第5章 ~カルト集団~
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あれから一週間——
先週と同じく、18時ちょうどに平永実代が探偵事務所にやってきた。
「で。調査の結果いかがでしたか?」
ソファーに座った実代は、優しげに小五郎に微笑みかける。
「身辺調査・行動確認。どれも実施しましたが、何ら怪しい所はありません。彼女には現在付き合っている男性もいます。
あなたの恋人と連絡を取ったり、会ったりした実績もありませんし、接点も見つかりませんでした。彼女に二股や不貞の事実はありません」
調査資料の入った大きな封筒を実代に手渡し、小五郎は一週間の調査報告をした。
「そうですか……。では、私の勘違いだったのかもしれません。この資料を彼にも見せて、真相を訊ねてみたいと思います」
先週同様淡々と話す実代の様子に、さすがの小五郎もおかしいと気付いた。
「ちょっと待ってください。そのお嬢さんには娘も世話になっている。あらぬ疑いをかけられてこのまま引き下がるわけには……!」
小五郎は眉間にしわを寄せ、不快感をあらわにするが実代は全く動じない。
「あら、毛利探偵ともあろうお方が、仕事とプライベートを混同なさるのですか?
『火のない所に煙は立たぬ』と申しますでしょ? あなたの知らないところで……彼女は裏の顔があるのかもしれませんよ?」
「ッ!」
フフッと笑う実代の顔は、逆に恐ろしくさえ感じた。
(さくらさんの裏の顔……この女…さくらさんの正体を知っているのか? それとも……ただ、うそぶいているだけか?)
小五郎の隣に座っていたコナンの顔も険しくなる。
「とりあえず、依頼を果たしてくださってありがとうございました。これ……少ないですけど」
実代はそういって、バッグから厚みのある封筒を取り出し、テーブルに置いた。
「それでは。私はこれで」
毛利に軽く会釈をして、実代はスッと立ち上がる。バッグを肩にかけ、事務所を出て行った。
「クッソ!!」
ダンッ!!
小五郎は強くテーブルを叩いた。
「なんか分かんねーけど胸糞わりぃ……。今日はこれで店じまいだ! 飲みに行ってくる!」
封筒の中身も確かめず、ズボンのポケットに手を突っ込むと、小五郎は事務所を出て行く。
後に残された蘭とコナンも、釈然としないまま小五郎を見送った。
その日の夜遅く———
怪しい黒い影が二つ、住宅地に現れた。
一人はガタイが良く、大柄で筋肉質。もう一人は中肉中背でやや小柄。二人共男性のようだ。
小柄な方の影の手には、さくらの写真が付けられた資料を持っている。
「調査資料に書かれている住所はここ…」
黒い影たちはキョロキョロと周辺を見回した。
だがそこに建物は無い。数か月前にあった放火によって建物は全焼し、今は更地になっていた。
「チッ!!」
影の一人が小さく舌打ちをした。もう一人のガタイの良い影は、何かに気付いたのかキョロキョロしている。
「ガセネタとあれば長居は無用。すぐに退散しましょう」
鋭い視線を周囲に送りながら、二人はその場を立ち去った。
「……ふぅ~~。バレたかと思った……」
コナンが道の陰から姿を現す。胸元に手を当てて、大きく息を吐き出した。
資料を手にしたその夜に、必ず誰か来ると読んでいたコナンは、コッソリ探偵事務所を抜け出して張り込みをしていた。ガタイの良い方は気配に敏感らしく、危うく存在に気付かれるところだった。
(にしても、さくらさんが未だに狙われてるってのは、間違いないようだ)
しかも今回現れたのは二人。さらに探偵事務所に来た女も含めれば、最低でも三人以上のグループであることが確定した。
(厄介な相手じゃなきゃ良いんだけど……)
コナンは影が立ち去った方向を見つめ、グッと奥歯を噛みしめた。
