第3章 ~光と影と~
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東都タワーまで電車で移動し、展望台まで登る。
360度見渡せる展望台でノエルはエンジン全開だった。
あっちを見ては「スッゲェ高い! 日本の建築技術はスゴいね!」と感激し、こっちを見ては「さくら、あの建物何? ヘンな形だなァ!」と大はしゃぎだ。
そして声が大きい…。
周りのお客が物珍しそうにこちらを見ては、クスクスと笑っている。
「あなた一体いくつなの? そのナリだから、テンションの高い外国人ってことで許されているけど…」
さくらは頭を抱えていた。
「楽しむときは楽しまないと! ほら、俺たち明日生きているかどうかも分からないし」
テンションはそのままだが、さくらにしか聞こえない声で囁いた。
「ッ!?」
さくらの顔がサッと曇った。
アンバーの瞳が動揺して揺れる。
そのまま下を向いた。
そんなさくらにノエルはニッコリ微笑む。
「そんな顔するなよ」と、さくらの頭に手をのせた。
パッと自分を見上げたさくらの顔を見て、ノエルはドキッとする。
(なんて真っすぐな瞳をしているんだ…。本当に吸い込まれてしまいそうだ…)
思わずその瞳に見とれてしまった。
「ノエル?」
さくらの声にハッと我に返ると、そのことをごまかすように明るく切り出す。
「じゃ、観光に付き合ってくれたお礼に、一か所とっておきの場所があるんだ。そこに付き合ってくれる?」
「え、ええ。もちろん」
ノエルの申し出にさくらはうなずいた。
『まずい。二人はこの後どこかへ移動するぞ。
尾行を続けるのは相手に気付かれる可能性が高い。いったん離れる』
降谷は風見にインカムで伝える。
まさかノエルから別の場所への移動を言い出されるとは思っていなかった。
この界隈だったら公安警察が待機しているが、そこを出られたら誰も広瀬を守れない。
だがこのまま追跡し尾行がバレれば、広瀬の正体に気付かれる可能性もある。
いったん離れて、盗聴器から聞こえる音で場所を割り出すしかない。
おそらくその辺は広瀬も分かっているだろう。
降谷は遠ざかる二人の姿を、眉間にシワを寄せたまま見送った。
二人はタワーを出て再び電車に乗る。
不自然にならない程度に、さくらは現在地を特定できるキーワードを口にしていたため、追跡は容易だ。
時折聞こえる電車内のアナウンスや二人のやり取りから、どうやら『海の見える公園』へ向かっているようだった。
降谷はタクシーを拾い、公園へ先回りした。
そこで服を着替えてパーカーを目深にかぶり、公園のベンチで音楽を聴いているふりをする。
夕暮れが近づいた公園は、海も空も鮮やかなオレンジに染まっていた。
駅を出てノエルとさくらは肩を並べ、公園の歩道を歩く。
長く伸びる二人の影をノエルはジッと見つめていた。
「あなたのとっておきの場所ってココ?」
さくらは手すりを掴んで海を眺める。
「ああ。キレイな所だろう? 日本に来て最初に来たんだ。
東京って狭くてごちゃごちゃしているってイメージだったから、こんな所もあるのかってビックリしたよ」
オレンジに染まるさくらの顔を見て、ノエルは微笑んだ。
「確かに。広いアメリカから来たなら、東京ってごちゃごちゃしてると思うわよね~」
そう言いながらさくらは振り返る。
海を背にして見る公園には、犬の散歩をする人や、ランニングに勤しむ人、ベンチに腰掛けおしゃべりしている人たちもいた。
平和なひと時。
全てがオレンジに輝く公園は、穏やかな時間が流れていた。
自然と優しい笑顔を見せるさくらを、ノエルはじっと見つめた。
「なあ、さくら。お前…俺の仲間になる気はないか?」
今日ずっと思っていた言葉が、口から飛び出した。
「え?」
突然の事でさくらは驚く。
「組織の助っ人をするのは、俺が日本にいる間だけだ。それはジンも承知している。
日本での仕事が終わったら、俺とアメリカに行かないか?
公私ともに俺のパートナーになってほしいんだ」
「組織の仕事って何なの?」
今までノラリクラリと避けられていた所に、さくらは今だと言わんばかりに言及する。
「俺が質問してほしいのはそこじゃないけど?
