第6章 ~遠い日の約束~
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***
ジンとウォッカがセーフハウスを出た後、バーボンは寝室のドアをノックした。
「どうぞ」
ベルモットの返事を聞いてドアを開ける。
ベッドに横たわるラスティーと、その髪をそっと撫でているベルモットが視界に入った。
「ラスティーは眠っているのですか?」
「ええ。まだ完全に薬が抜けていないみたい。
緊張もしていたんでしょう。部屋に入ったとたんバタンキューよ」
ベルモットはラスティーの栗色の髪をそっとすいた。バーボンが眠っているラスティーの顔を覗き込む。
年齢よりやや幼く見える寝顔に、思わず顔を赤くした。
「あら、バーボン。この子を好きになったらダメよ。この子にはdarlingがいるんだから」
「言われなくても分かってますよ!」
プイッと顔を背けるバーボンを見て、ベルモットは「あらあら」と何かを察したように笑った。
1時間ほど仮眠を取らせ、バーボンはラスティーを車に乗せて都内へと向かう。
外はすでに夜の帳が降りていて、空は闇色に染まっていた。街の明かりで星はほとんど見えない。
ラスティーは助手席に座り、流れゆく街灯や車のライトをボンヤリと眺めていた。
「体は辛くないですか?」
RX-7のハンドルを握り、視線は前を向いたまま安室がさくらに問いかけた。
「ええ…。大丈夫です」
返事を聞いて、安室はチラリと一瞬だけさくらを見る。
先ほど聞いたラスティーの話が耳に残っていた。どうしても訊かずにはいられなかった。
「あ、あの……」
「ん? なんですか?」
「ぶ、ぶしつけな事を訊いても?」
「もしかして……ユーチェンが私の初めての相手かって事ですか?」
「ッ!」
察しの良いさくらは、安室が気になっていたことをズバッと言い当てた。肯定も否定も出来ず、安室は何とも言えない顔をして固まった。
「答えはNOですよ。彼が襲ってきたのは事実ですけど、それは私を助けるため。
万が一自分がNOCだとバレたら、『憎い相手だ』と言えって。
自分を憎ませるために襲ったのに、ユーチェンは結局最後までしなかった。彼もまた……優しすぎたんです」
さくらは目を閉じた。こつんと窓に頭を寄せる。
「……ッ」
さくらが泣いている事に気付いた安室は、それ以上何も言わず、前を見据えて工藤邸へと急いだ。
リンゴ~ン
工藤邸前に車を停め、呼び鈴を鳴らした。
ガチャッ!
勢いよく開いた玄関ドアから、昴が慌てて飛び出した。
「さくらっ!」
「ただいま……昴さん」
ドアの前で二人は抱き合う。無事自分の腕の中にさくらが帰って来たことに安堵し、昴は小さく息を吐いた。
短い抱擁のあと体を離し、昴は安室とさくらに家の中へ入るよう促す。
三人が順番に中に入ると、玄関のドアがバタンと閉まり、外灯が消えた。
しばらくしてリビングの窓に3人の影が映った。
「…ッ」
それを物陰で忌々しそうに見つめる男の影——しかし、制服警官が近くの角を曲がってきたのを見て、男は静かに立ち去った。
昴がカーテンを僅かに開け、そっと外を伺う。影がいなくなったことを確認すると、再びカーテンを閉めた。
「前島、ですか?」
「ええ。おそらく」
カーテンから手を離す昴に安室が声をかけた。さくらが心配げに二人の顔を見ると、それを察して昴は声をかけた。
「だいぶ疲れた顔をしてますね。お風呂の準備ができています。話は安室さんから伺いますから、あなたは先に入ってきてください。その後夕食にしましょう」
「…はい…そうさせてもらいます」
昴に勧められ、さくらはバスルームへと向かう。さくらがリビングを出ると、安室と昴はソファーに腰かけた。
