第6章 ~遠い日の約束~
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「話してあげても良いけど。みんな倒れないでよ?」
哀は意地悪そうな笑顔を見せた。
「えっと…なんだか良く分かりませんが…ハイ!」
「オレも良く分かんねえけど…腹に力入れてりゃなんとかなるだろ」
「歩美は心配だな~…」
話の内容が見えていない子どもたちは、まったく違う事に気合を入れる。
「う、うわぁ~~! お、おめえら! そこは頑張んなくて良いから! は、早く博士んち行こうぜ!」
ごまかすようにコナンが叫んでダッシュすると、「あ! コナン! ずり~ぞ!」と元太たちも走り出す。
哀は4人の後姿をやれやれと見送った。
その直後——
「ッ!?」
一瞬、哀は強い殺気を感じた。思わず周りをキョロキョロと見回す。だが誰もいない。
(冷たい視線を感じたハズなのに……)
哀は険しい表情を崩さず、尚も右…左…とゆっくり視線を動かした。
「哀さん、どうしました?」
「えっ」
背後からの声に驚き振り向くと、昴が微笑みながらこちらに近づいてきていた。
「い、いえ…。なんか…誰かが見ていたような…」
「おや。私がここまでくる間、誰もいませんでしたよ。気のせいではないですか?」
「え、ええ。なら…良いんだけど…」
まだ腑に落ちない顔をしながら、哀は再び歩き出す。
「お隣ですから一緒に帰りましょうか?」
「ええ。別に良いわよ」
買い物袋をぶら下げた昴は笑顔だ。雑談をしながら二人は歩く。
しばらく進んで民家の角を曲がる瞬間、昴は鋭い視線を後方に向けた。
昴の視線のずっと先には……怪しい男の影。
二人が角を曲がると影は姿を消した。
***
「さ~て。みんなそろそろ帰る時間じゃぞ」
阿笠邸のリビングで学校の宿題を終わらせ、少年探偵団の《依頼募集》のポスターを描いていた子どもたちは「え~っ!」と声を上げた。
「日も短くなってきたし、暗くなる前に帰らんと」
博士の言葉に、子どもたちは渋々「は~い」と言って片付けを始める。元太は残っているお菓子を無理やり口に放り込んだ。
ピンポーン
その矢先、阿笠邸のインターホンが鳴る。博士が受話器を取った。
「おーい! みんな聞いてくれ〜ぃ! 昴くんが車で出る用事があるから、みんなを送ってくれるそうじゃ」
「わ~い! やったぁ!」
光彦たちは大喜びして、あっという間にリビングを片付けた。
太陽がだいぶ傾き、間もなく日没になろうとしていた。車は大通りを曲がり、住宅街へと入る。
「で、何かあったの?」
子ども達3人を送り届け、スバル360にはコナンと昴だけになった。
学校帰り、自分たちが博士の家にたどり着いたあと、哀と昴は連れ立って阿笠邸に来た。そして夕方、突然全員を送ると言い出している。
ここ数日さくらの姿を見ていない。
昴の一連の行動を見ると、考えられることは一つしかなかった。
「さすが名探偵。察しが良いな、ボウヤ」
声は昴のままだが赤井の口調で答える。言葉とは裏腹にその顔は笑っていない。コナンはにわかに緊張した。
「実は……さくらを狙う者が現れた。今度は私怨と言ったところか。ケンバリでNOC仲間だった人物の家族だ。
ヤツはさくらのせいで自分の家族が死んだと思っている。もっとも、さくらを恨むのは筋違いだがな。
そして、ある人物のタレコミで、組織がラスティーをNOCだと疑い出した」
「ええッ!?」
コナンは目を見開き、思わず声を上げた。安室がキールと共に、NOCの疑いをかけられた時のことを思い出す。
後から聞いた話によれば、二人は手錠でつながれジンに尋問された。
