第5章 ~カルト集団~
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空は黒い雲が覆い、時折ザーザーと冷たい雨が降っていた。工藤邸前の通りには人影もなく、住宅街はひっそりとしている。
二人が長野旅行から帰った数日後——。
宅配で届いたお土産も皆に配り終え、自分達用に購入したワインは、クリスマスに二人で開けようとキッチンの戸棚に飾ってある。
それを見るたびに、二人は長野での思い出話に花を咲かせた。旅行後は、良く笑うようになったりおを見て、ようやく昴もホッと息をつく日々を過ごしていた。
組織による一連の爆破事件は、一気に二十年分の事実を知る結果となり、りおが受けた衝撃は赤井でなくとも理解できる。
コナンが旅行を勧めたのも、そういった事情を知っていたからに他ならない。
東都を離れ、雄大な景色と美味しい山の幸、そして何よりも赤井(昴)と二人で過ごした三日間は、りおにとって必要な時間だったのだろう。
ただ、カーディナルの死後はそれが引き金になったのか、時々記憶のフラッシュバックが起きるようになった。
主に思い出されるのは、両親と死別後のことが多く、冴島や祖父母との小さな出来事ばかりだ。
ふとしたきっかけで、当時の事を割とリアルに思い出すようだが、赤井がそばに居るため大きな発作に繋がる事も無く、りおの幼い日々の思い出話を赤井も楽しそうに聞いている。
ゆっくりゆっくり
りおのペースで心を整えていけば良い。いずれ思い出すであろう壮絶な記憶。
父と母を失ったあの瞬間——
彼女の見たもの、聴いたもの、感じたもの……
もし思い出すのならば、そのすべてを受け入れられるくらいには心が癒され、準備が整っていて欲しい。
今、赤井がりおに願う事はただ一つ。
その日が来るまで、どうか両親の事は思い出さないでくれ———。祈るような気持ちで、昴(赤井)はりおの顔を見つめるのだった。
***
「今日は雨かぁ…」
工藤邸の窓を叩く雨粒を見て、りおはため息をついた。
「午後は警視庁に行こうと思ってたんだけどな……」
体調が整ってからで良い、と降谷に言われていた報告書も出来上がり、久しぶりに午後から登庁する予定でいた。
「あなた、未だに雨は苦手ですね」
読んでいた捜査資料をパタンと閉じ、昴は微笑みながらりおに声をかけた。気分転換にコーヒーでも淹れてきますよと言うと、昴は立ち上がる。
「あ、ダイニングに行くなら私も良く。一人でいるのは嫌だもの」
りおも慌てて立ち上がった。
ダイニングがコーヒーの香りでいっぱいになると、二人は仲良くイスに腰かけた。
ミルクが多めのカフェオレ。優しい色の液体から、ふわりと湯気がのぼる。
りおは両手でカップを持つと、ふーっと息を吹きかけた。コクリと飲み込むと「はぁ~」とため息が出る。
「昴さんが淹れてくれるカフェオレ、相変わらず美味しいね……」
ふにゃっと微笑んで、また一口飲む。
「フフッ。りおは美味しそうに飲みますね」
嬉しそうに微笑みながら、昴もコーヒーを一口飲んだ。
「額の傷、良くなりましたね」
戸隠山の崖から転落した際に負った傷。前髪からわずかに見える傷痕は、薄っすらと残っているくらいで、ほとんど分からない。
「うん。もともとそんなに深くなかったからね。でも出血が多かったから、昴さんを驚かせちゃったよね」
「確かに。あの高さから落ちましたから、死んでしまったかと思いましたよ……」
崖下でりおを抱き起した時、その顔は蒼白。対照的に頭からはたくさんの鮮血が流れていた。何度声をかけても目を覚まさない。
昴はりおの無事が分かるまで、体の震えが止まらず息も出来ないほどだった。それくらい心配したのに。
りおが意識を取り戻した瞬間、当の本人から出た言葉は「まだ死んでない。お化けにはなってない」。
