第1章 ~運命の再会そして…~
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**
一通り儀式を終え、さくらと赤井は並んで布団に入った。
赤井は自分の胸の音を聞かせるように、さくらを抱きしめる。数年前と同じように頭を撫で背中をさすり、子どもをあやすようにトントンと背中を叩くと、やがて規則正しい寝息が聞こえた。
(ああ、良かった。眠れたんだな…明日には熱が下がると良いんだが…)
そう思ったところで赤井もまた、眠りに落ちた。
**
朝———
窓から小鳥のさえずりが聴こえる。
こんなに満ち足りた気持ちになれたのはどれくらいぶりだろう。
さくらが重たいまぶたをやっと開けると、そこには穏やかに眠る赤井の顔があった。
(キレイな顔をしているなぁ…)
触れたいと思ったのだが、さくらの体は赤井にがっちりホールドされていた。無理に動かせば赤井も起きてしまう。
ここ数日たくさん心配をかけてしまい、彼はほとんど寝ていないようだった。一緒に寝て欲しいとお願いしたのは、彼の生存を確かめたい、そして彼にも休んで欲しい。そんな気持ちからだ。
もう少しこのまま、彼の顔を見ながら寝てようかな。そう思ったとき、赤井の左手がさくらの右頬に触れた。
「そんなに見つめていたら、恥ずかしくて目が開けられないだろう」
目を瞑ったままつぶやく。
その言葉にさくらはクスクス笑って、
「恥ずかしがらずに見せてよ。私秀一さんの瞳が大好きなの」
「?!」
さくらの言葉に、赤井は自身の額をさくらの肩に寄せた。
「お前、ほんっとに…ッ!」
「え?」
「…何でもない…」
「いやいや、なんでもなくないでしょう。顔見せてください」
さくらは真面目にお願いするが聞き入れてもらえない。
(瞳が大好きって…そんなこと言われて《嬉しい》なんて…。今の自分の顔は、きっとひどいことになっている。絶対見せられない)
さくらと赤井の攻防はしばらく続いた。
少し冷静になれたところで、ようやくさくらと顔を合わせた。
「やっと見せてくれましたか…」
さくらが拗ねたように頬を膨らませた。
「あんなこと言うさくらが悪い」
「あんなこと?」
どうやら全くの無自覚らしい。
「さくら、俺だって人間なんだよ。キレイな女性に例え瞳であっても『大好き』なんて言われたら…」
そこまで言ってふいっと顔を背ける。
そしてさっきよりずいぶん小さな声で、
「…照れてしまうんだ」とつぶやいた。
クールなライからは想像できない。ずいぶん可愛らしい態度を見てさくらは微笑む。赤井の体に抱きついた。
「そんな秀一さんが大好きです」
「お前、全然わかっていない」
「わかっていますよ」
「じゃあ、面白がっているだろう」
「バレました?」
さくらは楽しそうに笑う。
こんなふうに笑うのはどれくらいぶりだろうか。
「ふふふ。笑ってごめんなさい。でも嬉しくて。こんな秀一さんは私しか知らない。なんかすごい優越感だわ」
「そうだな…。お前しか知らないよ」
さくらの笑顔を見て赤井も嬉しそうに笑った。
変装をしてくると伝え、赤井はさくらの部屋を出た。
今日は新出が往診に来る。薬が効いたのか、風邪の方も快方に向かっているようだ。夕べと今朝のやり取りを見る限りでは、少しずつさくらも明るさを取り戻している気がする。
ふと部屋のドアへと視線を向けた。
(今日はPTSDの治療をするのだろうか。いったいどんな治療になるのか…心配だな…)
『彼女の中にある闇を全て受け止める覚悟』
そう新出に言われたことを思い出し、赤井は深いため息をついた。
こほっ!こほっ!
まだ咳は出るが、昨日よりはだいぶ良い。熱もほとんど下がったようだ。
さくらは窓際に近づきカーテンを開けた。今日は天気が良い。
(温めるだけなら…朝食の準備出来るかな?)