「で、ジンの方は?」
昴は単刀直入に安室に問いかけた。
「呉の狙いや彼のマフィア内での評判、あとケンバリで当時さくらさんが行動を共にしていた人物なども調べて、事前にジンには報告してありました。
もちろん情報操作をして、NOCだったのはユーチェンを含めて男性2名のみ。
彼らとは組織の作戦遂行時に上からの指示で組んだ事、その後も同じチームで組まされていたというだけでお互いの干渉は無く、素性も知らなかった、とね。
そして今日、さくらさんが直接尋問を受け、疑惑を晴らしました」
「そうですか……」
昴は安心したように大きく息を吐いた。
「前島の兄はケンバリ陥落前、自分たちがNOCだと疑われた時の対処まで、さくらさんに伝えていたようです」
安室の話に昴がピクリと反応した。
「それは……『もし自分がNOCだとバレた場合、迷わず切り捨てよ』ということですか?」
ユーチェンの意図は分かる。だがそれはさくらが最も苦手とする手法だ。
「ええ。『自分を襲った憎むべき男だと言え』と指示されていたようです。今回、さくらさんはジンにそのように答えていました」
安室はジンの尋問とさくらの受け答え。そして帰りの車の中で聞かされた話を昴に伝えた。
「なるほど。良く分かりました。で、ジンは今後どうするつもりなのでしょうか?」
何を話しても冷静な昴の様子に安室は驚く。動揺しているのは自分だけなのだろうか。
そんなことを考えながら、安室はジンの次の行動について伝えた。
「呉にはまだラスティーのNOC疑惑は晴れていない、と伝えるようです。
かなり機嫌を損ねていましたから、相手の要求に答えるそぶりをして……おそらく、呉を消すつもりでしょうね」
「あの男ならそうするでしょうね。とすれば心配なのは前島です。呉と前島の接点はありそうですか?」
昴はアゴに手を当て、数回うなずくと再び問いかけた。
「いえ、呉と前島が直接会っているかどうかまでは分かっていません。ただ、呉の情報屋と前島が会っていた、という目撃情報は手に入れました。
どうやらその情報屋というのが、中国警察のチェンシーが追っていた人物のようです。彼女にもその情報は伝えました。あちらも独自に動いているようです」
「そうですか……」
安室の言葉に昴は黙ってうなずいた。
ふたりに接点があるとすれば、前島も組織によって狙われる可能性が出てくる。
出来るだけ早い段階で『仇討ち』を諦めさせ、その身を安全なところへ保護しなければならない。
「とにかく、ふたりの所在を早急に探します。分かり次第あなたにも連絡しますので」
「分かりました。お願いします」
今後の事についていくつか話し、安室は工藤邸を後にした。
ブォン…ブオオォォ—ォォ…ォ……
「……ッ‼」
RX-7のエンジン音が遠ざかるのを聞いて、昴は口元に手を当てた。思わずよろめき壁に手をつく。
心臓がバクバクしていたのを安室に気付かれただろうか?
(自分を憎むませる為にりおを抱こうとして…でも…それは最後までしてなくて……しかし…ジンはその男がりおの初めての男だと……)
動揺しすぎて頭が混乱していた。赤井の明晰な頭脳は、りおのこととなると途端にバグが起こる。
(つ、つまり……りおの初めての男って……いったい…?)
やっと自分が引っかかっていた事柄が何なのかハッキリした。しかし、そんなこと本人に聞けるわけがない。
そもそも警察学校に入る前は、祖父母に育てられたとはいえ、ごく普通に日本で育ったのだ。
恋人の一人や二人いただろうし、そんな経験も無いとは言えないだろう。
(あ、いや……スコッチが初恋だと言っていた。ならば、それまでに付き合った男はいない…のか?)
