第4章 ~両親との記憶~
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赤井がしてくれた事と同じように、そっと撫でて血を洗い流す。乾いて黒っぽくなっていた血が、湯に溶けて赤い色を取り戻すとドキリとした。だがその血もあっという間に流れて無くなってしまった。
お互い自分の体と頭を洗い、シャワーを掛け合う。
再びシャワーヘッドをフックにかけると、湯は仲良く二人の体に掛かった。
「ふ~。恥ずかしかったけど、時間半分でシャワーが浴びれたわね」
赤井の顔を見上げてりおはニッコリ微笑んだ。
「……」
赤井は何も言わず、りおの体を抱き寄せる。そっとキスをした。
「?!」
赤井の大きな左手はりおの腰を抱き、右手は後頭部を押さえる。完全にホールドされて、りおは身動きが取れない。
「ん…ぅん…は…」
りおが動けない事を良いことに、赤井はりおの弱い所ばかりを舌先でなぞった。
「好きな相手と裸で抱き合ってキスをしたら……わかるだろ?」
キスの合間につぶやいた赤井の言葉に、りおは焦った。
「ちょ、ちょっと! せっかく時短でシャワー浴びたのに…これじゃあ意味な…ぅんッ!」
腰に絡めていた左手でりおの背中をそっと愛撫すると、明らかに色のある声が上がった。
「ほら、りおも感じてる。余計な事を考えなくて良いから。俺にすべてを預けるんだ」
耳元でささやかれる赤井の言葉に、りおはゾクリと身を震わせた。
「しゅ、秀一さん…それ…ずるい…よ…」
シャワーの湯が降り注ぐ中、二人はキスを繰り返す。
溶けてしまうようなキスと愛撫に、りおは何も考えられなくなると、そのまま全てを赤井に委ねた。
***
「おかしいなぁ…もっと早く食事にありつけるはずだったのになぁ…」
ジロリと赤井を睨むりお。
全く視線を合わせようとしない赤井。
すっかり冷たくなった食事を温め直し、食べ始めたのはつい5分程前だ。
「こ、ここのデリ美味いだろ。この前ジョディに教わったんだ」
話題を変えようとデリの話を振ってみるが、りおの表情は変わらない。
(爆破事件の後だったから、りおを一人にしない方が良いと思って一緒にシャワーを浴びたが…思いのほか盛り上がってしまった…)
ちょっとは反省しているが、あの状況でりおを抱かない選択肢はないだろう。自分だって男だ。
これでも理性を総動員して、りおの負担を考え短く済ませた。そこは褒めて欲しい。
相変わらず冷たい目で自分を見つめるりおを見て、赤井はため息をつく。
「俺が悪かったから…。そろそろ機嫌直してくれ」
赤井が参ったと眉をハの字にして謝った。
赤井の謝罪の言葉を聞いて、りおはプッと笑い出す。
「秀一さん。ホント私には甘いわね」
先ほどとは打って変わって、りおは優しく微笑んでいた。
「りお。今夜は一緒に寝ないか?」
食べ終わった食器をシンクに置きながら、赤井が声をかけた。
「今日お前は大勢の応急処置をした。それで助かった命も多くあった。もちろん…助からない命とも向き合った。
たくさんの出血も目の当たりにしたはずだ。あの場で発作を起こす可能性だってあったはずなのに。それを…お前は回避した」
ジッとこちらを見つめるりおの顔に、赤井は手を伸ばす。
「よく頑張ったな。でも頑張りすぎは良くないぞ。今日の事は少なからずお前の心に負荷をかけた。
それを緩めてやらねばならん。それが出来るのは俺だけだと自負しているんだ」
赤井の言葉に、りおは半分泣きそうな顔で微笑む。
「秀一さんはなんでもお見通しだね。本当は叫びたい衝動に何度も陥ったわ。
でも…苦しんでいる人たちを、そのまま放っておくなんて私には出来なかった…」
りおは赤井の胸に顔をうずめる。赤井はその体を優しく抱きしめた。
「ただ必死だった。我を忘れて…。気付いたら救急隊員の方に『代わります』って声を掛けられたの」
「そうか…」
りおの頭を優しく撫でながら赤井は答えた。
抱きしめるほどに、愛しいという想いが溢れてくる。
無意識にその腕に力が入った。
「今夜、お前のそばに居させてくれ。俺も…お前が恋しいんだ。
お前の体温と息遣いと、すべてを感じて今日は寝たい」
「うん。私も。秀一さんがそばに居てくれれば…きっと嫌な事も辛いことも…昇華できる…」
りおの言葉を聞いて、赤井は優しく微笑んだ。
真夜中。
赤井の腕の中で、りおは何度もうなされていた。
その度に赤井は声を掛け、背中をさすり、額や頬にキスをした。
キスをしながら頭を撫でると、やがて穏やかな表情になる。その顔を見て赤井も安心して眠る…それを何度も繰り返していた。
『大丈夫。俺はお前のそばに居る』
赤井は何度も何度も、そうりおの耳元で声を掛け続けた。
翌朝——
りおは穏やかな朝を迎えた。
「何度かうなされていたが大丈夫か?」
一緒に起きた赤井は、心配そうに声をかけた。
「うん。あなたが一緒にいてくれたから…。
怖い夢はほとんど見なかったわ。何度も声を掛けて抱きしめてくれたでしょう? お陰ですごく安心できたの。ありがとう秀一さん」
多少疲れているようだったが、りおはふわりと優しい笑顔を見せた。