第6章 ~遠い日の約束~
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羽田空港国際線——
北京からの直行便が着陸態勢に入る。
車輪が地面を捉えると、飛行機は長い滑走路を走行。
そのままマーシャラーの指示通りターミナルを移動した。
タラップが設置され乗客が次々と降り立つ。その中に一人の男がいた。
男はサングラスをかけ、大きなスーツケースを転がしながら到着ロビーを進む。
平日の昼間。混雑はしていない。
慣れた様子で広い空港内を歩き、そのまま迎えの車に乗り込んだ。
車の運転席にはキャップをかぶった男が座っていた。軽装で左腕には派手なチェーンブレスレットがはめられている。
男はそのブレスレットをジャラリと鳴らしてハンドルを切ると、足早に空港を後にした。
「電話での話は本当か?」
キャップの男は運転をしながら中国語で訊ねた。ルームミラー越しにサングラスの男と目が合う。
「ああ、もちろんだ。アンタに教えてもらった例のターゲットから聞き出したんだ」
サングラスの男は、同じように中国語で受け答えをするとニヤリと笑った。
「よくやった…。これであの組織と直接コンタクトが取れる。頭の悪い日本の暴力団などを仲介しなくても良い」
キャップの男は満足げだ。
「で、俺はこの後どうすれば良い?」
サングラスの男の問いかけにキャップの男はすぐには応えず、ウインカーを操作する。
カチカチというウィンカーの音を聞きながら右後方を目視し、車線を変更した。
「このまま《あの男》のところへ行け」
「場所は?」
「今の時間なら…東都美術館で会える」
「知道了 (了解した)」
サングラスの男はそう返事をすると腕を組み、目を閉じた。
その様子をミラー越しに見たキャップの男は、無言でアクセルを踏み込む。
車はスピードを上げて首都高を進み、米花町方面へと向かった。
***
数日後——
今日は日曜日。雲一つない晴天。
「ふ~ぅ。良いお天気ね~」
洗濯物を干し終わったりおは、空を見上げ「う~ん…」と一つ伸びをした。
今日は初冬とは思えない程暖かい。予報では15℃くらいまで気温が上がるという。
きっと洗濯物も良く乾くだろう。
「さてと…風見さんに頼まれてた書類…片付けちゃおうかな」
空になった洗濯カゴを持ち、りおは「よしッ!」 と気合を入れて家の中へと入った。
自室からノートパソコンを持ち出し、リビングに入る。
「あれ…昴さんがいない…まだ変装してるのかな」
今日は時間かかっているなぁ…と思いながら、りおはソファーに座りパソコンの電源を入れた。
それからしばらくして、ガチャリとリビングのドアが開く。
「りお、ちょっと来てくれ」
変装途中の赤井が声をかけた。
「ん? どうしたの?」
りおはすぐに立ち上がり、赤井の後について行った。
「それが…有希子さんが使っていた化粧水と似たようなのを選んでみたんだが…肌に合わないようなんだ…」
「あ~…これね…。乾燥肌用かぁ……秀一さんのお肌は乾燥肌ではないわよね」
りおは赤井の顔に手を伸ばし、スルリと撫でた。
「いや…髭を剃った後は意外に乾燥するんだよ。だからこれで良いと思ったんだが…」
自分で購入した化粧水を手に取り、赤井はマジマジと眺める。
「髭剃り後は確かに肌を痛めるし、今の時期は乾燥するかもね。
う~ん…たぶん、秀一さんの肌は混合肌なんじゃないかな。
ほっぺや口元は乾燥しやすくて、おでことかは他に比べるとややオイリーなのかも。
あ、そうだ! ちょっと待ってて。試供品で貰った化粧水……確か混合肌用だったわ」
りおは洗面所を出ると自室に行き、小さなビンを持って戻ってきた。
「これ、先日デパート行った時に試供品で貰ったの。受け取ってから、混合肌用って気付いてね。
私はどちらかと言うと乾燥肌だから、混合肌の化粧水は使わないな…と思ったんだけど、店員さんはすでに他の人のところに行っちゃって返しそびれちゃったの。
良かったらこれつけてみて」
りおが差し出した化粧水の小ビンを赤井は受け取る。
「ああ、試してみるよ。これで良かったら買い直さないといけないな」
「ふふふ。じゃあその時は私が見てあげるわ」
まさか秀一さんの化粧水を見立てることになるとはね~、とりおは笑う。
「俺だって、まさか化粧水を付けることになるとは思わなかったよ」
苦笑いをしながら、赤井は小さなビンから数滴化粧水を手に取る。
ピチャピチャと顔になじませる姿を見て、りおがクスクスと笑った。
りおがリビングに戻ってから十数分後——
「お待たせしました」
昴がにこやかにリビングに入ってくる。
「どう? 付け心地は」
