第4.5章 二人の遠出~長野旅行編~
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翌日、朝7:40——。
昴とさくらは東京発の北陸新幹線に乗り込む。
「あと10分程で出発しますよ。何か飲み物でも買ってきます。さくらは何が良いですか?」
「えっと…じゃあ、無糖の紅茶があればお願いします」
荷物を荷台に置くと、昴は一旦車外に出て自販機へと向かう。さくらはボンヤリ窓の外を眺めた。
新幹線のホームを行き交う人はまばらで、スーツを着た人たちが多い。出張だろうか。
「はい。無糖の紅茶ありましたよ」
「あ、ありがとう」
新幹線の車内に戻ってきた昴からペットボトルを受け取り、さくらは微笑む。
昴も席に座ると、買ってきたばかりの缶コーヒーを開けた。
「相変わらずブラックコーヒーなんですね」
ゴクリと喉を鳴らす昴にさくらは話しかけた。
「ええ。たまには違うものをと思うのですが、自販機の前に立つとコレ押しちゃうんですよね」
「ふふふ。まあ甘い飲み物って、私も苦手だから分かる気もします。無糖のカフェオレってなかなか無いから、自販機では私もついお茶ばかりになっちゃう」
ペットボトルの栓をパキッと開けて、さくらは一口飲む。
「ん。すっきりしていて美味しい~」
少しずつ笑顔が増えるさくら。そんな姿を見て、昴も微笑んだ。
程なくして、二人を乗せた新幹線は長野へ向けて発車した。
車内は平日という事もあって乗客は少ない。二人掛けのシートに並んだ二人は、進行方向左側の景色を眺めた。大宮を出たあたりから高いビルはほとんどなくなり、住宅街が多くなる。目にする木々も増え、さくらの表情も穏やかになった。
「朝早かったですし、少し眠りますか?」
「え、ううん。大丈夫。昴さんこそ眠いんじゃないの? 夕べ遅くまでガイドブック読んでたでしょ」
昨日ポアロの帰りに、慌てて買った長野旅行のガイドブック。予備知識が必要だろうと、赤井は遅くまで目を通していた。
「昴さんが眠いんでしょ」
「おや、バレてました? 一人で寝てしまうのもどうかと思って……さくらを道連れにしようかと」
「ふふふ。じゃあ、こんな風に甘えて欲しいのかな」
さくらは昴の肩に頭を寄せる。
「ふむ。なかなか良いですね。これで手を繋げば完璧です。寝過ごさないようにタイマーを仕掛けて……。じゃ、さくらおやすみなさい」
「準備早っ! ふふっ。おやすみなさい」
ホントに眠かったのね……というさくらの声は昴の耳には届かなかった。
***
「昴さん。もうじき着きますよ!」
「…ぅん…」
昴が目を覚ますと、ちょうど新幹線は上田を出たところだった。
「あと10分程で長野です。そろそろ降りる準備をしないと」
「あ、ああ。そうですね」
まだ寝ぼけ顔の昴はメガネを外すと目を擦った。
「ねえ、本気で寝てたでしょ。全然起きる気配がなかったもの。こんな状態で狙われたらどうするのよ」
さくらが昴の耳元でささやいた。
「その時はお前が守ってくれるって思ってたから。安心して寝てしまったよ」
同じくさくらの耳元で、昴は赤井の口調で返事をした。
「も~~。その言い方ズルい!」
真っ赤になって耳を押さえるさくらを見て、昴は声を上げて笑った。
午前9時30分——
新幹線は長野駅に到着した。改札を出ると諸伏警部が待っていた。
「ようこそ長野へ。あれからそんなに時間が経ってないですが、東京は大騒ぎだったようですね」
貿易会社の爆破事件では多くの犠牲者を出し、その後も爆弾の無い爆破予告や、ショッピングモールでの爆破事件等など。
警察の信用問題にまで発展した一連の事件は大きく報道されていた。
当然警視庁ほどではないが、地方の警察にもネットによる誹謗中傷が寄せられていた。