***
連続殺人犯を追う捜査一課では、目暮警部を囲んで何やら話し合っている。
「で、鑑識から上がってきた情報というのは何だね?」
目暮警部が高木刑事に向かって訊ねた。
「そ、それが……事件に関係あるかどうかまだわからないのですが……」
高木は後頭部に手を当てて、申し訳なさそうに報告書と、ある資料をデスクに並べた。
「三人の被害者なんですが、どの女性もコンタクトレンズをしていました」
「それは先日の報告で上がって来てたじゃない。でも、世の中にコンタクトをしている人なんて何人いると思って……」
「それが、ただのコンタクトレンズじゃないんですよ」
意義を申し立てようとした佐藤の言葉を遮るように、高木が報告書に書かれた事を説明した。
「被害女性が付けていたコンタクトレンズ、どれもカラコンだったんです」
「カラコン?」
目暮警部は良く分からないと言いたげに、眉を顰める。
「瞳の色を変えるコンタクトレンズです。若い子に人気なんですが、最近では30代40代でも付ける人がいるんですよ」
高木は目暮が分かるように説明を付け加えた。それでも、目暮の眉間に刻まれたシワはそのままだ。
「なるほど……。だがそのカラコンとやらをする若者も多いのだろう? 被害女性の共通した特徴と言えるのか?」
もっともな指摘を聞いて、高木の顔もやや自信を失う。
「ですよね~。ただ、これを見てください」
報告書と共にデスクに置かれた資料を広げる。
「一人目の女性が付けていたカラーが《ハニーゴールド》、二人目が《キャラメルゴールド》、三人目が《ハニーブラウン》。メーカーによって若干の違いがあるのですが……」
それぞれのカラーが掲載された資料を広げ、三つの色を見比べる。
「こ、これは…」
並べたカラーコンタクトの色見本を見て、そこにいた刑事全員が目を見張った。
「どれも《ハニー》とか《ゴールド》とかの名が付くだけあって、金色もしくははちみつ色に近いわね…。強いて一言で表現すれば琥珀色? 最近のカラコンはたくさんの色があるのに、三人とも同じような色って……。偶然としてしまうには、ちょっと無理がある気がするわ」
佐藤はデスクに両手をつくと、何かを思案するように、それぞれのカラーをジッと見つめた。
二日後——。
コナンが再び工藤邸に顔を出した。
さくらには、『毛利探偵がさくらの身辺調査を依頼された』という話を伝えておいたので、小五郎が張り込みなどをしている間、大学などではそれ相応の対応をしていたようだ。
昴の方も、あれから《平永実代》という女を調べていた。
二日前には、調査結果を手にして探偵事務所を出た実代を尾行した。だが、彼女が一度商社ビルに戻ったところを確認したものの、ビルから出て来た姿を確認できなかった。
念のため翌日商社に問い合わせたが、《平永実代》という社員はいないことが分かった。
その後も実代の足取りを調べようとしたが、さくらから『ジンも自分をつけ狙う人物を調べているから、あまり深追いしないで』と言われ、思うように調査できていない。
コナンの来訪は、何かしら情報を得られたのではと期待していた。
「さっき高木刑事と会ったんだ。そこで新しい情報を聞いたよ」
ダイニングに入るとすぐ、コナンは昴に声をかけた。
「新しい情報?」
期待通りの言葉に昴の口角が上がる。
コナンは今しがた高木から聞き出した、カラーコンタクトの事を昴に説明した。
「さくらさんの瞳はアンバー……。殺された女性たちが付けていたカラコンと同じ《金色》とも《はちみつ色》ともいえる。
もしかして、さくらさんをつけ狙っている奴らって、都内の連続殺人犯なんじゃないかな」
「…ッ!」
予期せぬ敵の登場に、昴は眉を顰める。さくらの命を狙う輩が現れたということなのだろうか?
