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《Relu視点》
夜の静けさに包まれた部屋。
机の上には、書きかけのノートと、録音途中のデモ音源。
どちらも未完成のまま、止まっている。
ベッドに腰を下ろし、深く息を吐いた。
窓の外には都会の明かりが瞬いているのに、この部屋だけは時間が止まったように静まり返っている。
――LANが来ていた、と藍から聞かされた。
直接顔を合わせることはなかったが、きっと必死に問い詰めてきたんやろう。
Coe.や他の仲間も、不安で眠れん夜を過ごしてるかもしれん。
胸の奥が痛む。
でも、その痛みを押し殺さなきゃならない。
「……嫌われへんかったら、意味ないんや」
呟きは、自分自身への言い聞かせやった。
みんなに嫌われ、遠ざけられて、初めて“いなくなる準備”ができる。
そうじゃなきゃ、残された人らの心にもっと深い傷を残してまう。
スマホに届いた通知を一瞥する。
Coe.からの未読のメッセージが並んでいた。
「れるさん、ほんまに何もない?」
「僕、嫌われることした?」
「心配なんだよ」
読むだけで、胸が詰まる。
返したら、きっと泣かせてしまう。
返さなくても、もう泣いてるかもしれん。
どっちにしても、自分は残酷な選択をしなあかん。
机に戻り、ペンを取った。
ノートの端に、震える字で書き込む。
『嫌われても、君を愛していた証』
未完成の歌詞の断片。
最後に残す言葉は、これ以上飾らなくてもええ。
ただ、真実を隠したまま、胸の奥だけに刻んでおく。
遠くのリビングから、藍と星奈の声がかすかに聞こえた。
二人は俺を守るために、友を遠ざけている。
罪悪感に押し潰されそうでも、それでも支えてくれている。
だからこそ――決意を固めなければならない。
「……最後まで、やり通す」
ノートを閉じ、録音ソフトを起動する。
声が震えても、息が続かなくても、歌わなきゃならない。
自分が消えたあとに残るのは、この歌だけやから。
パソコンの前に座り、マイクチェックを済ませる。
声を出すと、以前よりも少し掠れているのが自分でもわかった。
喉の奥に、重く冷たいものが張り付いている感覚。
それでも無理やり笑みを浮かべて、台本のファイルを開いた。
そこには、自分が書き込んだシナリオが並んでいる。
リスナーに対しても、仲間に対しても、冷たく振る舞うための台詞。
「うるさい」「別に興味ない」「盛り上げるのは他の役目やろ」
――そんな言葉ばかり。
自分で書いた文字を見つめて、胸が痛んだ。
ほんまは、言いたくなんかない。
ほんまは、みんなの笑顔を見たい。
Coe.が冗談を言って、ないこがツッコミ入れて、LANがフォローして、
一緒に笑って、それでええやんかって思う。
けど――それじゃ、ダメなんや。
自分は余命1年。
みんなの記憶に、温かい思い出だけを残して消えたら……
その後の喪失感はきっと、もっと深く、もっと重い。
だから、嫌われなあかん。
憎まれて、見放されて、「もうええわ」って言われて。
それでようやく、みんなは前に進める。
「……ごめんな、みんな」
誰にも届かない声で呟く。
机の端には、書きかけの手紙が何通か置いてある。
封筒にはまだ名前を書いていない。
Coe.、LAN、ないこ……メンバーたち一人一人に宛てた未完成の言葉。
「まだ書いたらあかん」と、自分を止めてきた。
終わりのその時が来るまで、残してはいけない。
モニターのランプが点滅する。
配信の準備が整った合図。
深く息を吸って、用意した「冷たい言葉」の台本に目を走らせた。
指先が震える。心臓が嫌な音を立てて暴れている。
でも――押し殺せ。
これは自分が決めた道や。
「……行くで」
マウスをクリックし、配信を開始した。
画面の向こうで、今日もリスナーたちの歓声が弾ける。
