第5.5章 ~危険なカクテル~
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時計の針は間もなく23時になるところだった。
赤井はリビングでソファーに座り、スマホを見ている。髪を乾かしたりおが左後ろから覗き込んだ。
「何のニュース?」
「え? ああ、アメリカで起きたハッキングのニュースを見てたんだ。ホームページを改ざんされていたようだが、実際のところ被害は無かった。
ただ、セキュリティにはかなり力を入れてる企業だったから、ホームページを乗っ取られるというのはショッキングなニュースだよ。
今後のセキュリティの在り方を考えないといけない」
「ふ~ん。ハッキングか……。日本も他人事ではないわね。どんなに守りを強化しても、犯罪者はさらなる抜け道を探し出す。
国家機密を狙われれば《NOCリスト》を狙われた時のように大騒ぎになりかねない」
「ああ」
スマホ画面を真剣に覗き込むりおの横顔を、赤井はチラリと見た。長い髪がサラリと肩を滑り落ちる。
「りお……そろそろ、寝ないか?」
「…ん?…」
突然名を呼ばれて、りおは赤井の方へ顔を向けた。
「ッ!」
思った以上にお互いの顔が近い。赤井の右手がりおの左頬に触れる。
そのまま二人の唇が重なった。
久しぶりのキス。
唇の感触を確かめるように数回触れあう。互いの唇を食む様にバードキスを繰り返すと、それだけで息が上がる。
やがて赤井の舌先がりおの上唇に触れた。
りおはわずかに口開け、赤井は顔の角度を変えて深く口づける。
わずかな隙間からスルリと舌を入れ、りおの舌を捉えてゆっくり絡めた。
頬に触れていた赤井の手は、いつの間にかりおの後頭部を支えてより深く口づける。
「…ぅ…んッ…!」」
的確にりおの弱いところを刺激すると、体がビクリと跳ねた。
ちゅッ
ワザとリップ音を鳴らして唇が離れる。
「りお…ベッド行こう…。4日ぶりなんだ。もっとお前に触れたい」
見れば赤井の顔も上気し、気持ちが昂(たかぶ)っているのが分かる。
「うん…私も…。秀一さんに触れたい」
赤井は立ち上がり、二人はキスをしながら部屋を移動した。もつれるようにベッドにダイブし、赤井はりおを抱きしめる。
「おかえり、りお」
「フフッ! ただいま、秀一さん」
やっと自分の腕の中に帰って来た。そう安堵するのと同時に、もっと相手に触れたい。抱きしめたい。
赤井はりおを抱きしめたまま、余すことなくその体にキスをした。
翌日——
「秀一さん、出来たよ」
「ああ、こっちも準備OKだ」
朝食の準備を終えて二人は席に着いた。
「今日は買い物に行かないとダメね」
いただきます、と言って食べ始めたりおは、赤井に声をかけた。
「ああ。食材…ほとんどなくなってたな。俺もりおが入院中それなりに作って食べてたし…」
最低でも3日と言われていたりおの入院は、わずかな時間とはいえ意識混濁があったため4日間になった。
その間、赤井はほとんど病院に詰めていた。
りおのPTSDの症状を良く知る赤井が、そばに居た方が良いと言われていたからだ。
もちろん、そんな理由が無くても病院に居たと思うが。
そのため朝晩は家で作って食べてはいたものの、買い物に行くなどという発想は無かったし、退院した日も、早く休ませようと病院から工藤邸まで直行だった。
「さすがに根菜とお米しかないって……。何作って食べてたの?」
「乾物があったから、味噌汁作ったかな。乾燥わかめとじゃがいもの味噌汁は、前にりおに作ってもらって美味かったから。とりあえず、飯と味噌汁があればって感じで……。夜作ったものを朝食べたりしていたよ」
「作って食べていたのは褒めてあげるけど……成人男性がそれじゃあ全然カロリーが足りないわ。よ~し! 今日のお昼は美味しいもの作るね!」
「フフ。それは楽しみだ」
かろうじて残っていた長ネギとチーズ、そして油揚げでピザ風に仕上げたものでたんぱく質を補い、乾燥わかめと半分使いかけの大根で作った味噌汁にご飯…という質素な朝食を二人で食べる。
(どんな食事でも、一人より二人の方が美味いな……)
「何作ろうかな~」と考え込むりおを眺めながら、赤井は味噌汁をずずず…とすすった。
***
「ふ~。買い過ぎちゃったかな」
買い物から帰って玄関に置いたショッピングバッグは、3つともパンパンに膨れている。
「常備菜も作るつもりでしょう? これで冷蔵庫内も潤いますね」
靴を脱いで中に入ると、昴は再びショッピングバッグを持ちダイニングへと向かう。
自室へコートとバッグを置いたりおが、遅れてダイニングに入ると、さっそく手を洗ってエプロンを締めた。
「さて、何から作ろうかな~。まずは昼食作りかな」
「りお、ひと休みしてからでも良いですよ。退院して来たばかりですし、あまり無理しないで」
「大丈夫よ、これくらい。休んでばかりいたら体が鈍っちゃうわ。美味しいもの作るから期待して待っててね」
