『青い旋律』の爆発的な成功は、星奈に残された時間が限られているという現実に、ひとときの喜びと光をもたらした。しかし、喜びの裏で、メンバーたちは冷静に彼女の容態と向き合っていた。

星奈の次の願いは、「23人全員でのプライベートなショートトリップ」。これは、外部の目を気にせず、純粋に家族として楽しむための旅である。しかし、余命宣告を受けた星奈の体調は不安定であり、万全のケア体制が不可欠だった。

ケア＆マネジメントチームの中心であるシクフォニの雨乃こさめ、すたぽらのRelu、そしていれいすの**-hotoke-**は、この旅の計画に最も神経を注いだ。

「星奈の主治医からも、刺激は避けて、疲れさせへんことが絶対条件やって言われてる」と、Reluが言った。彼は、医療関係の知識を独自に調べており、星奈の体調の些細な変化にも気づけるよう努力していた。

雨乃こさめは、白いボードに綿密なタイムスケジュールを書き込んでいく。「目的地は、旅館から車で一時間半ほどの場所にある、静かな湖畔のコテージ。完全に貸し切りで、万が一の移動もすぐにできるように、道中の救急病院のルートも全て把握しておく」

**-hotoke-は、星奈の精神的なケア担当として発言した。「星奈ちゃんは、みんなに迷惑をかけたくないって思ってる。だから、『これはみんなが楽しむための旅行なんだよ』**って思ってもらえるように、星奈ちゃんの負担になるような役割は一切与えないようにしよう」


旅は、23人の連携が試される最大の試練となった。全員が役割を持ち、星奈の命の旅路を支える。

チーム

メンバー（中心）

担当役割（旅路編）

医療・衛生

シクフォニ（雨乃こさめ）、すたぽら（Relu）

薬の管理、体調チェック、休憩タイミングの判断。

警備・護衛

クロノヴァ（ALKHE、しの）、いれいす（悠佑）

外部からの接触防止、コテージ周辺の警備。

エンターテイメント

いれいす（りうら、If）、シクフォニ（みこと、LAN）

旅先での楽しい企画、星奈を笑顔にする瞬間作り。

記録

すたぽら（くに、こったろ）、いれいす（ないこ）

写真、動画、旅の日記作成。全ての瞬間を記録。

中でも、クロノヴァのALKHEが率いる警備チームは、最も重要な役割を担っていた。佐倉が追放されたとはいえ、彼女の残党がまだ星奈を狙っている可能性はゼロではないからだ。

「この旅は、星奈にとって最初で最後の思い出になるかもしれない。絶対に、俺たちが全力で守り抜く」ALKHEの目つきは鋭く、その言葉には強い決意が込められていた。

いれいすのないこは、彼ら全員のリーダーとして、最後に全員に呼びかけた。「この旅は、俺たち全員の贖罪の旅だ。俺たちが星奈に与えてしまった孤独を、愛と笑顔で埋め尽くそう。ただし、無理はするな。全員、笑顔で帰ってくること。それが星奈の願いでもあるんだから」


数日後、出発の朝を迎えた。

湖畔のコテージへ向かう移動は、VOISINGが用意した大型のプライベートカーで行われた。車内は、星奈が疲れないように、座席がフルフラットになるよう改造されており、静かで穏やかな空間となっていた。

いれいすのりうらと初兎が、星奈の両隣に座り、景色が変わっていくのを星奈と一緒に眺めている。

「りうらくん、初兎くん、みんな、ありがとう。無理してない？」星奈が心配そうに尋ねた。

初兎は星奈の頭を優しく撫でた。「心配いらへんよ、星奈。俺たちがこの旅行を一番楽しみにしてたんやから。それに、俺たちのリーダー、ないちゃんが、すごく楽しい企画を考えてるんやで」

車窓の外を流れる、緑豊かな景色。星奈の顔には、この旅を心から楽しみにしている、純粋な笑顔が浮かんでいた 。

彼女の命の炎は小さくなっている。だが、その炎の周りには、今、23人の温かい光が集まり、彼女の命を輝かせようとしていた。彼らは、残りの時間をただ悲しむのではなく、彼女の人生を「最高傑作」にするために、この旅に出るのだった。