第4章 ~両親との記憶~
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「ああ。私は大抵1階か2階の、建物の構造上一番負荷がかかっている場所、もしくは脆弱な場所に仕掛ける。
そうすれば少ない爆弾で効率的に建物を全壊させられるからね。今回もそうだ」
カーディナルはラスティーの視線に気づき、目を合わせた。
「今回仕掛けた場所に、このような装置は無かった。
大方、物入やトイレなどに置いてあったのだろう。
建物が全壊してしまえば、せいぜい《この辺りにあった》としか分からないからね」
カーディナルの説明を聞いて、ラスティーは視線をPC画面へ向けた。
「この爆破装置で使われた部品が、ここの組織では使わない、旧式のしかもロシア製…もしくはソ連製だったりすると、国内の組織ではなく、C国を含む外部組織の陰謀だと証明できる…。そういう事?」
「そうだ。出来ればオドゥムが、いやC国が関わっていると警視庁へリークできるか?」
カーディナルの問いかけにラスティーは毅然と答えた。
「日本の警察もバカじゃないわ。爆破装置が見つかれば、どこの誰が仕掛けた物か調べるはずよ。私たちが首を突っ込まなくても……」
「確かにそうだ。だが今回は先手必勝。オドゥムの仕掛けたトラップに引っかかるわけにはいかない。
万が一装置の形だけで公安警察が国内の組織によるテロ…と判断すれば、偽札作りの証拠隠滅を図ったと取られかねない。
そうなれば警察からの締め付けもかなり厳しくなるだろう。それこそオドゥムの思うつぼだ」
カーディナルの説明に、ラスティーも「なるほど」と一応の納得をした。
「分かったわ。C国が関わっている可能性がある、と匂わせる程度にリークをするというのでどうかしら?
完全にC国のテロとしてしまえば、両国の関係悪化を招いてしまう。それでは奴らに日本を攻撃する口実を与えることになるわ。
日本に拠点を置く組織にとって、それはプラスにはならない」
ラスティーの見解にカーディナルは感心した。
「なるほど。君はかなり頭が回るようだ。確かにその通りだな。
日本がC国の挑発に乗るとは思えないが、C国はそれを理由に威嚇してくるだろう。度を越えればアメリカも黙ってはいまい。
国家間の緊張が高まれば、当然空港や港での人や物の出入りは厳しく制限される。
日本国内での取引などは難しくなるだろう。
組織にしてみればそれも痛手だな。
私としては、組織にマイナスになる事さえ避けてもらえれば十分だ。判断は君に任せよう」
カーディナルの言葉を聞き、ラスティーは残骸をズームすると何か手がかりがないか丹念に調べていく。
カーディナルも画面を食い入るように見つめた。
「ねえ、カーディナル! ココ見て!」
しばらくしてラスティーが叫んだ。
「ん?」
カーディナルは目を凝らす。ラスティーは怪しいと睨んだ所をさらにアップにした。
「焦げていて良く読み取れないが…何かの番号か?」
「画像をもう少し鮮明にしてみるわ」
ラスティーがPCを操作すると、番号の一部が画面に映し出された。
それをすぐさま調べる。
ラスティーとして持っている膨大な情報から、丁寧に検索を掛け候補を絞っていく。
やがて、ある装置の画像がヒットした。
フォルムも黒焦げになった写真の物とほぼ同じだ。
完全なシリアル番号がその画像の下に記載されている。
「このシリアル番号…旧式のロシア製だ。
こんな古い型を使っているところは、海外の組織でもわずかだ。よくやった」
「じゃあこのデータを保存するわ。念のため、他の写真も確認して良いかしら?」
「ああ。そうしてくれ」
データをUSBメモリに保存すると、今度は写真のデータを一つずつ確認していく。
何枚目かをクリックした。
「ッ!!」
爆破装置のすぐわきに人が写っていた。
正確には——人の一部だったもの、が。
黒焦げになった部分とそうでない部分。損傷の激しい遺体は見るに堪えなかった。
「ああ、その写真。この会社の社長だよ。ほら、指輪をしているだろう。かなり特徴的な指輪だ。
爆破前に社長がこの指輪をしている事を私が目視した。間違いない。今回、彼の死亡確認も兼ねて写真を撮りに行ったからね」
カーディナルの言葉にゾワリと背筋に寒気が走る。
胃がキュウと締め付けられ、何かがせりあがった。
「…っう…ぐっ…」
備え付けの小さなシンクに慌てて顔を突っ込んだ。
「ラスティーッ!?」
驚いた様子のカーディナルが駆け寄り、ラスティーの背中をさすった。
どれくらいか時間が過ぎ、ようやく吐き気が落ち着く。
ラスティーが口をすすぐと、カーディナルが近くにあったタオルを手渡してくれた。それで顔を拭き、カーディナルに支えられながらソファーへと座る。
「ごめんなさい。見苦しい所を見せてしまって」
「いや。ベルモットが心配していたのはこれだったんだな」
「ええ……。彼女は私の事、良く分かっているから」
「死体がダメなのかい?」
「死体というより、死そのものといった方が良いかしら。それで良くココに居るなと思ったでしょ。昔は…こんなじゃなかったのよ…」
カーディナルは、浅い呼吸をして顔面蒼白なラスティーの顔を心配そうに見つめる。
汗で栗色の髪が顔や首筋に張りつき、アンバーの目元は苦しさでわずかに涙が溜まっていた。
その時ふと不思議な感覚を覚えた。
(この娘…どこかで?)
「どうかした?」
ラスティーの声にハッと我に返った。
「あ…いや。もう吐き気の方は良いのか?」
「ええ…。大丈夫」
ソファーからゆっくり体を起こすと、ラスティーはPCデスクへと近づく。
画面を見ずにそのまま閉じた。
「ごめんなさい。これ以上は見れないみたい。
とりあえず証拠を掴んだし、この画像とシリアルナンバーを警視庁に匿名で送っておくわ」
「ああ。頼んだよ。ジンへの報告は私がしておこう。ゆっくり休んでくれ」
そう返事をして、カーディナルはラスティーの部屋を出て行った。
「終わったか?」
部屋に入ってきたカーディナルにジンが問いかけた。
「さすがだよ。たった1時間ほどで解析してしまった。ただ…死体に…いや死に対して何か嫌悪感を持っているようだが」
カーディナルの言葉にジンは「ああ」と言ってタバコを取り出した。
「ヤツはケンバリから連れてきた戦闘員だった。
そこでたくさんの仲間に死なれてな。それ以来『死』に敏感になっちまったんだよ。
【殺し】は出来ないが戦闘能力も高いし、観察力・洞察力・情報収集力、すべて兼ね備えたサラブレットさ。
一つぐらい欠点があったほうが可愛げがあるだろ」
ニヤリと笑ってタバコの煙を吐き出した。
「なるほど。ジンのお気に入りか。で、君はあの娘を抱いたのかい?」
カーディナルの質問を聞いて、ベルモットがキッと睨んだ。
「あの子を傷つけるようなマネは私が許さない。
これ以上傷つけたら…あの子は本当に自らを殺すわ」
ベルモットは怒りを隠そうともせず、ジンとカーディナルに殺気を向けた。
「なるほど。彼女のお気に入りでもあるのか。それでは簡単に手を出すわけにはいかないようだね、ジン」
愉快そうに笑いながらカーディナルがジンに問いかける。
「ま。いずれ…な」
ジンは片方の口角を上げ、タバコを灰皿に押し付けた。
そんなジンを、ベルモットは睨みつけていた。