客室のドアを開けて廊下に出た。
とりあえずそのまま廊下を進み、ダイニングへと入った。
冷蔵庫には昨日博士たちが持ってきてくれたお粥やキッシュ、具だくさんの野菜スープが入っている。
スープはコンロにかけて温めて…。キッシュはアルミホイルに包んで、オーブンで軽く温めよう。
そこまでは体も問題なく動いた。
お皿とスープカップを探していたとき、グラッとめまいがした。これはちょっとマズイ。そう思ってコンロの火を止め、壁をつたいながらリビングにゆっくり戻る。
ソファーまでたどり着いて倒れ込んだ。呼吸を整え、めまいが治まるまで横になる。これ以上は本当に心配をかけたくない。
やがてめまいは治まったが、客室に戻る余力はなさそうだ。このままソファーに座って昴を待つことにした。
しばらくすると変装を終えた昴がリビングに顔を出した。
「スープのいい香りが……。?! さくら!」
ソファーに座るさくらを見て駆け寄る。
「どうしました? 顔色が真っ青だ」
「体調良さそうだったので、ここまで歩いて朝食を温めようと思ったのですが、これだけで疲れちゃいました」
「無理をしてはダメですよ。部屋に戻りますか?」
「いいえ、ここでしばらくこうしていれば大丈夫。寝てばかりではかえって体力落ちそう…」
「分かりました。ツラい時はすぐに声をかけてください」
昴はそれだけ言うとダイニングに向かった。
キッシュの温まり具合を確認して、昴はもう一度リビングに行き、さくらに声をかける。
「何か食べられますか? お粥温めましょうか?」
「そろそろお粥にも飽きてきました。野菜スープ少し飲みます」
「分かりました」
朝食の準備が整うと、昴はさくらの肩を抱きながらゆっくり連れてきた。ここでふたりで食事をするのは初めてだ。
いただきますと挨拶をして、さくらは野菜スープを味わう。昴はその様子を自身も食事を取りながら、注意深く見守った。
「昴さん」
不意に名前を呼ばれた。
「ご自身の食事に集中してください。子どもではないので、こぼしたりひっくり返したりしませんよ?」
さくらは笑顔を見せながら赤井に声をかけた。
(じっと見すぎたか…)
「それは失礼しました」
昴は肩をすくめて謝罪した。
久しぶりにお粥以外を口にしたせいか、意外と食べることができた。キッシュもほんの少し取り分けてもらう。固形物を口にしたのは何日ぶりだろう。
「少し食べられるようになって安心しました」
あからさまに安堵の表情を向けられ、さくらは照れたように下を向いた。
一通り儀式を終え、さくらと赤井は並んで布団に入った。
赤井は自分の胸の音を聞かせるように、さくらを抱きしめる。数年前と同じように頭を撫で背中をさすり、子どもをあやすようにトントンと背中を叩くと、やがて規則正しい寝息が聞こえた。
(ああ、良かった。眠れたんだな…明日には熱が下がると良いんだが…)
そう思ったところで赤井もまた、眠りに落ちた。
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朝———
窓から小鳥のさえずりが聴こえる。
こんなに満ち足りた気持ちになれたのはどれくらいぶりだろう。
さくらが重たいまぶたをやっと開けると、そこには穏やかに眠る赤井の顔があった。
(キレイな顔をしているなぁ…)
触れたいと思ったのだが、さくらの体は赤井にがっちりホールドされていた。無理に動かせば赤井も起きてしまう。
ここ数日たくさん心配をかけてしまい、彼はほとんど寝ていないようだった。一緒に寝て欲しいとお願いしたのは、彼の生存を確かめたい、そして彼にも休んで欲しい。そんな気持ちからだ。
もう少しこのまま、彼の顔を見ながら寝てようかな。そう思ったとき、赤井の左手がさくらの右頬に触れた。
「そんなに見つめていたら、恥ずかしくて目が開けられないだろう」
目を瞑ったままつぶやく。
その言葉にさくらはクスクス笑って、
「恥ずかしがらずに見せてよ。私秀一さんの瞳が大好きなの」
「?!」
さくらの言葉に、赤井は自身の額をさくらの肩に寄せた。
「お前、ほんっとに…ッ!」
「え?」
「…何でもない…」
「いやいや、なんでもなくないでしょう。顔見せてください」
さくらは真面目にお願いするが聞き入れてもらえない。
(瞳が大好きって…そんなこと言われて《嬉しい》なんて…。今の自分の顔は、きっとひどいことになっている。絶対見せられない)
