（九十九 慧視点）

シクフォニがVOISING事務所から去った後、彼らの熱意と、VOISINGタレントたちの後悔に満ちた表情を見ていた。

（Relu…君は、本当に愛されているよ）

私の心は、 Reluへの忠誠と、彼を深く傷つけてしまったVOISINGのタレントたちへの同情との間で引き裂かれていた。

Reluが退所した翌日から、生活は一変した。僕はVOISINGでの仕事を続けながら、Reluを僕の用意した都心から離れたマンションで匿い、彼の命を守ることに専念していた。


ある日、**Coe.**が僕に話しかけてきた。彼は、すたぽらのリーダーとして、メンバーをまとめる重圧と、Reluを失った悲しみに打ちひしがれていた。

「慧さん。僕たち、みんなでReluさんに謝りたいんです。僕たちのリーダーとして、あいつを信じられなかったことを…」

「Coe.さん。私も、あなたたちの心情は理解しています。ですが、今のReluさんは、誰とも会うことを望んでいません。彼の意思を尊重してください」

僕は、どんなに心の中で泣き叫んでも、Reluとの**「秘密の共有者」**としての約束を破ることはできなかった。僕が彼の秘密を漏らせば、彼の「最後の活動」が台無しになってしまう。



そして、VOISING外部の専門家によるTwitterアカウントのセキュリティ調査の結果、Reluの自白は嘘であり、アカウントは外部から不正アクセスを受けていたという真実が、正式にVOISING幹部に報告された。

その事実がVOISINGのタレントたちに知らされた時、事務所は慟哭に包まれた。

「うそだろ…れるちは、やっぱり僕たちのために…」いれいすのりうらが、その場に崩れ落ちる。

「俺たち、最低だ。Reluさんが、命がけで守ろうとした俺たちの信頼を、俺たち自身で壊したんだ」クロノヴァのかなめが、声を震わせた。

すたぽらのメンバーの苦しみは、計り知れなかった。

くには、自分の部屋で泣き叫び、こったろは、Reluが言った「僕の本心だ」という言葉を思い出しては、嘔吐した。

**Coe.**は、自分のリーダーとしての無力さに、深い絶望を感じていた。「僕は… Reluのリーダー失格だ」

VOISINGのメンバー全員の目標は、「Reluの捜索と謝罪」へと切り替わった。しかし、九十九 慧が徹底して口を閉ざしているため、彼らは Reluの居場所を掴めずにいた。


（Relu視点）

自分と九十九 慧の二人だけの静かな生活は、僕の体調悪化によって、唐突に終わりを告げた。

ある日の朝、激しい呼吸困難に陥った自分は、九十九 慧の迅速な対応により、病院に運び込まれた。検査の結果は、心不全の急激な悪化。

医者からの最終的な通告は、厳しかった。

「九十九さん。Reluさんの病状は、もう薬でコントロールできません。これ以上の治療は延命にしかならない。もって、あと一週間でしょう」

その言葉を聞いた自分の心は、不思議と穏やかだった。命の炎は、もうすぐ燃え尽きる。

九十九 慧は、れるの隣で、顔を覆って泣いた。彼女の涙が、自分の手に落ちるのを感じる。

「…慧。泣かんとって。最後まで、自分のそばにいてくれて、ありがとう」

自分は、最愛の友である彼女の手を握り、最後のわがままを言った。

「慧。お願い。れるの死ぬ前に…みんなに会いたい。VOISINGのみんなにも、シクフォニのみんなにも。一度でいいから、もう一度、みんなの顔を見て、声を聞きたい」

九十九 慧は、涙を拭い、僕の顔をまっすぐ見た。

「わかった。Relu。必ず、みんなを連れてくる。マネージャーとして、あなたの最後の望みを、必ず叶えるよ」

九十九 慧は、れるとの約束を果たすため、VOISINGのメンバーと、シクフォニのメンバーに対し、最後の、そして最初で最後の情報開示を決意した。