下世話な事を考えている自分に思わずため息が出る。
「こんな女々しい男だったかな…俺は…」
ボソリとつぶやけば、さらに情けなくなった。
「誰が女々しいの?」
「ッ‼」
突然後ろから声を掛けられて、昴は飛び上がるほど驚いた。
「どうしたの? そんなに驚いて。らしくないわね」
振り向けば、風呂上がりでホカホカになったりおが、小首を傾げて立っていた。
先程までとは違い、血色のよくなった顔で昴を見つめている。
「あ、い、いえ…なんでも。それより、気配を消して近づかないで下さい! 驚くでしょう!」
しどろもどろになる昴をよそに、りおはきょろきょろと周りを見回す。
「安室さんは帰ったの?」
「え、ええ。たった今帰られ……」
ドン…
「ッ!」
甘い衝撃が昴の体に伝わる。りおは昴の胸に顔を寄せ、その手はしっかりと体に巻き付いた。
「じゃあ、いっぱい抱きしめて。あなたに会いたかった。あなたとこうしたかった……」
「りお……」
昴は優しくりおを抱きしめる。乾かしたばかりの栗色の髪に、そっと頬を寄せると目を閉じた。
「昴さん、なんかすごくドキドキしてる」
りおは昴の胸に耳を押し当てたままつぶやいた。
「え? そ、そうですか? 久しぶりにあなたに触れて嬉しいから、ですかね」
「ふ~ん。てっきり安室さんから私の『初めての相手』を聞いてドキドキしてるのかと」
「ッ! ちょ、ちょっとりおッ!」
突然の爆弾発言に昴は思わず叫んでしまう。
「は~ん。さては図星か」
「いや、違う…とも言い切れないというか、いや…そうじゃない。えっと…ち、違います」
「昴さん…相当動揺してるわね」
もう何を言ってもごまかせる気がしなかった。そもそもりおの言う通り。
りおの《初めての男》が気になるし、嫉妬しているのは事実なのだから。
「初めての相手かぁ。どうしようかな。ふふふ。まあ……いつか教えてあげるわ。今はナ・イ・ショ♪」
りおはスルリと昴から離れると、「お腹すいた~」と言ってダイニングへと行ってしまった。
「え? そこまで言ってナイショ……なんですか?」
玄関には『ハトが豆鉄砲を食ったような顔』をした昴が残される。
(ふふふ。そのうち、ね)
りおは鼻歌を歌いながら、昴が作ってくれたシチューを温め始めた。
ジンとウォッカがセーフハウスを出た後、バーボンは寝室のドアをノックした。
「どうぞ」
ベルモットの返事を聞いてドアを開ける。
ベッドに横たわるラスティーと、その髪をそっと撫でているベルモットが視界に入った。
「ラスティーは眠っているのですか?」
「ええ。まだ完全に薬が抜けていないみたい。
緊張もしていたんでしょう。部屋に入ったとたんバタンキューよ」
ベルモットはラスティーの栗色の髪をそっとすいた。バーボンが眠っているラスティーの顔を覗き込む。
年齢よりやや幼く見える寝顔に、思わず顔を赤くした。
「あら、バーボン。この子を好きになったらダメよ。この子にはdarlingがいるんだから」
「言われなくても分かってますよ!」
プイッと顔を背けるバーボンを見て、ベルモットは「あらあら」と何かを察したように笑った。
1時間ほど仮眠を取らせ、バーボンはラスティーを車に乗せて都内へと向かう。
外はすでに夜の帳が降りていて、空は闇色に染まっていた。街の明かりで星はほとんど見えない。
ラスティーは助手席に座り、流れゆく街灯や車のライトをボンヤリと眺めていた。
「体は辛くないですか?」
RX-7のハンドルを握り、視線は前を向いたまま安室がさくらに問いかけた。
「ええ…。大丈夫です」
返事を聞いて、安室はチラリと一瞬だけさくらを見る。
先ほど聞いたラスティーの話が耳に残っていた。どうしても訊かずにはいられなかった。
「あ、あの……」
「ん? なんですか?」
「ぶ、ぶしつけな事を訊いても?」
「もしかして……ユーチェンが私の初めての相手かって事ですか?」
「ッ!」
察しの良いさくらは、安室が気になっていたことをズバッと言い当てた。肯定も否定も出来ず、安室は何とも言えない顔をして固まった。
「答えはNOですよ。彼が襲ってきたのは事実ですけど、それは私を助けるため。
万が一自分がNOCだとバレたら、『憎い相手だ』と言えって。
自分を憎ませるために襲ったのに、ユーチェンは結局最後までしなかった。彼もまた……優しすぎたんです」
さくらは目を閉じた。こつんと窓に頭を寄せる。
「……ッ」
さくらが泣いている事に気付いた安室は、それ以上何も言わず、前を見据えて工藤邸へと急いだ。
リンゴ~ン
工藤邸前に車を停め、呼び鈴を鳴らした。
ガチャッ!
