第5.5章 ~危険なカクテル~
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「ただいま~」
「おかえりなさい」
ベルモットと会っていたのは1時間程。往復の移動時間を含めて、留守にしていたのは2時間弱だった。
「お早いお帰りで安心しました」
嬉しそうに出迎える昴を見て、りおは顔を赤くした。
「だって、早く帰って来いって昴さんが言うんだもん」
憎まれ口を叩いているが、顔がにやけているのが分かる。
「ベルモットと何を話したのですか?」
「……」
「りお?」
「あ、うん…。後で話すね。手を洗ってくる」
一瞬暗い顔をしたのは気のせいか?
洗面所へと行くりおの姿を、昴は心配げに見つめていた。
手洗いを終え、ダイニングへと顔を出したりおは、ドアを開けた途端目を丸くした。
「すごく良い匂い…。昴さん何作ったの?」
「ああ、りお。お腹すいていますか? 昼食にと思って作ったんですけど……」
エプロンをつけた昴はそう言って、鍋のフタを開ける。
「わぁ! ポトフだ!」
「4日間この家で一人だったので、野菜が少しずつ余ってしまったんです。
りおも退院したばかりなのでスープみたいなのが良いかなと思って、『余り野菜・スープ』で検索したらポトフのレシピがあったので……」
「ふふふ。なるほど~。昼食の時間遅くなっちゃってごめんね。ベルモットとは飲み物だけだったから、お腹すいちゃった」
ポトフ食べる~!
りおは嬉しそうに言うと、スープ皿を戸棚から取り出した。
ダイニングテーブルの上には、根菜がたっぷりのポトフ。湯気がふわりと揺れている。バゲットが少し残っていたので、スライスして軽くトーストした。
「わぁ~…美味しそう~」
二人は席に座り、手を合わせた。
「それで? ベルモットは何を?」
スープを半分ほど食べたところで、昴は再びりおに問いかけた。
「……う…ん…それが……」
歯切れが悪いりおの態度に、昴は持っていたスプーンを置く。
「《沖矢昴》について…何か言われましたか?」
「ッ!?」
驚いたりおはパッと顔を上げた。
「あなたがジンに襲われた時……たぶん見られたと思うんです。前日に私が付けたキスマーク。
当然『ラスティーに男がいる』という話になるだろうな、と思っていました」
昴は細めていた目を開け、真っすぐりおの顔を見た。
「私はあなたとの関係を隠すつもりはありません。《沖矢昴》はラスティーの男……。そう組織に知られても良いと思っています」
「でも、それで万が一……」
《沖矢昴》=《赤井秀一》だとバレたら。そう心配するりおに、昴は力強く答える。
「そんなヘマはしない。俺を信じてくれ。
その代わり……一般人である《沖矢昴》をお前が守ってくれよ。そしたら俺はこの姿で、堂々とお前のそばに居られるのだからな」
ペリドットの瞳が優しく微笑む。
「どれだけそばに居たいのよ……」
りおは半分泣きそうな顔で笑った。
赤井がそばに居ると思うだけで、驚くほど安心する自分がいる。昴の言葉は素直に嬉しかった。
でもそれは——《沖矢昴》を危険に巻き込む事になるのではないか——。
りおの心は複雑だった。
その日の夜——
ガチャ…
工藤邸のリビングのドアが開き、赤井が髪を拭きながら入る。ソファーを見れば、りおがクッションを抱えて眠っていた。
「りお、風呂空いたぞ」
「う…ん……」
表情を歪ませ、もぞもぞと動いているが起きる様子はない。
「おーい。こんな所で寝てると風邪ひくぞ」
赤井はりおの肩を揺すり、再度声を掛ける。
「ぅ……ん…あ、あれ…しゅ…ちさ…? すば…さんは?」
ようやく目を覚ましたが、酷く寝ぼけているようだった。
「変装を解いたから昴はいないよ」
ボンヤリしているりおを見て、こんなに寝ぼけているのは久しぶりだな、と赤井が笑う。
「ふわぁ~…。いつの間にか寝ちゃってたみたいで…。秀一さん、おはよ…」
「ああ、おはよう。と言っても、まだ夜だが」
空いているソファーに腰かけながら、赤井は風呂に入っておいでと声を掛ける。時計を見れば21時を回ったところだった。
「うん」と返事をしてりおは立ち上がる。フラフラと、まだ足元がおぼつかなかったが、なんとかリビングを出て行った。
「珍しいな。こんな時間に寝ぼけているのは……」