さくらと赤井の攻防はしばらく続いた。
少し冷静になれたところで、ようやくさくらと顔を合わせた。
「やっと見せてくれましたか…」
さくらが拗ねたように頬を膨らませた。
「あんなこと言うさくらが悪い」
「あんなこと?」
どうやら全くの無自覚らしい。
「さくら、俺だって人間なんだよ。キレイな女性に例え瞳であっても『大好き』なんて言われたら…」
そこまで言ってふいっと顔を背ける。
そしてさっきよりずいぶん小さな声で、
「…照れてしまうんだ」とつぶやいた。
クールなライからは想像できない。ずいぶん可愛らしい態度を見てさくらは微笑む。赤井の体に抱きついた。
「そんな秀一さんが大好きです」
「お前、全然わかっていない」
「わかっていますよ」
「じゃあ、面白がっているだろう」
「バレました?」
さくらは楽しそうに笑う。
こんなふうに笑うのはどれくらいぶりだろうか。
「ふふふ。笑ってごめんなさい。でも嬉しくて。こんな秀一さんは私しか知らない。なんかすごい優越感だわ」
「そうだな…。お前しか知らないよ」
さくらの笑顔を見て赤井も嬉しそうに笑った。
変装をしてくると伝え、赤井はさくらの部屋を出た。
今日は新出が往診に来る。薬が効いたのか、風邪の方も快方に向かっているようだ。夕べと今朝のやり取りを見る限りでは、少しずつさくらも明るさを取り戻している気がする。
ふと部屋のドアへと視線を向けた。
(今日はPTSDの治療をするのだろうか。いったいどんな治療になるのか…心配だな…)
『彼女の中にある闇を全て受け止める覚悟』
そう新出に言われたことを思い出し、赤井は深いため息をついた。
こほっ!こほっ!
まだ咳は出るが、昨日よりはだいぶ良い。熱もほとんど下がったようだ。
さくらは窓際に近づきカーテンを開けた。今日は天気が良い。
(温めるだけなら…朝食の準備出来るかな?)
客室のドアを開けて廊下に出た。
とりあえずそのまま廊下を進み、ダイニングへと入った。
冷蔵庫には昨日博士たちが持ってきてくれたお粥やキッシュ、具だくさんの野菜スープが入っている。
スープはコンロにかけて温めて…。キッシュはアルミホイルに包んで、オーブンで軽く温めよう。
そこまでは体も問題なく動いた。
お皿とスープカップを探していたとき、グラッとめまいがした。これはちょっとマズイ。そう思ってコンロの火を止め、壁をつたいながらリビングにゆっくり戻る。
ソファーまでたどり着いて倒れ込んだ。呼吸を整え、めまいが治まるまで横になる。これ以上は本当に心配をかけたくない。
やがてめまいは治まったが、客室に戻る余力はなさそうだ。このままソファーに座って昴を待つことにした。
しばらくすると変装を終えた昴がリビングに顔を出した。
「スープのいい香りが……。?! さくら!」
ソファーに座るさくらを見て駆け寄る。
「どうしました? 顔色が真っ青だ」
「体調良さそうだったので、ここまで歩いて朝食を温めようと思ったのですが、これだけで疲れちゃいました」
「無理をしてはダメですよ。部屋に戻りますか?」
「いいえ、ここでしばらくこうしていれば大丈夫。寝てばかりではかえって体力落ちそう…」
「分かりました。ツラい時はすぐに声をかけてください」
昴はそれだけ言うとダイニングに向かった。
キッシュの温まり具合を確認して、昴はもう一度リビングに行き、さくらに声をかける。
「何か食べられますか? お粥温めましょうか?」
「そろそろお粥にも飽きてきました。野菜スープ少し飲みます」
「分かりました」
朝食の準備が整うと、昴はさくらの肩を抱きながらゆっくり連れてきた。ここでふたりで食事をするのは初めてだ。
いただきますと挨拶をして、さくらは野菜スープを味わう。昴はその様子を自身も食事を取りながら、注意深く見守った。
「昴さん」
不意に名前を呼ばれた。
「ご自身の食事に集中してください。子どもではないので、こぼしたりひっくり返したりしませんよ?」
さくらは笑顔を見せながら赤井に声をかけた。
(じっと見すぎたか…)
「それは失礼しました」
昴は肩をすくめて謝罪した。
久しぶりにお粥以外を口にしたせいか、意外と食べることができた。キッシュもほんの少し取り分けてもらう。固形物を口にしたのは何日ぶりだろう。
「少し食べられるようになって安心しました」
あからさまに安堵の表情を向けられ、さくらは照れたように下を向いた。