が、それは《死》以外の選択肢がない無情な尋問だったという。赤井が照明を打ち落とし、安室に逃げるスキを与えたらしいが、それが無ければ今頃は——
「で、今さくらさんは…」
コナンは険しい顔をして昴に問いかける。
「今はベルモットのセーフハウスにかくまわれている。彼女の手によって薬で眠っているよ。アイツはこうと決めたら、まったく人の話を聞かないからな。俺も手を焼いているんだ。
ベルモットもその辺りの事は良く分かっているらしく、危険のない薬でアイツが無茶しないように眠らせているらしい」
何故さくらがベルモットの元に居ることになったのか詳細を聞かされ、コナンは安堵のため息をつく。しかし、ジンからの尋問に猶予が無いことを知って再び表情が曇った。
「彼女のことは心配ない。それより、彼女を恨む者の方が厄介なようだ。ヤツ自身に戦闘経験は無く、ヤツの手でさくらを葬ることは無理だろう。そこでヤツが考えたのは……」
そこまで言うと昴は言葉を切る。ハンドルを握る手は力が入っていた。
「おそらく、彼女に縁がある者たちを襲う気だ」
「なッ!?」
驚いたコナンは、思わず助手席から身を乗り出す。
「ターゲットとして考えられるのは、少年探偵団、阿笠博士、ボウヤ、そして俺だろうな。
呉が再潜入してからの数ヶ月で、さくらが接触しているのはこれくらいだろう。
蘭さんや園子さん、真純も可能性が無いわけではないが、蘭さんと真純は格闘術の使い手。園子さんは財閥のご令嬢。手を出すにはリスクが大きい」
「た、確かに…」
お金持ちのお嬢様ともなれば、ボディガードの一人や二人いる可能性を考える。
だからといって、ガードが手薄になる学校帰りの女子高生3人だけの時を狙っても、蘭と世良の強さは規格外だ。とても拉致なんて不可能だろう。返り討ちに合うのが目に見える。
蘭の強烈な蹴りを思い出し、コナンの顔が引きつった。
「彼女に縁ある者を拉致して、それをエサにさくらをいたぶるか、もしくは彼女の目の前で拉致した人物を殺すかのどちらかだろう。いや、両方の可能性もあるか……。
どちらにしても自分が負った痛み、それを彼女に味合わせるために、な」
「なんて姑息な手を……」
コナンは奥歯を噛みしめる。
自分の恨みを晴らすために関係ない人まで巻き込んで。それを見て苦しむさくらの姿をあざ笑う。
人として許されることでは無い。
「とにかく、しばらく君たちにはFBIの仲間が張り付くように頼んでおいた。登下校時はもちろん、出来るだけ探偵団でまとまって行動するよう伝えてくれ。
絶対に一人で行動しないように。博士にも外出は控えるよう伝えてある。
博士は家にさえいれば、公安が隣の工藤邸を張っているから、心配ないだろう。
後はターゲットを俺だけに絞ってくれれば良いのだが……」
平然と話す昴に、コナンが問いかける。
「でもさ……昴さんがターゲットになったら、さくらさんすごく心配するんじゃない?」
「ああ……」
昴の顔がわずかに曇った。
「だが……俺に出来ることは、これくらいしかないから…」
「え!? どういうこと?」
驚くコナンをよそに、昴は小さくため息をついた。
「俺の事は良いんだ。相手は素人だし、何とでもなる。組織の方も、ベルモットとバーボンが手を回し、ONC疑惑を晴らそうと懸命に情報収集している。
だが俺は今、何もできない。アイツを守ってやることも、『大丈夫だ』と声をかけ抱きしめてやることも……」
寂しそうにつぶやく昴に、コナンは毅然と答えた。
「それは違うよ」
「え?」
きっぱりと言い切るコナンの顔を、昴は驚いたように見つめる。
「身を挺して守ることだけが、さくらさんを守ることじゃないでしょう?
