と思って」
てっきり〈あれダメこれダメ攻撃〉が来るのかと……とりおは笑う。
「まあ、そう言いたいのも山々ですが、言ったところであなた絶対聞く耳持ちませんし。それなら気持ちよく送り出した方が円満ですので」
「ハハハ……。最近反論の余地も与えてくれないわね」
「ええ。やっとりおの扱いに慣れました」
勝ち誇ったようにドヤ顔を決める昴に、りおは近づく。
ソファーに座り長い足を組む昴の首元に、後ろからそっと抱きついた。
「復帰するって自分で言い出しておいて、こんなこと言うのもなんだけど……」
「ん?」
りおは昴の左頬に顔を摺り寄せ、小さな声でつぶやく。
「ホントは…ずっと昴さんと…ううん、秀一さんとこの家にいたい…。でもそれでは潜入捜査も、ペンダントの謎解きも、何も進まない。私たちは前に進まなくちゃ。
必ずここに、秀一さんのところに『ただいま』って帰ってくるから。だからあなたも、必ず『おかえり』って迎えてね」
ギュッと腕に力を入れて、りおは昴に抱きつく。
「ああ、約束するよ」
昴も右手を伸ばし、りおの頭を撫でた。
東都大の森研究室は、朝からドタバタと大忙しだった。
「教授! 明日の学会の資料ありましたか?」
「いや、それが~……PCのどこに保存したのか……」
「も~ぉ! 教授っては、いつも星川さんに任せっきりだからそうなるんですよ!」
明日から始まる学会の為、研究室の学生・助手らが総出で準備をしていた。
いつもならさくらが一人でやっているのだが、現在は長期休職中の為みんなでフォローし合っている。
部屋のあちこちで学生や研究生が探し物をしたり、資料を揃えていた。
「あ、そういえば会場での受付、誰がやるんだ?」
「え? 教授が当日現地でやるんじゃないの?」
「確か……森教授そういうの大っ嫌いで、星川さんが現地スタッフに大学から連絡入れていたような……」
「え~! そんなことまで星川さんにやらせてたの!? 教授は何様ですか? それともお子様ですか!?」
研究生の冷たい視線に、森教授は「たはは……」と愛想笑いをした。
「夏の休職の時は、星川さんにリモートで何度もフォローしてもらったのよね。これじゃあいけないと思って、最近は手分けして教授のお世話をしてたけど……」
ボソリとつぶやいた研究生に「お世話って……僕は幼児かい?」と、口を尖らせた森教授が不満げにつぶやく。
そんな教授に、そこに居た全員が冷たい視線を向ける。
「どう見たって幼児以下でしょ!」
「……面目無い……」
当たっているだけに、森はそれ以上何も言えなかった。
「あ~あ~。早く星川さん帰ってこないかな~」
研究生の深田(ふかだ)がさくらのデスクを見ながらつぶやいた。
「なんだよ深田、寂しそうだなぁ。さてはお前、星川さんに惚れてるんだろ~」
からかうように同期の研究生、大石(おおいし)がはやし立てた。
それを聞いて深田の顔が真っ赤になる。
「ば、バカ言えっ!! 星川さんには付き合ってる人がいるんだぞ!」
「へ~ぇ。つまり、付き合っている人がいるから自分は告白できないってことか。泣かせるねぇ~」
泣き真似をしてからかう大石に、深田はゲンコツを一発お見舞いした。
「ぃって~な! ホントのことだろ?」
大石はゲンコツを食らった頭をさすりながら反論する。
「良いんだよッ! 俺にとって星川さんは《高嶺の花》! 遠くから見れるだけで十分……」
「つまり、惚れてることは否定しないってこと?」
「~~~ッ!!!」
そんな同期同士の歯に衣着せぬやり取りに、森教授がストップをかける。
「はいはい、深田君も大石君もそこまで。
今は学会の準備が先だよ。どうにも見つからなければ、星川君に連絡入れるしかないなぁ……」
PCの画面に視線を移し、教授は深いため息をついた。
「そういえば、昔教授のライバルだった島谷教授の研究室も、今修羅場を迎えているらしいわね」
唯一の女性研究生である清水が、教授の出張書類を準備しながら言った。
「ああ~、そういえば徹夜続きだって学生が言ってたなぁ。
もうちょっとで結果が出そうなんだけど、なんせ繊細なものだからなぁ……ウィルスや細菌って。なかなか思うような結果が出ないってぼやいてたよ」
「でも、成功すれば世紀の大発見かもしれないんだろ? すげーよな」
学生たちは口々に島谷教授の実験について話をしていた。
それを聞いて森教授はさらに口を尖らせる。
「アイツの事はいいよ。どうせ《リカちゃん》だの《コウくん》だの菌やウイルスにヘンテコな名前つけてるんでしょ。
『こちらが世紀の大発見《リカちゃん》です』なんて、平気で発表しそうだよ」
「た、確かに……」
それはそれで別の意味で東都大のイメージダウンになりかねない。新聞の一面に踊る《リカちゃん》の文字が容易に想像できてしまい、学生たちは顔を引きつらせた。
プルルルルル…プルルルルル…
ちょうどその時、教授のスマホが着信を知らせた。
「はい、森です」
教授がスマホを手に取り、電話に出る。
「おお、星川君! 体の方はどうだい?」
教授の一言に、全員の視線がそちらに向いた。
(え、電話の相手……星川さん!?)