「れるー!」「待ってた!」
――その声が、どれほど胸を締めつけるか、きっと誰にも分からない。
配信画面が起動すると、コメント欄が一気に流れ始めた。
「おー、れるだ!」「今日も楽しみ!」
いつも通りの熱気と期待の声。
俺は息を殺して、冷たい表情のままカメラを見据える。
「……Reluです」
声は短く、無表情。感情を隠しきって吐き出す。
画面の向こうのリスナーからは、すぐに反応が返る。
「れる元気ない?」「どうしたの?」
指先が震え、胸がざわつく。
心臓がバクバクして、笑顔を作るのもやっとだった。
Coe.が画面越しに俺を見て、微かに眉を寄せる。
「今日はテンション低め?」
冗談めかしたその声に、自分の胸がぎゅっと締めつけられる。
本当は笑いたい、冗談を交わしたい――でも、今はそれを許されへん。
「……別に。盛り上げるのはリーダーの役目やろ」
氷のように冷たい言葉を返す。
それを見たCoe.は、一瞬悲しそうに息を詰めたのが分かる。
でも、画面越しに伝わるのはせいぜい「ツンデレな態度」程度だろう。
藍がすかさず割り込む。
「おーいおーい! れるはツンデレやからな! 気にせんでええで〜!」
その明るさに救われる部分もあるが、胸の奥の痛みは消えない。
星奈も柔らかくフォローする。
「はいはい、次のコーナー行こう!」
彼女の手が肩に触れると、ほんの一瞬、心がふっと軽くなる。
でもそれも、すぐに現実に引き戻される。
コメント欄には、温かい声と不安の声が混ざる。
「Coe.大丈夫?」「れる泣かないで」
その一つ一つに、俺の胸が痛み、指先が震える。
――嫌われ役を演じている。
でもその代償として、こんなにもみんなを傷つけてしまっている。
深く息を吐き、目を閉じる。
この痛みも孤独も、全部受け止めて、最後までやり遂げる。
それが俺の決意や。
画面の向こうの声は、温かく、優しく、でも届かない。
俺は今日も笑顔を作り、冷たい言葉を吐きながら、心の奥では泣きそうになっていた。
「……これで、少しでも楽になれるなら……」
目を細め、俺は次のコーナーへと進む。
配信が終わり、画面が暗くなると、部屋には静寂が戻った。
コメント欄の賑わいも、今はもう音として残らない。
俺は椅子に深く腰かけ、重く沈む胸を抱えるように背中を丸めた。
――そのとき、玄関のドアが軽くノックされた。
「Reluさん、いいかな?」
低く、けれど確かな声。
Coe.や。
心臓が跳ねる。
でも同時に、胸の奥が締め付けられる。
(あかん……会ってはいけない、今は……)
「……今は……」
声を潜め、返事をしようとした瞬間。
「LANさんもCoe.も、今日は会わせられません」
藍がすっと現れ、自分とCoe.の間に立つ。
「Reluは……今、休む必要があるんです」
「そう、無理に会わせなくてもいい」
星奈も背後から静かに声をかける。
その目は優しいのに、決して退かない強さを持っている。
Coe.はしばらく黙って、れるの顔を見つめていた。
その目には心配と葛藤、そして哀しみが混ざっていた。
でも藍と星奈の壁を前に、何もできないことを悟る。
「……わかった……」
Coe.は小さく息を吐き、肩を落とした。
その背中を見て、自分の胸も苦しくなる。
本当は抱きしめてほしいのに。
本当は「大丈夫、みんなおるから」と言ってほしいのに。
微かに笑い、机の方へと向き直る。
「……ありがとう、藍、星奈」
声は小さいけれど、二人には届く。
藍は少しだけうなずき、星奈も柔らかく微笑んだ。
二人の存在だけが、今の俺を支えてくれている。
椅子に沈み込みながら、静かに心に決めた。
(これでええ……嫌われ続ける覚悟も、もう決めた)
でも、胸の奥の小さな声はまだ、誰かに甘えたいと叫んでいた。
夜の静寂の中、俺はその声を押し殺し、深く息を吐いた。