勢いよく開いた玄関ドアから、昴が慌てて飛び出した。
「さくらっ!」
「ただいま……昴さん」
ドアの前で二人は抱き合う。無事自分の腕の中にさくらが帰って来たことに安堵し、昴は小さく息を吐いた。
短い抱擁のあと体を離し、昴は安室とさくらに家の中へ入るよう促す。
三人が順番に中に入ると、玄関のドアがバタンと閉まり、外灯が消えた。
しばらくしてリビングの窓に3人の影が映った。
「…ッ」
それを物陰で忌々しそうに見つめる男の影——しかし、制服警官が近くの角を曲がってきたのを見て、男は静かに立ち去った。
昴がカーテンを僅かに開け、そっと外を伺う。影がいなくなったことを確認すると、再びカーテンを閉めた。
「前島、ですか?」
「ええ。おそらく」
カーテンから手を離す昴に安室が声をかけた。さくらが心配げに二人の顔を見ると、それを察して昴は声をかけた。
「だいぶ疲れた顔をしてますね。お風呂の準備ができています。話は安室さんから伺いますから、あなたは先に入ってきてください。その後夕食にしましょう」
「…はい…そうさせてもらいます」
昴に勧められ、さくらはバスルームへと向かう。さくらがリビングを出ると、安室と昴はソファーに腰かけた。
「で、ジンの方は?」
昴は単刀直入に安室に問いかけた。
「呉の狙いや彼のマフィア内での評判、あとケンバリで当時さくらさんが行動を共にしていた人物なども調べて、事前にジンには報告してありました。
もちろん情報操作をして、NOCだったのはユーチェンを含めて男性2名のみ。
彼らとは組織の作戦遂行時に上からの指示で組んだ事、その後も同じチームで組まされていたというだけでお互いの干渉は無く、素性も知らなかった、とね。
そして今日、さくらさんが直接尋問を受け、疑惑を晴らしました」
「そうですか……」
昴は安心したように大きく息を吐いた。
「前島の兄はケンバリ陥落前、自分たちがNOCだと疑われた時の対処まで、さくらさんに伝えていたようです」
安室の話に昴がピクリと反応した。
「それは……『もし自分がNOCだとバレた場合、迷わず切り捨てよ』ということですか?」
ユーチェンの意図は分かる。だがそれはさくらが最も苦手とする手法だ。
「ええ。『自分を襲った憎むべき男だと言え』と指示されていたようです。今回、さくらさんはジンにそのように答えていました」
安室はジンの尋問とさくらの受け答え。そして帰りの車の中で聞かされた話を昴に伝えた。
「なるほど。良く分かりました。で、ジンは今後どうするつもりなのでしょうか?」
何を話しても冷静な昴の様子に安室は驚く。動揺しているのは自分だけなのだろうか。
そんなことを考えながら、安室はジンの次の行動について伝えた。
「呉にはまだラスティーのNOC疑惑は晴れていない、と伝えるようです。
かなり機嫌を損ねていましたから、相手の要求に答えるそぶりをして……おそらく、呉を消すつもりでしょうね」
「あの男ならそうするでしょうね。とすれば心配なのは前島です。呉と前島の接点はありそうですか?」
昴はアゴに手を当て、数回うなずくと再び問いかけた。
「いえ、呉と前島が直接会っているかどうかまでは分かっていません。ただ、呉の情報屋と前島が会っていた、という目撃情報は手に入れました。
どうやらその情報屋というのが、中国警察のチェンシーが追っていた人物のようです。彼女にもその情報は伝えました。あちらも独自に動いているようです」
「そうですか……」
安室の言葉に昴は黙ってうなずいた。
ふたりに接点があるとすれば、前島も組織によって狙われる可能性が出てくる。
出来るだけ早い段階で『仇討ち』を諦めさせ、その身を安全なところへ保護しなければならない。
「とにかく、ふたりの所在を早急に探します。分かり次第あなたにも連絡しますので」
「分かりました。お願いします」
今後の事についていくつか話し、安室は工藤邸を後にした。
ブォン…ブオオォォ—ォォ…ォ……
「……ッ‼」
RX-7のエンジン音が遠ざかるのを聞いて、昴は口元に手を当てた。思わずよろめき壁に手をつく。
心臓がバクバクしていたのを安室に気付かれただろうか?