やはり退院直後に出歩いたのが良くなかったのだろうか。そういえばベルモットに会った後、ずいぶん疲れている様子だった。
風呂に入るように促したのは失敗だったかな、と赤井は少々心配になる。一つため息をついて、リビングの時計を見上げた。
「……遅い……」
りおが風呂に行ってすでに50分程。
女性の入浴が長いのは承知しているが、今日はフラフラしていたので心配になる。
しかしどのタイミングで声を掛けるかが悩みどころだった。
「以前、酒に酔ったりおが浴室で寝てしまって、慌ててドアを開けたらお湯を盛大にぶっ掛けられた。同じ失敗は避けたいものだな……」
ふむ、とアゴに手を当て考えこんだ。
「しかし溺れてしまっては一刻を争う。悠長なことは言っていられまい」
赤井は意を決してソファーから立ち上がり、バスルームへと向かった。
コンコン
「りお? 入るぞ」
脱衣所のドアをノックして中に入る。曇りガラスの向こうは浴室。ガラス越しに声をかけた。
「りお、大丈夫か? フラフラしてたから心配になったんだが……」
「………ん~。あ~…大丈夫……ごめん。ちょっとウトウトしちゃった……」
少し間があったものの、声が聞こえてホッと胸を撫で下ろす。
「おいおい、湯船に浸かったまま寝るのは危ないぞ。早く上がっておいで」
「うん、わかった。もう髪も体も洗ったから、これで上がるわ」
「ハーブティーでも淹れておくよ。上がったらダイニングに顔を出してくれ」
「わあ、ありがとう。すぐ行くわ」
その後はテンポよく会話が出来たので、もう大丈夫だろう。赤井は脱衣所を出るとダイニングへと向かった。
「ごめんなさい、心配させちゃって…」
ダイニングにハーブティーの良い香りが広がる頃、りおがダイニングへと顔を出した。長い髪からまだ雫が垂れている。
「髪、良く拭けてないぞ。慌てて出て来たのか? まったくお前は……風邪ひくだろう? タオル貸してみろ」
赤井はりおの手からタオルを取ると、言葉とは裏腹に、髪をタオルで挟んでポンポンと優しく髪を拭く。
「ふふふ。秀一さんは私に甘いわね」
りおは気持ち良さそうに目を閉じ、赤井の好きにさせている。
「まあ…お前にベタ惚れなのは自覚しているよ」
栗色のつやのある髪に触れるのは嫌いじゃない。むしろもっと触れたいと思ってしまう。
この髪の合間から覗くアンバーの瞳に、何度ドキッとさせられただろう。
礼拝堂で拳を合わせた時、下ろした髪と鋭い視線に息が止まりそうになった。あまりの美しさに、まるで本当の女神が目の前にいるかと錯覚したほどだ。
(りおは髪を下ろすと、それだけでかなり印象が変わる。驚くほど色っぽくなるんだよな……)
思わず異国の衣装を身に着けた、祭事の時を思い出し、赤井は「はぁ……」と小さくため息をこぼした。
「ほら、拭けたぞ。それを飲んだらちゃんと乾かせよ」
「はぁ~い」
妖艶な女神とは程遠い——なんとも可愛らしい返事を聞いて、赤井はやれやれ、と少し呆れたように笑った。
「おかえりなさい」
ベルモットと会っていたのは1時間程。往復の移動時間を含めて、留守にしていたのは2時間弱だった。
「お早いお帰りで安心しました」
嬉しそうに出迎える昴を見て、りおは顔を赤くした。
「だって、早く帰って来いって昴さんが言うんだもん」
憎まれ口を叩いているが、顔がにやけているのが分かる。
「ベルモットと何を話したのですか?」
「……」
「りお?」
「あ、うん…。後で話すね。手を洗ってくる」
一瞬暗い顔をしたのは気のせいか?
洗面所へと行くりおの姿を、昴は心配げに見つめていた。
手洗いを終え、ダイニングへと顔を出したりおは、ドアを開けた途端目を丸くした。
「すごく良い匂い…。昴さん何作ったの?」
「ああ、りお。お腹すいていますか? 昼食にと思って作ったんですけど……」
エプロンをつけた昴はそう言って、鍋のフタを開ける。
「わぁ! ポトフだ!」
「4日間この家で一人だったので、野菜が少しずつ余ってしまったんです。
りおも退院したばかりなのでスープみたいなのが良いかなと思って、『余り野菜・スープ』で検索したらポトフのレシピがあったので……」
「ふふふ。なるほど~。昼食の時間遅くなっちゃってごめんね。ベルモットとは飲み物だけだったから、お腹すいちゃった」
ポトフ食べる~!
