声なき叫びのスタジオ
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俺は今日も、夜のスタジオで鍵をかける。
誰もいないはずのスタジオ。でも、どこかで誰かの息遣いが聞こえる気がして、背筋が冷たくなる。
「また誰かのいたずらか…」
自分はそう言い聞かせて、機材のスイッチを入れる。赤く点滅するランプ、埃っぽい空気、そして遠くからかすかに響く低い声。
Coe.が、ふわりとした笑顔で入ってきた。
「Relu、今日の曲、もうチェックした?」
「うわ、Coe.…びっくりさせんなや」
普段通りの軽口で返す俺。でも、心臓はまだ微妙に早鐘を打っていた。
その時、スタジオの奥から、誰もいないはずの機材室のドアがぎぃっと音を立てて揺れた。
「…誰や、今の?」
俺は声を潜める。Coe.は首を傾げるだけで、特に恐怖の色は見せない。
でも、ふと見ると、床に落ちているはずのない紙切れが、赤い文字でびっしり何かを書かれているのが見えた。
「…こ、これ、何…?」
手が震える。文字は意味不明、でも妙に生々しい感覚が、胸の奥を締めつける。
その瞬間、奥のドアがバタン、と閉まった音。
「……誰か、いるやろ!」
自分の声が、やけに大きく響いた。
でも返事はない。
俺は息を整えながら、手に持ったヘッドフォンを握りしめる。
「こんなところで……まさか、自分ら……」
背後の空気が冷たくなる。
そして、耳元で、かすかなささやきが聞こえた——
「逃げられないよ…」
ヘッドフォンを握りしめたまま、ゆっくりとスタジオの奥へ足を踏み入れた。
Coe.も後ろからついてくる。普段なら「可愛いもの集めてる場合ちゃうやろ」ってツッコむところだが、今はお互い黙って足音だけが響く。
「…くに、どこ行った?」
振り返ると、いつもならラフに笑ってるくにの姿が見えない。
「くにー!」自分の声に、Coe.も顔をこわばらせて探す。
その瞬間、スタジオの片隅にあるラップマシンから、くにの声そっくりの声が流れた。
「…俺、ここにいる…」
でも、近づくと誰もいない。機材の影に潜む気配もない。
心臓が跳ね上がる。声が、俺の耳に絡みつくように繰り返される。
「…助けて…」
それはくにの声だけじゃない。次に聞こえたのは、ゆうのふわふわした声で、意味のわからない単語を繰り返す。
「ゆさん…?」
Coe.の目が見開かれる。俺たちの周囲には、静寂の中で声だけが漂っていた。
突然、スタジオのドアが激しく揺れ、こったろの笑い声が響く。
「…こんなところで寝てる場合ちゃうで…」
だが、ドアを開けても、こったろはどこにもいない。
代わりに床に、メンバーカラーの紫に染まった紙切れが落ちている。文字は赤く、血のように濃い。
「…こったろ…」
声を震わせながら俺は拾った。そこには、意味深な文が書かれていた——
『逃げ場はない。次はお前だ』
その瞬間、照明が一瞬消え、そして再び点いたときには、LANが倒れていた。
いや、倒れているように見えたのは一瞬で、次の瞬間にはいるまの顔が半分血で汚れて浮かび上がっていた。
「うわぁ……!」Coe.の声が悲鳴になる。
俺は叫びたかったが、声が出ない。
「これは…夢ちゃう…やろな…」
頭の中で何度もそう自分に言い聞かせながら、俺は逃げ道を探した。
しかし、スタジオの出口はいつの間にか塞がれ、廊下の壁には赤く塗られた文字が浮かび上がる。
『Relu、お前もすぐに来い』
息が詰まる。背中に冷たい何かが張りつく感覚。
俺は拳を握りしめ、必死で後ろを振り返った——
誰もいないはずのスタジオの闇に、赤い瞳だけが光った。
俺は息を整えながら、スタジオの中を必死で見渡した。
赤く光る文字、壁に浮かぶ影、そして無言で揺れる機材――。頭がぐるぐるする。
