第5章 ~カルト集団~
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杖の装飾部分を、その男の肩に優しく当てた。
オオオォォォ——!!
信者たちが大歓声を上げた。
杖を当てられた男は——。
「あ、赤井さんが……次の…王!?」
コナンが驚いた顔をして、アウロラを見上げる。
女神の杖は赤井の肩に当てられ、シャランと音を立てた。
赤井は真っすぐアウロラの顔を見つめる。その視線から目を逸らす事無く、アウロラも赤井を見つめた。
アウロラは杖を再び天に掲げ、クルリと円を描くように回すと床に静かに置く。そのまま新しい王の前にひざまずき一礼した。
数秒置いて立ち上がると、赤井に近づく。
「新しい王に女神の祝福を……」
アウロラの左手は赤井の頬に触れる。そのままゆっくりと顔を近づけ口づけた。赤井も顔を上げ、アウロラの口づけを受け入れる。
長い長い女神の祝福だった。
さらなる歓声が信者たちから上がる。
「ま、待て待て待て待てッ!! 一体どういうことだ‼」
三柳が眉を吊り上げ、烈火のごとく声を上げた。
神聖な雰囲気をぶち壊す怒声に、二人は唇を離し三柳を見る。
「どうもこうもありません。私がこの男を王と決めただけの事。
生贄は…そう、司祭と三柳……あなた達です」
それを聞いて、司祭もツカツカと前に出る。
「な、何だこれは! こんな茶番あってたまるか! お前は偽女神だ‼ よくも…よくも我々をだましたなッ!
次の王は三柳様だ。この方が強い国を造って下さるんだ‼」
司祭は祭壇の一番前まで歩み出ると、信者たちに向かって声を張り上げる。
「この女は女神ではない! 偽物だ! この教団は私が造ったのだ。私に従わない者は即刻排除する‼」
その声を合図に、奥で待機していたボディーガード20数名が姿を現す。
状況が飲み込めない信者たちは明らかに動揺し、パニックになった。
さくら、赤井、コナンの3人の元にも、武器を手にしたボディーガード達が、じわじわと近づいて来る。
「コナンくん、こっち!」
さくらがコナンの体を引き寄せた。そのまま抱き上げ、出来るだけボディーガード達から距離を取る。それと同時に赤井の体を縛っていたロープがプチッと音を立てて切れた。両手が自由になった赤井は足元のロープも切り裂いた。
「さくら!」
赤井が持っていた物をさくらに投げ渡す。
パシッ!
うまくキャッチしたさくらは、すぐにそれを広げた。
「折りたたみナイフ!? 赤井さん…いつの間に…」
さくらは素早くコナンのロープを切る。
「説明はあと! コナンくんも戦える?」
「もちろん」
ふたりは顔を見合わせニッと笑った。
その間に赤井は襲ってきたボディーガード二人を倒し、信者に向かって声を張り上げた。
「王として皆に伝える! 全員頭を低くして床に伏せろ‼ 死にたくなかったらな‼」
「お、王のご命令だ…! み、みんな伏せろ!」
パニックになりかかっていた信者たちが、それを合図にみんな床に伏せる。
抵抗一つせずに床に寝ころぶ信者を前にして、ボディーガード達は戸惑っていた。
「さすが、秀一さん!」
さくらはボディーガードの腕の捻りながら、赤井のとっさの行動に感心した。コナンも笑顔でその様子を見る。
次々とボディーガード達を倒す三人の前に、男が近づいた。
「「ッ!」」
赤井とさくらが鋭い目を向ける。
ガタイの良い男が口角を上げ、不敵な笑みを浮かべていた。
手に持った警棒を自分の手のひらにペチペチと当てながら、祭壇の中ほどまで来ると立ち止まった。
「公園でお前を襲った時に助けに来た、メガネの男と違うな」
赤井の顔をジッと見てから、男はさくらに問いかける。
「……」
さくらは黙って男を睨んだ。赤井もまた、鋭い目を向けたままだ。
「そうやって自分の親衛隊に守ってもらっているのか。お前ほどの美貌なら、男は嫌でも寄ってくるんだろう?」
男は二人を挑発するように話しかける。しかし、二人の表情は変わらなかった。
(フン。二人共挑発には乗らんタイプか)
長年の経験から培われる知識で、男は二人の性格を分析する。
(冷静に物事を判断して、何手先も読むタイプだな。だが、このタイプは予想していた道筋と違った時に、総崩れになる事が多いんだよ!)