「でも、その犯人。目的は殺人じゃ無いと思う……。だからさくらさんも、命を狙われているわけじゃないと思うんだよね」
「⁉」
コナンの推理に昴は目を見開いた。
「おっちゃんが手渡した身辺調査書……。さくらさんの経歴や家族構成は、公安が作った偽情報だったから手は加えなかったんだけど、現住所の欄を書き換えておいたんだよね。
前に昴さんが住んでた《旧木馬荘》の住所を書いておいたんだ」
「! あそこは今、更地だぞ」
いつもの事だがこのボウヤの頭は良く回る。とっさにそこまで手を回しているとは。昴はニヤリと笑った。
「うん。調査書を渡した日の夜、その更地の近くで見張ってたんだ。
そしたら怪しい人物が二人、おっちゃんが手渡した資料を持って現れたんだよ。
コッソリ発信機を取り付けるつもりだったけど、そのうちの一人がやたら気配に敏感で、つけ損ねちゃった」
コナンは頭を掻きながら残念そうに笑う。それを見て、昴は呆れた顔をした。
「君も、さくらと同じで無茶ばかりするな」
「へへへ~」
「笑ってごまかすところもそっくりだ」
「…は…はは…は…」
ごまかしきれなくなって、コナンの顔が引きつった。
「確かに最初から殺す事が目的なら、ターゲットのねぐらと、生活パターンを少し探れば良いだけの事。詳細な身辺調査など不要だ。奴らはあえて面倒な身辺調査をしている。となると……目的は《拉致》か?」
あまり突っついても可哀想だと思い、昴は本題に入る。
「うん。ボクもそう思う。拉致して家族から早期に通報される可能性があるか……とか、夜襲うなら家に同居家族は居るか……とかね。そのために、さくらさんの詳細な調査が必要だったんだよ」
小さな名探偵は確信を得た様に昴を見た。
「つまり——その連続殺人犯たちは、拉致目的で《琥珀色の瞳を持つ女性》を探してる——って考えるのはどう?」
「なるほど。殺された女性たちは《琥珀の瞳を持つ女性》として拉致しようとしたものの、実際はコンタクトレンズで瞳の色を変えているだけだった、ということか」
「うん。接触して拉致しようとしたけど、裸眼は普通の日本人のカラー。姿を見られたので仕方なく殺害したって事じゃないかな」
バラバラだった事件が少しずつ一つに繋がっていく。さすがに犯人たちも、これ以上人を殺すわけにはいかないと思ったのだろう。
何かのきっかけで、さくらの瞳の色に気付いた。彼女のカラーがコンタクトでは無い事と、確実に拉致する方法を探る為、尾行と盗撮を行ったのではないだろうか。
「あとはなぜ、奴らが琥珀色の瞳にこだわるのか、だな。それが分かれば、奴らの正体もおのずと分かるかもしれん」
昴の言葉に、コナンも小さくうなずいた。
先週と同じく、18時ちょうどに平永実代が探偵事務所にやってきた。
「で。調査の結果いかがでしたか?」
ソファーに座った実代は、優しげに小五郎に微笑みかける。
「身辺調査・行動確認。どれも実施しましたが、何ら怪しい所はありません。彼女には現在付き合っている男性もいます。
あなたの恋人と連絡を取ったり、会ったりした実績もありませんし、接点も見つかりませんでした。彼女に二股や不貞の事実はありません」
調査資料の入った大きな封筒を実代に手渡し、小五郎は一週間の調査報告をした。
「そうですか……。では、私の勘違いだったのかもしれません。この資料を彼にも見せて、真相を訊ねてみたいと思います」
先週同様淡々と話す実代の様子に、さすがの小五郎もおかしいと気付いた。
「ちょっと待ってください。そのお嬢さんには娘も世話になっている。あらぬ疑いをかけられてこのまま引き下がるわけには……!」
小五郎は眉間にしわを寄せ、不快感をあらわにするが実代は全く動じない。
「あら、毛利探偵ともあろうお方が、仕事とプライベートを混同なさるのですか?
『火のない所に煙は立たぬ』と申しますでしょ? あなたの知らないところで……彼女は裏の顔があるのかもしれませんよ?」
「ッ!」
フフッと笑う実代の顔は、逆に恐ろしくさえ感じた。
(さくらさんの裏の顔……この女…さくらさんの正体を知っているのか? それとも……ただ、うそぶいているだけか?)
小五郎の隣に座っていたコナンの顔も険しくなる。
「とりあえず、依頼を果たしてくださってありがとうございました。これ……少ないですけど」
実代はそういって、バッグから厚みのある封筒を取り出し、テーブルに置いた。
「それでは。私はこれで」
毛利に軽く会釈をして、実代はスッと立ち上がる。バッグを肩にかけ、事務所を出て行った。
「クッソ!!」
ダンッ!!