そして、未完成の歌詞と録音を見つめながら、明日への準備を始めるのだった。
夜の静けさに包まれた部屋。
机の上には、書きかけのノートと、録音途中のデモ音源。
どちらも未完成のまま、止まっている。
ベッドに腰を下ろし、深く息を吐いた。
窓の外には都会の明かりが瞬いているのに、この部屋だけは時間が止まったように静まり返っている。
――LANが来ていた、と藍から聞かされた。
直接顔を合わせることはなかったが、きっと必死に問い詰めてきたんやろう。
Coe.や他の仲間も、不安で眠れん夜を過ごしてるかもしれん。
胸の奥が痛む。
でも、その痛みを押し殺さなきゃならない。
「……嫌われへんかったら、意味ないんや」
呟きは、自分自身への言い聞かせやった。
みんなに嫌われ、遠ざけられて、初めて“いなくなる準備”ができる。
そうじゃなきゃ、残された人らの心にもっと深い傷を残してまう。
スマホに届いた通知を一瞥する。
Coe.からの未読のメッセージが並んでいた。
「れるさん、ほんまに何もない?」
「僕、嫌われることした?」
「心配なんだよ」
読むだけで、胸が詰まる。
返したら、きっと泣かせてしまう。
返さなくても、もう泣いてるかもしれん。
どっちにしても、自分は残酷な選択をしなあかん。
机に戻り、ペンを取った。
ノートの端に、震える字で書き込む。
『嫌われても、君を愛していた証』
未完成の歌詞の断片。
最後に残す言葉は、これ以上飾らなくてもええ。
ただ、真実を隠したまま、胸の奥だけに刻んでおく。
遠くのリビングから、藍と星奈の声がかすかに聞こえた。
二人は俺を守るために、友を遠ざけている。
罪悪感に押し潰されそうでも、それでも支えてくれている。
だからこそ――決意を固めなければならない。
「……最後まで、やり通す」
ノートを閉じ、録音ソフトを起動する。
声が震えても、息が続かなくても、歌わなきゃならない。
自分が消えたあとに残るのは、この歌だけやから。
パソコンの前に座り、マイクチェックを済ませる。
声を出すと、以前よりも少し掠れているのが自分でもわかった。
喉の奥に、重く冷たいものが張り付いている感覚。
それでも無理やり笑みを浮かべて、台本のファイルを開いた。
そこには、自分が書き込んだシナリオが並んでいる。
リスナーに対しても、仲間に対しても、冷たく振る舞うための台詞。
「うるさい」「別に興味ない」「盛り上げるのは他の役目やろ」
――そんな言葉ばかり。
自分で書いた文字を見つめて、胸が痛んだ。
ほんまは、言いたくなんかない。
ほんまは、みんなの笑顔を見たい。
Coe.が冗談を言って、ないこがツッコミ入れて、LANがフォローして、
一緒に笑って、それでええやんかって思う。
けど――それじゃ、ダメなんや。
自分は余命1年。
みんなの記憶に、温かい思い出だけを残して消えたら……
その後の喪失感はきっと、もっと深く、もっと重い。
だから、嫌われなあかん。
憎まれて、見放されて、「もうええわ」って言われて。
それでようやく、みんなは前に進める。
「……ごめんな、みんな」
誰にも届かない声で呟く。
机の端には、書きかけの手紙が何通か置いてある。
封筒にはまだ名前を書いていない。
Coe.、LAN、ないこ……メンバーたち一人一人に宛てた未完成の言葉。
「まだ書いたらあかん」と、自分を止めてきた。
終わりのその時が来るまで、残してはいけない。
モニターのランプが点滅する。
配信の準備が整った合図。
深く息を吸って、用意した「冷たい言葉」の台本に目を走らせた。
指先が震える。心臓が嫌な音を立てて暴れている。
でも――押し殺せ。
これは自分が決めた道や。
「……行くで」
マウスをクリックし、配信を開始した。
画面の向こうで、今日もリスナーたちの歓声が弾ける。
「れるー!」「待ってた!」