「くそ…なんやこれ……」
自分の声が震えるのを感じながらも、俺は舌打ちした。
「自分、びびりすぎやろ…でも、目の前にあるのが現実や」
最初に姿を消したくにの行方を探すため、俺は機材室に向かった。
中に入ると、そこには床一面にオレンジの紙切れ。くにのメンバーカラーだ。
紙には、ぎこちなく走り書きされた文字。
『助けて…ここから出られない』
その瞬間、俺の背後で風が吹いた。振り向くと、ゆうが立っているはずの場所に、緑色の影が揺れていた。
「ゆ、ゆさん…?」
声をかけると、影は急に笑い声に変わる。ふわふわした声が、鋭い刃のように耳を刺す。
「自分…怖いんやろ…?」
振り向くと、誰もいない。だが、スタジオの空気が明らかに歪んでいる。
「……Coe.、どこ行った?」
呼ぶ声が虚しく響く。目の端に赤い光が一瞬走る。Coe.のメンバーカラー、赤。
近づくと、彼の姿はなく、机の上に苺の形をした小さな人形が置かれていた。
「…こえ…っ!」
俺はその人形を握りしめる。妙な生々しさが指先に伝わる。
その時、スタジオの奥から紫色の光。こったろの声が響いた。
「Relu…俺を信じろ…」
でも、次の瞬間には声だけが消え、代わりに壁に血のような文字が現れる。
『次はお前だ』
俺は冷静を装いつつも、頭の中で最悪のシナリオを組み立てる。
「くそ…どう考えても、これ一人で解決できるレベルちゃう…」
しかし、背後でまた影が動いた。いるま、LAN、こさめ…次々と仲間の形が闇に溶けていく。
「うわぁ…うわぁぁ…!」自分でも知らない声が漏れた。
心臓が口から飛び出しそうになりながら、俺は手にしたライトで壁を照らした。
すると、壁の文字がゆっくりと蠢き、苺や水色の光、紫や緑…仲間のメンバーカラーが文字に染まっていく。
まるで俺たち全員の存在を吸い取ろうとしているみたいだ。
「……自分、ここで負けたら終わりや」
拳を握りしめ、俺は闇の中に飛び込む。
叫び、逃げ、手探りで仲間を探す。だが次々と声だけが聞こえる――
「Relu…助けて…」「怖い…」「やめて…」
息が詰まりそうになる。心臓が爆発しそうになる。
それでも俺は、舌打ち混じりに独り言を吐いた。
「…自分、くそやけど、絶対諦めへん…誰も見捨てへん…」
背後でかすかな笑い声。赤い瞳が光る。
俺は息を殺し、仲間たちを救うため、恐怖の中で一歩、また一歩と進む――
スタジオ全体が、まるで生き物のように俺たちを絡め取ろうとしていた。
俺は息を荒げながらも、ライトを握りしめて廊下を進んだ。
壁の文字は赤く蠢き、まるで俺たちを誘うかのように揺れる。
「くそ…どこや…くに…」
廊下の角を曲がった瞬間、目の前で、オレンジ色の影がぐにゃりと歪んだ。
「……くにっ!」
声を張ると、影は俺を見返した――いや、見返すように見えた瞬間、影は床に崩れ落ち、消えた。
残ったのは、くにのラップマイクだけ。
床に散らばる紙には、『助けてくれ…』 とだけ書かれている。
「…くそ、こんなん現実ちゃうやろ…」
心臓が喉まで上がる。逃げ出したい気持ちと、何とか仲間を助けたい気持ちが入り混じる。
次に聞こえたのは、黄色い声。
「うわぁ…!」
みことだ。走ってきたのはいいが、顔は青ざめ、手は震えている。
「み、みこと!どうしたんや!」
振り返ると、背後の鏡に、彼の顔が歪んで映る。笑顔が歪み、口が不自然に裂けているように見えた。
「うわぁ…なんやこれ…!」
みことは叫びながら、壁を叩く。だが壁は生き物のように柔らかく波打ち、手は弾かれる。
俺は駆け寄ろうとしたが、何かに足を引っかけられた。緑色の影――ゆうだ。
「ゆ、ゆさん…!」
彼はじっと俺を見つめたまま、口を動かしていたが、声は出ない。
紙切れを拾うと、そこには**『Relu、次はお前』**と赤い文字が書かれていた。
