第6章 ~遠い日の約束~
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「ところでさくら~。このイケメンさん誰ですか~?」
チェンシーが不思議そうに見上げている。どうやら昴の事を言っているらしい。
「あ~…えっと…私の《協力者》で……」
「恋人の沖矢昴と申します」
さくらの言葉にかぶせるように、昴が自己紹介をした。
「へぇぇぇ~~! さくらの恋人!? このイケメンさんが!? おどろいたね~! ふ~ん。ほ~~~ぉ」
チェンシーは興味津々で昴の周りをグルグル歩き回っては、その姿を眺めた。
まるでどこぞのJKのように、昴の顔やらメガネやら、タートルネックにまで興味を示す。
「ちょ、ちょっとチェンシー‼ 何やってるのよ。昴さんも風見さんも困っているでしょ!?」
チェンシーの行動に、さすがの昴も「あ…」とか「う…」とか言葉にならない声を上げ、眉をハの字にしている。
風見の口はあんぐりと開いたままだった。
「もう! 子どもじゃないんだから! ほら座って!」
さくらはチェンシーの手を引いてイスに座らせる。夏の恋バナのような状況を作りたくない。
チェンシーならその手の質問をしかねないので、慌ててその場を収めた。
その後も「ふ~ん…ほ~ぉ…」と言いながらニヤニヤとさくらの顔を見ていたが、無視を決め込んだ。
「ところで……」
ゴホンと咳ばらいをした風見が、その場を仕切るように声をかけた。
「中国マフィアの幹部が日本に潜伏しているというのは事実なのか?」
真面目な質問をされて、それまでニコニコしていたチェンシーの顔つきが変わる。
「まちがいないよ。6月に日本で臓器売買をしていた男ね。
日本警察の一斉摘発を逃れて中国に逃げて来ていたけど、つい2か月くらい前に、偽名を使って日本に潜入していると情報屋からタレコミあったね」
「その情報屋のタレコミは信じられるのか?」
「もちろん。ケンバリのNO.2の名前が《サカモト》で、日本の製薬会社を買い取った…という情報もソイツからだったね~。
この情報屋は昔、中国警察の警察官だったね。もうだいぶおじいちゃんだけど…信じて大丈夫よ」
「なるほど」
中国警察が信頼している情報屋からのネタだ。信ぴょう性がある情報だといえるだろう。
「で、その呉浩然(ウーハオラン)の狙いは?」
昴がチェンシーに訊ねた。
イケメンに声を掛けられ、ちょっといい気分になったのかチェンシーは饒舌(じょうぜつ)だ。
「呉のねらいは組織ね! 日本の国内外に絶大な影響力を持つ組織と取引したいよ。それを足掛かりに、組織に自身の影響力を残したいと思ってるね。
出来れば幹部クラスにまで上り詰めたい。さくらたちみたいに、コードネーム欲しい。それが本音よ」
チェンシーは得意げに話す。さくらたちは真剣にそれを聞いていた。
「マフィアの幹部なんて肩書、マフィアそのものが潰れれば無いも同然ね。とくに呉のいる組織、かなり悪い事してる。
中国の国内外から目を付けられてるよ。いつ寝首をかかれ消滅するかわからないね。だったら、より強大な組織にいた方が安全って思ったね」
「そういう事か……」
チェンシーの話を聞き、皆納得する。
「だいたいの話は分かったわ。でも……呉はどうやって組織に取り入るつもりかしら?