(自分を憎むませる為にりおを抱こうとして…でも…それは最後までしてなくて……しかし…ジンはその男がりおの初めての男だと……)
動揺しすぎて頭が混乱していた。赤井の明晰な頭脳は、りおのこととなると途端にバグが起こる。
(つ、つまり……りおの初めての男って……いったい…?)
やっと自分が引っかかっていた事柄が何なのかハッキリした。しかし、そんなこと本人に聞けるわけがない。
そもそも警察学校に入る前は、祖父母に育てられたとはいえ、ごく普通に日本で育ったのだ。
恋人の一人や二人いただろうし、そんな経験も無いとは言えないだろう。
(あ、いや……スコッチが初恋だと言っていた。ならば、それまでに付き合った男はいない…のか?)
下世話な事を考えている自分に思わずため息が出る。
「こんな女々しい男だったかな…俺は…」
ボソリとつぶやけば、さらに情けなくなった。
「誰が女々しいの?」
「ッ‼」
突然後ろから声を掛けられて、昴は飛び上がるほど驚いた。
「どうしたの? そんなに驚いて。らしくないわね」
振り向けば、風呂上がりでホカホカになったりおが、小首を傾げて立っていた。
先程までとは違い、血色のよくなった顔で昴を見つめている。
「あ、い、いえ…なんでも。それより、気配を消して近づかないで下さい! 驚くでしょう!」
しどろもどろになる昴をよそに、りおはきょろきょろと周りを見回す。
「安室さんは帰ったの?」
「え、ええ。たった今帰られ……」
ドン…
「ッ!」
甘い衝撃が昴の体に伝わる。りおは昴の胸に顔を寄せ、その手はしっかりと体に巻き付いた。
「じゃあ、いっぱい抱きしめて。あなたに会いたかった。あなたとこうしたかった……」
「りお……」
昴は優しくりおを抱きしめる。乾かしたばかりの栗色の髪に、そっと頬を寄せると目を閉じた。
「昴さん、なんかすごくドキドキしてる」
りおは昴の胸に耳を押し当てたままつぶやいた。
「え? そ、そうですか? 久しぶりにあなたに触れて嬉しいから、ですかね」
「ふ~ん。てっきり安室さんから私の『初めての相手』を聞いてドキドキしてるのかと」
「ッ! ちょ、ちょっとりおッ!」
突然の爆弾発言に昴は思わず叫んでしまう。
「は~ん。さては図星か」
「いや、違う…とも言い切れないというか、いや…そうじゃない。えっと…ち、違います」
「昴さん…相当動揺してるわね」
もう何を言ってもごまかせる気がしなかった。そもそもりおの言う通り。
りおの《初めての男》が気になるし、嫉妬しているのは事実なのだから。
「初めての相手かぁ。どうしようかな。ふふふ。まあ……いつか教えてあげるわ。今はナ・イ・ショ♪」
りおはスルリと昴から離れると、「お腹すいた~」と言ってダイニングへと行ってしまった。
「え? そこまで言ってナイショ……なんですか?」
玄関には『ハトが豆鉄砲を食ったような顔』をした昴が残される。
(ふふふ。そのうち、ね)
りおは鼻歌を歌いながら、昴が作ってくれたシチューを温め始めた。