第3章 ~光と影と~
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コツ…コツ…コツ…
地下歩道に足音が響く。
足音の主は階段を上り地上へ出た。
黒い衣服を着たその人物は人気のない道をひとり歩いていく。
顔が隠れ、男か女かも分からない。
ただ異様な殺気をまとい、そのまま夜の闇へと消えていった。
それから約1時間後。
周辺にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。
****
旅行後アパートに戻って最初の土曜日朝——
りおはいつも通り、工藤邸で昴と朝食の準備をしていた。
オドゥムの刺客に襲われた際に付いた首のアザは、もうほとんど消えている。
コナンが提案した初めての遠出は、アクシデントの連続だった。
だが黒の組織とオドゥムの抗争を止めようと思い詰めていたりおの心を落ち着かせ、二人の心をさらに近づけさせるには十分だった。
今までは週末に工藤邸に来ても籠り気味だったが、良い意味で肩の力が抜けたようだ。
今日は二人で昴の秋物の服を買いに行く予定だ。
「りお、パン焼けましたよ」
「は~い。こっちも準備OKですよ」
りおが皿にサラダや目玉焼きを乗せている間に、昴はコーヒーを準備する。もちろんりおにはカフェオレを淹れた。
朝食の用意が出来たところで、二人は挨拶をして食べ始めた。
「そういえば夕べ、事件があったみたいね」
最初に話をふったのはりおだった。
「ええ。政治家の清里英治(きよさとえいじ)が、彼の事務所内で殺害されたとネットニュースで速報が流れていましたね」
「清里って、先日大手企業との汚職が発覚した議員さんよね?」
つい4、5日前に大手企業とこの清里議員の黒い繋がりが報道されたばかりだった。
清里議員はその権力を使って企業に便宜を図り、見返りに多額の金を融通してもらっていた。
巷でよくある話だ。
それが今日は殺人事件にまで発展し、ワイドショーや新聞などではトップニュースになっていた。
不正を犯した権力者をターゲットにした殺人…
アメリカでもそんな事件があったな…。
ふと昴に昔の記憶が蘇る。
昴…いや赤井にとっては苦い思い出だった。
朝食の片付けを済ませ、外出の準備をする。
りおは自室として使っている客室で化粧を直し、バッグの中を確認していた。
その時ベッドサイドに置いたスマホが着信を知らせた。
着信画面に《0》(ゼロ)の文字。
「この番号は…」
嫌な予感を感じつつ、着信にタップし電話に出た。
「もしもし?」
『広瀬か。俺だ』
自分のところを《広瀬》と呼び、一人称が《俺》の時、安室が《公安警察の降谷》の時だ。
《ラスティー》でも《星川さくら》でもなく《公安刑事の広瀬りお》にかけてきた電話だと察する。
『清里議員が殺されたことは知っているか?』
「はい。ネットニュースで見ました」
『そうか…。実は今回の殺人事件、連続殺人の始まりかもしれない』
「え?」
降谷の言葉にりおの動きが一瞬止まる。
「一人しか殺されていないのに、なぜ連続だと?」
疑問を率直にぶつけた。
『清里の死体のそばにタロットカードが置かれていたんだ。
14番目の大天使ミカエルが描かれた、《節制》を意味するカードが』
「そのカードに何か意味があると?」
過去にそんな事件があっただろうか?
りおは考え込んだ。が、タロットカードが置かれたという事件は記憶にない。
『アメリカで5年半前に全く同じ事件があったんだ。金にまみれた政治家を殺害し、ミカエルのタロットカードを置いていく。
その時は4名の関係者が次々殺された。
アメリカでその犯人は《Michel(ミシェル)》と名乗っていた。犯人像も全く分からず、そもそも男か女かも分かっていないそうだ。
1年半前に再び姿を現した時に地元警察とFBIがそいつを追い詰め、ケガを負わせたものの取り逃がしてしまったらしい』
FBIと聞いてりおは一瞬体を強張らせた。
1年半前と言えば、赤井が組織を離脱してアメリカへ帰国し、FBIとして活動を再開していた時期と重なるからだ。
『タロットカードの存在については、現在公安と捜査一課しか知り得ない情報だ。
そして今回、FBIにも捜査協力を求める。それから…』
降谷は前置きをし、一呼吸置く。
『今回の犯人、ジンと繋がっている可能性が高い』
「え? なぜそう思うのですか?」
りおは驚き、その真意を訊ねた。
『清里のことだったのか、そこまでは分からなかったが、ある議員の殺しをジンが組織外のスナイパーに依頼した、という情報をベルモットから得たんだ』
《議員》《殺し》《組織外のスナイパー》
確かに偶然にしては一致する部分が多すぎる。
『今回の事件は組織が絡んでいる可能性が高い為、公安も動くことになった。
俺はこの後FBIへの捜査依頼などでしばらくこっち(公安)を離れられない。
組織の方の探りを君にお願いしたい』
「分かりました」
『頼んだぞ』
そう言って降谷からの電話は切れた。
(連続殺人…か…)
りおはスマホを見つめ、小さくため息をついた。