俺は舌打ちをして、拳を握りしめる。
「…くそ、自分、黙ってられん」
その時、照明が一瞬消え、再び点いた瞬間には、こったろとすちの姿が無残に床に転がっていた。
「…ちょ、まて…!」
息が詰まる。だが、動かないわけにはいかない。
俺は叫びながらも、仲間の名前を呼び続ける。
「LAN!いるま!こさめ!どこや!」
廊下の奥から、ピンク・紫・水色の光が、ひとつずつ点滅する。
「…くそ、全員巻き込まれるんか…」
恐怖で体が固まるが、Reluは踏ん張った。
「誰も見捨てへん…絶対諦めへん!」
その瞬間、壁から無数の手が飛び出し、俺を絡め取ろうとした。
息ができない。視界が赤と黒に染まる。
だが、俺は手を振り払い、仲間を助けるため、再び歩を進める――
恐怖と絶望の中で、Reluの毒舌と冷静さだけが、唯一の武器だった。
息が切れる。胸が押しつぶされそうだ。
壁から飛び出す手、赤く蠢く文字、聞こえるはずのない声──
でも、俺は諦めない。
「くそ…自分、ここで負けたら終わりや!」
まずはくに。床に散らばるオレンジ色の紙切れを握りしめ、俺は机を蹴飛ばした。
すると影の中から、彼がゆっくりと現れる。顔はまだ青ざめているが、手を伸ばしてくる。
「ほら、しっかり掴め!」
手を差し伸べ、引っ張り上げる。彼の手が握り返す。
「お、おお…Relu…」
舌打ち混じりの毒舌も出ないくらい、心臓が早く打っていた。
次はゆうだ。緑の影が俺の足に絡みつく。
「ゆ、ゆさん、任せろ!」
息を整え、影を押しのけると、彼の手がぽん、と俺の肩に触れた。
「れるち…怖いよ…」
「せやけど、ここでゆうくんを置いていくわけにはいかん」
握った拳で影をはじき飛ばし、ゆうをスタジオの中心へ引き寄せた。
しかし、壁全体が蠢き始める。赤、紫、青…光が渦巻き、仲間たちを引き寄せようとする。
Coe.の赤、こったろの紫、みことの黄色…順番に影に飲み込まれそうになった。
「くそっ…そんなもん、俺が許すか!」
舌打ち混じりに叫びながら、ライトを振り回す。光に反応したのか、赤い文字が一瞬揺れた。
俺は仲間たちの手を次々につかみ、壁の影を押しのけながら進む。
「LAN!いるま!こさめ!すち!」
呼ぶ声に応えるように、ピンク・紫・水色の光が揺れる。
「Relu…!」
それぞれの声を頼りに、俺は手を差し伸べた。
壁の手が最後の抵抗として飛び出してきた瞬間、俺は叫んだ。
「絶対、逃がさへん!」
拳を振り下ろすと、壁が一瞬砕け、光が散った。
仲間たちは息を整え、震えながらも俺の手にしがみつく。
暗闇の中で、俺は一瞬だけ笑った。
「…くそ、くっさいけど、これで終わりや…!」
だが、まだ背後に気配を感じる。
「…誰か忘れてるやつおらんか?」
紙切れや影を確認しながら、俺は最後の仲間を探す。
すべての赤、青、緑、紫…光が消え、静寂が戻った。
スタジオの照明がゆっくり点灯する。仲間たちは揺れながらも立っていた。
「……Reluさん…すごい…」
Coe.が目を潤ませながら言う。
「…くそ、泣かすなや…」
俺は舌打ち混じりに笑い、仲間を見渡す。
全員無事かどうかはわからない。だが、今はまだ、生きている。
そして俺は決めた。
「ここから絶対、みんなで出る。絶対に…誰一人置いていかん」
スタジオの闇の中、俺たちの呼吸だけが響く。
外の世界へ続く道はまだ遠い――でも、俺たちは一歩ずつ、確かに進んでいく。
スタジオの外に出た瞬間、夜風が顔に当たった。
息が詰まるような恐怖から解放され、俺は思わず大きく息を吐く。
「……生きてるんやな」
舌打ち混じりに、呟いた。まだ手に汗が残っている。
Coe.が小さく苺の人形を握りしめ、目を潤ませているのを見た。
「Reluさん…ほんとに…助けてくれて…ありがとう」
「…泣かすなや、くそ…」