小五郎は強くテーブルを叩いた。
「なんか分かんねーけど胸糞わりぃ……。今日はこれで店じまいだ! 飲みに行ってくる!」
封筒の中身も確かめず、ズボンのポケットに手を突っ込むと、小五郎は事務所を出て行く。
後に残された蘭とコナンも、釈然としないまま小五郎を見送った。
その日の夜遅く———
怪しい黒い影が二つ、住宅地に現れた。
一人はガタイが良く、大柄で筋肉質。もう一人は中肉中背でやや小柄。二人共男性のようだ。
小柄な方の影の手には、さくらの写真が付けられた資料を持っている。
「調査資料に書かれている住所はここ…」
黒い影たちはキョロキョロと周辺を見回した。
だがそこに建物は無い。数か月前にあった放火によって建物は全焼し、今は更地になっていた。
「チッ!!」
影の一人が小さく舌打ちをした。もう一人のガタイの良い影は、何かに気付いたのかキョロキョロしている。
「ガセネタとあれば長居は無用。すぐに退散しましょう」
鋭い視線を周囲に送りながら、二人はその場を立ち去った。
「……ふぅ~~。バレたかと思った……」
コナンが道の陰から姿を現す。胸元に手を当てて、大きく息を吐き出した。
資料を手にしたその夜に、必ず誰か来ると読んでいたコナンは、コッソリ探偵事務所を抜け出して張り込みをしていた。ガタイの良い方は気配に敏感らしく、危うく存在に気付かれるところだった。
(にしても、さくらさんが未だに狙われてるってのは、間違いないようだ)
しかも今回現れたのは二人。さらに探偵事務所に来た女も含めれば、最低でも三人以上のグループであることが確定した。
(厄介な相手じゃなきゃ良いんだけど……)
コナンは影が立ち去った方向を見つめ、グッと奥歯を噛みしめた。
***
連続殺人犯を追う捜査一課では、目暮警部を囲んで何やら話し合っている。
「で、鑑識から上がってきた情報というのは何だね?」
目暮警部が高木刑事に向かって訊ねた。
「そ、それが……事件に関係あるかどうかまだわからないのですが……」
高木は後頭部に手を当てて、申し訳なさそうに報告書と、ある資料をデスクに並べた。
「三人の被害者なんですが、どの女性もコンタクトレンズをしていました」
「それは先日の報告で上がって来てたじゃない。でも、世の中にコンタクトをしている人なんて何人いると思って……」
「それが、ただのコンタクトレンズじゃないんですよ」
意義を申し立てようとした佐藤の言葉を遮るように、高木が報告書に書かれた事を説明した。
「被害女性が付けていたコンタクトレンズ、どれもカラコンだったんです」
「カラコン?」
目暮警部は良く分からないと言いたげに、眉を顰める。
「瞳の色を変えるコンタクトレンズです。若い子に人気なんですが、最近では30代40代でも付ける人がいるんですよ」
高木は目暮が分かるように説明を付け加えた。それでも、目暮の眉間に刻まれたシワはそのままだ。
「なるほど……。だがそのカラコンとやらをする若者も多いのだろう? 被害女性の共通した特徴と言えるのか?」
もっともな指摘を聞いて、高木の顔もやや自信を失う。
「ですよね~。ただ、これを見てください」
報告書と共にデスクに置かれた資料を広げる。
「一人目の女性が付けていたカラーが《ハニーゴールド》、二人目が《キャラメルゴールド》、三人目が《ハニーブラウン》。メーカーによって若干の違いがあるのですが……」
それぞれのカラーが掲載された資料を広げ、三つの色を見比べる。
「こ、これは…」
並べたカラーコンタクトの色見本を見て、そこにいた刑事全員が目を見張った。
「どれも《ハニー》とか《ゴールド》とかの名が付くだけあって、金色もしくははちみつ色に近いわね…。強いて一言で表現すれば琥珀色? 最近のカラコンはたくさんの色があるのに、三人とも同じような色って……。偶然としてしまうには、ちょっと無理がある気がするわ」
佐藤はデスクに両手をつくと、何かを思案するように、それぞれのカラーをジッと見つめた。
二日後——。
コナンが再び工藤邸に顔を出した。
