《LAN視点》

昼の光が差し込むスタジオに、LANはいつもの笑顔を作ろうとしていたが、心の中は落ち着かない。
「なんで、Reluと連絡が取れないんだよ……」
目の前では、ないこやARKHE、Coe.たちが作業をしている。
いつも通りの風景なのに、心の奥で何かがざわつく。

LANはコーヒーを手に取り、深呼吸する。
「いや……でも、昼間のリハでのあの様子はおかしかった。あれはただの疲れじゃない」
Coe.の方を見る。
最年少リーダーらしい彼の表情も、どこか曇って見えた。

「らんらん、またれるちのこと考えてる？」
ないこの声が少し苛立ち混じりに響く。
LANは黙って頷く。
「やっぱり……おかしい。昼の様子も、配信中の態度も。何か隠してる」

ARKHEは眉を寄せ、スマホを手にする。
「情報を集めるしかないだろ。ツイートも配信も、SNSの更新も、全部チェックしてる」
しかし、更新は途絶え、情報は途切れたままだ。

LANは立ち上がる。
「よし……俺、直接家に行く」
ないこもARKHEも驚きの表情。
「らんらん、それは……」
「Reluの異変を放置できない」
LANは強い口調で言い切った。

仲間たちと一緒に、LANはReluの自宅に向かう。
道中、無言の時間が流れる。
それぞれが頭の中で最悪のシナリオを想像し、胸が締め付けられる。

マンションに着くと、ドアには見覚えのある靴跡もなく、静まり返っている。
LANは呼び鈴を押すが、応答はない。
すると、扉がゆっくりと開き、藍が立っていた。

「LANさん……会いに来たんやな」
藍は無表情だが、その瞳は鋭く光っている。
「Reluに会わせてくれ！」
LANは怒りと焦燥で声を荒げる。
藍は静かに首を振る。
「今は会えへん。Reluは……会いたくないって」

LANの胸に熱いものが込み上げる。
「なんで……俺らには知る権利があるでしょ！」
藍は少しだけ目を伏せ、重い声で言う。
「LANさんにはわからへん。今、Reluに必要なのは距離や。俺と星奈で守るしかない」

LANはその場に立ちすくむ。
怒りと悲しみ、焦燥、そして無力感が一気に押し寄せ、心臓が早鐘を打つ。


自宅訪問の後、LANはスタジオに戻り、仲間たちに状況を説明する。
「Relu……会わせてもらえない。藍と星奈が止めるんだよ」
Coe.は顔を伏せ、声を落とす。
「……そっか」

ないこは拳を握りしめる。
「俺たちは何もできないのか……？」
ARKHEも眉をひそめ、スマホを握りしめる。
「まだ手はある。SNS、メッセージ、未完成の曲や手紙……何か手がかりが残ってるかもしれん」

LANはスマホを取り出し、昼間の配信の録画を何度も見返す。
「……あの時のReluの目、表情……やっぱりおかしい」
Coe.も隣で画面を覗き込み、小さく息を吐く。
「僕……Reluさんの気持ち、気づけなかったのかな」

その夜、仲間たちは個々にReluの行動の痕跡を探し始める。
メッセージの履歴、配信中のコメント、未完成の曲の録音データ。
どれも不自然な点はあるが、決定的な答えは見つからない。

LANは焦りを抑えきれず、再び外に出る。
夜の街を歩きながら、Reluの笑顔を思い浮かべる。
「Relu……お前は今、どこにいるんだよ」
街灯の下、LANの影は長く伸び、孤独に揺れている。

その後も仲間たちは情報交換を続ける。
「LAN、今日も連絡取れた？」
「まだ。藍と星奈に遮られてる」
「手紙とか、何か残ってない？」
「未完成の曲しか……でも、意味はわからない」

LANは拳を握りしめ、決意を新たにする。
「……絶対に諦めない。Reluの本当の気持ち、必ず知る」
その強い思いが、仲間たちの胸にも伝わり、空気が引き締まる。

夜が更けても、Reluの痕跡を追う手は止まらない。
LANは街を彷徨い、仲間たちに連絡を取り続ける。
不安、怒り、焦燥――それらすべてが交錯し、胸を締め付ける。
しかし、諦めることはできない。
Reluの笑顔、声、そして未完成の手紙の存在が、仲間たちを突き動かしていた。

そして、LANは思う。
（俺たちは……どこまでもReluを追い続ける。藍や星奈が何をしても、絶対に諦めない）

静まり返った夜のスタジオで、仲間たちの焦燥はますます深まる。
誰も知らないまま、Reluは少しずつ姿を消している。
しかし、仲間たちはまだ気づいていない――本当の理由を。