毒舌で返すが、胸の奥がじんと熱くなる。
仲間たちはそれぞれ震えながらも、無事であることを確認し合う。
ゆうはまだ手を震わせ、くにやみことも顔色が悪い。
だが、全員が一瞬でも互いの存在を頼りに助け合ったことを思い出し、俺は不思議な安心感を覚えた。
「…もう二度と、あんなスタジオには行かへんやろな」
みことが小さく笑う。関西弁の震え混じりの声が、夜の空気に響いた。
「せやな…でも、自分ら全員で耐えたんや」
俺は拳を握りしめ、静かに空を見上げる。
夜空は澄んでいて、恐怖の闇とは違う、冷たく澄んだ闇。
「あの文字も、あの声も…もう聞かんで済むんやな」
背中をそっと撫でる風に、仲間たちの呼吸が揃う。
舌打ち混じりに、でも心から思った。
「誰一人置いていかん。これからも、絶対にな」
小さな光の中で、仲間たちは互いに寄り添い、恐怖の余韻を噛みしめながらも、確かに前を向いていた。
俺たちは生きている――そして、この夜を乗り越えた絆は、もう誰にも壊せない。
スタジオの出来事から数日経った。
俺はいつもの毒舌も半分引っ込めて、仲間たちの顔を順番に見渡す。
Coe.はまだ苺の人形を手放せず、時折ぽつりと独り言のように囁く。
「…あの声、まだ聞こえる気がする…」
俺は軽く肩を叩き、舌打ちで笑った。
「気にすんな、Coe.…でも、あの時はお前、しっかりしてたで」
それでも、あの日の恐怖が完全に消えたわけじゃない。目にわずかな陰が残っていた。
ゆうは相変わらずふわふわしてるけど、夜になると無意識に部屋の角を確かめる癖がついている。
「…れるち、暗いと怖い…」
ぽつりと言うその声に、俺は思わず舌打ちを忘れ、優しく答えた。
「せやけど、もう誰も一人にはせえへんからな」
くには、いつもラップで笑わせてくれるけど、あの時の影の記憶が残り、時折声が震える。
みことは夜空を見上げるたび、「うわぁ…」と呟く癖が残っている。
こったろやすちも、無言のまま紙切れや影の幻覚に目をやる瞬間がある。
でも、俺はわかっている。
あの恐怖が、俺たちを壊すことはない。
「…くそ、みんな怖がりすぎや」
舌打ちを混ぜつつも、心の中でそう呟く。
「でも、自分らは一緒や。絶対に見捨てへん」
夜になると、俺はスタジオのことを思い出す。
赤く蠢いた文字、影に飲まれそうになった仲間たち、逃げ場のない恐怖。
その記憶は消えないけど、それと同時に確かめた仲間との絆も消えない。
拳を握りしめ、静かに笑った。
「誰も死なせへん…絶対にな」
スタジオでの恐怖は、まだ自分たちの胸に影を落としている。
でも、それ以上に、互いを信じる心が強くなったのも確かだった。
あの夜を越えた俺たちは、もう以前の俺たちじゃない――
怖くても、絶望しても、自分たちは生きる。共に。
誰もいないはずのスタジオ。でも、どこかで誰かの息遣いが聞こえる気がして、背筋が冷たくなる。
「また誰かのいたずらか…」
自分はそう言い聞かせて、機材のスイッチを入れる。赤く点滅するランプ、埃っぽい空気、そして遠くからかすかに響く低い声。
Coe.が、ふわりとした笑顔で入ってきた。
「Relu、今日の曲、もうチェックした?」
「うわ、Coe.…びっくりさせんなや」
普段通りの軽口で返す俺。でも、心臓はまだ微妙に早鐘を打っていた。
その時、スタジオの奥から、誰もいないはずの機材室のドアがぎぃっと音を立てて揺れた。
「…誰や、今の?」
俺は声を潜める。Coe.は首を傾げるだけで、特に恐怖の色は見せない。
でも、ふと見ると、床に落ちているはずのない紙切れが、赤い文字でびっしり何かを書かれているのが見えた。
「…こ、これ、何…?」
手が震える。文字は意味不明、でも妙に生々しい感覚が、胸の奥を締めつける。
その瞬間、奥のドアがバタン、と閉まった音。
