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数週間、社長たちからのDMは途切れることなく続いた。その熱意は、星奈の警戒心を徐々に崩していった。
「…いくらなんでも、ここまでしつこく、しかも両社の社長が偽物で連絡してくるなんてこと、あるのかな?」
星奈は、意を決して、各社の公式サイトにある**「法人・企業からの問い合わせ窓口」**に、匿名で連絡を入れた。
「藍という歌い手に、貴社社長名義でオファーDMが来ているのですが、これは本物でしょうか?」
数日後、両社の窓口から、ほぼ同時に返信が来た。
STPR窓口:「お問い合わせありがとうございます。弊社社長からのDMは本物です。ぜひ、前向きにご検討いただけますと幸いです。」
VOISING窓口:「ご連絡ありがとうございます。弊社社長からのオファーDMは確かに本物です。大変恐縮ですが、DMにてご連絡をお待ちしております。」
この返信を受け取った瞬間、星奈の頭の中は真っ白になった。自分の信じていた「無名の歌い手」という世界が、一瞬でひっくり返った。
震える手で、星奈はまず**ななもり。**へのDMに返信をした。
藍:『ななもり。社長。ご連絡ありがとうございます。DMが本物であることを確認しました。オファーについて、一度お話しさせていただきたく思います』
ほぼ同時に、ないこへのDMにも返信をした。
藍:『ないこ社長。ご連絡ありがとうございます。DMが本物であることを確認しました。オファーについて、一度お話しさせていただきたく思います』
星奈からの返信を受け取ったななもり。とないこは、即座に対面を要求してきた。
A. ななもり。とのやり取り
ななもり。は即座に返信を打った。
ななもり。:『ありがとうございます!すぐにでもお会いしたいです。来週、東京に来ていただくことは可能でしょうか?』
星奈は、高校生であるため、平日の学校を休んだり、保護者に隠して東京に行くことは不可能だった。
藍:『大変申し訳ありませんが、東京での対面は難しいです。現在の活動拠点が関東圏ではないため、そちらに伺うことはできません。』
ななもり。は、藍の才能を逃すわけにはいかないと即断した。(彼は、VOISINGもオファーしていることを知らないため、競合に先を越される焦りは感じつつも、余裕をもって対応する。)
ななもり。:『承知しました。それでは、私がそちらに伺います。大阪・梅田での対面はいかがでしょうか?週末の昼間であれば、ご都合はつきますでしょうか?』
B. ないことのやり取り
ほぼ同時刻、ないこも藍の返信を受け取り、興奮気味に返信した。
ないこ:『返信ありがとうございます!東京での対面を希望しますが、ご都合はいかがでしょうか?』
藍:『申し訳ありません、現在の活動拠点の関係で、東京までは伺えません。』
ないこもまた、即座にプランBに切り替えた。VOISINGは常に挑戦とスピードが命だ。(彼もまた、STPRが動いていることを知らないため、最高の才能を最速で確保したいという、VOISINGらしい焦燥感と行動力で提案する。)
ないこ:『わかりました!それなら俺が向かいます。大阪・梅田で、平日の放課後の時間帯で、静かなカフェの個室などでの対面は可能でしょうか?』
社長たちの迅速かつ柔軟な対応に、星奈は両社の本気度を改めて思い知らされた。
藍(ななもり。へ):『ありがとうございます。それでは、休日の昼からホテルのラウンジで、お話しさせてください。』
藍(ないこへ):『ありがとうございます。それでは、平日の放課後に静かなカフェの個室で、お話しさせてください。』
こうして、藍(青龍星奈)は、自分の人生を大きく変える二度の面談に臨むことになった。
この時、藍が高校生であることも、女性であることも、そしてもう一方の会社からもオファーが来ていることも、両社の社長は知る由もなかった。彼らは、自分の会社こそが最高の才能を獲得できると信じ、静かに闘志を燃やしていた。
面談の日程が決まり、星奈は緊張と興奮の中で準備を始めた。彼女は、「藍」という性別不明の存在を保つために、服装にこだわった。
白シャツ、黒ネクタイ、ワイドズボンという中性的なコーディネートを選び、手元には赤のマグネットネイルのネイルチップを施した。少しでも大人に見えるように、そして自分の性別をカモフラージュするために。
「よし。話を聞くだけだ。どっちにも入るって決めたわけじゃない。冷静に、条件を聞こう」
星奈は、自分の推しの会社と、そのライバル会社のトップと対峙するという、夢のような、しかし途方もなく現実的な事態に、心を奮い立たせた。