どんなに離れていたって、遠くに居たって、昴さんはさくらさんを守っているんだって、ボクは思うよ」
コナンは真っすぐに昴の瞳を見つめる。その目は真剣そのもので、少しのよどみも無い。昴は思わず息を飲んだ。
「以前灰原に聞いたんだ。さくらさんが空を見上げる理由を。昴さんも、その理由を知っているよね?」
コナンの問いかけに、昴は「ああ」と答えた。
『どんなに離れていても空は繋がっているでしょう。この空を、大好きな人も見ているかなって。私の横を通り過ぎていった風も、いつか海を渡って、その人の横を通り過ぎるのかなって。そう思うと少し元気になれたのよ……』
灰原から聞いたさくらの言葉。コナンはゆっくり、噛みしめるようにつぶやく。
「…ッ」
昴はそれを聞きながら、ギュッとハンドルを握った。
「もしかしたら…さくらさんの事だから、もうとっくに目を覚まして…このキレイな夕焼けを見てるんじゃないのかな」
(きっと赤井さんを想いながら……)
コナンがフロントガラス越しに空を見上げる。青紫色に変わりつつある空に、一番星が輝いていた。
哀は意地悪そうな笑顔を見せた。
「えっと…なんだか良く分かりませんが…ハイ!」
「オレも良く分かんねえけど…腹に力入れてりゃなんとかなるだろ」
「歩美は心配だな~…」
話の内容が見えていない子どもたちは、まったく違う事に気合を入れる。
「う、うわぁ~~! お、おめえら! そこは頑張んなくて良いから! は、早く博士んち行こうぜ!」
ごまかすようにコナンが叫んでダッシュすると、「あ! コナン! ずり~ぞ!」と元太たちも走り出す。
哀は4人の後姿をやれやれと見送った。
その直後——
「ッ!?」
一瞬、哀は強い殺気を感じた。思わず周りをキョロキョロと見回す。だが誰もいない。
(冷たい視線を感じたハズなのに……)
哀は険しい表情を崩さず、尚も右…左…とゆっくり視線を動かした。
「哀さん、どうしました?」
「えっ」
背後からの声に驚き振り向くと、昴が微笑みながらこちらに近づいてきていた。
「い、いえ…。なんか…誰かが見ていたような…」
「おや。私がここまでくる間、誰もいませんでしたよ。気のせいではないですか?」
「え、ええ。なら…良いんだけど…」
まだ腑に落ちない顔をしながら、哀は再び歩き出す。
「お隣ですから一緒に帰りましょうか?」
「ええ。別に良いわよ」
買い物袋をぶら下げた昴は笑顔だ。雑談をしながら二人は歩く。
しばらく進んで民家の角を曲がる瞬間、昴は鋭い視線を後方に向けた。
昴の視線のずっと先には……怪しい男の影。
二人が角を曲がると影は姿を消した。
***
「さ~て。みんなそろそろ帰る時間じゃぞ」
阿笠邸のリビングで学校の宿題を終わらせ、少年探偵団の《依頼募集》のポスターを描いていた子どもたちは「え~っ!」と声を上げた。
「日も短くなってきたし、暗くなる前に帰らんと」
博士の言葉に、子どもたちは渋々「は~い」と言って片付けを始める。元太は残っているお菓子を無理やり口に放り込んだ。
ピンポーン
その矢先、阿笠邸のインターホンが鳴る。博士が受話器を取った。
「おーい! みんな聞いてくれ〜ぃ! 昴くんが車で出る用事があるから、みんなを送ってくれるそうじゃ」
「わ~い! やったぁ!」
光彦たちは大喜びして、あっという間にリビングを片付けた。
太陽がだいぶ傾き、間もなく日没になろうとしていた。車は大通りを曲がり、住宅街へと入る。
「で、何かあったの?」
子ども達3人を送り届け、スバル360にはコナンと昴だけになった。
学校帰り、自分たちが博士の家にたどり着いたあと、哀と昴は連れ立って阿笠邸に来た。そして夕方、突然全員を送ると言い出している。
ここ数日さくらの姿を見ていない。
昴の一連の行動を見ると、考えられることは一つしかなかった。
「さすが名探偵。察しが良いな、ボウヤ」
声は昴のままだが赤井の口調で答える。言葉とは裏腹にその顔は笑っていない。コナンはにわかに緊張した。
「実は……さくらを狙う者が現れた。今度は私怨と言ったところか。ケンバリでNOC仲間だった人物の家族だ。
ヤツはさくらのせいで自分の家族が死んだと思っている。もっとも、さくらを恨むのは筋違いだがな。
そして、ある人物のタレコミで、組織がラスティーをNOCだと疑い出した」
「ええッ!?」
コナンは目を見開き、思わず声を上げた。安室がキールと共に、NOCの疑いをかけられた時のことを思い出す。
後から聞いた話によれば、二人は手錠でつながれジンに尋問された。
が、それは《死》以外の選択肢がない無情な尋問だったという。赤井が照明を打ち落とし、安室に逃げるスキを与えたらしいが、それが無ければ今頃は——
