第1章 ~運命の再会そして…~
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5人の男たちと外の見張りの者たちが全員立ち去ったのを確認して、安室はラスティーに声をかけた。
「大丈夫ですか?随分顔色が悪いですが…。奴らは中国語を話していました。何を話していたのかわかったのですか?」
ラスティーは一時目を瞑り、1,2度深呼吸をすると静かに話し始めた。
「最初にクーラーボックスを持っていた男は中国マフィアの幹部です。そして今行われた取引は…臓器売買ですよ」
「?! 臓器売買?!」
「ええ、日本国内で臓器売買が行われています。
おそらく先ほどの話からすると、中国の孤児や誘拐などで集めた人をタンカーなどに乗せて日本近海まで連れてくるんです。依頼があれば検査をして適合する人を日本近海で殺し、臓器を取る。不要になった体は海に捨てるんです。
そうすれば、臓器移植に必要なスピードと、死体の処理がいっぺんに済みますから」
ラスティーの説明に安室は声も出なかった。そんな残忍な事がこの日本で行われているというのか。
怒りと悲しみで唇を噛み締める。
だがそれ以上に未だに震え、強く握られていたラスティーの手を見て、安室は違和感を覚えた。
翌日、今回の事をジンに報告した。
「中国のマフィアに臓器売買か。えげつねーことをしているが、こちらに害はなさそうだ。明後日の取引は予定通り行う」
ご苦労だったと言われ、電話を切る。安室はなんとなく釈然としなかった。しかし与えられた任務は終わり、これ以上の深追いは危険だと判断する。
気持ちを切り替え、ポアロのアルバイトとして笑顔を作った。
カランカラン……
入店を知らせる鐘の音が聞こえ、
「いらっしゃいませ」と声をかけると、そこに立っていたのは昨日一緒に港の倉庫に潜入したラスティーだった。
「カフェオレをください」
そういってテーブル席についた。
「少々お待ちください」
安室はカウンター裏に入る。チラリと彼女の姿を確認した。
黒いスキニーパンツに黒いスニーカー。オーバーサイズの白ワッフルTシャツというラフな服装。肩より少し長い明るい栗色の髪を少し高い位置でポニーテールにしていた。
昨日は暗い時間に会っていたし、任務の前だったので意識していなかったが、こうやって見てみると彼女はいわゆる美人さんだ。その証拠に店内の男性客が一斉に彼女を見ている。
任務はひとまず終わったはずだ。安室はラスティーが何をしに来たのか分からず、監視役として様子を見に来たのかと思っていた。
カフェオレを持って彼女に近づき、お待たせしましたと声をかけ、カップをテーブルに置いた。するとラスティーは安室にしか聞こえないくらいの声で、
「今日は何時までバイトですか?」と訊ねた。
「今日は5時までです」
少し緊張した声で安室が答える。それに気付いたのか、ラスティーは優しい笑顔を向けた。
「では5時半に昨日と同じカフェで会えますか?」と、さらに訊ねた。
何を企んでいるのだろうと思いながらも安室は、
「良いですよ」と返事をした。
5時20分。
昨日と同じカフェ。昨日と違うのはテイクアウトではなく店内のテーブル席で、安室はラスティーを待っていた。
店内のデジタル時計が5時24分に変わったとき、ラスティーが店にやってきた。飲み物を注文し、安室のいるテーブルに近づく。
「お待たせしてごめんなさい」
「いえ、まだ約束の時間まで5分あります。僕が早く着きすぎました」
安室の言葉にラスティーが少しだけ微笑んだ。その笑顔を見て、安室はまたほんの少し違和感を覚えた。
「ところでラスティー…」
コードネーム以外の名を知らないので、安室はそう呼びかけた。
「さくらでいいわ」
「え?」
「私の名前。星川さくら。あなたも安室透さんでしょ。ラスティーという名前も気に入っているけどね」
「分かりました。外でさすがにコードネームはナシですね。でも、そのカクテル、好きなんですか?」
「ええ。このカクテル大好きなの」
今度一緒に飲みますか?
そんな雑談にも応じながら相手の様子を伺う。
「では改めましてさくらさん。わざわざ僕を呼び出したのはなぜですか?」