――その声が、どれほど胸を締めつけるか、きっと誰にも分からない。
配信画面が起動すると、コメント欄が一気に流れ始めた。
「おー、れるだ!」「今日も楽しみ!」
いつも通りの熱気と期待の声。
俺は息を殺して、冷たい表情のままカメラを見据える。
「……Reluです」
声は短く、無表情。感情を隠しきって吐き出す。
画面の向こうのリスナーからは、すぐに反応が返る。
「れる元気ない?」「どうしたの?」
指先が震え、胸がざわつく。
心臓がバクバクして、笑顔を作るのもやっとだった。
Coe.が画面越しに俺を見て、微かに眉を寄せる。
「今日はテンション低め?」
冗談めかしたその声に、自分の胸がぎゅっと締めつけられる。
本当は笑いたい、冗談を交わしたい――でも、今はそれを許されへん。
「……別に。盛り上げるのはリーダーの役目やろ」
氷のように冷たい言葉を返す。
それを見たCoe.は、一瞬悲しそうに息を詰めたのが分かる。
でも、画面越しに伝わるのはせいぜい「ツンデレな態度」程度だろう。
藍がすかさず割り込む。
「おーいおーい! れるはツンデレやからな! 気にせんでええで〜!」
その明るさに救われる部分もあるが、胸の奥の痛みは消えない。
星奈も柔らかくフォローする。
「はいはい、次のコーナー行こう!」
彼女の手が肩に触れると、ほんの一瞬、心がふっと軽くなる。
でもそれも、すぐに現実に引き戻される。
コメント欄には、温かい声と不安の声が混ざる。
「Coe.大丈夫?」「れる泣かないで」
その一つ一つに、俺の胸が痛み、指先が震える。
――嫌われ役を演じている。
でもその代償として、こんなにもみんなを傷つけてしまっている。
深く息を吐き、目を閉じる。
この痛みも孤独も、全部受け止めて、最後までやり遂げる。
それが俺の決意や。
画面の向こうの声は、温かく、優しく、でも届かない。
俺は今日も笑顔を作り、冷たい言葉を吐きながら、心の奥では泣きそうになっていた。
「……これで、少しでも楽になれるなら……」
目を細め、俺は次のコーナーへと進む。
配信が終わり、画面が暗くなると、部屋には静寂が戻った。
コメント欄の賑わいも、今はもう音として残らない。
俺は椅子に深く腰かけ、重く沈む胸を抱えるように背中を丸めた。
――そのとき、玄関のドアが軽くノックされた。
「Reluさん、いいかな?」
低く、けれど確かな声。
Coe.や。
心臓が跳ねる。
でも同時に、胸の奥が締め付けられる。
(あかん……会ってはいけない、今は……)
「……今は……」
声を潜め、返事をしようとした瞬間。
「LANさんもCoe.も、今日は会わせられません」
藍がすっと現れ、自分とCoe.の間に立つ。
「Reluは……今、休む必要があるんです」
「そう、無理に会わせなくてもいい」
星奈も背後から静かに声をかける。
その目は優しいのに、決して退かない強さを持っている。
Coe.はしばらく黙って、れるの顔を見つめていた。
その目には心配と葛藤、そして哀しみが混ざっていた。
でも藍と星奈の壁を前に、何もできないことを悟る。
「……わかった……」
Coe.は小さく息を吐き、肩を落とした。
その背中を見て、自分の胸も苦しくなる。
本当は抱きしめてほしいのに。
本当は「大丈夫、みんなおるから」と言ってほしいのに。
微かに笑い、机の方へと向き直る。
「……ありがとう、藍、星奈」
声は小さいけれど、二人には届く。
藍は少しだけうなずき、星奈も柔らかく微笑んだ。
二人の存在だけが、今の俺を支えてくれている。
椅子に沈み込みながら、静かに心に決めた。
(これでええ……嫌われ続ける覚悟も、もう決めた)
でも、胸の奥の小さな声はまだ、誰かに甘えたいと叫んでいた。
夜の静寂の中、俺はその声を押し殺し、深く息を吐いた。
そして、未完成の歌詞と録音を見つめながら、明日への準備を始めるのだった。