第5章 ~カルト集団~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜——
昴はコナンと話した内容をりおに伝えた。
「つまり、都内の連続殺人犯が私をつけ狙っている、という事?」
「ええ、そうです。3人目の犠牲者が出て以降、あなたがつけ狙われていますし、その間新たな犠牲者が出ていない。3日周期であった殺人がピタリと止んでいます。
亡くなった3人の女性はカラーコンタクトだったとはいえ、琥珀色の瞳をしていた。
その事からも、次のターゲットはあなたと考えるのが妥当でしょう」
昴は淡々と説明する。確かにそう考えるとすべての辻妻が合う。
「でも、その《琥珀色の瞳を持つ女性》を探している奴らは何者なんでしょう? なんのためにその女性を探しているのかしら?」
「現時点ではそれが分かっていません。ただ、今回は組織が絡んでいる事は無いようです。
また、オドゥムもあなたの顔を知っていますから、人違いで先の女性を殺害したとは考えられません。今回は無関係でしょう。
全く別の誰かがあなたを狙っている…と考えるべきでしょうね」
昴は腕を組み、目を閉じた。相手が誰であろうとりおが狙われている事に変わりはない。
「りお、明日から私が大学まで送り迎えをします。構内でもできるだけ研究室から離れず、一人きりにならないようにしてください」
昴の提案にりおは「えっ」と声を上げた。
「ちょ、ちょっと待って。大学への送り迎えって……。大学は人目も多いし、それだけはちょっと……」
遠回しに送迎はいらないと昴に提案するも、彼の目は冷たくりおを見る。
「この期に及んでまだそんなことを言っているのですか? 先日の約束はどうなったんです? 一人で行動しないと、あれだけ言い聞かせたでしょう」
ツカツカとりおに近づき、その顔を見下ろす。かなり怒っているようだ。
「そ、それはそうなんだけど……目立ちすぎるのよ! 送迎の代わりにGPSでも発信機でも何でも付けて良いから。
メールもこまめにするし……。それではダメ?」
代替案を出され、昴はしばし考え込む。
確かに送迎が出来れば、自分はりおと接する時間が増えるが、結局彼女が大学にいる間は、どうしたって離れなければならない。それならば。
GPSや発信機をつけて、いつでもりおの位置を把握できていた方が得策ではないか——。
「分かりました。その条件で飲みましょう。
あなたの腕時計にGPSを付けさせてもらいます。さらにあなたのバイタルも、こちらで把握できるようにしておきます。良いですね?」
「ええ。それなら大丈夫」
お互い妥協点を見出し、りおはホッとした表情になる。
(あとは犯人の正体を暴くだけ。だが、なかなかしっぽを出さない。どうしたものか……)
昴は今までの経緯を含め、安室に連絡を入れることにした。
その日の深夜———
バーボンはジンに呼び出され、組織のアジトに来ていた。
ジンの部屋へ入ると、彼はソファーに深く腰掛け、タバコをふかしている。煙が充満する部屋に入り、バーボンは思わず「ゴホッ」と咳をした。
「遅い時間に呼び出してすまねぇな、バーボン」
珍しく殊勝な事を言うジンに、バーボンは「いえ」と短く返事をした。
「ラスティーと……何かあったようですね」
「フン……ベルモット(から)か?」
「ええ」
「チッ! あの女……!」
余計な事を言いやがって……とジンが吐き捨てるようにつぶやく。
「ずいぶんとベルモットの怒りをかったようじゃないですか。普段冷静なあなたが珍しい。……あなたにとってラスティーは何なのですか?」
以前から気になっていたことを、バーボンは訊ねた。
「さあな。ただ、美しいものは汚したい。そんなところか」
ジンはやや目を細め、めんどくさそうに答えた。
「ヤツのスキルは組織にとっては必要不可欠。その上、あの容姿だ。どんな任務であろうとヤツはすべてパーフェクトにこなすだろう。だが、そういうカンペキなヤツほど壊したり汚したりしてみたい……と思うのは、俺だけじゃあ、ないはずだぜ」
タバコの吸い口を噛み潰し、ジンはニヤリと笑う。
かつて安室も力尽くでさくらを自分の物にしようとしたことがある。もちろん、ジンとは違い、壊したり汚したりしたかったわけではない。純粋に彼女を愛してしまったからだ。
時に、憎むべき相手として。
そして時に、負けられないライバルとして。
《赤井秀一》という男から、彼女を奪ってしまいたかった。
だが、結果だけ見ればジンの行為と何ら変わりはない。その事を指摘された気がして、安室は奥歯を噛みしめた。
「ところが最近、その大事なモンをつけ狙う悪い虫がいるようだ」
ジンは安室の腹の中の事などまったく気にも留めず、ポケットから1枚のカードを出した。
「コイツは俺が囲っている情報屋だ。さっき連絡が来て、ラスティーをつけ狙うヤツの情報を手に入れたらしい。裏が取れたら会いたいと言ってきた。
だが俺は、明後日からしばらく日本を離れる。先日お前に調べてもらった相手と会うためにな。
代わりといっちゃあ何だが、その情報屋と会って話を聞いてきて欲しい。その後の判断もお前にすべて任せる」
手渡されたカードには《深/ふかし》という名と連絡先が書かれていた。
「分かりました」
バーボンは静かに返事をした。
「何か分かったら、ラスティーにもお前から連絡してやれ。今は俺の顔(ツラ)など見たくもないだろうからな」
ジンは表情一つ変えず、口にくわえたタバコをふかしていた。