第5.5章 ~危険なカクテル~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
クーデターを目論む宗教集団に拉致され、聖水と称した無認可の薬を摂取してしまったりお。そのため4日間の入院を余儀なくされた。
薬の副作用で酷いめまいと軽い意識混濁はあったものの、4日後には血液検査で基準値を下回り、ようやく退院の許可が下りる。
病院から工藤邸までのドライブは、りおにとって久しぶりに外の風を感じる楽しい時間だったのだが——
***
「ふ~。やっぱり病院の外は良いね。それだけで元気になる」
助手席でニコニコしながらりおは外の景色を眺めている。
「ふふふ。そんなこと言ったらドクターたちが気の毒ですよ」
確かにね~、と笑うりおを見て、昴も微笑む。
「まあ、聖水もおかしな薬じゃなくて良かったですね。常習性が有ったりすると厄介ですし……。
日本では無認可の薬でしたけど、海外では濃度は違えど治療薬として使っている国もあるのだとか。
今朝の血液検査でしっかり体外に排出された事が確認出来ましたから、もう心配無さそうですね」
昴はハンドルを握り、前を見据えたままりおに話しかけた。
「ああ、そういえば。今回はGPS付き腕時計も役に立ちましたね。アレ、今後も着けてくださいよ」
「えぇ~~…」
途端にりおは嫌な顔をした。バイタルに変化があった時だけとはいえ、居場所や自分の状態を知られたくない時だってある。
例えば……トイレとか。会議で居眠りしている時とか。
「おや、りお。今回あのタイミングで乗り込めたのはGPSのおかげですよ? 何か異論でも?」
いつもは細めている目を片目だけ開けると、昴はギロリとりおを睨む。
「……あ、アリマ…セン……」
「よろしい」
いつもの昴の笑顔に戻り、満足そうにほほ笑む。
それを見てりおは「やっぱりそうなるか……」とため息をついた。
……ッ……ッ…ブーッブーッブーッ
「ん?」
その時ふと、後部座席から微かな音が聞こえる。
「あ、あれ? スマホ鳴ってる……。私の、だ」
退院手続きの時に、邪魔だったスマホをバッグに投げ入れ、そのまま後部座席に置いてしまっていた。
ブーッブーッブッ......
「あ、切れたみたい。家に着いたら確認しなきゃ」
誰からかかってきた電話だろう——。
あのスマホは蘭やコナン、博士、哀、少年探偵団、安室からもかかってくる。
そして組織のメンバーも知っている番号だ。
組織の者と少年探偵団以外は、今日の退院を知っている。手続き等でバタバタするこの時間帯に連絡はしてこないだろう。
(そうなると……子どもたちか、もしくは組織の誰か……)
どちらにしても今回の入院の事は知られたくない。
出来るだけ早く折り返し連絡をして、電話の内容を聞いた方が良いだろう。
簡単な要求ならば答えるつもりでいた。
「『会いたい』というアポだったら、誰であろうと断ってください。家で少しゆっくりしましょう。
退院したからといって無理するな、とドクターから言われているでしょ?」
「ッ……はぁ~い…」
なんだ、お見通しか……とりおはため息をついた。
工藤邸に到着し荷物を下ろすと、りおは先ほどの着信を調べた。
「ッ! ベルモット‼」
履歴に残った名前を見て、りおはわずかに動揺する。今までベルモットの着信に対して出なかった事はほとんどないからだ。
「どうしました?」
スマホを見つめたまま動かないりおを見て、昴が声を掛けた。
「え、ああ。さっきの着信、ベルモットだったみたいで……。何て言って電話しようかと思って……」
焦りの色を見せるりおに、昴は安心させるかのように微笑んだ。
「知られたくない事があるからといって敏感になり過ぎですよ。
バッグに入れたまま気付かなかった、とでも言っておいたらどうでしょう。それくらい普通に良くある事でしょう?」
バッグに入れっぱなしだったのは事実ですしね、と昴がアドバイスした。
「そう、ね。そう言っておくわ」
何となく胸騒ぎを感じながら、りおは着信記録から発信した。
3回目のコールが鳴る前に「Hi」という、ベルモットの声が聞こえた。
「ラスティーです」
「ラスティー、電話に出ないからどうしたのかと思ったわ」
