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《LAN視点》
LANは配信を見ていた。画面越しでも、Reluの変化は明らかだった。
普段なら言葉遊びのようにCoe.をいじり倒し、軽口を飛ばして場を回す男が、まるで氷みたいに無表情で、冷たい声しか出していなかった。
「……あれはおかしい」
LANは唇を噛みしめ、すぐに動いた。
後日、LANはないこ(いれいす)とARKHE(クロノヴァ黒組リーダー)を呼び出した。
リーダー同士、互いのグループの様子を共有する場。
「……やっぱらんらんも気づいたんだね」
ないこが真剣な顔で言う。
「俺も配信見てた。Coe.の必死な笑顔が痛かった。あれは……隠してるよ、絶対に」
ARKHEは腕を組み、低い声で呟く。
「闇が近づいているな……。Reluの魂から光が失われている」
「中二病やめろ」LANは即ツッコミを入れたが、その声は重い。
「でも言ってることは正しい。あいつ、何か隠してる」
三人は決意を固めた。
「Reluの居場所を突き止める。本人から直接聞くしかない」
ある日の夕方。
LANは思い切って、Reluの自宅を訪れた。
チャイムを押すと、ドアが開いた。
「……なんや、LANか」
そこに立っていたのはReluではなく、藍だった。
「藍……なんでお前がここにいんの」
LANは眉をひそめる。
藍はドアの隙間からLANを見据え、冷静に答えた。
「Reluは……会いたない言うてる」
「は?」
LANの胸に熱が込み上げる。
「なんだよそれ。理由は? 俺たち、友達でしょ。仲間でしょ!」
藍の目は揺れなかった。
「せやけど……あいつが望んでへん。俺は、その意思を尊重してるだけや」
LANの拳が震えた。
「……それが本当にReluの意思か? お前が勝手に壁になってるんじゃないのか?」
藍は一瞬、言葉に詰まったが、すぐに視線を逸らさず言い切った。
「……Reluは、会いたくないんや」
その一言が、LANの胸を切り裂いた。
「……わかった」
LANは低く、絞り出すように言った。
「でも、俺は諦めない。何回でも来る。Reluが本当に俺らを拒絶してるのか、俺がこの目で確かめるまで」
藍は無言のままドアを閉めた。
廊下に残されたLANの手は震えていた。
「……くそっ……!」
怒りと悲しみに、LANの声が夜に響いた。
Reluの自宅前で藍に突き放されてから数日。
LANの胸にはずっと重い石がのしかかっていた。
「……このまま黙ってられるかよ」
藍に門前払いをくらった夜、LANは眠れなかった。
Reluが本当に「会いたくない」と言ったのか、それとも――藍と星奈が隠しているのか。
LANの直感は後者だと告げていた。
数日後、LANは「すたぽら」の練習スタジオを訪れた。
扉を開けると、メンバーが曲合わせをしている真っ最中。
真剣な表情で歌うCoe.の姿が目に入る。
練習がひと段落した休憩時間、LANはCoe.に歩み寄った。
「やっほー、こえちむ」
「LANくん?」
Coe.が目を丸くする。
「どうしたんですか、急に」
LANは真剣な表情のまま、声を潜めて言った。
「……Reluのことなんだけど」
Coe.の肩が小さく揺れた。
「……やっぱり、LANくんも気づいてるんですね」
その瞳に浮かぶのは、不安と戸惑い。
LANは頷き、声をさらに落とす。
「このまま放っといたらだめだよ。……一緒に真相を探さない?」
Coe.は唇を噛んだ。
「僕も……ほんとは、知りたいんです。なんで、れるさんが僕を避けるのか。……でも」
そのときだった。
背後から明るい声が割って入る。
「おー、LAN! 何してんねん、わざわざすたぽらのスタジオまで来て!」
振り返ると藍が立っていた。
その隣には星奈もいて、柔らかな笑みを浮かべている。