「ええ。とても良好です。肌質に合わない化粧水はやっぱりダメなんですね。メイクのノリが違います」
昴は嬉しそうに自分の頬に手を当てた。
「メイクのノリ…ねぇ…。まさかそんな言葉を昴さんから聞くとは…」
「それ、先日コナンくんにも言われましたよ」
「ふふふ。そうなんだ…。なんか、その時のコナンくんの顔が想像できるわ……。
あ! じゃあ、あの化粧水がお肌に合ったなら午後にでも買いに出ましょうか?」
ご機嫌な昴を見上げ、りおは微笑む。日用品もそろそろ買い足さなければならないと思っていたところだった。
「そうですね。ではランチは外でどうですか?久しぶりに外食も良いでしょう?」
「わあ、たまには良いね! じゃあこの書類早く片付けるわ!」
パッと表情を明るくしたりおは、大張り切りでパソコンに向かう。
風見が抱えていた幾つかの書類を、瞬く間に仕上げていった。
「さてと。じゃあこれを風見さんに直接渡して……そのあとランチと買い物かな」
トントンと書類をまとめ、りおは満足そうに微笑んだ。
その日の夜——
組織のアジトでは、キャンティとコルンが地下駐車場で、なにやら準備をしていた。
「コルン、そろそろ行けるかい?」
「ああ、準備できた」
「ジン達の乗った飛行機がもうじき着いちまうよ。急いで空港へ向かうよ」
「了解」
二人は黒いバンに乗り込むと、タイヤを鳴らし駐車場を飛び出す。
「しっかし、ジンとウォッカは日本を飛び出して何しに行ったんだろうねぇ」
ハンドルを握るキャンティは不思議そうに訊ねた。
「なにか重要なビジネス始める。ジン言ってた」
コルンはいつも通りの抑揚のない返事。興味があるのかないのか……。
いつだってこの男の考えている事は分からない。
キャンティはふ~ん、と鼻を鳴らす。
「ビジネスねぇ……。難しい事はアタイには分かんないけどさぁ。ジンがわざわざ出向いていくくらいだからさ、きっとかなりヤバい仕事だろうねぇ。
きひひっ! 楽しくなりそうだよ」
「うん。俺も楽しみ…」
いつもはあまり表情を変えないコルンがニッと笑ったのを見て、キャンティもテンションが上がる。
「楽しみ過ぎてゾクゾクするねぇ~。マズいよ、マズいよ~! 今日は飛ばしたい気分だ! アクセルガンガン踏んじまうよ~! コルン、ちゃんと掴まってな」
「ああ。オレ、シートベルトした。大丈夫」
きゃっほう! と奇声を上げながら、二人の乗ったバンは猛スピードで高速道路を走り抜けていった。
北京からの直行便が着陸態勢に入る。
車輪が地面を捉えると、飛行機は長い滑走路を走行。
そのままマーシャラーの指示通りターミナルを移動した。
タラップが設置され乗客が次々と降り立つ。その中に一人の男がいた。
男はサングラスをかけ、大きなスーツケースを転がしながら到着ロビーを進む。
平日の昼間。混雑はしていない。
慣れた様子で広い空港内を歩き、そのまま迎えの車に乗り込んだ。
車の運転席にはキャップをかぶった男が座っていた。軽装で左腕には派手なチェーンブレスレットがはめられている。
男はそのブレスレットをジャラリと鳴らしてハンドルを切ると、足早に空港を後にした。
「電話での話は本当か?」
キャップの男は運転をしながら中国語で訊ねた。ルームミラー越しにサングラスの男と目が合う。
「ああ、もちろんだ。アンタに教えてもらった例のターゲットから聞き出したんだ」
サングラスの男は、同じように中国語で受け答えをするとニヤリと笑った。
「よくやった…。これであの組織と直接コンタクトが取れる。頭の悪い日本の暴力団などを仲介しなくても良い」
キャップの男は満足げだ。
「で、俺はこの後どうすれば良い?」
サングラスの男の問いかけにキャップの男はすぐには応えず、ウインカーを操作する。
カチカチというウィンカーの音を聞きながら右後方を目視し、車線を変更した。
「このまま《あの男》のところへ行け」
「場所は?」
「今の時間なら…東都美術館で会える」
「
サングラスの男はそう返事をすると腕を組み、目を閉じた。
その様子をミラー越しに見たキャップの男は、無言でアクセルを踏み込む。
車はスピードを上げて首都高を進み、米花町方面へと向かった。
***
数日後——
今日は日曜日。雲一つない晴天。
「ふ~ぅ。良いお天気ね~」
洗濯物を干し終わったりおは、空を見上げ「う~ん…」と一つ伸びをした。
今日は初冬とは思えない程暖かい。予報では15℃くらいまで気温が上がるという。
きっと洗濯物も良く乾くだろう。
「さてと…風見さんに頼まれてた書類…片付けちゃおうかな」
空になった洗濯カゴを持ち、りおは「よしッ!」 と気合を入れて家の中へと入った。
自室からノートパソコンを持ち出し、リビングに入る。
