第4.5章 二人の遠出~長野旅行編~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***
「ちょっと、いつまで笑ってるんですか?」
「うん、ごめん。でもダメ。蕎麦湯を飲んだ時の昴さんの顔が…。思い出しただけで…ぷっ…ふふ…」
最後に蕎麦湯を勧めたのだが、飲み方を知らなかった昴は、さくらがちょっと目を離したスキにお茶と間違えて湯のみに注いで飲んでいた。
当然、そのまま飲んでも美味しくはない。
ペリドットの目がガッと開き、吐き出すことも残りを飲み込むことも出来ずに固まっていた。
「どうしてちゃんと教えてくれなかったんです? おかげで地(赤井)が出そうでしたよ!」
運転をしながら、昴はプリプリ怒って文句を言っている。
「だって、教える前に飲んじゃったんだもん。七味があった方が良いと思って、私が調味料探している間に……」
確かに、さくらに声をかけずに飲んだ自分が悪い。
それにしたって、海外育ちだと気付いたあの店員もちゃんと説明してくれれば良かったのに。
「私が知ってると思って遠慮してくれたんだよ。恋人同士の食事にしゃしゃり出る店員なんて、そうそういないでしょ」
ごめんね私が悪かった、とさくらは昴に謝る。
そう言われてしまうと自分だけが駄々をこねているような気がして余計にバツが悪い。
「いえ…。私も確認しなかったのがいけなかったです。今度はさくらが毒見をした後にいただきます」
「なんか、すっごくトゲトゲしいわね…」
「あの場で噴き出さなかった私を褒めてください」
よっぽどマズかったんだな…と、さくらは苦笑いした。
ふたりを乗せた車は細い道を抜け、駐車場へと滑り込む。
「昴さん、ココは?」
「鏡池というそうですよ。ここからハイキングコースを通れば、1時間程で奥社まで行けます。せっかくですから景色を楽しみながら、ゆっくり歩いて行きませんか?」
「良いわね〜。最近運動不足だったし。紅葉もキレイだから、きっと景色もステキね」
一応二人共動きやすい服と靴で来ている。整備された遊歩道なので、さほど問題は無い。
車を降り舗装された道を歩き始めた。
「は~~ぁ…。気持ち良いね~」
「ええ。周りはたくさん木々があって、まさに森林浴ですね。凛とした空気が肺の中をキレイにしてくれそうだ」
それでタバコのヤニで汚れた肺もキレイになると良いね、とは言わないでおこう。本人も自覚しているようだし。
さくらは両腕を広げ、深呼吸をした。
「ス——…ハ——…ス—ッ…ゴホッゴホッ!」
「何やってるんですか?」
数回深呼吸をして咳き込むさくらに昴は声をかけた。
「ごほっ! く、空気冷たすぎっ…。むせちゃったッ! ごほほっ」
冷たい空気を肺の奥まで吸い込み過ぎたせいで、酷くむせてしまった。
「だいぶ気温が低いですからね。さくら、寒くないですか?」
さっきまで晴れていたが鏡池に近づくにつれ、霧のような雲が立ち込める。
「ちょっと寒いかな。紅葉も進んでる。キレイだね〜。なんか…神聖な感じがする」
「確かに。天の岩戸伝説の地ですからね。本当に神の国かもしれませんよ」
話をしながら、昴はスッと左手でさくらの右手を掴む。
「す、すば…」
「手…冷たい。歩くうちに体は温まるでしょうけど。それまで手、繋いでいてあげますよ」
「……温まっても…繋いでて良いよ……」
「……それは…誘っているのですか?」
「ね、ねえ見て! ほら! 白樺の紅葉キレイだね~」
ごまかすように、さくらは紅葉に目を向けた。
やがて木々で囲まれた道の視界が開ける。
「わあぁ~!」
「すごいな…」
先程までの霧はどこかへ消え去り、目の前には鏡のように上下反対に景色を映した水面。
赤や黄色の紅葉と、青い空が見事なシンメトリーとなって二人の前に現れた。
「これが…鏡池…」
「紅葉の時期が終われば間もなく雪が降って、池は完全に凍り付く年もあるのだとか」
「ええ〜ッ。そんなに寒いんだ…。紅葉の時期って短いから、この景色は今しか見れないって事よね」
二人は手を繋いだまま景色を見つめる。
「また…あなたと美しい景色を見た思い出が出来ましたね」
「うん。秀一さんと見た景色は、絶対に忘れない」
「私もです」
繋いだ手に力が入る。突然昴がその手を強く引いた。
「え?」
周りに人はいない? とか
神の国なんじゃないの? とか
考える余裕もないまま二人の唇がぶつかる。
寒さで少しカサついた昴の唇。
さくらがそっと食むように唇を動かすと、そのまま深く口づけられた。
繋いだ手はそのままに。昴の右手がさくらの頭を支える。
ちゅ、ちゅ、くちゅ…
湧き上がる熱を感じながら、お互いを求めて唇をついばみ舌を絡めあう。
ザザザ~ッ!