拍子抜けして全身の力が抜けてしまったことは、今となっては笑い話だ。
「ははは…。自分も死んだかと思ったからね。昴さんの声聞こえて『あ、死んでないや』って」
頭をぶつけた時って、ホントに目から星が出るんだね〜、なんて。まるで漫画のような事を言いうりおに、昴はやれやれとため息をついた。
ブー、ブー、ブー……
そんな穏やかなコーヒータイムを楽しんでいると、突然りおのスマホが着信を告げた。
「あ、冴島教官……じゃなくて校長先生だ」
画面に出た名前を見て、りおは急いで電話に出た。
『俺だ。今…大丈夫か?』
「ええ。今は家にいます。昴さんと一緒です」
『そうか』
りおの返事を聞いて、冴島は安心したようにつぶやいた。
潜入捜査中の相手に電話をかけるのは、今でも緊張するよと笑う。
『今日の午後、警視庁に用事があってそっちへ行くんだ。用事を済ませたら会えないか?』
「私も午後警視庁へ行くつもりでいました。
ではその後にどうでしょう?」
『ああ、そうしよう。実は思い出したことがあったんだ。出来れば沖矢くんも一緒が良いだろう。最寄りのセーフハウスで落ち合おう』
「わかりました」
では後ほど、と電話を切った。
「冴島さんは何と?」
しばらくスマホを見つめていたりおに、昴が声をかけた。
「え、ええ。何か思い出したことがあるんですって。それを伝えたいから午後会えないかと。出来れば昴さんも一緒が良いだろうって……」
「分かりました。私も一緒に行きます。あなたが風見さんと会ってる時は、近くのカフェで時間をつぶしますから」
ニッコリ微笑んでりおの顔を見る。
「うん。ごめんね。つき合わせちゃって…」
「デートの待ち合わせだと思えば。一緒に住むようになって、そういう刺激は無くなってしまいましたから……むしろ新鮮で良いですね」
サラッと恥ずかしい事を言われて、りおの頬はわずかに赤くなる。
「大学の正門で待ち合わせしてたのが懐かしいね……」
「ふふふ。そうですね。あの場所での待ち合わせ、結構気に入っていましたよ。
私の姿を見つけたあなたが、嬉しそうに駆けてくるのが可愛くて」
チラリと細めていた目を開けてりおを見る。
目が合った瞬間、りおはさらに真っ赤になって下を向いた。
「りおはいつまでたっても初々しいですね」
顔から湯気が出そうなほど照れているりおを見て、昴は楽しそうに笑った。
午後——
りおは公安部のデスクに顔を出した。PCに向かっていた風見が安堵の表情を向け、声をかける。
「広瀬、体調はどうだ?」
「風見さん…色々ご迷惑をおかけしました。おかげさまでもう大丈夫です」
「降谷さんも心配をしていた。『またポアロに顔を見せに来てくれ』と伝言を頼まれたよ」
そういえばポアロには、長野への旅行が決まって以来行っていない。
お土産は届けたが、ケガをした姿を見せたくなかったので、お店には昴一人で届けに行った。
最後に顔を出したのは、自分がラズベリーを好きになったきっかけを思い出し、冴島が自分を我が子のように見守っていたことを知った日の翌日。
嬉しくて……そして冴島が長年抱えてきた父への思いを知って切なくて。ラズベリーのケーキを食べながら人目をはばからず泣いた。
事情を知らない安室も梓もコナンも、そんなりおの姿を見て驚いてはいたが、ただ黙って見守ってくれた。
両親の事を思い出せない苛立ちや不安はあるが、自分にはこうやって優しく、そして温かく、支えてくれる人たちがたくさんいる。何とありがたいことか。
「分かりました。近いうちに行ってみます」
りおは笑顔で返事をした。
「ところで…すでに知っているとは思うが、最近都内で連続殺人が起きている。現時点で犠牲者は二名。
通り魔のような事件で、今のところ刑事部が捜査しているが、大きな組織がらみの可能性も否定できない為、こちら(公安)でも捜査を開始している。