LANは眉をひそめる。
「……藍」
藍は肩をすくめ、わざとらしく笑った。
「もしかして、またReluのこと聞きに来たんか? しつこいで〜」
星奈も柔らかい声で続ける。
「LANさん、Coe.を巻き込まないであげてください。……今は、余計に混乱させるだけですから」
「なんで……?」
LANの胸に怒りが込み上げる。
「お前ら……本気で何隠してるんだよ」
藍は目を細め、声を低くした。
「繰り返すけどな、Reluは会いたない言うてる。それが全部や。――それ以上突っ込むなら、俺が相手になるで」
スタジオの空気が張り詰めた。
Coe.は二人の間に挟まれ、不安そうに視線を揺らす。
LANは一歩踏み出そうとしたが、そのとき星奈が一言、静かに告げた。
「……LANさん。Reluを守りたいのなら、今は追い詰めないでください」
その声には、妙な重みがあった。
LANは言葉を詰まらせ、拳を握りしめる。
「……わかった。けど、俺は諦めない。何度でも来る。絶対に真実を掴む」
そう言い残して、LANは背を向けた。
去り際、Coe.と目が合った。
その瞳には「僕も知りたい」という切実な色が宿っていた。
LANはスタジオを後にした後も、胸のざわめきが消えなかった。
Reluの自宅でのあの冷たい言葉――「Reluは会いたくない」。
藍が淡々とそう告げたとき、彼の瞳に一瞬も揺らぎがなかったことが、LANの心をさらに重くしていた。
(ほんまに……会いたくないのかな? それとも、誰かにそう言わされてる?)
考えれば考えるほど答えは遠ざかる。だが、時間を浪費している余裕はない。
LANは意を決し、Coe.へ連絡を取ることを決めた。
同じ「すたぽら」の仲間であり、Reluに一番近い存在のはずの彼なら、何か知っているかもしれない。
スマホを握りしめ、震える指でCoe.の番号をタップする。
呼び出し音が鳴るたびに、LANの胸の奥で焦燥が膨れ上がった。
――やがて、通話がつながる。
「……LANくん? どうしたんですか」
電話口から響いたのは、まだどこか幼さの残る柔らかな声。だが、その響きには明らかな緊張が混じっていた。
LANは深く息を吸い、できるだけ穏やかに言葉を選ぶ。
「こえちむ……あのね。率直に聞くけど、Relu、なんか隠してるでしょ。様子おかしいじゃん」
受話器の向こうで、一瞬の沈黙。
雑音すらない空白の時間がLANの耳に重くのしかかる。
「……僕は……」
ためらいがちに口を開いたCoe.の声は、今にも泣き出しそうに震えていた。
「僕は、リーダーなのに……何も知らされてないんです。本当は、心配でたまらない。でも……藍さんも星奈さんも、僕に『余計な詮索はするな』って……」
その言葉を聞いた瞬間、LANの背筋を冷たいものが走った。
(やっぱり……二人が関わっとるんや。Reluを、誰にも会わせんようにしとる)
「こえちむ……本当は、Reluに会いたいでしょ?」
LANは静かに問いかけた。
「……会いたいです。今すぐにでも。でも……」
Coe.の声が途切れる。受話器越しに、押し殺した嗚咽の気配が伝わってきた。
「僕が無理に会いに行ったら……きっと、Reluさんが、もっと苦しむ。藍さんと星奈さんは、Reluさんを守ろうとしてるんです……僕には、それを否定できない」
LANは拳を強く握りしめる。怒りと悔しさで震える指先が、スマホを今にも砕きそうだった。
「……そんな守り方、間違ってるでしょ……」
思わず漏らしたその声は、苦く掠れていた。
LANはこれ以上、Coe.を追い詰めることができなかった。
だが心の奥底で決意する。――このまま黙っているわけにはいかない、と。
藍と星奈がどれほど立ちはだかろうとも、自分は必ずReluに辿り着く。
たとえ、その真実がどれほど残酷なものだったとしても。
