第2.5章 二人の遠出~温泉旅行編~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なあ。一つ…聞いても良いか?」
「何ですか?」
「昼間『両親の事あまり覚えていない』って言っていたよな。詳しく聞かせて…くれないか。
あ…いや、りおが嫌なら良いんだ。ただ…俺は…知りたいと思ってしまっただけで…」
「ふふ…。良いよ」
りおは優しく微笑むと、視線を囲炉裏の中の火へと移した。
「私の両親は…私が9歳の時に亡くなったの。自動車事故で。
対向車線を走ってきた車が中央線をはみ出して正面衝突したの。
後部座席でジュニアシートに乗っていた私は助かったけど、両親も相手の運転手も即死だった」
「事故の原因は?」
「相手の運転手の居眠り運転」
「そうか…」
もしかしたら、その事故でりおも死んでいたかもしれないと思うと背筋が寒くなった。
「事故のショックでね、私1年くらいしゃべらなくなっちゃったんだって」
「え?」
「たぶん、今思えば失声症だったのかもね。
実は未だに事故の時の記憶も両親の記憶も、ほとんど無いの。
少なくとも、9年間は育ててもらってたはずなのにね」
「?! そうなのか…。事故後はどうやって生活していたんだ?」
「父方の祖父母に育ててもらったわ。その時に聞いたの。
両親は警察関係の仕事をしていたって。
でも、祖父母も高齢で…。祖父は私が高校の時に。祖母は私が警察学校に入ってすぐに亡くなったの」
「他に家族と呼べる人はいないのか?」
「いないわ。兄弟もいなかったし。母方の祖父母は私が生まれる前に、相次いで病気で亡くなったらしいから」
りおは天涯孤独だったのか。
PTSDで体調を崩した時に家族の話が一切出なかったのも頷けた。
「じゃあ、ご両親が警察官だったから自分も警察官になろうと思ったのか?」
「ううん。それはちょっと違うわ」
りおはすぐさま否定すると目を閉じた。
赤井は黙ってりおが話し出すのを待つ。
「祖父が…亡くなる直前、話してくれたの。
『あれは事故なんかじゃない。お前の両親は殺されたんだ』って」
「そ、それはどういうことだ?」
「私も初めは何のことかさっぱり分からなかった。
でも、気になって両親の事を調べたの。
そしたら…父が警察官だったという証が何も出てこないの。
警察学校を卒業していることまでは突き止めたんだけど…。
でも確かに、祖父母は『父も母も警察官だ』と言っていた」
りおは火を見つめたまま、時々辛そうに目を閉じて話を続けた。
「いろいろ調べて行き着いたのが、父は『公安警察』だったんじゃないかって。
だから、初めはそれを調べるために。
両親の本当の姿と死の原因を探るために。
私は警察官になろうと思ったの」
『同じだな』と赤井は思った。
自分も父親の追っていた事件の事、そして父の事を知りたくてFBIに入った。
こんなところまで共通点があるとは。
同じ思いを秘めていたことに不謹慎にも、嬉しいと思ってしまう。
「母親の事は分かったのか?」
「それも分からないの。祖父母も母の事はあまり教えてくれなかった。
というより、良く知らなかったんだと思う。
育ての祖父母は生粋の日本人だったから、この瞳の色は母譲り。
そう考えると、母は日本の警察官では無かったのかなって」
「そうか…。ご両親の写真は残っているのか?」
「ええ。自分の家のアパートに1枚だけ。私が生まれたばかりの頃の写真が」
「今度見せてくれないか」
「ええ、良いわ」
初めてりおの家族の事を聞いた。
自分も父親がいない生活が長いが、母親や弟妹がいた。無条件に自分を心配してくれる家族がいる。
だがりおには頼る人も、自分を心配してくれる人もいない。
そんな中でマレーシアの組織に一人潜入していた。
ONCの仲間に心を許し、慕っていた理由は…つまり…。
(そうか…だからあの時…)
ケンバリのアジトから連れ出した時のりおの顔。
あれはきっと仲間…いや、りおにとっては心から慕っていた《家族》を失った時の顔だったのだ。
「すまない。立ち入った事を聞いてしまったな」
「ううん。いつか秀一さんには話さなきゃって思っていたから。気にしないで」
パチパチと薪が燃える音がする。
火が揺れるとりおの顔に映る影も揺れた。
「りお、今お前の知りたいことはどこまで分かったんだ?」
「ほとんど分かっていないよ。公安に配属後はしょっちゅう現場に出てたし、配属から1年経たないくらいでケンバリへの潜入を命じられた。
その後は今の組織。警視庁の公安部でデスクワークするようになったのは、最近になってようやくだからね。
秘密主義の公安で、両親の事を調べるのはなかなか難しいよ」
「…そうか…」
「でも、絶対。いつか必ずたどり着いて見せるわ」
「そうだな。俺も自分の父親の事を調べたくてFBIに入ったんだ。
それにおそらく組織が関わっていることも。だがまだ何も分かっちゃいない。それでも。いつか必ず。それは俺も同じだ」
「やっぱり似たもの同士なのかな。藤枝にもこの前言われたよね」
「ああ。似ているな。俺たち」
顔を見合わせてどちらからともなく笑った。
笑って、笑った顔を見て、相手をどうしようもなく愛おしいと思ってしまう。
無意識に赤井は左手でりおの頬に触れた。
その手にりおは自分の右手を重ね、目を閉じた。
赤井の顔がりおの顔に近づく。
左の頬にキスをした。
りおが目を開ける。吐息がかかるほどの距離で視線が重なった。
今度はお互いの唇が触れ合う。
優しく何度か触れ合うと、りおは両手を伸ばして赤井の首に腕を絡める。赤井もりおを抱き寄せるとキスは次第に深くなっていった。
「ぅん…しゅ…さ…ん」
「…りお……はぁ…」
「…すき…よ…愛して…るわ」
「俺も…愛してる…よ…」
赤井はキスをしながら、りおの服のボタンを外していく。スルリと肩を撫でると白い肌が露わになった。
両肩を押さえ、鎖骨にキスを落とす。
「ん…」
甘い吐息が聞こえた。
気を良くして何度もその肌にキスをする。
「ん…は…ぁ…」
のどを晒し、りおの呼吸が少しずつ乱れていく。
「あ…ぅん…しゅ…いち…さ…あっ!」
ビクッと反応するりおの姿にゾクリとした。
りおを追い詰めているはずなのに、赤井は自分がすでに歯止めが効かないところまで追いつめられていることに気付く。
「すまん…!」
床に手をつき、りおを押し倒す。
自身の服を脱ぎ捨てると、そのまま二人は肌を重ねた。