場合によってはお前にも捜査に加わってもらわねばならん。それだけ承知しておいてくれ」
「了解です。でも、また連続殺人……ですか」
長野では強盗。都内では爆破事件に続いて連続殺人。それ以前にも、ミシェルによる連続殺人は記憶に新しいところだ。物騒な事件が続く。
権力、金、信仰、主義主張、愛憎…
争いのタネは上げたらキリがない。大都市ではそんな争いの《火種》が、見えないところにたくさん蔓延っている。
警察が裏でどんなに努力しても、すべての火種を消すことはもはや不可能だ。
「…ああ。これ以上は被害者を出したくないところだな。だが、物取りでも怨恨(えんこん)でも、そしてイタズラ目的でもない。
しかも今のところ目撃者も上がっていない。捜査は難航している。
何か進展があればその都度情報は送っておく。組織の方もあると思うから、今は表立って動く必要は無い。またこちらから連絡するから」
「分かりました」
りおは静かに返事をした。
「そういえば、長野でも事件に遭遇したそうじゃないか」
風見はやや呆れ顔でりおに問いかけた。
「ええ。近県を巻き込んだ金塊強奪事件です。事件の主犯格は岐阜県警がすでに逮捕していましたが、肝心の金塊が見つからないのと、事件に関与した警察官の行方が分からなかったので、長野県警に捜査依頼が来ていたらしくて…」
「それをお前たちが取り押さえるとはね」
まったく体調を崩していても、タダでは起き上がらないんだな……と風見は呆れ顔だ。
「あはは……。私達、なんか事件を呼んじゃうんですかね?」
りおはバツが悪そうに頬を掻く。それを見て風見は大きなため息をついた。
「はぁ~~…。事件を解決した事は褒めてやりたいが、『崖から落ちた』なんて報告は要らないからな。
まったくお前も降谷さんも、後から聞かされる俺の身にもなってくれ! 血の気が引くようなことが多すぎるんだよ!」
俺の胃に穴をあける気か、と盛大に文句を言っている。
「ははは…ホント申し訳ありません…」
全く反論できないりおは、肩をすくめて謝った。
二人が長野旅行から帰った数日後——。
宅配で届いたお土産も皆に配り終え、自分達用に購入したワインは、クリスマスに二人で開けようとキッチンの戸棚に飾ってある。
それを見るたびに、二人は長野での思い出話に花を咲かせた。旅行後は、良く笑うようになったりおを見て、ようやく昴もホッと息をつく日々を過ごしていた。
組織による一連の爆破事件は、一気に二十年分の事実を知る結果となり、りおが受けた衝撃は赤井でなくとも理解できる。
コナンが旅行を勧めたのも、そういった事情を知っていたからに他ならない。
東都を離れ、雄大な景色と美味しい山の幸、そして何よりも赤井(昴)と二人で過ごした三日間は、りおにとって必要な時間だったのだろう。
ただ、カーディナルの死後はそれが引き金になったのか、時々記憶のフラッシュバックが起きるようになった。
主に思い出されるのは、両親と死別後のことが多く、冴島や祖父母との小さな出来事ばかりだ。
ふとしたきっかけで、当時の事を割とリアルに思い出すようだが、赤井がそばに居るため大きな発作に繋がる事も無く、りおの幼い日々の思い出話を赤井も楽しそうに聞いている。
ゆっくりゆっくり
りおのペースで心を整えていけば良い。いずれ思い出すであろう壮絶な記憶。
父と母を失ったあの瞬間——
彼女の見たもの、聴いたもの、感じたもの……
もし思い出すのならば、そのすべてを受け入れられるくらいには心が癒され、準備が整っていて欲しい。
今、赤井がりおに願う事はただ一つ。
その日が来るまで、どうか両親の事は思い出さないでくれ———。祈るような気持ちで、昴(赤井)はりおの顔を見つめるのだった。
***
「今日は雨かぁ…」
工藤邸の窓を叩く雨粒を見て、りおはため息をついた。