夜の東京の街を歩きながら、LANは胸の奥で燃えるような焦燥を抑えられなかった。
Coe.の涙声。藍と星奈の壁。Reluが「会いたくない」と告げられたあの冷徹な拒絶。
どれを思い出しても、答えはひとつに収束する。
(もう……直接確かめるしかない)
Reluの本心を、本人の口から。
そのためには、誰の制止も振り切らなければならない。
深夜、LANは再びReluの住むマンションの前に立った。
灯りは少ないが、一室だけぼんやりと明かりがついている。
――あそこに、Reluがいる。
決意を込めて足を進めた、その瞬間。
「……LANさん」
静かな声が背後から響いた。
振り返れば、暗がりの中に立つ二つの影。
藍と、星奈。
二人はまるで待ち伏せしていたかのように、マンションの入り口を塞いでいた。
「……なんで。なんでそこまでして、Reluを隠すんだよ」
LANは抑えた声で問いただす。
藍は無表情のままLANを見据える。その瞳には氷のような冷たさが宿っていた。
「僕たちは、Reluを守ってるんです。……あなたには分からない守り方で」
「守る? 人から引き離して、孤立させて……それのどこが守ることなんだよ!」
LANの声が夜気に響く。拳を握り、今にも掴みかかりそうになるのを必死で抑え込む。
そのとき、星奈が一歩前に出た。
彼女の表情は悲しみをたたえつつも、断固としたものだった。
「Reluは……もう、限界なんです。だから、会わせられない。たとえLANさんでも」
「……っ」
言葉を突き刺すように遮られ、LANは息を詰まらせた。
理屈ではない。二人は信念で壁を築いている。
「本当に、それでいいのか……? あいつが一人で……苦しんで死んでいくんだったら……」
LANの声は震えていた。怒りだけじゃない。
友を失う予感に、どうしようもなく押し潰されそうだった。
だが、藍と星奈は何も答えなかった。
ただ静かに、LANの行く手を塞ぎ続けた。
――結局、LANは一歩も進めなかった。
夜風が冷たく頬を撫でる中、LANは唇を噛みしめ、視線を地面に落とす。
その姿は、戦いに敗れた兵士のようだった。
「……絶対、諦めねぇからな」
誰に聞かせるでもなく、LANは絞り出すように呟いた。
その背中を見送る藍と星奈の影は、夜の闇に溶け込むように動かず、冷ややかに揺れていた。
――Reluを守るために。
そして、真実を知られないために。
LANは配信を見ていた。画面越しでも、Reluの変化は明らかだった。
普段なら言葉遊びのようにCoe.をいじり倒し、軽口を飛ばして場を回す男が、まるで氷みたいに無表情で、冷たい声しか出していなかった。
「……あれはおかしい」
LANは唇を噛みしめ、すぐに動いた。
後日、LANはないこ(いれいす)とARKHE(クロノヴァ黒組リーダー)を呼び出した。
リーダー同士、互いのグループの様子を共有する場。
「……やっぱらんらんも気づいたんだね」
ないこが真剣な顔で言う。
「俺も配信見てた。Coe.の必死な笑顔が痛かった。あれは……隠してるよ、絶対に」
ARKHEは腕を組み、低い声で呟く。
「闇が近づいているな……。Reluの魂から光が失われている」
「中二病やめろ」LANは即ツッコミを入れたが、その声は重い。
「でも言ってることは正しい。あいつ、何か隠してる」
三人は決意を固めた。
「Reluの居場所を突き止める。本人から直接聞くしかない」
ある日の夕方。
LANは思い切って、Reluの自宅を訪れた。
チャイムを押すと、ドアが開いた。
「……なんや、LANか」
そこに立っていたのはReluではなく、藍だった。
「藍……なんでお前がここにいんの」
LANは眉をひそめる。
藍はドアの隙間からLANを見据え、冷静に答えた。
「Reluは……会いたない言うてる」
「は?」