昴の心配をよそに、りおはショッピングバッグの中身を出し、次々と片付けながら調理も進めていく。
昴はこれ以上言ってもムダだな……とすぐに諦めて片付けを手伝った。
1時間ほどで、りおは昼食の準備と常備菜の下ごしらえを済ませてしまう。
「あなたの手際の良さは見ていて圧巻ですね。本当に無駄な動きが無い」
野菜を茹でながら。
肉に下味をつけている間に。
電子レンジでチンする間に。
洗い物をしている時に。
全てが同時進行で進んでいく様は、隣に居る昴も何を手伝って良いか分からないほど目まぐるしい。
それでいてすべてが完璧に管理されていて、野菜が茹る間に洗い物は済んでしまうし、具材に火が通る頃には、味付け用の調味料が混ぜられている。
だからりおの作る料理は、食べる時に温かいものは温かく、冷たいものは冷たい。
当たり前のように感じるが、自分で作ってみると分かる。それがどれだけ難しいかを。
「さ~て、昼食出来ましたよ。唐揚げとサラダ、それからキノコと野菜の味噌汁とご飯です。
同時進行で色々やっていたから品数多くないけど…。肉料理があるだけでちょっとリッチな感じでしょ?」
「ええ、十分ですよ! 美味しそうですね~」
りおが作った色とりどりの食事を目の前にして、昴の腹の虫がぐ~っと鳴った。
「フフ。やはり疲れたか……」
朝起きてから朝食作り、家事をこなしてから買い物に出掛けた。
そして帰って来てから息をつく間もなく昼食や常備菜作り。
食べた後の片づけをしてからも、買ってきた食材をキレイに収納して、ようやくソファーに座ったのがついさっき。
それから10分と経っていないのに、すでにりおはソファーで寝息を立てていた。
「そんなに頑張らなくて良いのに。俺はお前と一緒に居られれば…それだけで……」
昴はソファーに近付き、りおの顔を覗き込む。
沖矢昴として初めて会った頃に比べれば、りおの体調はだいぶ整ったように思う。
戸隠旅行後は少しずつトレーニングもしていたから、体の動きは以前と変わりがないだろう。
ただ持久力の方はなかなか戻らないようだ。
心が整っていない事も原因としてあるだろう。『疲れやすい』というのは、見ていても分かる。もちろんその事を本人は絶対に口にはしないが。
だからこそ、そばに居る自分が無理をさせないように気を配っているのだが……。
(相変わらず……言う事をきかないヤツだよ)
昴は、気持ち良さそうに眠るりおを見て愛おし気に微笑む。
ブランケットを出し、そっとその体にかけた。
赤井はリビングでソファーに座り、スマホを見ている。髪を乾かしたりおが左後ろから覗き込んだ。
「何のニュース?」
「え? ああ、アメリカで起きたハッキングのニュースを見てたんだ。ホームページを改ざんされていたようだが、実際のところ被害は無かった。
ただ、セキュリティにはかなり力を入れてる企業だったから、ホームページを乗っ取られるというのはショッキングなニュースだよ。
今後のセキュリティの在り方を考えないといけない」
「ふ~ん。ハッキングか……。日本も他人事ではないわね。どんなに守りを強化しても、犯罪者はさらなる抜け道を探し出す。
国家機密を狙われれば《NOCリスト》を狙われた時のように大騒ぎになりかねない」
「ああ」
スマホ画面を真剣に覗き込むりおの横顔を、赤井はチラリと見た。長い髪がサラリと肩を滑り落ちる。
「りお……そろそろ、寝ないか?」
「…ん?…」
突然名を呼ばれて、りおは赤井の方へ顔を向けた。
「ッ!」
思った以上にお互いの顔が近い。赤井の右手がりおの左頬に触れる。
そのまま二人の唇が重なった。
久しぶりのキス。
唇の感触を確かめるように数回触れあう。互いの唇を食む様にバードキスを繰り返すと、それだけで息が上がる。
やがて赤井の舌先がりおの上唇に触れた。
りおはわずかに口開け、赤井は顔の角度を変えて深く口づける。
わずかな隙間からスルリと舌を入れ、りおの舌を捉えてゆっくり絡めた。
頬に触れていた赤井の手は、いつの間にかりおの後頭部を支えてより深く口づける。
「…ぅ…んッ…!」」
的確にりおの弱いところを刺激すると、体がビクリと跳ねた。
ちゅッ
ワザとリップ音を鳴らして唇が離れる。
「りお…ベッド行こう…。4日ぶりなんだ。もっとお前に触れたい」
見れば赤井の顔も上気し、気持ちが昂(たかぶ)っているのが分かる。
「うん…私も…。秀一さんに触れたい」
赤井は立ち上がり、二人はキスをしながら部屋を移動した。もつれるようにベッドにダイブし、赤井はりおを抱きしめる。
「おかえり、りお」
「フフッ! ただいま、秀一さん」
やっと自分の腕の中に帰って来た。そう安堵するのと同時に、もっと相手に触れたい。抱きしめたい。
赤井はりおを抱きしめたまま、余すことなくその体にキスをした。
翌日——
「秀一さん、出来たよ」
