第6.5章 ~宝探し~
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トン…トン…トン…トン……
ダイニングにリズムカルな音が響く。
「あ、そろそろかな」
りおはコンロにかけたフライパンを覗いた。
ハムエッグが二人分、良い感じに焼きあがっている。
フライ返しで皿に盛りつけると、切ったばかりのキュウリとトマトをレタスの横に添えた。
作り置きのニンジンサラダも隣に盛り付け、今度はトースターの元へ。
「ん! 秀一さん、OKだよ」
チン! とトースターのつまみをOFFにして焼きたてのパンを皿に載せる。
「タイミングピッタリだな」
揃いのコーヒーカップを両手に持った赤井が、ダイニングテーブルへと向かいながら微笑んだ。
りおも出来上がったばかりの朝食をテーブルに運ぶと、二人は席に着く。
「「いただきます」」
いつも通り朝
いつも通りの光景
何気ない朝のひと時は、二人にとって特別な時間
今日一日お互いが無事でありますように
明日もまた、こうして一緒に居れますように
この小さな幸せがずっと続きますように…
食事を前にして、祈るように手を合わせる。
いつまた、その身に危険が及ぶか誰も分からない。それが二人の日常なのだから。
昴が拉致された時、りおはこのささやかな幸せがもう来ないのではと身震いした。
あの笑顔が、あの抱擁が、最後になってしまうのでは——と。
自分たちの立っている場所が、いかに薄氷の上なのかを思い知らされた。だからこそ、揃って食べる朝食は今まで以上に貴重で、大切な時間なのだ。
りおは湯気の立つカフェオレを一口飲む。
いつもと変わらない優しい味に、「はぁ…」とため息がこぼれた。
「りお、体調はどうだ?」
今朝は起きてからの様子が普段通りだったので、赤井は特に声をかけなかった。が、昨日は前島と面会後、発作を起こしている。
無理しているのではないか、と赤井は注意深くりおを見た。
「大丈夫よ。体も動くし食欲もあるわ」
りおは笑顔で答えると、パクリとトマトを口の中に入れる。
「あッ! いっけない!」
トマトを咀嚼しながらりおが声を上げた。
「ん? どうした?」
「トマト! 秀一さん大丈夫?」
「え?」
りおが何を心配しているのか分からない赤井は、皿に載ったトマトを見る。
特に変わったところの無い、普通のトマト。
キライなわけでもない。
トマトをまじまじと見ながら考え込む赤井を見て、りおは盛大にため息をついた。
「もう、自分の事となるとホント無頓着なんだから……。ほら、前島に暴行されて口の中切れたでしょ。
トマトって酸味があるから傷にしみるかとかと思って。他のおかずは気をつけてたんだけど……」
「ああ、そういうことか」
そういえばケガをしてから1週間、食卓に酸味のあるものや刺激物が出てきていない。
今日のサラダもニンジンには火が通っているので柔らかいし、パンも硬くなり過ぎないように絶妙な焼き加減で仕上がっている。
目玉焼きだってやや厚切りのハムに塩気があるので、他の調味料はさほど必要ない。
「もうほとんど傷も治っているし、大丈夫だよ。どれ、試しに食べてみるか」
赤井はトマトを口の中へ放り込み、モグモグと咀嚼する。
「うん。美味いよ。傷にもしみない」
「良かった~」
りおは安堵の笑顔を見せた。
「ずいぶん気を使ってくれていたんだな。考えてみればこの1週間、俺が食べやすい物ばかりが食卓に並んでいた。
味付けがいつもより薄味だったのは、そのためだったか」
「うん。食べなきゃ治りも悪くなるし、かといって口の中が痛いと食べられないし……。
柔らかいメニューで薄味にしてたの。だからどれも味気なかったでしょ」
ごめんね、とりおは肩を窄めた。
「いや、いつもより薄味だなとは思ったが、出汁が効いているせいか美味しく感じたよ。
お前の料理の腕はすごいな」