LANの胸に熱が込み上げる。
「なんだよそれ。理由は? 俺たち、友達でしょ。仲間でしょ!」
藍の目は揺れなかった。
「せやけど……あいつが望んでへん。俺は、その意思を尊重してるだけや」
LANの拳が震えた。
「……それが本当にReluの意思か? お前が勝手に壁になってるんじゃないのか?」
藍は一瞬、言葉に詰まったが、すぐに視線を逸らさず言い切った。
「……Reluは、会いたくないんや」
その一言が、LANの胸を切り裂いた。
「……わかった」
LANは低く、絞り出すように言った。
「でも、俺は諦めない。何回でも来る。Reluが本当に俺らを拒絶してるのか、俺がこの目で確かめるまで」
藍は無言のままドアを閉めた。
廊下に残されたLANの手は震えていた。
「……くそっ……!」
怒りと悲しみに、LANの声が夜に響いた。
Reluの自宅前で藍に突き放されてから数日。
LANの胸にはずっと重い石がのしかかっていた。
「……このまま黙ってられるかよ」
藍に門前払いをくらった夜、LANは眠れなかった。
Reluが本当に「会いたくない」と言ったのか、それとも――藍と星奈が隠しているのか。
LANの直感は後者だと告げていた。
数日後、LANは「すたぽら」の練習スタジオを訪れた。
扉を開けると、メンバーが曲合わせをしている真っ最中。
真剣な表情で歌うCoe.の姿が目に入る。
練習がひと段落した休憩時間、LANはCoe.に歩み寄った。
「やっほー、こえちむ」
「LANくん?」
Coe.が目を丸くする。
「どうしたんですか、急に」
LANは真剣な表情のまま、声を潜めて言った。
「……Reluのことなんだけど」
Coe.の肩が小さく揺れた。
「……やっぱり、LANくんも気づいてるんですね」
その瞳に浮かぶのは、不安と戸惑い。
LANは頷き、声をさらに落とす。
「このまま放っといたらだめだよ。……一緒に真相を探さない?」
Coe.は唇を噛んだ。
「僕も……ほんとは、知りたいんです。なんで、れるさんが僕を避けるのか。……でも」
そのときだった。
背後から明るい声が割って入る。
「おー、LAN! 何してんねん、わざわざすたぽらのスタジオまで来て!」
振り返ると藍が立っていた。
その隣には星奈もいて、柔らかな笑みを浮かべている。
LANは眉をひそめる。
「……藍」
藍は肩をすくめ、わざとらしく笑った。
「もしかして、またReluのこと聞きに来たんか? しつこいで〜」
星奈も柔らかい声で続ける。
「LANさん、Coe.を巻き込まないであげてください。……今は、余計に混乱させるだけですから」
「なんで……?」
LANの胸に怒りが込み上げる。
「お前ら……本気で何隠してるんだよ」
藍は目を細め、声を低くした。
「繰り返すけどな、Reluは会いたない言うてる。それが全部や。――それ以上突っ込むなら、俺が相手になるで」
スタジオの空気が張り詰めた。
Coe.は二人の間に挟まれ、不安そうに視線を揺らす。
LANは一歩踏み出そうとしたが、そのとき星奈が一言、静かに告げた。
「……LANさん。Reluを守りたいのなら、今は追い詰めないでください」
その声には、妙な重みがあった。
LANは言葉を詰まらせ、拳を握りしめる。
「……わかった。けど、俺は諦めない。何度でも来る。絶対に真実を掴む」
そう言い残して、LANは背を向けた。
去り際、Coe.と目が合った。
その瞳には「僕も知りたい」という切実な色が宿っていた。
LANはスタジオを後にした後も、胸のざわめきが消えなかった。
Reluの自宅でのあの冷たい言葉――「Reluは会いたくない」。
藍が淡々とそう告げたとき、彼の瞳に一瞬も揺らぎがなかったことが、LANの心をさらに重くしていた。
(ほんまに……会いたくないのかな? それとも、誰かにそう言わされてる?)
