第6.5章 ~宝探し~
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「おや、もうお戻りですか? 早いですね」
園城寺家の縁側で詰将棋をしていた衛は、お屋敷には入らず、庭先へと戻ってきた探偵団を見て驚いていた。
「園城寺さん、帰って早々で申し訳ないのですが、神棚にある神鏡を拝見してもよろしいですか?」
昴が今までの経緯を詳しく説明し、神鏡に触れる許可を乞う。
「ええ。もちろんです。壊しさえしなければ、何をしても良いのですから。
ああ、さすがに神棚から持ってくるのは気が引けますよね。私がお持ちしましょう」
ちょっとそこで待ってて下さい、と衛は手にしていた小さな本を床に置く。ゆっくりと立ち上がって部屋の中へと入っていった。
しばらく待っていると、直径30㎝ほどの神鏡を手にして戻ってきた。
一般的な神鏡が直径約4~15㎝と言われているので、この家の神鏡がいかに大きいか分かる。
「ホントだ……確かに大きくて立派な神鏡ですね」
さくらが感嘆の声を上げる。
さすがに高価な神鏡を子どもたちが持つには危険なので、昴が衛から受け取った。
「特に変わったところはありませんね」
手にした鏡を隅々まで観察した昴はフム……と考え込む。
探偵団たちも昴が持つ鏡を覗き込み、穴が開くほど観察した。
それでも足りないと、縁側で靴を脱いで屋敷に上がり、神棚の周りも懸命に探した。が、ヒントになるようなものは出てこない。
謎解きは再び難問にぶち当たり、子どもたちは途方に暮れる。
そんな中、さくらは身動き一つせずにジッと鏡を見つめていた。
(神具の鏡は御神体。つまり『神様が宿るもの』とされているわ。祠に彫られていたのは女神。とすれば、あれは天照大神(あまてらすおおみかみ)の可能性が高い。
天照大神は農耕や機織〈はたおり〉などたくさんの神格を持っていて……)
そこまで考えてハッと顔を上げた。
「ね、ねえ……祠に彫られていた女神はおそらく天照大神(あまてらすおおみかみ)。
日本神話の主神でもある天照大神と言えば、別名『太陽神』とも言われ、天の岩戸伝説が有名——」
「!」
さくらの言葉に昴がピクリと反応した。持っていた神鏡の鏡面に視線を落とす。
「伝説になぞらえて考えれば、天の岩戸から女神様が出てくると、闇だった世界に光が差した——
現実的に考えて鏡が勝手に光り輝くことは無いけど、でもこの鏡に太陽の光を当てたら……?」
「「ッ!」」
さくらの言葉にコナンと哀がバッと顔を上げる。
「それっ! つまりこの鏡は魔鏡(まきょう)ってこと!?」
思わず哀が叫んだ。
「マキョウ? なんだそれ?」
元太が目をパチクリさせている。それを見て「ああ、」とコナンが言った。
「《魔鏡》というのは、光を当てて反射光を壁とかに映すと、絵や文字が現れる鏡のことなんだ。見た目は普通だけど、実は特殊なつくり方をしている鏡なんだよ。
鏡面に目では分からないほどのわずかな凸凹があって明暗の差を作り、それが文字や絵になって映るんだ」
「「「へぇ~!」」」
コナンの説明を聞いた元太と光彦、歩美は目を丸くした。
「つまり、この神鏡がその《魔鏡》かもしれない……と?」
光彦がゴクリとつばを飲み込んだ。
「それを調べるために、さっそく反射光を壁に当ててみましょう」
昴は顔を上げるとニッコリと笑う。すぐに軒先から離れ、日が当たるところに出た。
太陽の位置を確認し鏡を向ける。
反射した光が家の壁に当たるように調整した。
すると——
「な、何か映ってる!」
家の外壁に当たった光の中にボンヤリと女神の姿が映し出された。
「この女神様も手に何か持ってるよ!」
歩美が女神の姿を指さして叫んだ。
「あれは……榊(さかき)の枝ね」
哀も目を細め、女神の手元を見る。
「榊? そういえばこの家の門のところにあった御神木…あれも榊でしたね」
