第3章 ~光と影と~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ラスティーが組織の自室にいると、ジンから電話がかかってきた。
「お前に会わせたい奴がいる。今アジトにいるんだろう? ちょっと来れるか?」
「ええ、すぐ行くわ。応接室で良いのかしら?」
ラスティーはPCの電源を落とし、自室を出た。
「よく来たラスティー。そこへ座れ」
ジンに促されて座ったソファーの前には、金髪に青い瞳の男が座っていた。
年齢はジンと同じか、それより若干上だろうか。
「こいつは新たに組織に引き入れた男だ。顔を覚えておけ」
ジンはタバコをふかし、簡単に説明した。
「俺の名はノエル。よろしく」
金髪の男は流暢な日本語であいさつする。
「私はラスティー。諜報活動など情報収集が主な任務よ。よろしく」
二人は握手を交わした。
「こんなキレイな子が諜報活動ねぇ。さっきの女優といい、ここの組織は美人ぞろいだね」
人の良い笑みを浮かべて腕を組むノエルは、ラスティーの瞳をじっと見ていた。
「アンバーの瞳か…。日本人には珍しい色だね。
なんだか吸い込まれそうなカラーだ。
なかなか興味をそそられる子だねぇ。まあ今後ともよろしく頼むよ」
興味? ノエルの発した言葉にラスティーはピクリと体を揺らす。
それを見てフ~ッと吐き出したジンのタバコの煙は、向けられた青く鋭い眼差しを覆い隠すようにノエルとラスティーの間で揺れている。
煙の向こうで微笑むノエルを見て、ラスティーはわずかに緊張した。
部屋に戻って良いと言われ、ラスティーは自室に戻ってきた。
応接室に盗聴器を仕掛けようかと思ったが、ノエルのスキルも分からない。
ましてあのジンに見つかれば事が大きくなってしまうので、今回はやめておいた。
そういえばノエルが何を担当するのか、ジンは何も言わなかった。
スナイパーとして引き入れたのなら、そう紹介するだろうし、諜報活動なら自分と重なるわけだから、なおさら言わなければおかしい。
「一体彼は何者なの?タイミング的には『ミシェル』かとも思ったけど…」
組織が考えていることがイマイチ読めず、降谷にどう報告するべきかラスティーは悩んだ。
コンコン
その時、ドアのノックが聞こえた。
「はい」
「ノエルだ」
「まって、今開けるわ」
ドアを開けると、そこにはさっき会ったばかりのノエルが立っていた。
「先ほどはどうも。ジンが居たから言いづらかったんだが…」
ノエルは言い淀んで一つ咳払いをする。
「?」
「俺とデートしないか?」
「…はい?? 外国の方って、会ってすぐの女性をデートに誘うんですか?」
ここが組織のアジトだということを一瞬忘れそうになるくらい、軽いノリでナンパしてきた男にラスティーは面くらっていた。
「ん~、まあそうだね。俺の国は自分が気に入った子にはすぐ声かけるかな~」
「失礼ですけど、お国はどこですか?」
「アメリカさ! 自由の国アメ~リカ!」
本気で言っているのか、いわゆるアメリカンジョークなのか…。
ラスティーはため息をついた。
「日本の事良くわからないし。観光案内がてらどう? お願いできないかな?」
「まあ、そういうことなら。火曜日のお昼からなら時間取れますけど…」
「わお! やったね! じゃあ火曜日のランチをごちそうするから。
時間と場所は君が指定してくれ。アドレスはこれ。じゃあ火曜日に!」
ウィンクしながら投げキッスまでして、ノエルはラスティーの前から去っていった。
ノリのいい会話をしていたが、男の青い瞳は少しも笑っていなかったことにラスティーは気づいていた。
(私を探っている? なんにしても油断は禁物ね)
火曜日の予定変更のメールを森教授に送りながら、どうやって対処していこうか、ラスティーは考えていた。
ラスティーが組織のアジトを出たのは夜10時前だった。
このまま工藤邸へと向かう予定でいたが、どうやら誰かにつけられているようだ。
工藤邸の方向から外れ、人気のない道へと入っていく。誰もいない公園に着くとラスティーは立ち止まった。
「私を付け回してどういうつもり?