「買い物に出ていて……スマホをバッグに入れたまま忘れていたの。ちょっと疲れてウトウトしてたから、着信の音にも気付かなかったわ。ごめんなさい」
ラスティーの謝罪を聞いて、何でもないなら良いのよ、とベルモットは笑う。
「お疲れのところ悪いんだけど…今から会えないかしら?」
「今から?」
「ええ。前にジン達と使ったカフェ覚えてる? 完全個室の。あそこで30分後に」
いつもならこちらの都合を必ず訊くベルモットが、今日は有無を言わさぬ物言いで話を進めてくる。
どうやら拒否権は無いようだ。
「わ、分かったわ。今居る所からなら……間に合うわね。30分後にあのカフェで」
それじゃあ後で、と言われ電話は切れた。
「ベルモットと会うのですか?」
少し険しい顔をして昴が近づく。
「ええ。どうしても会いたいみたい。断るスキすら与えられなかった。ちょっと行ってくるだけから」
りおはそう言って昴の横をすり抜ける。
「待ちなさい。今日は家にいなさいと言ったこと、もう忘れましたか?」
口調は優しいが、顔は険しいまま昴は問いかけた。
「で、でも……ベルモットが会いたいって。
彼女、いつもは私の都合を訊いてくるのに、今日はそれすらなくて……。何かイヤな予感がするの。
きっと私と直接会って訊きたいこと、もしくは伝えたいことがあるのよ。だから、ちょっとだけ……会ってくるわ」
りおはフイッと顔を背け、リビングを出ようとした。
ガッ!
昴がりおの手首を掴む。
「ッ!」
りおが驚いて昴の方を向くと、そのままぎゅっと抱きしめられた。
「分かったよ……行ってきて良いから……。その代わり早く帰って来てくれ。
病室でキスはしたが…お前にこうして触れるのは4日ぶりなんだ。だから……」
昴は甘えるようにりおの肩に額をつけ、小さくつぶやいた。
「……うん。分かった。出来るだけ早く帰るから」
りおも昴の体に手を回して抱きつく。
入院中面会には来てくれていたとはいえ、夜は別々に過ごしていた。
きっとこの4日間りおを心配しながら、工藤邸で眠れぬ夜を過ごしていたのだろう。
昴(赤井)の遠回しな『一緒に居たい』アピールに、自然とりおの顔も綻ぶ。
「行ってきます」
昴の頬に軽くキスをすると、りおは工藤邸を後にした。
薬の副作用で酷いめまいと軽い意識混濁はあったものの、4日後には血液検査で基準値を下回り、ようやく退院の許可が下りる。
病院から工藤邸までのドライブは、りおにとって久しぶりに外の風を感じる楽しい時間だったのだが——
***
「ふ~。やっぱり病院の外は良いね。それだけで元気になる」
助手席でニコニコしながらりおは外の景色を眺めている。
「ふふふ。そんなこと言ったらドクターたちが気の毒ですよ」
確かにね~、と笑うりおを見て、昴も微笑む。
「まあ、聖水もおかしな薬じゃなくて良かったですね。常習性が有ったりすると厄介ですし……。
日本では無認可の薬でしたけど、海外では濃度は違えど治療薬として使っている国もあるのだとか。
今朝の血液検査でしっかり体外に排出された事が確認出来ましたから、もう心配無さそうですね」
昴はハンドルを握り、前を見据えたままりおに話しかけた。
「ああ、そういえば。今回はGPS付き腕時計も役に立ちましたね。アレ、今後も着けてくださいよ」
「えぇ~~…」
途端にりおは嫌な顔をした。バイタルに変化があった時だけとはいえ、居場所や自分の状態を知られたくない時だってある。
例えば……トイレとか。会議で居眠りしている時とか。
「おや、りお。今回あのタイミングで乗り込めたのはGPSのおかげですよ? 何か異論でも?」
いつもは細めている目を片目だけ開けると、昴はギロリとりおを睨む。
「……あ、アリマ…セン……」
「よろしい」
いつもの昴の笑顔に戻り、満足そうにほほ笑む。
それを見てりおは「やっぱりそうなるか……」とため息をついた。
……ッ……ッ…ブーッブーッブーッ
「ん?」
その時ふと、後部座席から微かな音が聞こえる。
「あ、あれ? スマホ鳴ってる……。私の、だ」
退院手続きの時に、邪魔だったスマホをバッグに投げ入れ、そのまま後部座席に置いてしまっていた。
ブーッブーッブッ......