阿笠博士の健康管理人(哀)にも教えてやると良い、と真顔で言う赤井を見て、りおはクスクスと笑った。
ダイニングにリズムカルな音が響く。
「あ、そろそろかな」
りおはコンロにかけたフライパンを覗いた。
ハムエッグが二人分、良い感じに焼きあがっている。
フライ返しで皿に盛りつけると、切ったばかりのキュウリとトマトをレタスの横に添えた。
作り置きのニンジンサラダも隣に盛り付け、今度はトースターの元へ。
「ん! 秀一さん、OKだよ」
チン! とトースターのつまみをOFFにして焼きたてのパンを皿に載せる。
「タイミングピッタリだな」
揃いのコーヒーカップを両手に持った赤井が、ダイニングテーブルへと向かいながら微笑んだ。
りおも出来上がったばかりの朝食をテーブルに運ぶと、二人は席に着く。
「「いただきます」」
いつも通り朝
いつも通りの光景
何気ない朝のひと時は、二人にとって特別な時間
今日一日お互いが無事でありますように
明日もまた、こうして一緒に居れますように
この小さな幸せがずっと続きますように…
食事を前にして、祈るように手を合わせる。
いつまた、その身に危険が及ぶか誰も分からない。それが二人の日常なのだから。
昴が拉致された時、りおはこのささやかな幸せがもう来ないのではと身震いした。
あの笑顔が、あの抱擁が、最後になってしまうのでは——と。
自分たちの立っている場所が、いかに薄氷の上なのかを思い知らされた。だからこそ、揃って食べる朝食は今まで以上に貴重で、大切な時間なのだ。
りおは湯気の立つカフェオレを一口飲む。
いつもと変わらない優しい味に、「はぁ…」とため息がこぼれた。
「りお、体調はどうだ?」
今朝は起きてからの様子が普段通りだったので、赤井は特に声をかけなかった。が、昨日は前島と面会後、発作を起こしている。
無理しているのではないか、と赤井は注意深くりおを見た。
「大丈夫よ。体も動くし食欲もあるわ」
りおは笑顔で答えると、パクリとトマトを口の中に入れる。
「あッ! いっけない!」
トマトを咀嚼しながらりおが声を上げた。
「ん? どうした?」
「トマト! 秀一さん大丈夫?」
「え?」
りおが何を心配しているのか分からない赤井は、皿に載ったトマトを見る。
特に変わったところの無い、普通のトマト。
キライなわけでもない。
トマトをまじまじと見ながら考え込む赤井を見て、りおは盛大にため息をついた。
「もう、自分の事となるとホント無頓着なんだから……。ほら、前島に暴行されて口の中切れたでしょ。
トマトって酸味があるから傷にしみるかとかと思って。他のおかずは気をつけてたんだけど……」
「ああ、そういうことか」
そういえばケガをしてから1週間、食卓に酸味のあるものや刺激物が出てきていない。
今日のサラダもニンジンには火が通っているので柔らかいし、パンも硬くなり過ぎないように絶妙な焼き加減で仕上がっている。
目玉焼きだってやや厚切りのハムに塩気があるので、他の調味料はさほど必要ない。
「もうほとんど傷も治っているし、大丈夫だよ。どれ、試しに食べてみるか」
赤井はトマトを口の中へ放り込み、モグモグと咀嚼する。
「うん。美味いよ。傷にもしみない」
「良かった~」
りおは安堵の笑顔を見せた。
「ずいぶん気を使ってくれていたんだな。考えてみればこの1週間、俺が食べやすい物ばかりが食卓に並んでいた。
味付けがいつもより薄味だったのは、そのためだったか」
「うん。食べなきゃ治りも悪くなるし、かといって口の中が痛いと食べられないし……。
柔らかいメニューで薄味にしてたの。だからどれも味気なかったでしょ」
ごめんね、とりおは肩を窄めた。
「いや、いつもより薄味だなとは思ったが、出汁が効いているせいか美味しく感じたよ。
お前の料理の腕はすごいな」
阿笠博士の健康管理人(哀)にも教えてやると良い、と真顔で言う赤井を見て、りおはクスクスと笑った。