「……誰か、いるやろ!」
自分の声が、やけに大きく響いた。
でも返事はない。
俺は息を整えながら、手に持ったヘッドフォンを握りしめる。
「こんなところで……まさか、自分ら……」
背後の空気が冷たくなる。
そして、耳元で、かすかなささやきが聞こえた——
「逃げられないよ…」
ヘッドフォンを握りしめたまま、ゆっくりとスタジオの奥へ足を踏み入れた。
Coe.も後ろからついてくる。普段なら「可愛いもの集めてる場合ちゃうやろ」ってツッコむところだが、今はお互い黙って足音だけが響く。
「…くに、どこ行った?」
振り返ると、いつもならラフに笑ってるくにの姿が見えない。
「くにー!」自分の声に、Coe.も顔をこわばらせて探す。
その瞬間、スタジオの片隅にあるラップマシンから、くにの声そっくりの声が流れた。
「…俺、ここにいる…」
でも、近づくと誰もいない。機材の影に潜む気配もない。
心臓が跳ね上がる。声が、俺の耳に絡みつくように繰り返される。
「…助けて…」
それはくにの声だけじゃない。次に聞こえたのは、ゆうのふわふわした声で、意味のわからない単語を繰り返す。
「ゆさん…?」
Coe.の目が見開かれる。俺たちの周囲には、静寂の中で声だけが漂っていた。
突然、スタジオのドアが激しく揺れ、こったろの笑い声が響く。
「…こんなところで寝てる場合ちゃうで…」
だが、ドアを開けても、こったろはどこにもいない。
代わりに床に、メンバーカラーの紫に染まった紙切れが落ちている。文字は赤く、血のように濃い。
「…こったろ…」
声を震わせながら俺は拾った。そこには、意味深な文が書かれていた——
『逃げ場はない。次はお前だ』
その瞬間、照明が一瞬消え、そして再び点いたときには、LANが倒れていた。
いや、倒れているように見えたのは一瞬で、次の瞬間にはいるまの顔が半分血で汚れて浮かび上がっていた。
「うわぁ……!」Coe.の声が悲鳴になる。
俺は叫びたかったが、声が出ない。
「これは…夢ちゃう…やろな…」
頭の中で何度もそう自分に言い聞かせながら、俺は逃げ道を探した。
しかし、スタジオの出口はいつの間にか塞がれ、廊下の壁には赤く塗られた文字が浮かび上がる。
『Relu、お前もすぐに来い』
息が詰まる。背中に冷たい何かが張りつく感覚。
俺は拳を握りしめ、必死で後ろを振り返った——
誰もいないはずのスタジオの闇に、赤い瞳だけが光った。
俺は息を整えながら、スタジオの中を必死で見渡した。
赤く光る文字、壁に浮かぶ影、そして無言で揺れる機材――。頭がぐるぐるする。
「くそ…なんやこれ……」
自分の声が震えるのを感じながらも、俺は舌打ちした。
「自分、びびりすぎやろ…でも、目の前にあるのが現実や」
最初に姿を消したくにの行方を探すため、俺は機材室に向かった。
中に入ると、そこには床一面にオレンジの紙切れ。くにのメンバーカラーだ。
紙には、ぎこちなく走り書きされた文字。
『助けて…ここから出られない』
その瞬間、俺の背後で風が吹いた。振り向くと、ゆうが立っているはずの場所に、緑色の影が揺れていた。
「ゆ、ゆさん…?」
声をかけると、影は急に笑い声に変わる。ふわふわした声が、鋭い刃のように耳を刺す。
「自分…怖いんやろ…?」
振り向くと、誰もいない。だが、スタジオの空気が明らかに歪んでいる。
「……Coe.、どこ行った?」
呼ぶ声が虚しく響く。目の端に赤い光が一瞬走る。Coe.のメンバーカラー、赤。
近づくと、彼の姿はなく、机の上に苺の形をした小さな人形が置かれていた。
「…こえ…っ!」
俺はその人形を握りしめる。妙な生々しさが指先に伝わる。
その時、スタジオの奥から紫色の光。こったろの声が響いた。
「Relu…俺を信じろ…」
でも、次の瞬間には声だけが消え、代わりに壁に血のような文字が現れる。
