第4.5章 二人の遠出~長野旅行編~
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***
薪として集めてきた枝も、あとわずか。
霧雨は止んだものの木々が濡れてしまったため、新たに拾ってきても火はつかないだろう。
徐々に焚火の火は小さくなっていく。昴とりおは肩を寄せ合い、寒さに耐えていた。
「昴さん…体濡れたから寒いでしょ。上着着て良いから…」
「大丈夫だよ。お前こそ出血して体が冷えている。上着は使ってくれ」
火のそばに居るのに昴の手は冷たい。雨で濡れた体は相当冷えているはずだ。なかなかうんと言わない昴の為に、りおは一ついい方法を思いついた。
「じゃあ…さ…」
「?」
昴の上着の下で、りおは自分の服のボタンを外しだす。手を後ろに回し、下着のホックも外した。
「⁉ りおっ! な、何して…」
「はい。昴さんも」
りおは昴の服に手を伸ばすと、同じようにボタンを外す。
りおは自分の肩にあった上着を昴の肩にかけると、服の前だけくつろがせた状態で、二人はお互いの素肌をあわせて抱き合った。
「なるほど。素肌同士でくっついた方が温かい…そういう事か」
「そう。この火もいつまでもつか分からない。今のうちにお互い温まっておかないと…」
りおは昴の素肌に頬を寄せる。
「やっぱり…昴さんの肌、冷たいよ」
「りおは温かいな…」
「ずっと上着借りてたからね。今度は私が温めてあげる」
りおは冷えた昴の肌に、出来るだけ密着するように体をくっつける。
「そ、それは有り難いんだが…。これはこれで問題が……」
「問題?」
「そう。色々と…な」
察してくれよと昴は天を仰いだ。
***
その頃、諸伏たちは鏡池の駐車場に到着していた。
地元の人も集まり、周辺を探していたが見つからず、どうしたものかと思案していた。
「登山道の方は探しましたか?」
「いや、今日は入山届が出ていない。山に入った者はいない」
「しかし、観光客が誤って入ってしまう可能性は…」
「それは無い。注意喚起した看板も立っているし、ガイドブックでも難易度の高い山だと記載されている。よほどのバカじゃない限り、登山道に好き好んで入る奴はいないだろう」
「……」
確かにあの二人は興味本位でそんなところに入って行ったりはしないだろう。だがもし…入る必要性が有ったとしたら……。
「申し訳ありませんが、これから私と一緒に奥社まで行って下さる方はいませんか?」
「それなら私が」
ベテランガイドが名乗りを上げた。
「私も」
上原も真剣な顔で諸伏を見ると小さくうなずいた。
それから四十分後。
諸伏と上原、ベテランガイド、そして地元の有志たち合わせて十名ほどが奥社の石段を上っていた。
真っ暗な石段を懐中電灯の明かりを頼りに進む。
「?」
その時、諸伏が石段のキズに気が付いた。
「警部…どうされたんですか?」
突然しゃがみ込んだ諸伏に、ガイドが声をかけた。
「石段に真新しいキズが…かなり重い物を運んだ跡がありますけど。最近奥社で工事でもありました?」
「いいえ。なにも」
「そうですか……」
諸伏は石段のキズに触れ、注意深く辺りを観察する。
「⁉」
(もしかしてお二人もこのキズに気付いて⁉)
諸伏は立ち上がり、懐中電灯の明かりを頼りに石段を駆け上がった。
何か重い物を引きずった跡が登山道へと続いている。諸伏は確信した。
「おそらくこの先にお二人がいます!」
諸伏の声に、そこにいた誰もが驚いていた。
***
「ん…ぅ…ふ…はぁ……」
「ン…りお………ぅん…」
揺れる炎の光に照らされて二人は口づける。
素肌同士を合わせてお互いの熱を感じ合えば、自然と唇が重なる。唇が重なってしまえば、もう二人を止めることは出来なかった。
冷たかった昴の肌が徐々に熱を持つ。先ほどまで震えるほど寒かったのがウソのように温かい。
昴の手はりおの背中や腕を優しく撫でる。
それだけでキスの合間にりおの甘い吐息が漏れた。