『あなたと一緒にアメリカに?』って言葉、期待してたんだけどなぁ」
ノエルは頭を掻いた。
「お前が一緒にアメリカに行ってくれるなら、その質問に答えてやるよ。
さあ、どうする?」
「え?! そ、それは…」
ノエルの切り替えしにさくらは困惑した。
「私達先日会ったばかりよ。会って間もない人から『パートナーになれ』って言われても…」
明らかに動揺しているさくらの様子をみて、ノエルは視線を外し夕焼けを見た。
「まあ、いきなりこんなこと言われても驚くわな。少し時間をやるよ。
次のデートまでに考えておいてくれ。また連絡するから」
優しい眼差しでさくらの顔を見た。
「今日はありがとな! じゃあな」
ノエルは片手でひらひらと挨拶をすると、上着のポケットに両手を入れて一人歩き出す。
さくらはそれを見送る事しかできなった。
ノエルの姿が見えなくなった後、体に盗聴器や発信機の類が取り付けられていないか確認した。
何も無かった事を確認すると、降谷の方へ視線を向ける。
「広瀬…お疲れ」
降谷が声を掛けた。
降谷の顔を見たりおは「降谷さんも」
そう一言だけつぶやくと、オレンジとピンクのグラデーションを描く空を見つめる。
ふたりは警視庁へと引き上げた。
「ノエルが何らかの仕事をするために日本に来たことは分かりました。
そしてそれが組織がらみだということも」
朝使った会議室で、りおと降谷そして風見が顔を揃えた。
「ああ。しかもヤツは面白いことを言っていたな。ジンと昔馴染みだと。
ということは以前にも接触があったってことか」
途中カフェで購入したコーヒーを飲みながら、降谷はノエルが発した言葉を拾い上げていく。
「しかし結局《ノエル》=《ミシェル》だと断定できるものはありませんでしたね」
同じく風見もコーヒーを持ったままつぶやいた。
「ノエルの言う《日本での仕事》が何であるか分かれば、そこも解けると思うけど…。アメリカに一緒に行けとはね~…」
おどけた様につぶやくりおの様子を見て、降谷はため息をつく。
「お前ね、あれはただ一緒にアメリカに行けって意味じゃないんだぞ? そこんとこ分かってるか?」
なんだか普通にアメリカ行くかどうしようかって考えていないか? 大丈夫か?
降谷は少々心配になった。
「分かっていますよ。公私ともにパートナーになれって言われたんですから。
つまり、その…なんだ。
早い話がプロポーズ…的な…感じでしょ」
アメリカ人って気に入ったらすぐ結婚なわけ?! 信じらんない!
顔を赤くしながらりおはブツブツと文句を言う。
「ぷップロポッ! …ま、まあ…そ、そうだな。
そういう意味で言ったんだろうな。彼は」
降谷も《プロポーズ》という言葉に反応する。
(こういう話には結構ポンコツなんだな、降谷さん…。ま、相手が広瀬だからか…)
上司の今まで見たことのない一面を見て、これは見ちゃいけないヤツだ…と風見は視線を泳がす。
「で、どうするんだ? 次のデートあるみたいだぞ。
しかもその時にプロポーズとやらの返事が欲しいようだ」
顔を少し赤くしたまま、降谷は問いかける。
「ああ~…。仕事の内容は聞きたいけど、アメリカへ行く気なんてこれっぽっちも無いです…。どうしましょうか…」
机に突っ伏し腕に顎を乗せて、りおはけだるそうだ。
「いろいろ策を練るより、お前の本音を聞かせる方が良いかもしれないな。
嘘やごまかしが効く相手ではなさそうだ。
お前の気持ちを話せば、ヤツはちゃんと考える気がする」
降谷は今日一日のノエルの言動から、そう判断する。
「私も…そんな気がしました。彼は一体何者なんでしょうか…。
根っからの悪人とは思えないんです。
それも彼の作戦…なんでしょうか…」
神を捨てたと言っていたノエル。りおはその言葉が妙に引っかかった。
彼が神を捨てようと思ったきっかけは何だったのだろうか。
そこに何か糸口があるように思えてならなかった。
ミシェルに繋がる証拠は得られなかったが、ノエルに日本で行う『仕事』があることは分かった。
りおは組織への探りを続けるよう、風見は清里の事件を追うよう指示され、3人は会議室を出た。