「午後は警視庁に行こうと思ってたんだけどな……」
体調が整ってからで良い、と降谷に言われていた報告書も出来上がり、久しぶりに午後から登庁する予定でいた。
「あなた、未だに雨は苦手ですね」
読んでいた捜査資料をパタンと閉じ、昴は微笑みながらりおに声をかけた。気分転換にコーヒーでも淹れてきますよと言うと、昴は立ち上がる。
「あ、ダイニングに行くなら私も良く。一人でいるのは嫌だもの」
りおも慌てて立ち上がった。
ダイニングがコーヒーの香りでいっぱいになると、二人は仲良くイスに腰かけた。
ミルクが多めのカフェオレ。優しい色の液体から、ふわりと湯気がのぼる。
りおは両手でカップを持つと、ふーっと息を吹きかけた。コクリと飲み込むと「はぁ~」とため息が出る。
「昴さんが淹れてくれるカフェオレ、相変わらず美味しいね……」
ふにゃっと微笑んで、また一口飲む。
「フフッ。りおは美味しそうに飲みますね」
嬉しそうに微笑みながら、昴もコーヒーを一口飲んだ。
「額の傷、良くなりましたね」
戸隠山の崖から転落した際に負った傷。前髪からわずかに見える傷痕は、薄っすらと残っているくらいで、ほとんど分からない。
「うん。もともとそんなに深くなかったからね。でも出血が多かったから、昴さんを驚かせちゃったよね」
「確かに。あの高さから落ちましたから、死んでしまったかと思いましたよ……」
崖下でりおを抱き起した時、その顔は蒼白。対照的に頭からはたくさんの鮮血が流れていた。何度声をかけても目を覚まさない。
昴はりおの無事が分かるまで、体の震えが止まらず息も出来ないほどだった。それくらい心配したのに。
りおが意識を取り戻した瞬間、当の本人から出た言葉は「まだ死んでない。お化けにはなってない」。
拍子抜けして全身の力が抜けてしまったことは、今となっては笑い話だ。
「ははは…。自分も死んだかと思ったからね。昴さんの声聞こえて『あ、死んでないや』って」
頭をぶつけた時って、ホントに目から星が出るんだね〜、なんて。まるで漫画のような事を言いうりおに、昴はやれやれとため息をついた。
ブー、ブー、ブー……
そんな穏やかなコーヒータイムを楽しんでいると、突然りおのスマホが着信を告げた。
「あ、冴島教官……じゃなくて校長先生だ」
画面に出た名前を見て、りおは急いで電話に出た。
『俺だ。今…大丈夫か?』
「ええ。今は家にいます。昴さんと一緒です」
『そうか』
りおの返事を聞いて、冴島は安心したようにつぶやいた。
潜入捜査中の相手に電話をかけるのは、今でも緊張するよと笑う。
『今日の午後、警視庁に用事があってそっちへ行くんだ。用事を済ませたら会えないか?』
「私も午後警視庁へ行くつもりでいました。
ではその後にどうでしょう?」
『ああ、そうしよう。実は思い出したことがあったんだ。出来れば沖矢くんも一緒が良いだろう。最寄りのセーフハウスで落ち合おう』
「わかりました」
では後ほど、と電話を切った。
「冴島さんは何と?」
しばらくスマホを見つめていたりおに、昴が声をかけた。
「え、ええ。何か思い出したことがあるんですって。それを伝えたいから午後会えないかと。出来れば昴さんも一緒が良いだろうって……」
「分かりました。私も一緒に行きます。あなたが風見さんと会ってる時は、近くのカフェで時間をつぶしますから」
ニッコリ微笑んでりおの顔を見る。
「うん。ごめんね。つき合わせちゃって…」
「デートの待ち合わせだと思えば。一緒に住むようになって、そういう刺激は無くなってしまいましたから……むしろ新鮮で良いですね」
サラッと恥ずかしい事を言われて、りおの頬はわずかに赤くなる。
「大学の正門で待ち合わせしてたのが懐かしいね……」
「ふふふ。そうですね。あの場所での待ち合わせ、結構気に入っていましたよ。
