第1章 ~運命の再会そして…~
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今回の作戦はFBI、公安警察にも極秘任務として伝えられた。
それぞれの得意分野での情報収集を任される。当然、風見・降谷にも情報は伝わっていた。
すでに最初の打ち合わせ後に、さくらは降谷にメールを送っていた。
『病気を利用して組織の医療機関に入ります。メインコンピューターの場所はわかっていますが、援護が必要です。お願いできますか?』
降谷は決行直前に再びこのメールを確認すると、強い決意で目的地に向かった。
***
ラスティーはアジトに赴き、組織が割り当てた自分の仕事部屋に入る。ここに来るのは久しぶりだ。
PC用のチェアに座って体を預けると目を閉じた。この空間に来てから頭がキリキリと痛む。
(出て来たばかりなのに…もう帰りたいと思うなんて…)
赤井といたあの場所が、自分にとってすでになくてはならない場所になっている。
深呼吸をして心を落ち着かせた。
トントン
ほどなくして、メールを送った相手がドアをノックした。
「ラスティー…大丈夫なの?」
ベルモットはラスティーに近づくと頬や髪を撫でた。
「メールに書いてあったことは本当なのかしら?」
心配げに顔を覗き込む。
ラスティーはうなずいて声を出そうとするが、空気が漏れるばかりで、かすかにささやくような掠れ声しか出ない。
それを聞いたベルモットは「本当だったのね…」と切なげにつぶやいた。
「そんなに具合が悪いのに、どうして戻ってきたの?」
『前に一度ラボに連れて行ってもらったでしょ? あの時はイカれたマッドサイエンティストに驚いて帰ってきちゃったけど、あそこでもらった頭痛薬すごく良く効いたの。今診て貰っているところは出してくれないから…。
ここ最近頭痛がひどくて。今もガンガンしてるの…』
筆談で理由を説明した。
「確かに顔が真っ青よ。わかったわ。連れて行ってあげる」ベルモットはラスティーを連れ、すぐに車を出した。
組織の中にいると息が詰まる。目に見えるわけではないけれど、誰かの死の影がチラつくように感じる。指先が震え、自然と呼吸数が速くなった。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「ちょっとラスティー?! 大丈夫なの?」
ハンドルを握るベルモットはちらりと横目で様子を伺う。
ラボに着いた時にはすでに一人では歩けなくなっていた。
「誰か! 早く来てちょうだい!」
ベルモットによって呼ばれた担当者が、すぐさまストレッチャーを用意する。そのまま医療機関へと運ばれるラスティーの姿を見送り、ベルモットはバッグからスマホを取り出した。
「……ああ、バーボン? ラスティーが倒れたの。……ええ。そうなの。ラボにいるからすぐに来て」
(病気を利用して……ってこういう事か! 全く無茶をする!)
心の中で舌打ちをしつつ、安室は電話を切るとラボに急いだ。
バーボンがラボに着くと、医療担当から今までの治療法について訊ねられた。打ち合わせ通り「薬物療法」だと伝えた。
薬を使った治療なので、安易に飲み薬を貰えなかったようだとこちらも予定取りの受け答えをする。
「分かりました」
医療担当はそう答えて処置室に入っていった。
「で、あなたのおすすめの病院で、あの子はどんな様子だったのかしら」
ベルモットが声をかけてきた。こちらも想定内の質問だ。
「病院ではありませんよ。以前は病院勤務をしていた精神科医です。変わり者で都心から離れたところで、細々とやってるんですよ。
もちろん腕は確かです。ですが、その彼の腕をもってしても、ラスティーの闇は深く一進一退でしたよ」
ウソと真実を上手く混ぜ合わせながら、バーボンはベルモットに近況を伝えた。
「声が出なくなったのはつい最近大きな発作を起こしたからです」
「なるほど。良くわかったわ」
ベルモットは特に疑う事もなく、納得したようだ。
「医療機関には数日入院するかもしれないわ。落ち着いたらその腕の良い精神科医のところまで送り届けてちょうだい。
まだこちらに戻すのは早すぎるわね。ジンには私から言っておくわ。じゃあよろしくね」
そう言ってベルモットはラボの出口へと歩いて行った。
(ふぅ…。今のところ全て予定通りだ)
バーボンは小さくため息をつく。だがそんな安心もすぐに吹き飛んだ。
「あ、そうだ!」不意にベルモットが踵を返し、こちらに近づいた。
「ギムレットには気をつけて。あいつ前にもラスティーになにかしようとしたから。それじゃあね」
バーボンにそっと耳打ちをすると、今度こそベルモットはラボを出て行った。
(ギムレット…麻薬担当の男か…。無事に3日間を過ごせれば良いが…)
バーボンは不安げにベルモットが出て行った扉を見つめた。
さくらは処方してもらった頭痛薬をすぐに服用した。
「こちらでお休みください」
割り当てられた病室で一人になると、すぐさま周囲を確認。監視カメラは付いていないが、盗聴器はベッドサイドに仕掛けられていた。
まあ、どうせ喋れないので問題ないが。
薬が効いてくるまでベッドに横になる。やがて安室が部屋に入ってきた。
「気分はどうですか? ああ、まだ無理しないで休んでください」
起き上がろうとしたさくらを制止して、安室はベッドの横に有ったイスに腰かけた。
スマホの画面で筆談をする。
「全て予定通り。ただベルモットからギムレットに気をつけろと言われました」
さくらはスマホの画面をみてうなずく。
『例の物は持ってきてくれました?』
「もちろん、全て揃っています」
『助かります。でも今夜は動かない。ラボの動きを確認するわ』
画面を見た安室がうなずく。
「頭痛はどうですか?」
『だいぶ良いです。ここの頭痛薬ホント良く効くんですよ。前にも何度か処方してもらってるの』
さくらは嬉しそうに微笑んでいる。
「ところで…」
ここまで打ち込んでさくらに見せた後、安室は少し難しい顔をして続きを打ち込む。
「以前ギムレットに何かされそうになったと…。一体何を?」
それを見たさくらは、ちょっと困った顔をした。
『……ココだけの話ですけど…薬を打たれたんです』
「?!!」
さくらの返答に思わず声が出そうになって、安室は口を押さえた。
「薬ってまさか…!?」
『そのまさかです。性的なそれを目的に。まだ開発途中のエンジェルダストだったわ』
さくらは『仕方ない…』と言いたげな顔をして、ギムレットとのことをスマホに打ち込んだ。