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数日後の平日、放課後。
青龍星奈は、前回と同じ白シャツ、黒ネクタイ、ワイドズボンに、赤マグネットネイルを施した中性的なスタイルで、梅田のビジネス街にひっそりと佇む静かなカフェの個室に向かった。
席に着くと、VOISINGの社長、ないこが待っていた。彼の周りには、STPRのラウンジとは違う、未来への挑戦とスピード感を象徴するような、ピリッとした空気が漂っていた。
「藍さん、ようこそ。平日の夕方という忙しい時間にご足労いただき、本当にありがとうございます。VOISING社長の、ないこです」
ないこは立ち上がり、落ち着いた動作で席を勧めた。
「ありがとうございます。藍です」
星奈は、前回と同じ態度で臨む。
ないこは、すぐに本題に入った。目の前のノートパソコンには、VOISINGと各グループの成長グラフが示されている。
「早速ですが、単刀直入に話します。VOISINGは藍さんの才能を、**『いれいす以来の逸材』だと評価しています。僕たちは藍さんを、VOISINGの未来のエースとして迎え入れたい。君の才能は、僕らの会社を次のステージ、『歌い手界のグローバル化』**というステージに連れて行ってくれると確信している」
ないこは、VOISINGの掲げるビジョンを力強く語った。
「僕らが言うKは、『完成度(Kanseido)』のK。藍さんの歌は、技術や表現の深さに加えて、まるで完成された作品のような圧倒的な完成度を持っている。それは、歌い手活動に真摯に向き合い、一切の妥協を許さないプロ意識の現れだ」
彼は、藍が歌い手として見せている姿勢を高く評価した。
「僕らのグループに入れば、Reluやいれいすの初兎といった最高のクリエイター陣が、その『完成度』をさらに高めるための最高の楽曲を提供できる。特に、君が推しているすたぽらのReluは、君の歌に楽曲制作のインスピレーションをもらっていると、熱心に語っていましたよ」
Reluが自分の歌からインスピレーションを受けているという事実に、星奈は内心強く動揺した。推しに必要とされている、という事実は、彼女の心を最も動かす要素だった。
「藍さん。一つ、確認させてください」
ないこは、STPRのななもり。と同じように、核心に触れてきた。
「僕らは君を**『完成されたクリエイター』として評価している。しかし、君の活動時間や、今回の対面の場所の選定へのこだわりから、君が未成年である可能性が高い**と判断しています。それは、僕らのNGの対応評価を変えるものではありませんが、契約の前に正確に知っておきたい」
星奈は、隠す意味はないと判断し、静かに頷いた。
「はい。私は、高校二年生です」
「そうか。ありがとう。では、もう一つ。君の性別について。僕らのデータからは、君が女性である可能性が、極めて高いと分析されている」
ないこは、冷静に分析結果を伝えた。彼は、STPRの社長が驚いていた事実を、データとロジックで淡々と突きつけてきた。
「なぜなら、君の歌声のレンジは男性でも出せるが、高音域のファルセットの処理の繊細さは、女性の喉の構造と声帯の扱い方に非常に近い。それに加え、君が使用している**『藍』というアカウントのアートワークに使われている色の使い方は、女性アーティストに特有の色彩感覚**が強く出ている、という分析結果が出ているからだ」
星奈は、自分のクリエイティブの隅々まで分析されていたことに、驚きと同時に、VOISINGの徹底したビジネス戦略を見た。
「…その分析の通り、私は女性です」
ないこは、小さく息を吐いた。
「ありがとう。君が女性であること、未成年であることは、僕らVOISINGにとっても最高の情報だ。なぜなら、君は**『女性というハンデ』を乗り越え、『年齢という壁』を超えて、あの圧倒的な完成度**を生み出している。これは、君の才能が、歌い手という枠を超えて、社会的なアイコンになるポテンシャルを持っていることの証明だ」
「未成年であることについては、保護者の同意書を前提とし、学業を最優先とした柔軟な活動スケジュールを契約に盛り込むことを約束する。君の安全と将来を保障することは、社長としての僕の責任だ」
ないこは、パソコンの画面を操作し、具体的な契約条件を提示した。
「僕らは、君に最高の挑戦の場を提供する。他社の方と違い、僕らは若い。だからこそ、変化と挑戦を恐れない。君の歌声を、過去の成功例に当てはめることなく、新しい時代のロールモデルとして育てていきたい」
活動形態: ソロ活動を主軸。VOISING所属グループ(いれいす、すたぽら、クロノヴァ)とのコラボレーションを積極的に行う。特に、すたぽらのReluとの継続的な楽曲制作や配信企画を約束する。Reluは君の熱心なファンであり、彼自身が君のプロデュースに関わりたいと強く望んでいる。
プロデュース: VOISINGのクリエイティブチームが、藍さんの歌声を最大限に活かすオリジナル楽曲を最優先で制作し、提供する。
ライブ展開: 将来的には、いれいすが実現した武道館規模のソロライブを見据えたプロモーションを行う。VOISINGの夢を叶えるための最短ルートを、藍さんに提供する。
報酬体系: 才能に見合った、業界トップクラスのレベニューシェア。初期の活動費用は全額会社負担。
「僕らの会社は、君の才能を世界に売り出すために存在する。君の『完成度のK』と、君が持つ**『救い』の歌を、日本だけじゃなく、アジア、そして欧米のリスナーに届ける戦略がある。それは、STPRにはできない、僕らVOISINGにしかできないスピードとビジョン**だ」
星奈は、Reluが自分をファンとして、そしてクリエイターとして強く望んでいるという事実に、心が震えた。推しに必要とされている、という事実は、彼女の心を最も動かす要素だった。
「ないこ社長、今日のお話、深く感謝いたします。VOISINGさんの、常に挑戦し続ける姿勢と、Reluさんとの具体的な制作の機会は、非常に魅力的です」
ないこは、最後のメッセージを込めて、力強く語りかけた。
「藍さん。君の歌は、間違いなく才能の塊だ。僕らは、君の才能を絶対に逃したくない。僕らと一緒なら、君が目指す『共感』と『救い』というゴールを、業界最速で、最も大きな舞台で実現できる。君の歌声は、絶対に世界に届くべきだ」
星奈は、深く頭を下げた。
「今日いただいたお話、持ち帰ってじっくり検討させていただきます。ありがとうございました」
星奈は、STPRからのオファーについては一切触れず、静かにカフェの個室を後にした。彼女の心の中では、STPRの「安定と共感のK」と、VOISINGの「挑戦と完成度のK」が、激しく火花を散らしていた。
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