あなたとの約束は火曜日のはずよ、ノエル」
すると闇の中から音もなく金髪の男が現れた。
アジトでは分からなかったが、外で会ってみるとかなりの長身だ。
赤井と同じか数センチ高いかもしれない。
良く鍛えられた体は、街灯の下でキレイなシルエットを描いていた。
「さすがだね、ラスティー。お手並みを拝見しようと思ってつけてみたが…ジンの言った通りだった」
ニコニコしながらラスティーに近づいてきた。
「ますます気に入ったよ」
ノエルはラスティーの頬にそっと触れる。
手を伸ばすノエルを、ラスティーはジッと見つめた。
アンバーの瞳は鋭く、まっすぐノエルをとらえる。
耳元で揺れるペリドットが街灯の光を受けてキラリと光った。
「ッ!」
(腹の底まで見透かされそうだ…)
その瞳にわずかだが恐怖を感じた。こんな感覚は久しぶりだ。
やさしく頬を撫で、すぐにその手は離れた。
「じゃあ、今度こそおやすみ。また火曜日に」
ノエルは後ろ向きに数歩下がると、闇夜の中にサッと消えていった。
りおが工藤邸に着いたのは、10時半を回っていた。
門扉の前に立つと、リビングにはまだ明かりがついている。
さすがに呼び鈴を鳴らすには遅い時間だったので、昴のスマホに電話をかけた。
「随分遅かったですね。今日はもう帰ってこないのではと思っていました」
ようやく一息ついて、りおは安堵の表情になる。
「ごめんなさい。長い時間留守にして。
ベルモットに随分付き合わされたわ」
上着を脱ぎながら笑顔で答える。
だが、立場上これ以上は昴に話せなった。
FBIに捜査協力を依頼することになってはいるが、現状で協定が結ばれたか定かではない。
もちろん、ノエルのことはまだ報告できる段階でもなかった。
「さすがに夜は少し肌寒かったのではないですか? 先にお風呂どうぞ」
「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」
ん~! と一つ伸びをして、りおはバスルームに向かった。
二人が入浴を終え、リビングにそろった時には11時半を過ぎていた。
変装を解いた赤井がりおに近づく。
「ピアスはどうしたんだ?」
「さすがにお風呂に入る前にはずして、ケースに仕舞いましたよ。また明日付けますね」
「あのピアスを選んだ時はドキッとしたよ」
「そいえば『昴さん』挙動不審でしたよね」
その時の昴の顔を思い出し、りおはクスクス笑う。
「あの色の組み合わせを見つけたら、もうそれしか目に入らなくって。
『これだ~』って思ったの」
りおの言葉に嬉しいような、照れくさいような気持になって赤井は何も言えず、そっとりおの耳にキスをした。
「ん…」
りおの色のある声に気を良くして、赤井は何度もりおの耳にキスを落とす。
愛おしそうに洗いたての髪をゆっくり撫でた。
「『俺』を選んでくれたりおに、ご褒美をあげないとな!」
「え……っ! しゅ、秀一さん!?」
赤井はソファーに座るりおを抱き上げる。
「半日もほっとかれたんだ。その責任もとってもらおうか」
驚くりおに笑顔をむけたまま、赤井はベッドルームへと向かった。
日曜の朝——
りおは赤井より先に目を覚ました。
隣で赤井はよく眠っている。
ピアスのことがよほど嬉しかったのか、夕べは何度も耳にキスをしてきた。
(耳弱いって…知ってるくせに…)
こちらが音を上げるまでそこを愛撫され、愛をささやかれ、恥ずか死ぬかと思った。
ライとして組織にいた頃を知っているので、そのギャップにドキドキする。
「あなたのあんな嬉しそうな顔見ると、こっちまで笑顔になっちゃうわ」
思わず頬杖をして赤井の寝顔を見入ってしまった。
しばらく寝顔を見た後、りおはシャワーを浴びに部屋を出た。
シャワー後、降谷にメールを送る。
『夕べ組織のアジトへ顔を出しました。
そこでジンから《ノエル》というアメリカ人を紹介されました。
タイミング的に《ミシェル》の可能性が高いですが、昨日の段階ではジンからスナイパーだとも諜報担当だとも言われておらず、彼が何者で何のために組織に引き入れられたのか不明です。
火曜日に観光がてらデートに付き合えとノエルに言われました。
時間と場所はこちらで指定するよう言われています』
送信ボタンを押し、脱衣所を出た。
朝食の準備をしていると、降谷から返信が届く。
『《ノエル》と会うときは必ず誰かが近くに待機するようにする。気を付けてくれ。
今日付でFBIと捜査協力の協定が結ばれる。
情報の共有をして構わない。ただ、《ノエル》=《ミシェル》だと仮定して動いた方が良いだろう。
接触の際には、FBIには奴に顔が割れている者も多いため、事後報告もやむを得ないかもしれない』
顔が割れてる…確かにそうだ。
1年半まえに総力を挙げて『ミシェル』を追い詰めたのだ。ありえない話じゃない。
赤井は今《沖矢昴》に変装しているけど、彼が纏う雰囲気はなかなか隠しきれるものじゃない。
勘の良い人なら同一人物だと気づく可能性もある。
それに《ノエル》がまだ《ミシェル》かどうかも定かではない。
今はまだ、赤井に話すべきではないとりおは判断した。