「ええ。実は貿易会社の爆破事件、私たちも居合わせたんです」
「ッ! そうなんですか?!」
昴の言葉に諸伏は驚いた顔をした。
「たくさんの人が私たちの目の前で…。さくらも私も人命救助のお手伝いをさせてもらいましたが、惨状は目を覆うものばかりで…」
「そうでしたか。でしたら、この長野で充分静養されると良い。どこか行きたいところはありますか?」
諸伏は今回コナンが急に「昴さんとさくらさんが旅行に行くからよろしくね」と連絡してきた理由が分かった気がした。
それならば、ゆっくり羽を伸ばして心を休めれば良い。以前のように傷ついたまま飛び続ける必要はないのだから……。
「そうですね…。ガイドブックで見たのですが、戸隠高原は景色が良い所ですか?」
昴が諸伏に問いかけた。
「ええ。とてもキレイな所ですよ。蕎麦も有名ですしね。天の岩戸伝説や忍者など、逸話の多い所です。山も湖も美しい。奥社へと続く杉の並木道は圧巻です」
諸伏はザッと戸隠について説明してくれた。やはりガイドブックよりも、地元に住む人の言葉にはグッと惹かれるものがある。
「わあ、やっぱり奥社まで行ってみたいな」
さくらが上目遣いで昴の顔を見る。ガイドブックを読む限り、今の自分では無理かな、と感じていたからだ。
それでも諸伏警部のお勧めとあれば、やはり行ってみたい。
「奥社までの道のりはきついですが、道は整備されていますから、ゆっくり行けば大丈夫でしょう」
諸伏は笑顔を向けた。実際、女性だけのツアーや小さな子供連れでも、さほど無理なく奥社まで行ける。
「最近は法改正がありましたから、戸隠は『神の国』と言われることもあって、訪れる人も多いですよ」
数か月前の国会で、信仰についての法改正があったことも影響しているのだろう。
元々日本人は信仰心が薄いが、それでもお守りやお札を粗末にできない。海外ほど熱烈でないにしろ、根底には神の存在を肯定している人も多い。メディアでも、戸隠の特集があったばかりだ、と諸伏が教えてくれた。
「今回、私も案内役としてご一緒する予定だったのですが、実は今、大きな事件を追っていまして」
「事件?」
事件と聞くとつい興味をそそられる。昴は諸伏に訊ねた。
「ええ。5億円の金塊強奪事件です。発端は岐阜県で起きた事件でしたが、近県を巻き込んで大きな事件となってしまいました。
お恥ずかしい話なのですが、複数の警察官も裏で繋がっていることが判明しまして…。その関係であまり大きく報道はされていません。
ただ金塊が長野に持ち込まれた、という情報が今朝入ったところでして……」
「なるほど。長野に持ち込まれた金塊を、長野県警が探している…という事ですか?」
昴が諸伏の話を聞き、再び訊ねた。
「ええ。私たちも岐阜県警からの情報を頼りに金塊を捜索中です。
まあ、言ってしまえば高価な探し物…ですね。こちらは気にせず、お二人で楽しんできてください」
諸伏は自分が案内できないからと、レンタカーを借りておいてくれた。
「カーナビも付いていますし、迷子になることは無いと思います。今日はお二人で楽しんできてください。
ああ、そうだ。戸隠から帰ったら一報ください。その時にホテルご案内しますから」
「分かりました。何から何までありがとうございます」
昴は諸伏に礼を言い、レンタカーのカギを受け取る。諸伏に見送られ、長野駅を出発した。
「さてと、それでは戸隠へ行ってみましょうか」
「はい!」
車は駅前の大通りを進み、戸隠方面へと向かう。街中を抜けるとすぐ山が見えた。
「わあ…。ホント長野は盆地なんだね。山が近い」
「長野駅周辺はまだでしたけど、山の上の方は紅葉が進んでいますね」
「うん。戸隠もキレイなんだろうね」
「楽しみですね」
二人を乗せた車は一路戸隠へ向けて、ループ橋を走り抜けた。