考えれば考えるほど答えは遠ざかる。だが、時間を浪費している余裕はない。
LANは意を決し、Coe.へ連絡を取ることを決めた。
同じ「すたぽら」の仲間であり、Reluに一番近い存在のはずの彼なら、何か知っているかもしれない。
スマホを握りしめ、震える指でCoe.の番号をタップする。
呼び出し音が鳴るたびに、LANの胸の奥で焦燥が膨れ上がった。
――やがて、通話がつながる。
「……LANくん? どうしたんですか」
電話口から響いたのは、まだどこか幼さの残る柔らかな声。だが、その響きには明らかな緊張が混じっていた。
LANは深く息を吸い、できるだけ穏やかに言葉を選ぶ。
「こえちむ……あのね。率直に聞くけど、Relu、なんか隠してるでしょ。様子おかしいじゃん」
受話器の向こうで、一瞬の沈黙。
雑音すらない空白の時間がLANの耳に重くのしかかる。
「……僕は……」
ためらいがちに口を開いたCoe.の声は、今にも泣き出しそうに震えていた。
「僕は、リーダーなのに……何も知らされてないんです。本当は、心配でたまらない。でも……藍さんも星奈さんも、僕に『余計な詮索はするな』って……」
その言葉を聞いた瞬間、LANの背筋を冷たいものが走った。
(やっぱり……二人が関わっとるんや。Reluを、誰にも会わせんようにしとる)
「こえちむ……本当は、Reluに会いたいでしょ?」
LANは静かに問いかけた。
「……会いたいです。今すぐにでも。でも……」
Coe.の声が途切れる。受話器越しに、押し殺した嗚咽の気配が伝わってきた。
「僕が無理に会いに行ったら……きっと、Reluさんが、もっと苦しむ。藍さんと星奈さんは、Reluさんを守ろうとしてるんです……僕には、それを否定できない」
LANは拳を強く握りしめる。怒りと悔しさで震える指先が、スマホを今にも砕きそうだった。
「……そんな守り方、間違ってるでしょ……」
思わず漏らしたその声は、苦く掠れていた。
LANはこれ以上、Coe.を追い詰めることができなかった。
だが心の奥底で決意する。――このまま黙っているわけにはいかない、と。
藍と星奈がどれほど立ちはだかろうとも、自分は必ずReluに辿り着く。
たとえ、その真実がどれほど残酷なものだったとしても。
夜の東京の街を歩きながら、LANは胸の奥で燃えるような焦燥を抑えられなかった。
Coe.の涙声。藍と星奈の壁。Reluが「会いたくない」と告げられたあの冷徹な拒絶。
どれを思い出しても、答えはひとつに収束する。
(もう……直接確かめるしかない)
Reluの本心を、本人の口から。
そのためには、誰の制止も振り切らなければならない。
深夜、LANは再びReluの住むマンションの前に立った。
灯りは少ないが、一室だけぼんやりと明かりがついている。
――あそこに、Reluがいる。
決意を込めて足を進めた、その瞬間。
「……LANさん」
静かな声が背後から響いた。
振り返れば、暗がりの中に立つ二つの影。
藍と、星奈。
二人はまるで待ち伏せしていたかのように、マンションの入り口を塞いでいた。
「……なんで。なんでそこまでして、Reluを隠すんだよ」
LANは抑えた声で問いただす。
藍は無表情のままLANを見据える。その瞳には氷のような冷たさが宿っていた。
「僕たちは、Reluを守ってるんです。……あなたには分からない守り方で」
「守る? 人から引き離して、孤立させて……それのどこが守ることなんだよ!」
LANの声が夜気に響く。拳を握り、今にも掴みかかりそうになるのを必死で抑え込む。
そのとき、星奈が一歩前に出た。
彼女の表情は悲しみをたたえつつも、断固としたものだった。
「Reluは……もう、限界なんです。だから、会わせられない。たとえLANさんでも」
「……っ」
言葉を突き刺すように遮られ、LANは息を詰まらせた。
理屈ではない。二人は信念で壁を築いている。
「本当に、それでいいのか……? あいつが一人で……苦しんで死んでいくんだったら……」
LANの声は震えていた。怒りだけじゃない。
友を失う予感に、どうしようもなく押し潰されそうだった。
だが、藍と星奈は何も答えなかった。
ただ静かに、LANの行く手を塞ぎ続けた。
――結局、LANは一歩も進めなかった。
夜風が冷たく頬を撫でる中、LANは唇を噛みしめ、視線を地面に落とす。
その姿は、戦いに敗れた兵士のようだった。
「……絶対、諦めねぇからな」
誰に聞かせるでもなく、LANは絞り出すように呟いた。
その背中を見送る藍と星奈の影は、夜の闇に溶け込むように動かず、冷ややかに揺れていた。
――Reluを守るために。
そして、真実を知られないために。