りおの声は昴の背中にゾクリと快感を呼び起こす。
「んんッ…ぁ…しゅぅ…ちさ…」
「……ッんぅ……はぁ…りお…」
りおを追い詰めているのか、自分が追い詰められているのか——。いつだってそうだが、余裕なんて全く無い。昴は夢中になってキスを仕掛けた。
スッとりおの手が昴の髪に触れる。グイッと髪を掴まれるとウイッグを取られた。
唇を離す。銀の糸が二人の唇を繋いだ。
さらにりおはメガネに手を伸ばす。ペリドットの瞳は熱を帯び、赤井が興奮しているのが分かる。
「秀一さん…抱きしめて」
「…りお…」
二人はぴったりと肌を寄せた。トクトクとお互いの鼓動を感じる。赤井の肩にかかったウィンドブレーカーの中で、二人は熱を分け合った。
**
どれくらい時間が経っただろうか。
気温はますます下がり、吐く息が白く見えるほど空気は冷たい。お互いの熱で温め合った体も、冷えた外気は容赦なく二人からその熱を奪っていく。
りおを抱きしめる赤井の体は、寒さで震え始めていた。
「秀一さん…震えてる…。大丈夫?」
「あ、ああ。お前も…肩が冷たくなってきている…。寒くないか?」
「う、うん…大丈夫…」
赤井はりおの手を握った。
「ウソつけ。手が冷たい。体もさっきより冷えてる…」
「秀一さんとくっついているところだけ…温かい…」
「ああ…。俺もだよ…」
素肌を寄せ合うところだけが温かい。
赤井は体を丸め、りおの体をすっぽり包む様に抱きしめる。
焚火の火はどんどん弱くなり、ふたりの周りは闇に包まれ始めた。
その時——。
「お——い!! 誰かいるか——!」
「さくらさ―ん!! 沖矢さ―ん!!」
「居たら返事してくれ——!!」
「お——い!!」
二人を救助するために奥社までやってきた諸伏たちの声が聞こえた。
「「!!」」
「秀一さん! この声…!!」
「ああ!」
赤井は凍えた体を何とか動かし、りおから体を離すと崖の窪みから這い出る。チョーカーの電源を入れ崖の上に向かって叫んだ。
薪として集めてきた枝も、あとわずか。
霧雨は止んだものの木々が濡れてしまったため、新たに拾ってきても火はつかないだろう。
徐々に焚火の火は小さくなっていく。昴とりおは肩を寄せ合い、寒さに耐えていた。
「昴さん…体濡れたから寒いでしょ。上着着て良いから…」
「大丈夫だよ。お前こそ出血して体が冷えている。上着は使ってくれ」
火のそばに居るのに昴の手は冷たい。雨で濡れた体は相当冷えているはずだ。なかなかうんと言わない昴の為に、りおは一ついい方法を思いついた。
「じゃあ…さ…」
「?」
昴の上着の下で、りおは自分の服のボタンを外しだす。手を後ろに回し、下着のホックも外した。
「⁉ りおっ! な、何して…」
「はい。昴さんも」
りおは昴の服に手を伸ばすと、同じようにボタンを外す。
りおは自分の肩にあった上着を昴の肩にかけると、服の前だけくつろがせた状態で、二人はお互いの素肌をあわせて抱き合った。
「なるほど。素肌同士でくっついた方が温かい…そういう事か」
「そう。この火もいつまでもつか分からない。今のうちにお互い温まっておかないと…」
りおは昴の素肌に頬を寄せる。
「やっぱり…昴さんの肌、冷たいよ」
「りおは温かいな…」
「ずっと上着借りてたからね。今度は私が温めてあげる」
りおは冷えた昴の肌に、出来るだけ密着するように体をくっつける。
「そ、それは有り難いんだが…。これはこれで問題が……」
「問題?」
「そう。色々と…な」
察してくれよと昴は天を仰いだ。
***
その頃、諸伏たちは鏡池の駐車場に到着していた。
地元の人も集まり、周辺を探していたが見つからず、どうしたものかと思案していた。
「登山道の方は探しましたか?」
「いや、今日は入山届が出ていない。山に入った者はいない」
「しかし、観光客が誤って入ってしまう可能性は…」