「で、今さくらさんは…」
コナンは険しい顔をして昴に問いかける。
「今はベルモットのセーフハウスにかくまわれている。彼女の手によって薬で眠っているよ。アイツはこうと決めたら、まったく人の話を聞かないからな。俺も手を焼いているんだ。
ベルモットもその辺りの事は良く分かっているらしく、危険のない薬でアイツが無茶しないように眠らせているらしい」
何故さくらがベルモットの元に居ることになったのか詳細を聞かされ、コナンは安堵のため息をつく。しかし、ジンからの尋問に猶予が無いことを知って再び表情が曇った。
「彼女のことは心配ない。それより、彼女を恨む者の方が厄介なようだ。ヤツ自身に戦闘経験は無く、ヤツの手でさくらを葬ることは無理だろう。そこでヤツが考えたのは……」
そこまで言うと昴は言葉を切る。ハンドルを握る手は力が入っていた。
「おそらく、彼女に縁がある者たちを襲う気だ」
「なッ!?」
驚いたコナンは、思わず助手席から身を乗り出す。
「ターゲットとして考えられるのは、少年探偵団、阿笠博士、ボウヤ、そして俺だろうな。
呉が再潜入してからの数ヶ月で、さくらが接触しているのはこれくらいだろう。
蘭さんや園子さん、真純も可能性が無いわけではないが、蘭さんと真純は格闘術の使い手。園子さんは財閥のご令嬢。手を出すにはリスクが大きい」
「た、確かに…」
お金持ちのお嬢様ともなれば、ボディガードの一人や二人いる可能性を考える。
だからといって、ガードが手薄になる学校帰りの女子高生3人だけの時を狙っても、蘭と世良の強さは規格外だ。とても拉致なんて不可能だろう。返り討ちに合うのが目に見える。
蘭の強烈な蹴りを思い出し、コナンの顔が引きつった。
「彼女に縁ある者を拉致して、それをエサにさくらをいたぶるか、もしくは彼女の目の前で拉致した人物を殺すかのどちらかだろう。いや、両方の可能性もあるか……。
どちらにしても自分が負った痛み、それを彼女に味合わせるために、な」
「なんて姑息な手を……」
コナンは奥歯を噛みしめる。
自分の恨みを晴らすために関係ない人まで巻き込んで。それを見て苦しむさくらの姿をあざ笑う。
人として許されることでは無い。
「とにかく、しばらく君たちにはFBIの仲間が張り付くように頼んでおいた。登下校時はもちろん、出来るだけ探偵団でまとまって行動するよう伝えてくれ。
絶対に一人で行動しないように。博士にも外出は控えるよう伝えてある。
博士は家にさえいれば、公安が隣の工藤邸を張っているから、心配ないだろう。
後はターゲットを俺だけに絞ってくれれば良いのだが……」
平然と話す昴に、コナンが問いかける。
「でもさ……昴さんがターゲットになったら、さくらさんすごく心配するんじゃない?」
「ああ……」
昴の顔がわずかに曇った。
「だが……俺に出来ることは、これくらいしかないから…」
「え!? どういうこと?」
驚くコナンをよそに、昴は小さくため息をついた。
「俺の事は良いんだ。相手は素人だし、何とでもなる。組織の方も、ベルモットとバーボンが手を回し、ONC疑惑を晴らそうと懸命に情報収集している。
だが俺は今、何もできない。アイツを守ってやることも、『大丈夫だ』と声をかけ抱きしめてやることも……」
寂しそうにつぶやく昴に、コナンは毅然と答えた。
「それは違うよ」
「え?」
きっぱりと言い切るコナンの顔を、昴は驚いたように見つめる。
「身を挺して守ることだけが、さくらさんを守ることじゃないでしょう?
どんなに離れていたって、遠くに居たって、昴さんはさくらさんを守っているんだって、ボクは思うよ」
コナンは真っすぐに昴の瞳を見つめる。その目は真剣そのもので、少しのよどみも無い。昴は思わず息を飲んだ。
「以前灰原に聞いたんだ。さくらさんが空を見上げる理由を。昴さんも、その理由を知っているよね?」
コナンの問いかけに、昴は「ああ」と答えた。
『どんなに離れていても空は繋がっているでしょう。この空を、大好きな人も見ているかなって。私の横を通り過ぎていった風も、いつか海を渡って、その人の横を通り過ぎるのかなって。そう思うと少し元気になれたのよ……』
灰原から聞いたさくらの言葉。コナンはゆっくり、噛みしめるようにつぶやく。
「…ッ」
昴はそれを聞きながら、ギュッとハンドルを握った。
「もしかしたら…さくらさんの事だから、もうとっくに目を覚まして…このキレイな夕焼けを見てるんじゃないのかな」
(きっと赤井さんを想いながら……)
コナンがフロントガラス越しに空を見上げる。青紫色に変わりつつある空に、一番星が輝いていた。