さくらには、『毛利探偵がさくらの身辺調査を依頼された』という話を伝えておいたので、小五郎が張り込みなどをしている間、大学などではそれ相応の対応をしていたようだ。
昴の方も、あれから《平永実代》という女を調べていた。
二日前には、調査結果を手にして探偵事務所を出た実代を尾行した。だが、彼女が一度商社ビルに戻ったところを確認したものの、ビルから出て来た姿を確認できなかった。
念のため翌日商社に問い合わせたが、《平永実代》という社員はいないことが分かった。
その後も実代の足取りを調べようとしたが、さくらから『ジンも自分をつけ狙う人物を調べているから、あまり深追いしないで』と言われ、思うように調査できていない。
コナンの来訪は、何かしら情報を得られたのではと期待していた。
「さっき高木刑事と会ったんだ。そこで新しい情報を聞いたよ」
ダイニングに入るとすぐ、コナンは昴に声をかけた。
「新しい情報?」
期待通りの言葉に昴の口角が上がる。
コナンは今しがた高木から聞き出した、カラーコンタクトの事を昴に説明した。
「さくらさんの瞳はアンバー……。殺された女性たちが付けていたカラコンと同じ《金色》とも《はちみつ色》ともいえる。
もしかして、さくらさんをつけ狙っている奴らって、都内の連続殺人犯なんじゃないかな」
「…ッ!」
予期せぬ敵の登場に、昴は眉を顰める。さくらの命を狙う輩が現れたということなのだろうか?
「でも、その犯人。目的は殺人じゃ無いと思う……。だからさくらさんも、命を狙われているわけじゃないと思うんだよね」
「⁉」
コナンの推理に昴は目を見開いた。
「おっちゃんが手渡した身辺調査書……。さくらさんの経歴や家族構成は、公安が作った偽情報だったから手は加えなかったんだけど、現住所の欄を書き換えておいたんだよね。
前に昴さんが住んでた《旧木馬荘》の住所を書いておいたんだ」
「! あそこは今、更地だぞ」
いつもの事だがこのボウヤの頭は良く回る。とっさにそこまで手を回しているとは。昴はニヤリと笑った。
「うん。調査書を渡した日の夜、その更地の近くで見張ってたんだ。
そしたら怪しい人物が二人、おっちゃんが手渡した資料を持って現れたんだよ。
コッソリ発信機を取り付けるつもりだったけど、そのうちの一人がやたら気配に敏感で、つけ損ねちゃった」
コナンは頭を掻きながら残念そうに笑う。それを見て、昴は呆れた顔をした。
「君も、さくらと同じで無茶ばかりするな」
「へへへ~」
「笑ってごまかすところもそっくりだ」
「…は…はは…は…」
ごまかしきれなくなって、コナンの顔が引きつった。
「確かに最初から殺す事が目的なら、ターゲットのねぐらと、生活パターンを少し探れば良いだけの事。詳細な身辺調査など不要だ。奴らはあえて面倒な身辺調査をしている。となると……目的は《拉致》か?」
あまり突っついても可哀想だと思い、昴は本題に入る。
「うん。ボクもそう思う。拉致して家族から早期に通報される可能性があるか……とか、夜襲うなら家に同居家族は居るか……とかね。そのために、さくらさんの詳細な調査が必要だったんだよ」
小さな名探偵は確信を得た様に昴を見た。
「つまり——その連続殺人犯たちは、拉致目的で《琥珀色の瞳を持つ女性》を探してる——って考えるのはどう?」
「なるほど。殺された女性たちは《琥珀の瞳を持つ女性》として拉致しようとしたものの、実際はコンタクトレンズで瞳の色を変えているだけだった、ということか」
「うん。接触して拉致しようとしたけど、裸眼は普通の日本人のカラー。姿を見られたので仕方なく殺害したって事じゃないかな」
バラバラだった事件が少しずつ一つに繋がっていく。さすがに犯人たちも、これ以上人を殺すわけにはいかないと思ったのだろう。
何かのきっかけで、さくらの瞳の色に気付いた。彼女のカラーがコンタクトでは無い事と、確実に拉致する方法を探る為、尾行と盗撮を行ったのではないだろうか。
「あとはなぜ、奴らが琥珀色の瞳にこだわるのか、だな。それが分かれば、奴らの正体もおのずと分かるかもしれん」
昴の言葉に、コナンも小さくうなずいた。