第4章 ~両親との記憶~
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「さくらさんの様子はどう?」
警視庁爆破未遂事件の3日後。コナンは工藤邸に顔を出した。
「食事も少ないですが取れていますし、身の回りの事は自分で出来ていますけど…。覇気がないというか…1日のほとんどをボンヤリと過ごしていますよ」
玄関から廊下を通ってリビングへと向かうあいだ、昴は今の状況をコナンに話した。
リビングに入ると、ソファーに座ったままボンヤリと外を眺めるさくらがいた。
「さくらさん、こんにちは」
コナンはあえて笑顔で話しかける。
「…コナンくん…いらっしゃい…」
さくらの顔に笑顔はなく、一瞬だけコナンの方へ視線を向けて声を発すると、その視線は再び外へと向けられた。
その様子を見て昴もコナンもため息をつく。
「あれ以来何も話さないので、さくらの中で何が起こっているのか分からないんですよ」
「記憶が混乱しているかどうかって事?」
「ええ。あの様子から察するに、混乱してパニックになっている訳ではないようですが…」
「確かに…」
さくらは《死》に敏感だ。仇とはいえ、その死にショックは受けているだろう。病院で泣いていたことからもそれは間違いない。
ただ、キョファン貿易の爆破事件の直後、救命処置などをしたことがショック療法になったのか、あれ以来血液に対する過剰反応は落ち着いている。
それ故に、ずっとボンヤリしている原因が何なのか分からない。
「きっと事件をきっかけにたくさんの事を思い出したり、伝えられたりしたから……心の中を整理する時間が必要なのかもね」
「確かに……そうかもしれません」
コナンの言葉には説得力がある。
本来なら20年の間に経験し、時間の経過とともに徐々に整理される事が一気に押し寄せたのだ。そう易々と適応は出来ないだろう。
今はそっとしておくのが一番かもしれない。
世間的には、すべての爆破事件はそれぞれ『別の犯人によるもの』として、公安は処理をした。
爆弾のない予告だけの事件は、愉快犯や模倣犯によるものとして現在も捜査が続いている。
特に裁判所を出る際に射殺された男は、過去に半グレ集団に所属していたため、爆破予告そのものがヤクザや半グレ絡みの事件として現在捜査中だ。
キョファン貿易の爆破事件は当初通り、新手のテロ組織では? と憶測が飛んでいた。
ショッピングモールと梨善町ビルの爆破事件は、草壁と妹尾が違法カジノに出入りしていたことで、海外マフィアに目を付けられ、殺害されたのではと一部報道が出た。
そして警視庁の事件は未遂事件として公表された。
警察に恨みを持つ犯人が爆発物を仕掛けるところを、警戒中の警察官が発見。追跡された犯人は逃走中に持病によって急死したこと。
その爆発物も無事に処理・回収されたと報道されたことで、一連の警察叩きはだいぶ下火になっていた。
「事件も終わったんだし、ゆっくり見守ってあげようよ」
「ええ。そうですね」
昴とコナンは顔を見合わせ微笑んだ。
***
「カーディナルの最期について、何か分かったか?」
アジトに呼ばれたバーボンは、ジンにそう問われた。
「ええ。かなり手がかかりましたが調べてきましたよ。
カーディナルは…末期の肝臓ガンで余命は1か月ほどでした。直接の死因は『食道静脈瘤破裂』によるものです。肝機能が低下することで起こりやすくなるそうです。
警視庁に潜入した時にはすでに体調が悪かったようで、挙動不審で職質され、逃走を図った際に大量吐血したようです」
「ふん。やはり体調が悪かったのか……」
「気付いていたのですか?」
ジンの言葉にバーボンが反応した。
「顔色が悪いとは思っていた。スキのない男が珍しくボンヤリしていたのも気になった。
だが俺が知る限りでは、今までミスをしたことは無い。こちらも信用しすぎていた」
ジンはソファーに座ったまま腕を組み、何かを思案しているようだった。
「まあいい。一番の目的だったオドゥムの資金源を断ち、諜報員を消す事は出来た。
うるさいハエどもも世間に叩かれ、見世物としては十分楽しめた」
胸ポケットからタバコを出すと、ゆっくりと火をつける。
それを見てウォッカが灰皿を用意した。
「しばらく大きなヤマは無い。オドゥムの監視は続けるが、奴らも今回は痛手だっただろう。次の一手はゆっくり考える」
ご苦労だったと言われ、バーボンは踵を返す。
部屋を出ようとしてドアノブに手を掛けた時、ジンがぼそりとつぶやいた。
「ラスティーにもゆっくり休めと伝えておけ。そのうち抱いてやる、とな」
「ッ! そんなことを言って……。ベルモットに叱られますよ」
バーボンは動揺を気付かれぬよう、軽口をたたいて部屋を出た。