男は二人がコンビネーションで攻撃してくると読んだ。
男に近かったさくらが先に攻撃を仕掛ける。
連続で蹴りを繰り出したが、男は難なく避けた。さくらの蹴りを上手く体を捻って避けた男は、手刀で反撃する。
「くッ!」
さくらはそれを右手で受け流した。
男の手刀が流れたスキを狙い、今度は赤井が距離を詰め、男の脇腹めがけて蹴りを放つ。しかし男はそれを腕一本で払いのけた。
持っていた警棒で赤井の腹に一発食らわそうとしたが、左手で上手く動きを流した。
三人は間合いを取り、にらみ合う。
(男の方は左利き、女の方は右利きか)
今の攻撃で赤井とさくらの利き手を知った男は、今度はそれぞれの利き手を狙って攻撃を仕掛ける。
男の攻撃を受け止める手が、必ず利き手になるように、蹴りやパンチを仕掛けていく。
(俺の蹴りやパンチは重い。何度も受け止めるうちに腕の力が入らなくなる…)
男の思惑通り、利き手で攻撃を受け止める二人を見て、男は心の中でほくそ笑んでいた。
やがて左腕に違和感を感じた赤井は、男の攻撃を受け止めきれず、そのまま蹴り飛ばされてしまう。
ドカッ‼
「ぐぁッ!」
「秀一さん!」
蹴り飛ばされ、床に倒れ込んだ赤井はすぐに立ち上がろうと体を起こす。
だが視界がぼやけ、膝をついたまま立ち上がれない。
(ッ! 利き手がしびれる上に、足に力が……)
赤井はここにきて、誰よりも多く戦っていた。しかも今回は、かなりのダメージを負っている。
懸命に目を開け頭を振るが、目の前の景色がグラグラと揺れた。
男は赤井が戦闘不能になったと判断し、今度はじりじりとさくらを追い詰める。
(ッ! このままでは…さくら…が…)
赤井は隠し持っていた銃を構えた。
それを察知した男は、赤井の方へ視線を向ける。
「そんな状態で俺を撃てるか? 腕も目も……もう限界だろう?
外せばこの女か、もしくはあっちこっちに散らばっている信者に当たるかもしれんぞ」
男の言う通り、重い攻撃を何度も受け止めた赤井の左手は、すでに力が入らずブルブルと震えている。めまいも治まらず、照準どころか目の焦点すら定まらない。
「くっ!」
赤井は唇を噛む。
「そこで、女が痛めつけられるところを見ているがいい」
男は赤井を見てニヤリと笑った。
(これで助けてくれる者はいない。恐怖に震える女の顔が拝める)
男は視線をさくらへ向けた。
「!?」
男はさくらを見て驚く。
「な、何故だ。何故そんな穏やかな顔をしている!?」
男の予想に反し、さくらの顔はまるで本物の女神のように穏やかで美しかった。
男は動揺し、思わず一歩下がる。
「さくら!」
赤井がさくらの名を呼んだ。
その直後、赤井は右手に銃を持ち換え、さくらの元へ投げ渡す。
バシッ!
さくらはそれを左手で受け取る。グリップをしっかり握ったさくらの手は、流れるように狙いを付けた。
(女の利き手もしびれて動かないはずだ。銃を左手で受け取ったのがその証拠……。左手では、せいぜい威嚇射撃しか出来ないだろう)
銃が左手に握られているのを見て、男は躊躇することなく警棒を振り上げ、さくらに襲い掛かった。
パシュッ!
キュイィィン!
サイレンサーの付いた銃から発射された弾丸は、細い警棒の芯を的確にとらえる。警棒は男の後ろへと弾け飛んだ。
「ぐあぁぁ!」
銃弾が警棒の芯を捉えた衝撃は凄まじく、男の利き手はビリビリとしびれている。男は腕を押さえながらさくらを見た。
だが見間違いではなく、確かに利き手ではない方に銃を持っている。
「お前…まさか左手で俺の警棒を…?利き手ではない方で、あんな細い警棒の芯を捉えたのか?」
男は信じられないという顔をした。
「ええ。あなたは何か勘違いをしているようだけど……私、両利きなの。特に銃の命中率は左の方が若干高い」
「な…ッ! まさか…両利き…だと!?」
男は項垂れるとその場に膝をついた。警棒を弾かれてしまった為にすでに丸腰。利き手はしびれ、しばらく使い物にはならない。細い警棒の芯を的確に捉えられるほどの銃の名手が、自分に銃口を向けている。勝負は決まった。
オオオォォォ——!!