「あ、切れたみたい。家に着いたら確認しなきゃ」
誰からかかってきた電話だろう——。
あのスマホは蘭やコナン、博士、哀、少年探偵団、安室からもかかってくる。
そして組織のメンバーも知っている番号だ。
組織の者と少年探偵団以外は、今日の退院を知っている。手続き等でバタバタするこの時間帯に連絡はしてこないだろう。
(そうなると……子どもたちか、もしくは組織の誰か……)
どちらにしても今回の入院の事は知られたくない。
出来るだけ早く折り返し連絡をして、電話の内容を聞いた方が良いだろう。
簡単な要求ならば答えるつもりでいた。
「『会いたい』というアポだったら、誰であろうと断ってください。家で少しゆっくりしましょう。
退院したからといって無理するな、とドクターから言われているでしょ?」
「ッ……はぁ~い…」
なんだ、お見通しか……とりおはため息をついた。
工藤邸に到着し荷物を下ろすと、りおは先ほどの着信を調べた。
「ッ! ベルモット‼」
履歴に残った名前を見て、りおはわずかに動揺する。今までベルモットの着信に対して出なかった事はほとんどないからだ。
「どうしました?」
スマホを見つめたまま動かないりおを見て、昴が声を掛けた。
「え、ああ。さっきの着信、ベルモットだったみたいで……。何て言って電話しようかと思って……」
焦りの色を見せるりおに、昴は安心させるかのように微笑んだ。
「知られたくない事があるからといって敏感になり過ぎですよ。
バッグに入れたまま気付かなかった、とでも言っておいたらどうでしょう。それくらい普通に良くある事でしょう?」
バッグに入れっぱなしだったのは事実ですしね、と昴がアドバイスした。
「そう、ね。そう言っておくわ」
何となく胸騒ぎを感じながら、りおは着信記録から発信した。
3回目のコールが鳴る前に「Hi」という、ベルモットの声が聞こえた。
「ラスティーです」
「ラスティー、電話に出ないからどうしたのかと思ったわ」
「買い物に出ていて……スマホをバッグに入れたまま忘れていたの。ちょっと疲れてウトウトしてたから、着信の音にも気付かなかったわ。ごめんなさい」
ラスティーの謝罪を聞いて、何でもないなら良いのよ、とベルモットは笑う。
「お疲れのところ悪いんだけど…今から会えないかしら?」
「今から?」
「ええ。前にジン達と使ったカフェ覚えてる? 完全個室の。あそこで30分後に」
いつもならこちらの都合を必ず訊くベルモットが、今日は有無を言わさぬ物言いで話を進めてくる。
どうやら拒否権は無いようだ。
「わ、分かったわ。今居る所からなら……間に合うわね。30分後にあのカフェで」
それじゃあ後で、と言われ電話は切れた。
「ベルモットと会うのですか?」
少し険しい顔をして昴が近づく。
「ええ。どうしても会いたいみたい。断るスキすら与えられなかった。ちょっと行ってくるだけから」
りおはそう言って昴の横をすり抜ける。
「待ちなさい。今日は家にいなさいと言ったこと、もう忘れましたか?」
口調は優しいが、顔は険しいまま昴は問いかけた。
「で、でも……ベルモットが会いたいって。
彼女、いつもは私の都合を訊いてくるのに、今日はそれすらなくて……。何かイヤな予感がするの。
きっと私と直接会って訊きたいこと、もしくは伝えたいことがあるのよ。だから、ちょっとだけ……会ってくるわ」
りおはフイッと顔を背け、リビングを出ようとした。
ガッ!
昴がりおの手首を掴む。
「ッ!」
りおが驚いて昴の方を向くと、そのままぎゅっと抱きしめられた。
「分かったよ……行ってきて良いから……。その代わり早く帰って来てくれ。
病室でキスはしたが…お前にこうして触れるのは4日ぶりなんだ。だから……」
昴は甘えるようにりおの肩に額をつけ、小さくつぶやいた。
「……うん。分かった。出来るだけ早く帰るから」
りおも昴の体に手を回して抱きつく。
入院中面会には来てくれていたとはいえ、夜は別々に過ごしていた。
きっとこの4日間りおを心配しながら、工藤邸で眠れぬ夜を過ごしていたのだろう。
昴(赤井)の遠回しな『一緒に居たい』アピールに、自然とりおの顔も綻ぶ。
「行ってきます」
昴の頬に軽くキスをすると、りおは工藤邸を後にした。