昴が子どもたちの方に向かって言うと、全員が大きくうなずいた。
探偵団が次々と謎を解く姿を、衛は穏やかな顔で見ていた。
鏡を置き、全員で園城寺家の正門へと急ぐ。
この家の御神木である榊の下には、先程とは少し違う祠(ほこら)がひっそりと祀られていた。
「この祠は木で出来ていますね……なにか扉のようなものが付いています。開けてみても良いでしょうか?」
光彦が衛に訊ねた。
「もちろん。良いですよ」
「じゃ、じゃあ…開けます…」
光彦は真剣な表情で祠の扉を開ける。すると中には古びた木の箱が入っていた。
そっと取り出し、フタを開ける。
中からは先程の地図同様、古びた布が出て来た。
光彦は箱を置き、そっとその布を広げた。
「文字が書いてあります……。これは【手紙】……ですか?」
古布には、まるで手紙のように文字がしたためられている。光彦は皆に見えるように両手で布を広げた。
『よくぞここまでたどり着いた。今ここに何物にも代えられない宝を、お前に進呈(しんてい)しよう』
広げた布に書かれた文字を、さくらが読み上げた。
『お前の周りを見てごらん。何人の仲間がいるだろうか。ここにたどり着くまでに、多くの仲間の知恵を借り、共に悩んだはずだ。
一人では出来ないことも、友や仲間がいれば成し遂げられる。
それこそが金では買えない一番の宝なのだ』
子どもたちが周りを見回す。互いの顔を見て微笑んだ。
『今日からお前は一人前の大人として扱われる。苦労する事もあるだろう。だが案ずるな。
お前の友が、仲間がいれば、必ずやどんな困難にも立ち向かえるだろう。今日の事を忘れるな。お前はひとりではない。
仲間を大切に出来る、立派な大人になれ』
さくらが最後まで読むと、子どもたちの顔がパッ明るくなった。
「宝ってのは意外と近いところにあったんだな!」
元太が照れくさそうに鼻を擦った。
「ええ。そうですね」
「うん!」
光彦と歩美も嬉しそうに返事をした。
子どもたちの様子を見て、衛がパチパチと手を叩いた。
「よくこの短時間でたどり着きましたね。
私の最初のアドバイスで、哀さんが『倉』に目を付けた。
そして元太くんが『地図』を見つけ、光彦くんが『祠』の場所に気付いた。祠では歩美ちゃんが祠の奥に彫られていた『女神様』に気付いてくれたね。
そのあとは三種の神器に気付いたコナンくん。
この家の神鏡を覚えていた沖矢さん。
最後は魔鏡に気付いたさくらさん。
一人でも欠けていたら、こんなに早く宝物にはたどり着けなかったでしょう」
衛は嬉しそうにこれまでの経緯をたどる。皆静かにそれを聞いていた。
「この謎解きは私の5代前の当主が考えました。元々そういうことを考えるのが好きだったそうです。
私も父にこの課題を与えられた時は、苦労しましたよ。
年が近く、仲の良かった使用人を引っ張り回して、ようやくたどり着きましたから」
当時を思い出し、フフッと笑いながら衛は続ける。
「そして自分の子ども達にもこれをやらせましたが、宝を見つけた時の顔が忘れられなくてね。きっと父もこんな気持ちだったのかと。
もう何年も前で忘れていましたが、探偵団のチラシを見た時、謎解きの事を思い出しましてね。
そしたらもう一度、あの時の気持ちを味わいたくなってしまって……」
「なるほど。それで依頼を」
ただの『謎解き好きなおじいさん』ではなく、何物にも代えがたい『友や仲間の存在』に気付いた子どもたちを見たかった。
依頼の本当の理由が分かり、昴が微笑んだ。
「悪かったね。こんな爺さんの道楽に付き合わせてしまって……」
「ううん。歩美とっても楽しかったよ。
それに歩美の宝物が分かって嬉しかった」
「ボクもです。確かにお金では買えない、かけがえのない宝でした!」
「おうよ!」
子どもたちは嬉しそうに衛を見上げた。
「おじいさん、一つ聞いても良い?」
コナンが子どもっぽい声で訊ねた。