私の姿を見つけたあなたが、嬉しそうに駆けてくるのが可愛くて」
チラリと細めていた目を開けてりおを見る。
目が合った瞬間、りおはさらに真っ赤になって下を向いた。
「りおはいつまでたっても初々しいですね」
顔から湯気が出そうなほど照れているりおを見て、昴は楽しそうに笑った。
午後——
りおは公安部のデスクに顔を出した。PCに向かっていた風見が安堵の表情を向け、声をかける。
「広瀬、体調はどうだ?」
「風見さん…色々ご迷惑をおかけしました。おかげさまでもう大丈夫です」
「降谷さんも心配をしていた。『またポアロに顔を見せに来てくれ』と伝言を頼まれたよ」
そういえばポアロには、長野への旅行が決まって以来行っていない。
お土産は届けたが、ケガをした姿を見せたくなかったので、お店には昴一人で届けに行った。
最後に顔を出したのは、自分がラズベリーを好きになったきっかけを思い出し、冴島が自分を我が子のように見守っていたことを知った日の翌日。
嬉しくて……そして冴島が長年抱えてきた父への思いを知って切なくて。ラズベリーのケーキを食べながら人目をはばからず泣いた。
事情を知らない安室も梓もコナンも、そんなりおの姿を見て驚いてはいたが、ただ黙って見守ってくれた。
両親の事を思い出せない苛立ちや不安はあるが、自分にはこうやって優しく、そして温かく、支えてくれる人たちがたくさんいる。何とありがたいことか。
「分かりました。近いうちに行ってみます」
りおは笑顔で返事をした。
「ところで…すでに知っているとは思うが、最近都内で連続殺人が起きている。現時点で犠牲者は二名。
通り魔のような事件で、今のところ刑事部が捜査しているが、大きな組織がらみの可能性も否定できない為、こちら(公安)でも捜査を開始している。
場合によってはお前にも捜査に加わってもらわねばならん。それだけ承知しておいてくれ」
「了解です。でも、また連続殺人……ですか」
長野では強盗。都内では爆破事件に続いて連続殺人。それ以前にも、ミシェルによる連続殺人は記憶に新しいところだ。物騒な事件が続く。
権力、金、信仰、主義主張、愛憎…
争いのタネは上げたらキリがない。大都市ではそんな争いの《火種》が、見えないところにたくさん蔓延っている。
警察が裏でどんなに努力しても、すべての火種を消すことはもはや不可能だ。
「…ああ。これ以上は被害者を出したくないところだな。だが、物取りでも怨恨(えんこん)でも、そしてイタズラ目的でもない。
しかも今のところ目撃者も上がっていない。捜査は難航している。
何か進展があればその都度情報は送っておく。組織の方もあると思うから、今は表立って動く必要は無い。またこちらから連絡するから」
「分かりました」
りおは静かに返事をした。
「そういえば、長野でも事件に遭遇したそうじゃないか」
風見はやや呆れ顔でりおに問いかけた。
「ええ。近県を巻き込んだ金塊強奪事件です。事件の主犯格は岐阜県警がすでに逮捕していましたが、肝心の金塊が見つからないのと、事件に関与した警察官の行方が分からなかったので、長野県警に捜査依頼が来ていたらしくて…」
「それをお前たちが取り押さえるとはね」
まったく体調を崩していても、タダでは起き上がらないんだな……と風見は呆れ顔だ。
「あはは……。私達、なんか事件を呼んじゃうんですかね?」
りおはバツが悪そうに頬を掻く。それを見て風見は大きなため息をついた。
「はぁ~~…。事件を解決した事は褒めてやりたいが、『崖から落ちた』なんて報告は要らないからな。
まったくお前も降谷さんも、後から聞かされる俺の身にもなってくれ! 血の気が引くようなことが多すぎるんだよ!」
俺の胃に穴をあける気か、と盛大に文句を言っている。
「ははは…ホント申し訳ありません…」
全く反論できないりおは、肩をすくめて謝った。