ジンはかなり用心深い。得体のしれない、しかも中国マフィアの幹部の話に易々と乗るとは思えないけど……」
ジンの性格をよく知るさくらは、疑問を呈した。
「確かにそうですね。呉はかなり怪しい。あのジンが、そんな男(呉)の話に食いつくとは、到底思えませんね」
昴も同意見だった。
「それは…っ…きっと何か策あるね。ヤツもバカじゃない。勝算があるから再潜入してる。
今回はヤツにとっても生きるか死ぬか、大きな勝負ね。マフィアを裏切る覚悟もしてる。組織に返り討ちにされる可能性だってあるよ。
だから、そうされないほどの……《何か》準備してるね」
チェンシーの顔が険しくなる。
「相応の準備や下調べをしている可能性が高いな。いったい何を企んでいるんだ」
風見は唇を噛み、考え込んだ。
「それ、さくらや風見サン探すね。あなたたちの仕事でしょ~」
「まあ…確かに…」
そう言われてしまえばぐうの音も出ない。呉がいったいどんな情報や画策をもって、組織に取り入ろうとしているのか。
「肝心なところは闇の中、か」
風見もため息交じりにつぶやく。
(ん? なんだこの感じは…)
昴は何となく違和感を感じつつ、黙って話を聞いていた。
「とにかく、呉の所在を探すのが先ね! 日本の事は日本警察が得意分野でしょ~。何か方法ないの~?」
チェンシーは腕を組み、小首を傾げて風見を見た。
「今潜伏の可能性がある場所を当たっている。間もなく報告が上がってくるだろう」
メガネをクイッと直し、手元にあるファイルに視線を落とす。
「だが、その場所で呉を見つけられなければ、捜査は振り出しだ。万が一すでに組織内に入り込んでいれば——」
「その可能性は十分にある」
「「「ッ!」」」
突然降谷の声が聞こえて、皆ドアの方へ振り返る。ツカツカと会議室に入ってきた降谷の顔は青ざめていた。
「悪い知らせだ」
そう言って紙の束を机に置いた。《報告書》と書かれたそれには、隠し撮りされた写真が数枚クリップで止められていた。
「2日前、あるバーで呉が目撃されている。その時、黒ずくめの銀の髪の男と会っていたとタレコミがあった」
「!?」
さくらは思わず報告書に添付された写真を見る。バーのドアを開け、中に入る呉浩然。写真の左下に時刻が書いてあった。
その15分後。
同じバーのドアを開けるジンが写っていた。
「ジン自身は呉との接触を歓迎していない。何か交渉してきても断ると言っていた。が、それも内容次第だと俺は思っている。
呉だってバカじゃない。すぐにあしらわれるような内容を提示するとは考えにくい。
ジンが興味を示すような…魅力的な情報、もしくは取引を目の前にぶら下げるはずだ。それでもし、組織とマフィアが手を組めば——。ジンの言う【新しいビジネス】に弾みがつく可能性も高いな……。
あと、もう一つ。昨日から前島翔太が行方不明だ」
「え?」
降谷の言葉に、さくらの顔色が変わった。
「ま、まさか……誰かに殺されたなんてことは……」
「分からない。今、手分けして行方を捜している。ただ、ヤツの車が米花町内で何度か目撃されている。広瀬を探しているのかもしれない」
「ッ!」
今度は昴の顔が険しくなった。
憎しみを隠そうともせず、怒りの矛先をさくらに向けていた前島の顔を思い出す。
「さくらの命が……前島に狙われるかもしれません」
「……」
昴の言葉を聞き、苦しげに下を向くさくらの姿を、チェンシーはジッと見つめていた。
チェンシーが不思議そうに見上げている。どうやら昴の事を言っているらしい。
「あ~…えっと…私の《協力者》で……」
「恋人の沖矢昴と申します」
さくらの言葉にかぶせるように、昴が自己紹介をした。
「へぇぇぇ~~! さくらの恋人!? このイケメンさんが!? おどろいたね~! ふ~ん。ほ~~~ぉ」
チェンシーは興味津々で昴の周りをグルグル歩き回っては、その姿を眺めた。
まるでどこぞのJKのように、昴の顔やらメガネやら、タートルネックにまで興味を示す。
「ちょ、ちょっとチェンシー‼ 何やってるのよ。昴さんも風見さんも困っているでしょ!?」
チェンシーの行動に、さすがの昴も「あ…」とか「う…」とか言葉にならない声を上げ、眉をハの字にしている。
風見の口はあんぐりと開いたままだった。
「もう! 子どもじゃないんだから! ほら座って!」
さくらはチェンシーの手を引いてイスに座らせる。夏の恋バナのような状況を作りたくない。
チェンシーならその手の質問をしかねないので、慌ててその場を収めた。
その後も「ふ~ん…ほ~ぉ…」と言いながらニヤニヤとさくらの顔を見ていたが、無視を決め込んだ。
「ところで……」
ゴホンと咳ばらいをした風見が、その場を仕切るように声をかけた。
「中国マフィアの幹部が日本に潜伏しているというのは事実なのか?」
真面目な質問をされて、それまでニコニコしていたチェンシーの顔つきが変わる。
「まちがいないよ。6月に日本で臓器売買をしていた男ね。
日本警察の一斉摘発を逃れて中国に逃げて来ていたけど、つい2か月くらい前に、偽名を使って日本に潜入していると情報屋からタレコミあったね」
「その情報屋のタレコミは信じられるのか?」
「もちろん。ケンバリのNO.2の名前が《サカモト》で、日本の製薬会社を買い取った…という情報もソイツからだったね~。
この情報屋は昔、中国警察の警察官だったね。もうだいぶおじいちゃんだけど…信じて大丈夫よ」
「なるほど」
中国警察が信頼している情報屋からのネタだ。信ぴょう性がある情報だといえるだろう。
「で、その呉浩然(ウーハオラン)の狙いは?」
昴がチェンシーに訊ねた。
イケメンに声を掛けられ、ちょっといい気分になったのかチェンシーは饒舌(じょうぜつ)だ。
「呉のねらいは組織ね! 日本の国内外に絶大な影響力を持つ組織と取引したいよ。それを足掛かりに、組織に自身の影響力を残したいと思ってるね。
出来れば幹部クラスにまで上り詰めたい。さくらたちみたいに、コードネーム欲しい。それが本音よ」
チェンシーは得意げに話す。さくらたちは真剣にそれを聞いていた。
「マフィアの幹部なんて肩書、マフィアそのものが潰れれば無いも同然ね。とくに呉のいる組織、かなり悪い事してる。
中国の国内外から目を付けられてるよ。いつ寝首をかかれ消滅するかわからないね。だったら、より強大な組織にいた方が安全って思ったね」
「そういう事か……」
チェンシーの話を聞き、皆納得する。
「だいたいの話は分かったわ。でも……呉はどうやって組織に取り入るつもりかしら?