深田の顔が見る見るうちに赤くなる。
「うん……うん…、え? そうなの? ほぅ~……そうか、分かった。
良かったね。きっとみんな安心するよ。
来週から? もちろん僕たちは大歓迎さ。
うん…うん…。じゃあ、研究室のみんなにも伝えておくよ」
電話をしながら笑顔になる教授を見て、周りにいる学生たちは、それが良い知らせだとすぐに分かる。みんなソワソワしながら教授を眺めていた。
「で、教授! 星川さんはなんて?」
教授が電話を切るのを待って、深田が問いかけた。
「ああ、体調がだいぶ良くなったから来週から復帰するって」
ついでにファイルの場所も教えてもらったよ、という教授の言葉は耳に入らず、さくら復帰の報告で、研究室には歓声が上がった。
「やった~! 星川さん戻ってくるんだ~。これで教授のお世話に手を焼くこともないわ~!」
研究生の清水がもろ手を挙げて喜んだ。
「よしッ!」
深田は渾身のガッツポーズ。
それを見て大石がニヤニヤ笑っている。
その他の学生も皆笑顔を見せ、さくらの復帰を喜んだ。
「さあさあ、みんな! ファイルの場所も分かったし学会の方はだいぶ揃ったから、次の実験の準備に取り掛かって!
こっちもあの『変人』に負けずとも劣らない大事な実験、控えているんだから!」
これから忙しくなるよ~、と教授がパンパンッと手を叩いて全員に喝を入れた。
もっと喜びを噛みしめたかった学生たちが一様に肩を落とす。
皆だるそうに「はーい…」と返事をした。
***
「来週から復帰するんですか?」
電話を切ったりおに、昴は声をかけた。
「うん。チェンシーからも趙(ちょう)の取り調べ進んでるって連絡来たし、前島も送検された。NOC疑惑も何とか解消できたし。そろそろ日常に戻らないと」
大学復帰に喜び半分、昴と離れる時間が出来ることに寂しさ半分。
りおはやや複雑な顔をして微笑んだ。
「確かに体調も万全とはいかないものの、食事も取れていますしトレーニングも欠かしていない。日常に戻っても差し支えないでしょう」
昴は上から下までりおの姿を見ると、「ふむ」とアゴに手をやる。
「しかし、やはり離れる時間が長くなるのは心配ですね。復帰には反対しませんが、しばらくは出来るだけ早く帰ってきてくださいね」
「う、うん……」
文句の一つでも飛んでくるかと思っていたりおは意外そうな顔をした。
「なんです? 何か不満でも?」
「ううん。珍しくあっさり認めてくれたな~と思って」
てっきり〈あれダメこれダメ攻撃〉が来るのかと……とりおは笑う。
「まあ、そう言いたいのも山々ですが、言ったところであなた絶対聞く耳持ちませんし。それなら気持ちよく送り出した方が円満ですので」
「ハハハ……。最近反論の余地も与えてくれないわね」
「ええ。やっとりおの扱いに慣れました」
勝ち誇ったようにドヤ顔を決める昴に、りおは近づく。
ソファーに座り長い足を組む昴の首元に、後ろからそっと抱きついた。
「復帰するって自分で言い出しておいて、こんなこと言うのもなんだけど……」
「ん?」
りおは昴の左頬に顔を摺り寄せ、小さな声でつぶやく。
「ホントは…ずっと昴さんと…ううん、秀一さんとこの家にいたい…。でもそれでは潜入捜査も、ペンダントの謎解きも、何も進まない。私たちは前に進まなくちゃ。
必ずここに、秀一さんのところに『ただいま』って帰ってくるから。だからあなたも、必ず『おかえり』って迎えてね」
ギュッと腕に力を入れて、りおは昴に抱きつく。
「ああ、約束するよ」
昴も右手を伸ばし、りおの頭を撫でた。