「ああ、こっちも準備OKだ」
朝食の準備を終えて二人は席に着いた。
「今日は買い物に行かないとダメね」
いただきます、と言って食べ始めたりおは、赤井に声をかけた。
「ああ。食材…ほとんどなくなってたな。俺もりおが入院中それなりに作って食べてたし…」
最低でも3日と言われていたりおの入院は、わずかな時間とはいえ意識混濁があったため4日間になった。
その間、赤井はほとんど病院に詰めていた。
りおのPTSDの症状を良く知る赤井が、そばに居た方が良いと言われていたからだ。
もちろん、そんな理由が無くても病院に居たと思うが。
そのため朝晩は家で作って食べてはいたものの、買い物に行くなどという発想は無かったし、退院した日も、早く休ませようと病院から工藤邸まで直行だった。
「さすがに根菜とお米しかないって……。何作って食べてたの?」
「乾物があったから、味噌汁作ったかな。乾燥わかめとじゃがいもの味噌汁は、前にりおに作ってもらって美味かったから。とりあえず、飯と味噌汁があればって感じで……。夜作ったものを朝食べたりしていたよ」
「作って食べていたのは褒めてあげるけど……成人男性がそれじゃあ全然カロリーが足りないわ。よ~し! 今日のお昼は美味しいもの作るね!」
「フフ。それは楽しみだ」
かろうじて残っていた長ネギとチーズ、そして油揚げでピザ風に仕上げたものでたんぱく質を補い、乾燥わかめと半分使いかけの大根で作った味噌汁にご飯…という質素な朝食を二人で食べる。
(どんな食事でも、一人より二人の方が美味いな……)
「何作ろうかな~」と考え込むりおを眺めながら、赤井は味噌汁をずずず…とすすった。
***
「ふ~。買い過ぎちゃったかな」
買い物から帰って玄関に置いたショッピングバッグは、3つともパンパンに膨れている。
「常備菜も作るつもりでしょう? これで冷蔵庫内も潤いますね」
靴を脱いで中に入ると、昴は再びショッピングバッグを持ちダイニングへと向かう。
自室へコートとバッグを置いたりおが、遅れてダイニングに入ると、さっそく手を洗ってエプロンを締めた。
「さて、何から作ろうかな~。まずは昼食作りかな」
「りお、ひと休みしてからでも良いですよ。退院して来たばかりですし、あまり無理しないで」
「大丈夫よ、これくらい。休んでばかりいたら体が鈍っちゃうわ。美味しいもの作るから期待して待っててね」
昴の心配をよそに、りおはショッピングバッグの中身を出し、次々と片付けながら調理も進めていく。
昴はこれ以上言ってもムダだな……とすぐに諦めて片付けを手伝った。
1時間ほどで、りおは昼食の準備と常備菜の下ごしらえを済ませてしまう。
「あなたの手際の良さは見ていて圧巻ですね。本当に無駄な動きが無い」
野菜を茹でながら。
肉に下味をつけている間に。
電子レンジでチンする間に。
洗い物をしている時に。
全てが同時進行で進んでいく様は、隣に居る昴も何を手伝って良いか分からないほど目まぐるしい。
それでいてすべてが完璧に管理されていて、野菜が茹る間に洗い物は済んでしまうし、具材に火が通る頃には、味付け用の調味料が混ぜられている。
だからりおの作る料理は、食べる時に温かいものは温かく、冷たいものは冷たい。
当たり前のように感じるが、自分で作ってみると分かる。それがどれだけ難しいかを。
「さ~て、昼食出来ましたよ。唐揚げとサラダ、それからキノコと野菜の味噌汁とご飯です。
同時進行で色々やっていたから品数多くないけど…。肉料理があるだけでちょっとリッチな感じでしょ?」
「ええ、十分ですよ! 美味しそうですね~」
りおが作った色とりどりの食事を目の前にして、昴の腹の虫がぐ~っと鳴った。
「フフ。やはり疲れたか……」
朝起きてから朝食作り、家事をこなしてから買い物に出掛けた。
そして帰って来てから息をつく間もなく昼食や常備菜作り。
食べた後の片づけをしてからも、買ってきた食材をキレイに収納して、ようやくソファーに座ったのがついさっき。
それから10分と経っていないのに、すでにりおはソファーで寝息を立てていた。
「そんなに頑張らなくて良いのに。俺はお前と一緒に居られれば…それだけで……」
昴はソファーに近付き、りおの顔を覗き込む。
沖矢昴として初めて会った頃に比べれば、りおの体調はだいぶ整ったように思う。
戸隠旅行後は少しずつトレーニングもしていたから、体の動きは以前と変わりがないだろう。
ただ持久力の方はなかなか戻らないようだ。
心が整っていない事も原因としてあるだろう。『疲れやすい』というのは、見ていても分かる。もちろんその事を本人は絶対に口にはしないが。
だからこそ、そばに居る自分が無理をさせないように気を配っているのだが……。
(相変わらず……言う事をきかないヤツだよ)
昴は、気持ち良さそうに眠るりおを見て愛おし気に微笑む。
ブランケットを出し、そっとその体にかけた。