信者たちが大歓声を上げた。
杖を当てられた男は——。
「あ、赤井さんが……次の…王!?」
コナンが驚いた顔をして、アウロラを見上げる。
女神の杖は赤井の肩に当てられ、シャランと音を立てた。
赤井は真っすぐアウロラの顔を見つめる。その視線から目を逸らす事無く、アウロラも赤井を見つめた。
アウロラは杖を再び天に掲げ、クルリと円を描くように回すと床に静かに置く。そのまま新しい王の前にひざまずき一礼した。
数秒置いて立ち上がると、赤井に近づく。
「新しい王に女神の祝福を……」
アウロラの左手は赤井の頬に触れる。そのままゆっくりと顔を近づけ口づけた。赤井も顔を上げ、アウロラの口づけを受け入れる。
長い長い女神の祝福だった。
さらなる歓声が信者たちから上がる。
「ま、待て待て待て待てッ!! 一体どういうことだ‼」
三柳が眉を吊り上げ、烈火のごとく声を上げた。
神聖な雰囲気をぶち壊す怒声に、二人は唇を離し三柳を見る。
「どうもこうもありません。私がこの男を王と決めただけの事。
生贄は…そう、司祭と三柳……あなた達です」
それを聞いて、司祭もツカツカと前に出る。
「な、何だこれは! こんな茶番あってたまるか! お前は偽女神だ‼ よくも…よくも我々をだましたなッ!
次の王は三柳様だ。この方が強い国を造って下さるんだ‼」
司祭は祭壇の一番前まで歩み出ると、信者たちに向かって声を張り上げる。
「この女は女神ではない! 偽物だ! この教団は私が造ったのだ。私に従わない者は即刻排除する‼」
その声を合図に、奥で待機していたボディーガード20数名が姿を現す。
状況が飲み込めない信者たちは明らかに動揺し、パニックになった。
さくら、赤井、コナンの3人の元にも、武器を手にしたボディーガード達が、じわじわと近づいて来る。
「コナンくん、こっち!」
さくらがコナンの体を引き寄せた。そのまま抱き上げ、出来るだけボディーガード達から距離を取る。それと同時に赤井の体を縛っていたロープがプチッと音を立てて切れた。両手が自由になった赤井は足元のロープも切り裂いた。
「さくら!」
赤井が持っていた物をさくらに投げ渡す。
パシッ!
うまくキャッチしたさくらは、すぐにそれを広げた。
「折りたたみナイフ!? 赤井さん…いつの間に…」
さくらは素早くコナンのロープを切る。
「説明はあと! コナンくんも戦える?」
「もちろん」
ふたりは顔を見合わせニッと笑った。
その間に赤井は襲ってきたボディーガード二人を倒し、信者に向かって声を張り上げた。
「王として皆に伝える! 全員頭を低くして床に伏せろ‼ 死にたくなかったらな‼」
「お、王のご命令だ…! み、みんな伏せろ!」
パニックになりかかっていた信者たちが、それを合図にみんな床に伏せる。
抵抗一つせずに床に寝ころぶ信者を前にして、ボディーガード達は戸惑っていた。
「さすが、秀一さん!」
さくらはボディーガードの腕の捻りながら、赤井のとっさの行動に感心した。コナンも笑顔でその様子を見る。
次々とボディーガード達を倒す三人の前に、男が近づいた。
「「ッ!」」
赤井とさくらが鋭い目を向ける。
ガタイの良い男が口角を上げ、不敵な笑みを浮かべていた。
手に持った警棒を自分の手のひらにペチペチと当てながら、祭壇の中ほどまで来ると立ち止まった。
「公園でお前を襲った時に助けに来た、メガネの男と違うな」
赤井の顔をジッと見てから、男はさくらに問いかける。
「……」
さくらは黙って男を睨んだ。赤井もまた、鋭い目を向けたままだ。
「そうやって自分の親衛隊に守ってもらっているのか。お前ほどの美貌なら、男は嫌でも寄ってくるんだろう?」
男は二人を挑発するように話しかける。しかし、二人の表情は変わらなかった。
(フン。二人共挑発には乗らんタイプか)
長年の経験から培われる知識で、男は二人の性格を分析する。
(冷静に物事を判断して、何手先も読むタイプだな。だが、このタイプは予想していた道筋と違った時に、総崩れになる事が多いんだよ!)