突然冷たい風が吹きつけた。ハッと我に返った二人は唇を離す。
「す、スミマセン…。つい…」
「う、ううん。大丈…夫」
今更ながら周りをキョロキョロと見回す。
まばらに観光客が居たが、二人がいたところは草木が影になっていて誰からも見えない。二人はホッと胸を撫で下ろした。
「さ、先に進みましょうか。奥社までまだありますし」
「そ、そうね」
頬が赤いのは冷たい風のせいか、それとも内からのものか…
二人は熱を冷ますかのように、少し速足で遊歩道を進んだ。
色づいた葉が二人の訪れを歓迎するようにひらひらと舞い落ちる。時折誰かが鳴らすクマよけの鐘が、カラ〜ンカラ〜ンと響いていた。
「ちょっと、いつまで笑ってるんですか?」
「うん、ごめん。でもダメ。蕎麦湯を飲んだ時の昴さんの顔が…。思い出しただけで…ぷっ…ふふ…」
最後に蕎麦湯を勧めたのだが、飲み方を知らなかった昴は、さくらがちょっと目を離したスキにお茶と間違えて湯のみに注いで飲んでいた。
当然、そのまま飲んでも美味しくはない。
ペリドットの目がガッと開き、吐き出すことも残りを飲み込むことも出来ずに固まっていた。
「どうしてちゃんと教えてくれなかったんです? おかげで地(赤井)が出そうでしたよ!」
運転をしながら、昴はプリプリ怒って文句を言っている。
「だって、教える前に飲んじゃったんだもん。七味があった方が良いと思って、私が調味料探している間に……」
確かに、さくらに声をかけずに飲んだ自分が悪い。
それにしたって、海外育ちだと気付いたあの店員もちゃんと説明してくれれば良かったのに。
「私が知ってると思って遠慮してくれたんだよ。恋人同士の食事にしゃしゃり出る店員なんて、そうそういないでしょ」
ごめんね私が悪かった、とさくらは昴に謝る。
そう言われてしまうと自分だけが駄々をこねているような気がして余計にバツが悪い。
「いえ…。私も確認しなかったのがいけなかったです。今度はさくらが毒見をした後にいただきます」
「なんか、すっごくトゲトゲしいわね…」
「あの場で噴き出さなかった私を褒めてください」
よっぽどマズかったんだな…と、さくらは苦笑いした。
ふたりを乗せた車は細い道を抜け、駐車場へと滑り込む。
「昴さん、ココは?」
「鏡池というそうですよ。ここからハイキングコースを通れば、1時間程で奥社まで行けます。せっかくですから景色を楽しみながら、ゆっくり歩いて行きませんか?」
「良いわね〜。最近運動不足だったし。紅葉もキレイだから、きっと景色もステキね」
一応二人共動きやすい服と靴で来ている。整備された遊歩道なので、さほど問題は無い。
車を降り舗装された道を歩き始めた。
「は~~ぁ…。気持ち良いね~」
「ええ。周りはたくさん木々があって、まさに森林浴ですね。凛とした空気が肺の中をキレイにしてくれそうだ」
それでタバコのヤニで汚れた肺もキレイになると良いね、とは言わないでおこう。本人も自覚しているようだし。
さくらは両腕を広げ、深呼吸をした。
「ス——…ハ——…ス—ッ…ゴホッゴホッ!」
「何やってるんですか?」
数回深呼吸をして咳き込むさくらに昴は声をかけた。
「ごほっ! く、空気冷たすぎっ…。むせちゃったッ! ごほほっ」
冷たい空気を肺の奥まで吸い込み過ぎたせいで、酷くむせてしまった。
「だいぶ気温が低いですからね。さくら、寒くないですか?」
さっきまで晴れていたが鏡池に近づくにつれ、霧のような雲が立ち込める。
「ちょっと寒いかな。紅葉も進んでる。キレイだね〜。なんか…神聖な感じがする」
「確かに。天の岩戸伝説の地ですからね。本当に神の国かもしれませんよ」
話をしながら、昴はスッと左手でさくらの右手を掴む。
「す、すば…」
「手…冷たい。歩くうちに体は温まるでしょうけど。それまで手、繋いでいてあげますよ」
「……温まっても…繋いでて良いよ……」
「……それは…誘っているのですか?」
「ね、ねえ見て! ほら! 白樺の紅葉キレイだね~」
ごまかすように、さくらは紅葉に目を向けた。
やがて木々で囲まれた道の視界が開ける。
「わあぁ~!」
「すごいな…」
先程までの霧はどこかへ消え去り、目の前には鏡のように上下反対に景色を映した水面。
赤や黄色の紅葉と、青い空が見事なシンメトリーとなって二人の前に現れた。
「これが…鏡池…」
「紅葉の時期が終われば間もなく雪が降って、池は完全に凍り付く年もあるのだとか」
「ええ〜ッ。そんなに寒いんだ…。紅葉の時期って短いから、この景色は今しか見れないって事よね」
二人は手を繋いだまま景色を見つめる。
「また…あなたと美しい景色を見た思い出が出来ましたね」
「うん。秀一さんと見た景色は、絶対に忘れない」
「私もです」
繋いだ手に力が入る。突然昴がその手を強く引いた。
「え?」
周りに人はいない? とか
神の国なんじゃないの? とか
考える余裕もないまま二人の唇がぶつかる。
寒さで少しカサついた昴の唇。
さくらがそっと食むように唇を動かすと、そのまま深く口づけられた。
繋いだ手はそのままに。昴の右手がさくらの頭を支える。
ちゅ、ちゅ、くちゅ…
湧き上がる熱を感じながら、お互いを求めて唇をついばみ舌を絡めあう。
ザザザ~ッ!
突然冷たい風が吹きつけた。ハッと我に返った二人は唇を離す。
「す、スミマセン…。つい…」
「う、ううん。大丈…夫」
今更ながら周りをキョロキョロと見回す。
まばらに観光客が居たが、二人がいたところは草木が影になっていて誰からも見えない。二人はホッと胸を撫で下ろした。
「さ、先に進みましょうか。奥社までまだありますし」
「そ、そうね」
頬が赤いのは冷たい風のせいか、それとも内からのものか…
二人は熱を冷ますかのように、少し速足で遊歩道を進んだ。
色づいた葉が二人の訪れを歓迎するようにひらひらと舞い落ちる。時折誰かが鳴らすクマよけの鐘が、カラ〜ンカラ〜ンと響いていた。