第3章 ~光と影と~
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夜も更けた頃、赤井のスマホにジェームズから着信があった。
『赤井くんか。私だ。公安警察から重要参考人との接触について連絡があった。
今回の接触ではその参考人と《ミシェル》を繋ぐ証拠は得られなかったそうだ。
ただ、その参考人は日本で組織と行う《仕事》があるという情報は掴んだ。
その《仕事》が今回の清里議員の事と関係するのか、捜査を続けるそうだ。
我々も過去の情報の共有と、清里議員の身辺捜査に加わらせてもらう。
ただし君は潜伏中の身だ。くれぐれも動きすぎないように』
「分かりました。参考人は組織と関わりがあったのですね。それで公安と…」
ジェームズからの報告を聞き、赤井はそう返事をした。
「ジェームズ。一つ聞いても良いですか?」
『なんだね』
「その重要参考人と接触した公安の刑事は誰ですか?」
『…』
「ジェームズ?」
『…広瀬りお警部補だ』
「えっ?」
りおの名前が出たことに驚いたものの、悪い予感は当たるものだな…と赤井は思った。
『重要参考人は《ノエル》と名乗る男性だった。
組織内で顔合わせをした際に、りおくんに観光案内を頼んだそうだ』
「観光案内?」
『ああ。事実上デートのようだったそうだが。
彼女から何も聞いていないのかい?』
「ええ…」
『彼女なりの線引きをしているのだろうな。
恋仲であっても、やはり言えることと言えないことがある…ということか』
「そうかもしれません」
ジェームズにはそう答えたものの、昴は納得できなった。今回はたまたま上手く行っただけだ。
重要参考人との接触ほど危険な捜査はない。
正体を見破られれば、即殺される可能性もあるのだから。
彼女と離れて暮らすようになって、常に付きまとう不安。
仕事柄危険と隣り合わせの毎日の中、彼女の安否は気になった。
自分の知らないところで、愛する者がこの世から居なくなる…そんな経験は一度で充分だ。
そばに居られないのなら、せめてすべてを知らせてほしい。そう思うのに。
「いつも大事なことを言わないな…」
昴(赤井)はジェームズとの電話を切った後、ソファーにすわったまま天を仰いだ。
その後、さくらは出来るだけ組織のアジトに顔を出すようにしていた。
安室もFBIとの会議の合間を縫って、さくらと交代でアジトにいるようにしていた。
だが、火曜日のデートを境にノエルの姿は組織に無い。ジンとも何度か顔を合わせはするものの、いつもより不在な事が多かった。
(ジンとノエル…二人で密談でもしているのかしら…。
ジンがそこまで信頼してるって事?)
あのジンが…。用心深いあの男がそこまで肩入れしていることに疑惑の念を抱く。
(次の仕事が近いのかしら…)
さくらは日増しに不安を募らせた。
金曜の昼——
さくらは久しぶりに昴にメールをした。
アジトへ出入りしていることが多かったので、昴への連絡は避けていた。
1週間ぶりの連絡だった。
『今週は連絡が出来なくてごめんなさい。
今日はいつもより早めに帰ります。16時にはそちらに行けると思います』
(そういえば、昴さんからも今週はメールが一件も来ていなかったな…)
スマホのメールアプリを見て、ふと気付いた。
FBIも今回合同で捜査している。
大っぴらには動けないものの、彼の事だ。水面下で捜査しているに違いない。
メールが無いのもそのせいか…。
さくらはこの時、そう思っていた。
さくらからのメールを見た昴は、どう返信をすべきか迷っていた。
さくらが自分に何も相談してくれないことに腹は立つ。だが警察組織に所属するものとして、その理由も痛いほどわかる。
彼女の格闘術の強さも、銃の腕前も知っている。
そう簡単にやられるような女じゃない。
それも十分わかっていた。
だが2か月一緒に暮らして、彼女の弱い部分を自分は知っている。
そこを突かれたら彼女は総崩れになることも。
だから怖いのだ。
彼女を失うことは、もはや考えられない。
建前と本音の間で、赤井は自分の気持ちをどう処理して良いか分からなかった。
何も答えを出せないまま、さくらが帰ってくる時間が迫る。
リビングの窓辺に立つと、自分の気持ちとは裏腹に、透き通るように青い秋の空が広がっていた。
リンゴ~ン
工藤邸のチャイムが鳴った。
昴は玄関を出て門扉まで出迎える。
「ただいま。昴さん」
「お帰りなさい。りお」
門扉を開けりおの笑顔を見ると、何事もなく帰ってきてくれたことにひとまず安堵した。
「今週はごめんなさい。いろいろ忙しくて連絡できなくて…」
靴を脱ぎながらりおが謝った。
「いえ…私も…今週は忙しかったので…」
昴はりおと目を合わさずに一言そういうと、そのままリビングへと足を向ける。
いつもなら玄関に入るとまず、ハグをしてくれるのに。りおは違和感を覚える。
昴の後を追い「ねえ、」と声をかけた。
「何かあった? それとも何か怒っている?」
昴は黙ったままだ。
「どうしたの? どこか具合でも悪い?」
自分に背を向けたままの昴の腕をつかみ、こちらへ向かせようとその腕を引っ張った。
すると、そのまま向きを変えた昴は、りおの肩を掴み壁に押し付けた。
ドンッ!
「ぃたッ!」
りおの背中に鈍い痛みが走る。
「今、俺に触れるな。こんな気持ちのまま触れたら、お前を…傷つけてしまうかもしれない」
りおの肩に昴の指が食い込む。
「…ッ」
りおは何も言わない。
「ふーー……」
しばらくの沈黙の後、深く長いため息をついて昴は手の力を緩めた。
肩を掴む昴の手が離れた瞬間、りおは両手を昴の後頭部へと伸ばし、自分の方へ引き寄せた。
グッと近づいた昴の唇に、噛みつくようにキスをする。
「??!」
自分から彼女を拒絶したのに、彼女からのキスで気持ちとは裏腹に、体はゾクリと反応してしまう。
「何を…」と言いかけた口に、りおの舌がスルリと入り込む。
昴の弱いところを的確になぞった。
「んッ…りお……ぅん…」
ふたりはそのまま座り込む。
気付けばもっともっとと、りおに口づける赤井がいた。
ウィッグも眼鏡もはずし、りおを抱きしめた。