『次はお前だ』
俺は冷静を装いつつも、頭の中で最悪のシナリオを組み立てる。
「くそ…どう考えても、これ一人で解決できるレベルちゃう…」
しかし、背後でまた影が動いた。いるま、LAN、こさめ…次々と仲間の形が闇に溶けていく。
「うわぁ…うわぁぁ…!」自分でも知らない声が漏れた。
心臓が口から飛び出しそうになりながら、俺は手にしたライトで壁を照らした。
すると、壁の文字がゆっくりと蠢き、苺や水色の光、紫や緑…仲間のメンバーカラーが文字に染まっていく。
まるで俺たち全員の存在を吸い取ろうとしているみたいだ。
「……自分、ここで負けたら終わりや」
拳を握りしめ、俺は闇の中に飛び込む。
叫び、逃げ、手探りで仲間を探す。だが次々と声だけが聞こえる――
「Relu…助けて…」「怖い…」「やめて…」
息が詰まりそうになる。心臓が爆発しそうになる。
それでも俺は、舌打ち混じりに独り言を吐いた。
「…自分、くそやけど、絶対諦めへん…誰も見捨てへん…」
背後でかすかな笑い声。赤い瞳が光る。
俺は息を殺し、仲間たちを救うため、恐怖の中で一歩、また一歩と進む――
スタジオ全体が、まるで生き物のように俺たちを絡め取ろうとしていた。
俺は息を荒げながらも、ライトを握りしめて廊下を進んだ。
壁の文字は赤く蠢き、まるで俺たちを誘うかのように揺れる。
「くそ…どこや…くに…」
廊下の角を曲がった瞬間、目の前で、オレンジ色の影がぐにゃりと歪んだ。
「……くにっ!」
声を張ると、影は俺を見返した――いや、見返すように見えた瞬間、影は床に崩れ落ち、消えた。
残ったのは、くにのラップマイクだけ。
床に散らばる紙には、『助けてくれ…』 とだけ書かれている。
「…くそ、こんなん現実ちゃうやろ…」
心臓が喉まで上がる。逃げ出したい気持ちと、何とか仲間を助けたい気持ちが入り混じる。
次に聞こえたのは、黄色い声。
「うわぁ…!」
みことだ。走ってきたのはいいが、顔は青ざめ、手は震えている。
「み、みこと!どうしたんや!」
振り返ると、背後の鏡に、彼の顔が歪んで映る。笑顔が歪み、口が不自然に裂けているように見えた。
「うわぁ…なんやこれ…!」
みことは叫びながら、壁を叩く。だが壁は生き物のように柔らかく波打ち、手は弾かれる。
俺は駆け寄ろうとしたが、何かに足を引っかけられた。緑色の影――ゆうだ。
「ゆ、ゆさん…!」
彼はじっと俺を見つめたまま、口を動かしていたが、声は出ない。
紙切れを拾うと、そこには**『Relu、次はお前』**と赤い文字が書かれていた。
俺は舌打ちをして、拳を握りしめる。
「…くそ、自分、黙ってられん」
その時、照明が一瞬消え、再び点いた瞬間には、こったろとすちの姿が無残に床に転がっていた。
「…ちょ、まて…!」
息が詰まる。だが、動かないわけにはいかない。
俺は叫びながらも、仲間の名前を呼び続ける。
「LAN!いるま!こさめ!どこや!」
廊下の奥から、ピンク・紫・水色の光が、ひとつずつ点滅する。
「…くそ、全員巻き込まれるんか…」
恐怖で体が固まるが、Reluは踏ん張った。
「誰も見捨てへん…絶対諦めへん!」
その瞬間、壁から無数の手が飛び出し、俺を絡め取ろうとした。
息ができない。視界が赤と黒に染まる。
だが、俺は手を振り払い、仲間を助けるため、再び歩を進める――
恐怖と絶望の中で、Reluの毒舌と冷静さだけが、唯一の武器だった。
息が切れる。胸が押しつぶされそうだ。
壁から飛び出す手、赤く蠢く文字、聞こえるはずのない声──
でも、俺は諦めない。
「くそ…自分、ここで負けたら終わりや!」
まずはくに。床に散らばるオレンジ色の紙切れを握りしめ、俺は机を蹴飛ばした。
すると影の中から、彼がゆっくりと現れる。顔はまだ青ざめているが、手を伸ばしてくる。