「それは無い。注意喚起した看板も立っているし、ガイドブックでも難易度の高い山だと記載されている。よほどのバカじゃない限り、登山道に好き好んで入る奴はいないだろう」
「……」
確かにあの二人は興味本位でそんなところに入って行ったりはしないだろう。だがもし…入る必要性が有ったとしたら……。
「申し訳ありませんが、これから私と一緒に奥社まで行って下さる方はいませんか?」
「それなら私が」
ベテランガイドが名乗りを上げた。
「私も」
上原も真剣な顔で諸伏を見ると小さくうなずいた。
それから四十分後。
諸伏と上原、ベテランガイド、そして地元の有志たち合わせて十名ほどが奥社の石段を上っていた。
真っ暗な石段を懐中電灯の明かりを頼りに進む。
「?」
その時、諸伏が石段のキズに気が付いた。
「警部…どうされたんですか?」
突然しゃがみ込んだ諸伏に、ガイドが声をかけた。
「石段に真新しいキズが…かなり重い物を運んだ跡がありますけど。最近奥社で工事でもありました?」
「いいえ。なにも」
「そうですか……」
諸伏は石段のキズに触れ、注意深く辺りを観察する。
「⁉」
(もしかしてお二人もこのキズに気付いて⁉)
諸伏は立ち上がり、懐中電灯の明かりを頼りに石段を駆け上がった。
何か重い物を引きずった跡が登山道へと続いている。諸伏は確信した。
「おそらくこの先にお二人がいます!」
諸伏の声に、そこにいた誰もが驚いていた。
***
「ん…ぅ…ふ…はぁ……」
「ン…りお………ぅん…」
揺れる炎の光に照らされて二人は口づける。
素肌同士を合わせてお互いの熱を感じ合えば、自然と唇が重なる。唇が重なってしまえば、もう二人を止めることは出来なかった。
冷たかった昴の肌が徐々に熱を持つ。先ほどまで震えるほど寒かったのがウソのように温かい。
昴の手はりおの背中や腕を優しく撫でる。
それだけでキスの合間にりおの甘い吐息が漏れた。
りおの声は昴の背中にゾクリと快感を呼び起こす。
「んんッ…ぁ…しゅぅ…ちさ…」
「……ッんぅ……はぁ…りお…」
りおを追い詰めているのか、自分が追い詰められているのか——。いつだってそうだが、余裕なんて全く無い。昴は夢中になってキスを仕掛けた。
スッとりおの手が昴の髪に触れる。グイッと髪を掴まれるとウイッグを取られた。
唇を離す。銀の糸が二人の唇を繋いだ。
さらにりおはメガネに手を伸ばす。ペリドットの瞳は熱を帯び、赤井が興奮しているのが分かる。
「秀一さん…抱きしめて」
「…りお…」
二人はぴったりと肌を寄せた。トクトクとお互いの鼓動を感じる。赤井の肩にかかったウィンドブレーカーの中で、二人は熱を分け合った。
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どれくらい時間が経っただろうか。
気温はますます下がり、吐く息が白く見えるほど空気は冷たい。お互いの熱で温め合った体も、冷えた外気は容赦なく二人からその熱を奪っていく。
りおを抱きしめる赤井の体は、寒さで震え始めていた。
「秀一さん…震えてる…。大丈夫?」
「あ、ああ。お前も…肩が冷たくなってきている…。寒くないか?」
「う、うん…大丈夫…」
赤井はりおの手を握った。
「ウソつけ。手が冷たい。体もさっきより冷えてる…」
「秀一さんとくっついているところだけ…温かい…」
「ああ…。俺もだよ…」
素肌を寄せ合うところだけが温かい。
赤井は体を丸め、りおの体をすっぽり包む様に抱きしめる。
焚火の火はどんどん弱くなり、ふたりの周りは闇に包まれ始めた。
その時——。
「お——い!! 誰かいるか——!」
「さくらさ―ん!! 沖矢さ―ん!!」
「居たら返事してくれ——!!」
「お——い!!」
二人を救助するために奥社までやってきた諸伏たちの声が聞こえた。
「「!!」」
「秀一さん! この声…!!」
「ああ!」
赤井は凍えた体を何とか動かし、りおから体を離すと崖の窪みから這い出る。チョーカーの電源を入れ崖の上に向かって叫んだ。