「ああ、もちろん。なんだい?」
「おじいさんが引っ張り回した当時の使用人の方は今どうしてるの?」
コナンの質問に衛は目を細める。
「坊や、良い質問だね。彼は今、私の良き理解者だよ。嬉しいことも悲しいことも、全部共有できる、かけがえのない存在だ。
実はね、彼はこの家の一切を取り仕切る執事長になってるんだ。私の好みを熟知している、頼もしい男だよ」
仲間は良いね、と衛は笑う。
「オレたちもそんな風になれるかな」
「なれますよ、きっと」
「うん。ずっとずっと…大人になっても友達だよね!」
なんとも晴れやかな顔をする子どもたちを見て、昴とさくら、そして哀とコナンも笑顔になった。
謎解きの後にたくさんのお菓子を貰い、皆満足顔で帰路につく。
「あのお菓子めっちゃうまかったな~」
「もう~元太君たら……食べ過ぎですって」
「歩美もうお腹いっぱい」
嬉々としてお菓子の感想を語り合う子どもたちをよそに、昴の顔は浮かない。
「昴さん……まだ足しびれてるの?」
「え…、ええ。まあ…」
「だから足崩してれば良かったのに」
「誰も崩してないのに私だけが崩すのも……」
「で、無理して正座してて…最後は立てないどころか、四つん這いになったまま悶絶してたの誰だっけ?」
「も、もういじめないでください……」
まだ何となく感覚が鈍い足を無理やり動かしながら、昴は眉をハの字にした。
ゆっくり歩く大人二人組に、チラリと視線を寄越した哀がため息をつく。
「あのふたり、外でもイチャイチャするようになったわね」
「イチャイチャって…おい」
コナンは顔をひきつらせた。
「ま、仲が良いのは良いことね。ここ最近、さくらさん元気無かったから。今回の謎解きはいい気分転換になったんじゃないかしら」
そういうと哀はクルリと方向転換をして、昴に走り寄る。
「さ、このスピードじゃ家に着くころには暗くなっちゃうわ。昴さん、もう少し急いで!」
ピシッ! と足元を叩かれ、「ひっ!?」と昴が声を上げる。
コナンとさくらは大笑いしながらそれを見ていた。
園城寺家の縁側で詰将棋をしていた衛は、お屋敷には入らず、庭先へと戻ってきた探偵団を見て驚いていた。
「園城寺さん、帰って早々で申し訳ないのですが、神棚にある神鏡を拝見してもよろしいですか?」
昴が今までの経緯を詳しく説明し、神鏡に触れる許可を乞う。
「ええ。もちろんです。壊しさえしなければ、何をしても良いのですから。
ああ、さすがに神棚から持ってくるのは気が引けますよね。私がお持ちしましょう」
ちょっとそこで待ってて下さい、と衛は手にしていた小さな本を床に置く。ゆっくりと立ち上がって部屋の中へと入っていった。
しばらく待っていると、直径30㎝ほどの神鏡を手にして戻ってきた。
一般的な神鏡が直径約4~15㎝と言われているので、この家の神鏡がいかに大きいか分かる。
「ホントだ……確かに大きくて立派な神鏡ですね」
さくらが感嘆の声を上げる。
さすがに高価な神鏡を子どもたちが持つには危険なので、昴が衛から受け取った。
「特に変わったところはありませんね」
手にした鏡を隅々まで観察した昴はフム……と考え込む。
探偵団たちも昴が持つ鏡を覗き込み、穴が開くほど観察した。
それでも足りないと、縁側で靴を脱いで屋敷に上がり、神棚の周りも懸命に探した。が、ヒントになるようなものは出てこない。
謎解きは再び難問にぶち当たり、子どもたちは途方に暮れる。
そんな中、さくらは身動き一つせずにジッと鏡を見つめていた。
(神具の鏡は御神体。つまり『神様が宿るもの』とされているわ。祠に彫られていたのは女神。とすれば、あれは天照大神(あまてらすおおみかみ)の可能性が高い。
天照大神は農耕や機織〈はたおり〉などたくさんの神格を持っていて……)
そこまで考えてハッと顔を上げた。
「ね、ねえ……祠に彫られていた女神はおそらく天照大神(あまてらすおおみかみ)。
