第2.5章 二人の遠出~温泉旅行編~
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「ん…眠ってしまったか…」
どれくらいか時間が経って、赤井が目を覚ました。
二人とも裸のまま、1枚の毛布に一緒にくるまっている。
(そうだ。あのまま…りおを抱いて…)
ずいぶん激しく抱いてしまった記憶がある。
ふと見ると、りおの肩が毛布から出ていた。
キレイな肌のいたるところに赤い花が咲いている。
(後で怒られそうだな…)
顔を赤くして文句を言う姿を想像して笑った。
りおの肩に触れると少し冷たい。
そっと毛布を引き上げて肩にかけてやる。
赤井は起き上がると、小さくなってしまった囲炉裏の火に薪を足した。
パチパチパチ…
再び炎が大きくなり、薪の燃える音が小屋の中に響く。
ザ――ザ—―という激しい雨の音も聞こえていた。
「…ぅ……ん…」
「!」
赤井が声のした方を見ると、りおの目がゆっくりと開いた。
「りお?」
「ん…しゅ…いちさ…? 今何時?」
「深夜の1時だよ」
スマホを見て赤井は答えた。
「何…してるの?」
「囲炉裏の火が小さくなったから、薪を足したんだ。部屋がちょっと寒かったから」
「裸…だからじゃ…ないの?」
「ああ、それもあるか」
ふっと笑ってりおの顔を見た。
「お前も裸だけどな」
「え? あ!!」
寝落ちる前のことを思い出し、りおは顔を赤くする。
「今更恥ずかしがらなくても良いだろう?
今日のお前はずいぶんと乱れていたぞ。おかげで俺もそそられた」
何ならもう一回するか? と言われて、りおは毛布をかぶってしまった。
「も、もう! からかわないでよ!」
「からかってなんかいないさ」
赤井はりおに近づく。スキを突いて毛布をめくった。
「あ…」
毛布を取られ、一糸まとわぬ姿を晒されたりおは体を丸める。
「俺は何度だってお前を抱きたいし、出来る事ならこの腕に抱きしめて、閉じ込めておきたいとさえ思っている。案外独占欲が強いんだ」
赤井はそう言いながらりおの肩にキスをする。
「『お前のすべてを俺の物にしたい』と、いつも思っているんだよ…。あさましい男だと軽蔑するか?」
「…い…よ」
「ん?」
「…しない…よ。いっそ秀一さんのものにして…って…言ったら…軽蔑…する?」
「!!」
「お前…俺を煽ってるのか?」
赤井はりおの肩を押し仰向けにさせた。
「すまん。手加減できないぞ」
**
サ―—――……
雨音がほんの少し静かになったようだった。
二人で毛布に包まって、ぐったりしたりおを赤井は抱きかかえている。
(すまない…。本当は大事にしたいのに。お前を抱くと、どうにも止まらないんだ…)
これも独占欲のせいなのか。腕の中のりおにそっとキスをした。
(どうしてこんなにも激しく求めてしまうのだろうか…)
赤井はそれが不思議でならなかった。
他の女性でこんなに求めたことは無い。
組織への潜入などで常に気を張っていたから、どっちかと言えば淡泊な方だったように思う。
りおはなぜ? 自分をそうさせてしまうのだろうか?
(彼女の危うさ…がそうさせるのか? 離れて暮らすようになって、余計に心配で…壊れてしまうんじゃないかという…不安感のせいか?)
自分の腕の中で静かに寝息を立てる彼女を見ると、言い表せないほどの安心感がある。
だからこそ離れている時の不安が、自分を突き動かしてしまうのかもしれない。
「すまない…りお」
赤井は愛おしそうにりおを抱きしめる。
暗い部屋の中、ゆらゆらと揺れる囲炉裏の火が抱き合う二人を優しく照らしていた。
雨はいつの間にか止んでいた。
空は明るくなり小鳥のさえずりが聴こえる。
(ん……? 朝…?)
りおが目を覚ました。
目の前にはぐっすりと眠っている赤井がいる。
どうやら完全にホールドされているらしいと気付いたのは、だいぶ時間が経ってからだ。
(暖かい…安心する…)
りおは赤井の背中に手を伸ばすと、そっと抱きつき胸元に頬を付ける。
トクトクトクと規則正しい鼓動が聞こえてきた。
穏やかなその響きが心地よい。
思わず心臓のある辺りにキスを落とす。
「…ぅん…」
頭の上から小さな声が聞こえた。
(な、なに…かわいい声…)
いつも低い赤井の声が、寝言になると途端に幼い感じになる。
ちょっぴり嬉しくなって、今度はチュッと吸い付いた。
「……んん…」
再び寝言のような声がしてドキッとした。
ふと見ると、赤井の肌に赤い印がついている。
(あ、しまった…。キスマーク付けちゃった。まあいいか。私のところもいっぱいつけたんだし)
お返しに自分もいっぱいつけてやろうと、イタズラ心が顔を出した。
チュ、チュ……チュク…
気付けば3つ、4つと赤井の肌に印を付けた。
(まずい…なんか楽しくなってきちゃった)
脇腹のあたりにチュッと少し強めに印を付ける。
すると、
「ぅッ!」
と息を詰める声がした。
「ん…りお? 何して…」
寝ぼけ眼の赤井の顔を見て、りおはクスクスと笑った。
とりあえず服を羽織って、湯を沸かす。
「白湯が美味しいなんて初めて知ったわ」
「コーヒーもミルクも無い朝なんて久しぶりだしな」
ふたりで乾パンをつまみ空腹を満たす。
白湯をゆっくり飲むとじんわりと体が温まった。
「さて、今日救助がくるのか?」
「さあ…お天気次第じゃないかしら? 雨は…今は止んでるけど…。このまま回復って感じでもなさそうよ」
空を流れる雲は速く、風がざわざわと木々を鳴らしていた。
昨日より風は強い気がする。救助は来れるのだろうか?
「遺体も雨に晒されたままだしな…。止んでいる今のうちに何とかしてやらんといけないな…」
「ッ! 遺体を…?」
りおの顔が一瞬苦し気に歪んだ。
それを見て赤井は安心させるように微笑んだ。
「シートをかけて来るだけだ。俺一人で大丈夫だよ。りおはここで待っていてくれ」
「ん…。ごめんね」
「謝る必要は無い。またあそこまで歩けば腹の傷にもさわる。すぐ戻るから…」
赤井は微笑みながら、下を向くりおの頭にポンと手を置き、優しく撫でた。
ふたりで食事を済ませた後、管理小屋にあったブルーシートを持ち、赤井は準備をして出かけて行った。
**
東屋から外れた道をしばらく行くと、木に掛けておいたバッグが見えてきた。
「ああ、あそこだな」
赤井は目印にしておいたバッグを見つけ、足早に近づく。
昨日撃たれたままの遺体が、ずぶ濡れになって地面に倒れていた。
「なんとか雨だけでもしのげるようにしておくか…」
倒木から手ごろな大きさの枝をいくつか引っ張ってくると、遺体の周りに置いた。
そこにブルーシートをかけ、重しを置く。
通気を確保しつつ雨だけは避けられるようにした。
「とりあえず…その場しのぎではあるが、雨ざらしよりはマシだろう」
踵を返し、りおの待つ管理小屋へと急ぐ。
東屋を過ぎたあたりでポツポツと雨が降り出した。