りおは嬉しそうに言うと、スープ皿を戸棚から取り出した。
ダイニングテーブルの上には、根菜がたっぷりのポトフ。湯気がふわりと揺れている。バゲットが少し残っていたので、スライスして軽くトーストした。
「わぁ~…美味しそう~」
二人は席に座り、手を合わせた。
「それで? ベルモットは何を?」
スープを半分ほど食べたところで、昴は再びりおに問いかけた。
「……う…ん…それが……」
歯切れが悪いりおの態度に、昴は持っていたスプーンを置く。
「《沖矢昴》について…何か言われましたか?」
「ッ!?」
驚いたりおはパッと顔を上げた。
「あなたがジンに襲われた時……たぶん見られたと思うんです。前日に私が付けたキスマーク。
当然『ラスティーに男がいる』という話になるだろうな、と思っていました」
昴は細めていた目を開け、真っすぐりおの顔を見た。
「私はあなたとの関係を隠すつもりはありません。《沖矢昴》はラスティーの男……。そう組織に知られても良いと思っています」
「でも、それで万が一……」
《沖矢昴》=《赤井秀一》だとバレたら。そう心配するりおに、昴は力強く答える。
「そんなヘマはしない。俺を信じてくれ。
その代わり……一般人である《沖矢昴》をお前が守ってくれよ。そしたら俺はこの姿で、堂々とお前のそばに居られるのだからな」
ペリドットの瞳が優しく微笑む。
「どれだけそばに居たいのよ……」
りおは半分泣きそうな顔で笑った。
赤井がそばに居ると思うだけで、驚くほど安心する自分がいる。昴の言葉は素直に嬉しかった。
でもそれは——《沖矢昴》を危険に巻き込む事になるのではないか——。
りおの心は複雑だった。
その日の夜——
ガチャ…
工藤邸のリビングのドアが開き、赤井が髪を拭きながら入る。ソファーを見れば、りおがクッションを抱えて眠っていた。
「りお、風呂空いたぞ」
「う…ん……」
表情を歪ませ、もぞもぞと動いているが起きる様子はない。
「おーい。こんな所で寝てると風邪ひくぞ」
赤井はりおの肩を揺すり、再度声を掛ける。
「ぅ……ん…あ、あれ…しゅ…ちさ…? すば…さんは?」
ようやく目を覚ましたが、酷く寝ぼけているようだった。
「変装を解いたから昴はいないよ」
ボンヤリしているりおを見て、こんなに寝ぼけているのは久しぶりだな、と赤井が笑う。
「ふわぁ~…。いつの間にか寝ちゃってたみたいで…。秀一さん、おはよ…」
「ああ、おはよう。と言っても、まだ夜だが」
空いているソファーに腰かけながら、赤井は風呂に入っておいでと声を掛ける。時計を見れば21時を回ったところだった。
「うん」と返事をしてりおは立ち上がる。フラフラと、まだ足元がおぼつかなかったが、なんとかリビングを出て行った。
「珍しいな。こんな時間に寝ぼけているのは……」
やはり退院直後に出歩いたのが良くなかったのだろうか。そういえばベルモットに会った後、ずいぶん疲れている様子だった。
風呂に入るように促したのは失敗だったかな、と赤井は少々心配になる。一つため息をついて、リビングの時計を見上げた。
「……遅い……」
りおが風呂に行ってすでに50分程。
女性の入浴が長いのは承知しているが、今日はフラフラしていたので心配になる。
しかしどのタイミングで声を掛けるかが悩みどころだった。
「以前、酒に酔ったりおが浴室で寝てしまって、慌ててドアを開けたらお湯を盛大にぶっ掛けられた。同じ失敗は避けたいものだな……」
ふむ、とアゴに手を当て考えこんだ。
「しかし溺れてしまっては一刻を争う。悠長なことは言っていられまい」
赤井は意を決してソファーから立ち上がり、バスルームへと向かった。
コンコン
「りお? 入るぞ」
脱衣所のドアをノックして中に入る。曇りガラスの向こうは浴室。ガラス越しに声をかけた。
「りお、大丈夫か? フラフラしてたから心配になったんだが……」
「………ん~。あ~…大丈夫……ごめん。ちょっとウトウトしちゃった……」
少し間があったものの、声が聞こえてホッと胸を撫で下ろす。
「おいおい、湯船に浸かったまま寝るのは危ないぞ。早く上がっておいで」
「うん、わかった。もう髪も体も洗ったから、これで上がるわ」
「ハーブティーでも淹れておくよ。上がったらダイニングに顔を出してくれ」
「わあ、ありがとう。すぐ行くわ」
その後はテンポよく会話が出来たので、もう大丈夫だろう。赤井は脱衣所を出るとダイニングへと向かった。
「ごめんなさい、心配させちゃって…」
ダイニングにハーブティーの良い香りが広がる頃、りおがダイニングへと顔を出した。長い髪からまだ雫が垂れている。
「髪、良く拭けてないぞ。慌てて出て来たのか? まったくお前は……風邪ひくだろう? タオル貸してみろ」
赤井はりおの手からタオルを取ると、言葉とは裏腹に、髪をタオルで挟んでポンポンと優しく髪を拭く。
「ふふふ。秀一さんは私に甘いわね」
りおは気持ち良さそうに目を閉じ、赤井の好きにさせている。
「まあ…お前にベタ惚れなのは自覚しているよ」
栗色のつやのある髪に触れるのは嫌いじゃない。むしろもっと触れたいと思ってしまう。
この髪の合間から覗くアンバーの瞳に、何度ドキッとさせられただろう。
礼拝堂で拳を合わせた時、下ろした髪と鋭い視線に息が止まりそうになった。あまりの美しさに、まるで本当の女神が目の前にいるかと錯覚したほどだ。
(りおは髪を下ろすと、それだけでかなり印象が変わる。驚くほど色っぽくなるんだよな……)
思わず異国の衣装を身に着けた、祭事の時を思い出し、赤井は「はぁ……」と小さくため息をこぼした。
「ほら、拭けたぞ。それを飲んだらちゃんと乾かせよ」
「はぁ~い」
妖艶な女神とは程遠い——なんとも可愛らしい返事を聞いて、赤井はやれやれ、と少し呆れたように笑った。