ジンはかなり用心深い。得体のしれない、しかも中国マフィアの幹部の話に易々と乗るとは思えないけど……」
ジンの性格をよく知るさくらは、疑問を呈した。
「確かにそうですね。呉はかなり怪しい。あのジンが、そんな男(呉)の話に食いつくとは、到底思えませんね」
昴も同意見だった。
「それは…っ…きっと何か策あるね。ヤツもバカじゃない。勝算があるから再潜入してる。
今回はヤツにとっても生きるか死ぬか、大きな勝負ね。マフィアを裏切る覚悟もしてる。組織に返り討ちにされる可能性だってあるよ。
だから、そうされないほどの……《何か》準備してるね」
チェンシーの顔が険しくなる。
「相応の準備や下調べをしている可能性が高いな。いったい何を企んでいるんだ」
風見は唇を噛み、考え込んだ。
「それ、さくらや風見サン探すね。あなたたちの仕事でしょ~」
「まあ…確かに…」
そう言われてしまえばぐうの音も出ない。呉がいったいどんな情報や画策をもって、組織に取り入ろうとしているのか。
「肝心なところは闇の中、か」
風見もため息交じりにつぶやく。
(ん? なんだこの感じは…)
昴は何となく違和感を感じつつ、黙って話を聞いていた。
「とにかく、呉の所在を探すのが先ね! 日本の事は日本警察が得意分野でしょ~。何か方法ないの~?」
チェンシーは腕を組み、小首を傾げて風見を見た。
「今潜伏の可能性がある場所を当たっている。間もなく報告が上がってくるだろう」
メガネをクイッと直し、手元にあるファイルに視線を落とす。
「だが、その場所で呉を見つけられなければ、捜査は振り出しだ。万が一すでに組織内に入り込んでいれば——」
「その可能性は十分にある」
「「「ッ!」」」
突然降谷の声が聞こえて、皆ドアの方へ振り返る。ツカツカと会議室に入ってきた降谷の顔は青ざめていた。
「悪い知らせだ」
そう言って紙の束を机に置いた。《報告書》と書かれたそれには、隠し撮りされた写真が数枚クリップで止められていた。
「2日前、あるバーで呉が目撃されている。その時、黒ずくめの銀の髪の男と会っていたとタレコミがあった」
「!?」
さくらは思わず報告書に添付された写真を見る。バーのドアを開け、中に入る呉浩然。写真の左下に時刻が書いてあった。
その15分後。
同じバーのドアを開けるジンが写っていた。
「ジン自身は呉との接触を歓迎していない。何か交渉してきても断ると言っていた。が、それも内容次第だと俺は思っている。
呉だってバカじゃない。すぐにあしらわれるような内容を提示するとは考えにくい。
ジンが興味を示すような…魅力的な情報、もしくは取引を目の前にぶら下げるはずだ。それでもし、組織とマフィアが手を組めば——。ジンの言う【新しいビジネス】に弾みがつく可能性も高いな……。
あと、もう一つ。昨日から前島翔太が行方不明だ」
「え?」
降谷の言葉に、さくらの顔色が変わった。
「ま、まさか……誰かに殺されたなんてことは……」
「分からない。今、手分けして行方を捜している。ただ、ヤツの車が米花町内で何度か目撃されている。広瀬を探しているのかもしれない」
「ッ!」
今度は昴の顔が険しくなった。
憎しみを隠そうともせず、怒りの矛先をさくらに向けていた前島の顔を思い出す。
「さくらの命が……前島に狙われるかもしれません」
「……」
昴の言葉を聞き、苦しげに下を向くさくらの姿を、チェンシーはジッと見つめていた。