男は二人がコンビネーションで攻撃してくると読んだ。
男に近かったさくらが先に攻撃を仕掛ける。
連続で蹴りを繰り出したが、男は難なく避けた。さくらの蹴りを上手く体を捻って避けた男は、手刀で反撃する。
「くッ!」
さくらはそれを右手で受け流した。
男の手刀が流れたスキを狙い、今度は赤井が距離を詰め、男の脇腹めがけて蹴りを放つ。しかし男はそれを腕一本で払いのけた。
持っていた警棒で赤井の腹に一発食らわそうとしたが、左手で上手く動きを流した。
三人は間合いを取り、にらみ合う。
(男の方は左利き、女の方は右利きか)
今の攻撃で赤井とさくらの利き手を知った男は、今度はそれぞれの利き手を狙って攻撃を仕掛ける。
男の攻撃を受け止める手が、必ず利き手になるように、蹴りやパンチを仕掛けていく。
(俺の蹴りやパンチは重い。何度も受け止めるうちに腕の力が入らなくなる…)
男の思惑通り、利き手で攻撃を受け止める二人を見て、男は心の中でほくそ笑んでいた。
やがて左腕に違和感を感じた赤井は、男の攻撃を受け止めきれず、そのまま蹴り飛ばされてしまう。
ドカッ‼
「ぐぁッ!」
「秀一さん!」
蹴り飛ばされ、床に倒れ込んだ赤井はすぐに立ち上がろうと体を起こす。
だが視界がぼやけ、膝をついたまま立ち上がれない。
(ッ! 利き手がしびれる上に、足に力が……)
赤井はここにきて、誰よりも多く戦っていた。しかも今回は、かなりのダメージを負っている。
懸命に目を開け頭を振るが、目の前の景色がグラグラと揺れた。
男は赤井が戦闘不能になったと判断し、今度はじりじりとさくらを追い詰める。
(ッ! このままでは…さくら…が…)
赤井は隠し持っていた銃を構えた。
それを察知した男は、赤井の方へ視線を向ける。
「そんな状態で俺を撃てるか? 腕も目も……もう限界だろう?
外せばこの女か、もしくはあっちこっちに散らばっている信者に当たるかもしれんぞ」
男の言う通り、重い攻撃を何度も受け止めた赤井の左手は、すでに力が入らずブルブルと震えている。めまいも治まらず、照準どころか目の焦点すら定まらない。
「くっ!」
赤井は唇を噛む。
「そこで、女が痛めつけられるところを見ているがいい」
男は赤井を見てニヤリと笑った。
(これで助けてくれる者はいない。恐怖に震える女の顔が拝める)
男は視線をさくらへ向けた。
「!?」
男はさくらを見て驚く。
「な、何故だ。何故そんな穏やかな顔をしている!?」
男の予想に反し、さくらの顔はまるで本物の女神のように穏やかで美しかった。
男は動揺し、思わず一歩下がる。
「さくら!」
赤井がさくらの名を呼んだ。
その直後、赤井は右手に銃を持ち換え、さくらの元へ投げ渡す。
バシッ!
さくらはそれを左手で受け取る。グリップをしっかり握ったさくらの手は、流れるように狙いを付けた。
(女の利き手もしびれて動かないはずだ。銃を左手で受け取ったのがその証拠……。左手では、せいぜい威嚇射撃しか出来ないだろう)
銃が左手に握られているのを見て、男は躊躇することなく警棒を振り上げ、さくらに襲い掛かった。
パシュッ!
キュイィィン!
サイレンサーの付いた銃から発射された弾丸は、細い警棒の芯を的確にとらえる。警棒は男の後ろへと弾け飛んだ。
「ぐあぁぁ!」
銃弾が警棒の芯を捉えた衝撃は凄まじく、男の利き手はビリビリとしびれている。男は腕を押さえながらさくらを見た。
だが見間違いではなく、確かに利き手ではない方に銃を持っている。
「お前…まさか左手で俺の警棒を…?利き手ではない方で、あんな細い警棒の芯を捉えたのか?」
男は信じられないという顔をした。
「ええ。あなたは何か勘違いをしているようだけど……私、両利きなの。特に銃の命中率は左の方が若干高い」
「な…ッ! まさか…両利き…だと!?」
男は項垂れるとその場に膝をついた。警棒を弾かれてしまった為にすでに丸腰。利き手はしびれ、しばらく使い物にはならない。細い警棒の芯を的確に捉えられるほどの銃の名手が、自分に銃口を向けている。勝負は決まった。