日本神話の主神でもある天照大神と言えば、別名『太陽神』とも言われ、天の岩戸伝説が有名——」
「!」
さくらの言葉に昴がピクリと反応した。持っていた神鏡の鏡面に視線を落とす。
「伝説になぞらえて考えれば、天の岩戸から女神様が出てくると、闇だった世界に光が差した——
現実的に考えて鏡が勝手に光り輝くことは無いけど、でもこの鏡に太陽の光を当てたら……?」
「「ッ!」」
さくらの言葉にコナンと哀がバッと顔を上げる。
「それっ! つまりこの鏡は魔鏡(まきょう)ってこと!?」
思わず哀が叫んだ。
「マキョウ? なんだそれ?」
元太が目をパチクリさせている。それを見て「ああ、」とコナンが言った。
「《魔鏡》というのは、光を当てて反射光を壁とかに映すと、絵や文字が現れる鏡のことなんだ。見た目は普通だけど、実は特殊なつくり方をしている鏡なんだよ。
鏡面に目では分からないほどのわずかな凸凹があって明暗の差を作り、それが文字や絵になって映るんだ」
「「「へぇ~!」」」
コナンの説明を聞いた元太と光彦、歩美は目を丸くした。
「つまり、この神鏡がその《魔鏡》かもしれない……と?」
光彦がゴクリとつばを飲み込んだ。
「それを調べるために、さっそく反射光を壁に当ててみましょう」
昴は顔を上げるとニッコリと笑う。すぐに軒先から離れ、日が当たるところに出た。
太陽の位置を確認し鏡を向ける。
反射した光が家の壁に当たるように調整した。
すると——
「な、何か映ってる!」
家の外壁に当たった光の中にボンヤリと女神の姿が映し出された。
「この女神様も手に何か持ってるよ!」
歩美が女神の姿を指さして叫んだ。
「あれは……榊(さかき)の枝ね」
哀も目を細め、女神の手元を見る。
「榊? そういえばこの家の門のところにあった御神木…あれも榊でしたね」
昴が子どもたちの方に向かって言うと、全員が大きくうなずいた。
探偵団が次々と謎を解く姿を、衛は穏やかな顔で見ていた。
鏡を置き、全員で園城寺家の正門へと急ぐ。
この家の御神木である榊の下には、先程とは少し違う祠(ほこら)がひっそりと祀られていた。
「この祠は木で出来ていますね……なにか扉のようなものが付いています。開けてみても良いでしょうか?」
光彦が衛に訊ねた。
「もちろん。良いですよ」
「じゃ、じゃあ…開けます…」
光彦は真剣な表情で祠の扉を開ける。すると中には古びた木の箱が入っていた。
そっと取り出し、フタを開ける。
中からは先程の地図同様、古びた布が出て来た。
光彦は箱を置き、そっとその布を広げた。
「文字が書いてあります……。これは【手紙】……ですか?」
古布には、まるで手紙のように文字がしたためられている。光彦は皆に見えるように両手で布を広げた。
『よくぞここまでたどり着いた。今ここに何物にも代えられない宝を、お前に進呈(しんてい)しよう』
広げた布に書かれた文字を、さくらが読み上げた。
『お前の周りを見てごらん。何人の仲間がいるだろうか。ここにたどり着くまでに、多くの仲間の知恵を借り、共に悩んだはずだ。
一人では出来ないことも、友や仲間がいれば成し遂げられる。
それこそが金では買えない一番の宝なのだ』
子どもたちが周りを見回す。互いの顔を見て微笑んだ。
『今日からお前は一人前の大人として扱われる。苦労する事もあるだろう。だが案ずるな。
お前の友が、仲間がいれば、必ずやどんな困難にも立ち向かえるだろう。今日の事を忘れるな。お前はひとりではない。
仲間を大切に出来る、立派な大人になれ』
さくらが最後まで読むと、子どもたちの顔がパッ明るくなった。
「宝ってのは意外と近いところにあったんだな!」
元太が照れくさそうに鼻を擦った。
「ええ。そうですね」
「うん!」
光彦と歩美も嬉しそうに返事をした。
子どもたちの様子を見て、衛がパチパチと手を叩いた。
