第4章 ~両親との記憶~
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梨善町ビル爆破事件から約9時間後の夜8時。
警視庁捜査一課——
目暮警部のデスクに、報告書を手にした白鳥警部が近づいた。
「白鳥くん。現在分かっている事を報告してくれ」
「は、はい。梨善町のビル6階で爆発被害にあったのは、都内でギャラリーなどを経営している会社です。
死者は2名。そのうちの一人はこの会社の社長《妹尾 俊彦/せのお としひこ》です」
「もう一人は?」
「もう一人はまだ…身元が分かっていません」
白鳥警部の報告に、目暮警部は怪訝そうな顔をした。
「会社の社員の誰かなんじゃないのか? 調べればすぐに分かりそうだが……。
で、もう一軒のショッピングモールの方はどうなっている?」
「ショッピングモールの現場検証はほぼ済みました。
爆弾が仕掛けられていたのは、このショッピングモールの事務所が使っていた物置です。事務所のすぐ隣にあったため、その事務所も被害が出ています」
白鳥警部は部下の報告書の目を落としながら、重要な部分をかいつまんで報告する。
「ショッピングモールでは警察官以外の被害者は出ていないんだろう?」
「ええ。爆破予告が出ていましたから、一般人は皆避難していました。
マネージャーの《草壁康夫/くさかべ やすお》も責任者として現場にはいましたが、安全なところで待機してたので無事です」
「で、そのマネージャーから何か話は聞いたのか?」
「それが…今日の朝出社して、ショッピングモールの仮事務所で事後処理をしていたところまでは目撃されていますが、その後姿を見た者がおらず連絡がつかないそうです。
我々ももう少し話を聞こうと思って何度か連絡をしているのですが……」
困り顔の白鳥警部を見て、目暮警部もため息をついた。
都内で頻発していた爆弾のない予告事件。
予告のなかった貿易会社の爆破事件。
予告後爆発の有ったショッピングモールの事件。
予告のなかった梨善町ビルの爆破事件。
《爆破》というキーワードのみで繋がったこれらの事件。
同一犯か、それとも模倣犯を含む全くの別人か。
貿易会社の被害者は多くが亡くなっているうえに、ショッピングモールの責任者《草壁》が所在不明。
事情聴取もほとんどできていない。
全てが後手に回っているような気がしていた。
(管理官がおっしゃる通り、警察組織全体の士気が下がっている。このままでは警察の威信にかかわる)
目暮警部は焦りを感じた。
「と、とにかく亡くなった人物の身元確認と、草壁の所在を明らかにした方が良さそうだ。
一連の爆破や予告事件と関係があるかどうか…早急に調べるんだ」
「はッ!」
白鳥警部がそう答えて敬礼をした時、彼の胸元に入ったスマホが着信する。
「あ、失礼します」
白鳥は断りを入れて着信にタップする。
電話口から聞かされた報告に、彼の顔色が変わった。
「? どうしたのかね? 白鳥くん」
電話を切った白鳥警部に目暮警部は不思議そうに問いかける。
「たった今、梨善町ビルの被害者の身元が分かったと連絡が……。
亡くなったのは…ショッピングモールのマネージャー《草壁康夫》です」
「な、なんだとっ!」
思ってもみなかった人物の名前に、目暮警部はそのまま言葉を失った。
「つ、つまり…今回のビル爆破と、ショッピングモールの爆破は何か繋がっている可能性がある…と言う事か?」
「その可能性が…出てきました」
ふたりはお互いの顔を見たまま押し黙る。
同一犯の可能性。証拠も証言も何一つ得られていないのにも関わらず、突きつけられた現実。二人の間には重い空気だけが流れて行った。
***
翌日——。
「りお! なんか焦げてるぞ!」
「え……あっ! しまった」
朝食の準備をしていたりおは、焦げた卵焼きを見てため息をついた。
「あ~あ…焦がしちゃった」
「珍しいな。りおが失敗するなんて。ボーッと考え事でもしていたのか?」
コーヒー豆を挽きながら赤井はりおに声をかけた。
「う、うん…。なんか…頭にモヤがかかったみたいで。何か思い出せそうなんだけど…」
りおは両手でこめかみに手を当てると、目を閉じクルクルとマッサージをした。
「無理するな。お前はすぐにそうやって思いつめる……。
体に良くないぞ。昨日だって青い顔して安室くんを心配させたんだろう?」
「あ、そうでした。ごめんなさい」
りおは肩をすくめて謝ると、フライパンから卵焼きを取り出した。
「ちょっと焦がしただけだから、ここだけ取れば大丈夫そう。少し香ばしいにおいがするけど…許してね」
「ああ。問題ないさ」
赤井がりおに微笑みかける。
二人は朝食の準備を再開した。
「そういえば。梨善町ビルの被害者、身元が分かったらしいな」
味噌汁のお椀を置いた赤井がりおに声をかけた。
「うん、そうみたいね。公安は知っていたけど…。たぶん《ゼロ》が一課に情報を下ろしたんだよ」
りおは焦げを取った卵焼きを食べながら答えた。
「貿易会社の爆破、ショッピングモールの爆破、梨善町ビルの爆破。すべてカーディナルによるもの。
爆破予告も、組織がオドゥムの諜報員をあぶり出すための罠だった。
しかもどれも決定的な証拠は残っていないわ。
だから、組織の存在すらまだ知らない一課が、カーディナルにたどり着くのはほぼ不可能。
《ゼロ》はおそらく公安ですべてを対処する気だと思うけど…。
今回は警察の士気や信用にも関わるから、一課にも情報を下ろして泳がせているんだと思うわ。
市民の目から見ても《警察は一生懸命やってる》って見えるように」
「なるほど」
あとは警察に仕掛けられるという爆弾を見つけ、カーディナルを逮捕できれば警察の信用は上がるはずだ。
「私が出来ることは…どこに爆弾を仕掛けられるか…どうやって仕掛けるか…を考えることくらいかな。
まあ、そこは安室さんも考えているとは思うけど」
「そうですね。《警察》といっても、警察庁なのか警視庁なのか分かりませんし…。
あんなセキュリティーの厳しい所に、どうやって仕掛けるつもりなのか…」
「そうなのよね。あとは…カーディナルの情報がガセネタではない事を祈るだけだわ」
「あなたの話を聞く限り、それは無いとは思いますが…。
まあ、安室さんも分かっているでしょう。彼の事ですから心配いらないですよ」
昴の言葉にりおはうなずいた。
「ねえ、昴さん。後で散歩行かない? この前行った公園」
洗い物を済ませたりおは昴に声をかけた。
「ええ。良いですけど。あの公園が良いのですか?」
「うん…ちょっと気になるの。黄色い落ち葉。あの公園も銀杏(いちょう)の木が多かったでしょう? 何か思い出すかなって思ってね」
「ッ!」
りおの言葉に、昴の表情が厳しくなる。
「どうしたの? 昴さん」
「公園はやめましょう。思い出すのは良いですが……。
コナンくんといた時のように動けなくなったらどうするんです? 公園からはここまで距離もありますし。
私がおんぶして帰ってきても良いなら構いませんが」
「えっ…それはちょっと…。確かに…そうね。分かったわ。やめておく」
昴が言うように工藤邸から公園まで距離がある。また具合が悪くなれば迷惑をかけてしまうだろう。
りおはすぐに納得した。
(でも、このモヤモヤとした感じ。ざわざわとした気持ち悪さ…いったい何なの…?)
言葉とは裏腹に、りおの表情は暗かった。