「あれ…昴さんがいない…まだ変装してるのかな」
今日は時間かかっているなぁ…と思いながら、りおはソファーに座りパソコンの電源を入れた。
それからしばらくして、ガチャリとリビングのドアが開く。
「りお、ちょっと来てくれ」
変装途中の赤井が声をかけた。
「ん? どうしたの?」
りおはすぐに立ち上がり、赤井の後について行った。
「それが…有希子さんが使っていた化粧水と似たようなのを選んでみたんだが…肌に合わないようなんだ…」
「あ~…これね…。乾燥肌用かぁ……秀一さんのお肌は乾燥肌ではないわよね」
りおは赤井の顔に手を伸ばし、スルリと撫でた。
「いや…髭を剃った後は意外に乾燥するんだよ。だからこれで良いと思ったんだが…」
自分で購入した化粧水を手に取り、赤井はマジマジと眺める。
「髭剃り後は確かに肌を痛めるし、今の時期は乾燥するかもね。
う~ん…たぶん、秀一さんの肌は混合肌なんじゃないかな。
ほっぺや口元は乾燥しやすくて、おでことかは他に比べるとややオイリーなのかも。
あ、そうだ! ちょっと待ってて。試供品で貰った化粧水……確か混合肌用だったわ」
りおは洗面所を出ると自室に行き、小さなビンを持って戻ってきた。
「これ、先日デパート行った時に試供品で貰ったの。受け取ってから、混合肌用って気付いてね。
私はどちらかと言うと乾燥肌だから、混合肌の化粧水は使わないな…と思ったんだけど、店員さんはすでに他の人のところに行っちゃって返しそびれちゃったの。
良かったらこれつけてみて」
りおが差し出した化粧水の小ビンを赤井は受け取る。
「ああ、試してみるよ。これで良かったら買い直さないといけないな」
「ふふふ。じゃあその時は私が見てあげるわ」
まさか秀一さんの化粧水を見立てることになるとはね~、とりおは笑う。
「俺だって、まさか化粧水を付けることになるとは思わなかったよ」
苦笑いをしながら、赤井は小さなビンから数滴化粧水を手に取る。
ピチャピチャと顔になじませる姿を見て、りおがクスクスと笑った。
りおがリビングに戻ってから十数分後——
「お待たせしました」
昴がにこやかにリビングに入ってくる。
「どう? 付け心地は」
「ええ。とても良好です。肌質に合わない化粧水はやっぱりダメなんですね。メイクのノリが違います」
昴は嬉しそうに自分の頬に手を当てた。
「メイクのノリ…ねぇ…。まさかそんな言葉を昴さんから聞くとは…」
「それ、先日コナンくんにも言われましたよ」
「ふふふ。そうなんだ…。なんか、その時のコナンくんの顔が想像できるわ……。
あ! じゃあ、あの化粧水がお肌に合ったなら午後にでも買いに出ましょうか?」
ご機嫌な昴を見上げ、りおは微笑む。日用品もそろそろ買い足さなければならないと思っていたところだった。
「そうですね。ではランチは外でどうですか?久しぶりに外食も良いでしょう?」
「わあ、たまには良いね! じゃあこの書類早く片付けるわ!」
パッと表情を明るくしたりおは、大張り切りでパソコンに向かう。
風見が抱えていた幾つかの書類を、瞬く間に仕上げていった。
「さてと。じゃあこれを風見さんに直接渡して……そのあとランチと買い物かな」
トントンと書類をまとめ、りおは満足そうに微笑んだ。
その日の夜——
組織のアジトでは、キャンティとコルンが地下駐車場で、なにやら準備をしていた。
「コルン、そろそろ行けるかい?」
「ああ、準備できた」
「ジン達の乗った飛行機がもうじき着いちまうよ。急いで空港へ向かうよ」
「了解」
二人は黒いバンに乗り込むと、タイヤを鳴らし駐車場を飛び出す。
「しっかし、ジンとウォッカは日本を飛び出して何しに行ったんだろうねぇ」
ハンドルを握るキャンティは不思議そうに訊ねた。
「なにか重要なビジネス始める。ジン言ってた」
コルンはいつも通りの抑揚のない返事。興味があるのかないのか……。
いつだってこの男の考えている事は分からない。
キャンティはふ~ん、と鼻を鳴らす。
「ビジネスねぇ……。難しい事はアタイには分かんないけどさぁ。ジンがわざわざ出向いていくくらいだからさ、きっとかなりヤバい仕事だろうねぇ。
きひひっ! 楽しくなりそうだよ」
「うん。俺も楽しみ…」
いつもはあまり表情を変えないコルンがニッと笑ったのを見て、キャンティもテンションが上がる。
「楽しみ過ぎてゾクゾクするねぇ~。マズいよ、マズいよ~! 今日は飛ばしたい気分だ! アクセルガンガン踏んじまうよ~! コルン、ちゃんと掴まってな」
「ああ。オレ、シートベルトした。大丈夫」
きゃっほう! と奇声を上げながら、二人の乗ったバンは猛スピードで高速道路を走り抜けていった。