「よくこの短時間でたどり着きましたね。
私の最初のアドバイスで、哀さんが『倉』に目を付けた。
そして元太くんが『地図』を見つけ、光彦くんが『祠』の場所に気付いた。祠では歩美ちゃんが祠の奥に彫られていた『女神様』に気付いてくれたね。
そのあとは三種の神器に気付いたコナンくん。
この家の神鏡を覚えていた沖矢さん。
最後は魔鏡に気付いたさくらさん。
一人でも欠けていたら、こんなに早く宝物にはたどり着けなかったでしょう」
衛は嬉しそうにこれまでの経緯をたどる。皆静かにそれを聞いていた。
「この謎解きは私の5代前の当主が考えました。元々そういうことを考えるのが好きだったそうです。
私も父にこの課題を与えられた時は、苦労しましたよ。
年が近く、仲の良かった使用人を引っ張り回して、ようやくたどり着きましたから」
当時を思い出し、フフッと笑いながら衛は続ける。
「そして自分の子ども達にもこれをやらせましたが、宝を見つけた時の顔が忘れられなくてね。きっと父もこんな気持ちだったのかと。
もう何年も前で忘れていましたが、探偵団のチラシを見た時、謎解きの事を思い出しましてね。
そしたらもう一度、あの時の気持ちを味わいたくなってしまって……」
「なるほど。それで依頼を」
ただの『謎解き好きなおじいさん』ではなく、何物にも代えがたい『友や仲間の存在』に気付いた子どもたちを見たかった。
依頼の本当の理由が分かり、昴が微笑んだ。
「悪かったね。こんな爺さんの道楽に付き合わせてしまって……」
「ううん。歩美とっても楽しかったよ。
それに歩美の宝物が分かって嬉しかった」
「ボクもです。確かにお金では買えない、かけがえのない宝でした!」
「おうよ!」
子どもたちは嬉しそうに衛を見上げた。
「おじいさん、一つ聞いても良い?」
コナンが子どもっぽい声で訊ねた。
「ああ、もちろん。なんだい?」
「おじいさんが引っ張り回した当時の使用人の方は今どうしてるの?」
コナンの質問に衛は目を細める。
「坊や、良い質問だね。彼は今、私の良き理解者だよ。嬉しいことも悲しいことも、全部共有できる、かけがえのない存在だ。
実はね、彼はこの家の一切を取り仕切る執事長になってるんだ。私の好みを熟知している、頼もしい男だよ」
仲間は良いね、と衛は笑う。
「オレたちもそんな風になれるかな」
「なれますよ、きっと」
「うん。ずっとずっと…大人になっても友達だよね!」
なんとも晴れやかな顔をする子どもたちを見て、昴とさくら、そして哀とコナンも笑顔になった。
謎解きの後にたくさんのお菓子を貰い、皆満足顔で帰路につく。
「あのお菓子めっちゃうまかったな~」
「もう~元太君たら……食べ過ぎですって」
「歩美もうお腹いっぱい」
嬉々としてお菓子の感想を語り合う子どもたちをよそに、昴の顔は浮かない。
「昴さん……まだ足しびれてるの?」
「え…、ええ。まあ…」
「だから足崩してれば良かったのに」
「誰も崩してないのに私だけが崩すのも……」
「で、無理して正座してて…最後は立てないどころか、四つん這いになったまま悶絶してたの誰だっけ?」
「も、もういじめないでください……」
まだ何となく感覚が鈍い足を無理やり動かしながら、昴は眉をハの字にした。
ゆっくり歩く大人二人組に、チラリと視線を寄越した哀がため息をつく。
「あのふたり、外でもイチャイチャするようになったわね」
「イチャイチャって…おい」
コナンは顔をひきつらせた。
「ま、仲が良いのは良いことね。ここ最近、さくらさん元気無かったから。今回の謎解きはいい気分転換になったんじゃないかしら」
そういうと哀はクルリと方向転換をして、昴に走り寄る。
「さ、このスピードじゃ家に着くころには暗くなっちゃうわ。昴さん、もう少し急いで!」
ピシッ! と足元を叩かれ、「ひっ!?」と昴が声を上げる。
コナンとさくらは大笑いしながらそれを見ていた。