「ほら、しっかり掴め!」
手を差し伸べ、引っ張り上げる。彼の手が握り返す。
「お、おお…Relu…」
舌打ち混じりの毒舌も出ないくらい、心臓が早く打っていた。
次はゆうだ。緑の影が俺の足に絡みつく。
「ゆ、ゆさん、任せろ!」
息を整え、影を押しのけると、彼の手がぽん、と俺の肩に触れた。
「れるち…怖いよ…」
「せやけど、ここでゆうくんを置いていくわけにはいかん」
握った拳で影をはじき飛ばし、ゆうをスタジオの中心へ引き寄せた。
しかし、壁全体が蠢き始める。赤、紫、青…光が渦巻き、仲間たちを引き寄せようとする。
Coe.の赤、こったろの紫、みことの黄色…順番に影に飲み込まれそうになった。
「くそっ…そんなもん、俺が許すか!」
舌打ち混じりに叫びながら、ライトを振り回す。光に反応したのか、赤い文字が一瞬揺れた。
俺は仲間たちの手を次々につかみ、壁の影を押しのけながら進む。
「LAN!いるま!こさめ!すち!」
呼ぶ声に応えるように、ピンク・紫・水色の光が揺れる。
「Relu…!」
それぞれの声を頼りに、俺は手を差し伸べた。
壁の手が最後の抵抗として飛び出してきた瞬間、俺は叫んだ。
「絶対、逃がさへん!」
拳を振り下ろすと、壁が一瞬砕け、光が散った。
仲間たちは息を整え、震えながらも俺の手にしがみつく。
暗闇の中で、俺は一瞬だけ笑った。
「…くそ、くっさいけど、これで終わりや…!」
だが、まだ背後に気配を感じる。
「…誰か忘れてるやつおらんか?」
紙切れや影を確認しながら、俺は最後の仲間を探す。
すべての赤、青、緑、紫…光が消え、静寂が戻った。
スタジオの照明がゆっくり点灯する。仲間たちは揺れながらも立っていた。
「……Reluさん…すごい…」
Coe.が目を潤ませながら言う。
「…くそ、泣かすなや…」
俺は舌打ち混じりに笑い、仲間を見渡す。
全員無事かどうかはわからない。だが、今はまだ、生きている。
そして俺は決めた。
「ここから絶対、みんなで出る。絶対に…誰一人置いていかん」
スタジオの闇の中、俺たちの呼吸だけが響く。
外の世界へ続く道はまだ遠い――でも、俺たちは一歩ずつ、確かに進んでいく。
スタジオの外に出た瞬間、夜風が顔に当たった。
息が詰まるような恐怖から解放され、俺は思わず大きく息を吐く。
「……生きてるんやな」
舌打ち混じりに、呟いた。まだ手に汗が残っている。
Coe.が小さく苺の人形を握りしめ、目を潤ませているのを見た。
「Reluさん…ほんとに…助けてくれて…ありがとう」
「…泣かすなや、くそ…」
毒舌で返すが、胸の奥がじんと熱くなる。
仲間たちはそれぞれ震えながらも、無事であることを確認し合う。
ゆうはまだ手を震わせ、くにやみことも顔色が悪い。
だが、全員が一瞬でも互いの存在を頼りに助け合ったことを思い出し、俺は不思議な安心感を覚えた。
「…もう二度と、あんなスタジオには行かへんやろな」
みことが小さく笑う。関西弁の震え混じりの声が、夜の空気に響いた。
「せやな…でも、自分ら全員で耐えたんや」
俺は拳を握りしめ、静かに空を見上げる。
夜空は澄んでいて、恐怖の闇とは違う、冷たく澄んだ闇。
「あの文字も、あの声も…もう聞かんで済むんやな」
背中をそっと撫でる風に、仲間たちの呼吸が揃う。
舌打ち混じりに、でも心から思った。
「誰一人置いていかん。これからも、絶対にな」
小さな光の中で、仲間たちは互いに寄り添い、恐怖の余韻を噛みしめながらも、確かに前を向いていた。
俺たちは生きている――そして、この夜を乗り越えた絆は、もう誰にも壊せない。
スタジオの出来事から数日経った。
俺はいつもの毒舌も半分引っ込めて、仲間たちの顔を順番に見渡す。
Coe.はまだ苺の人形を手放せず、時折ぽつりと独り言のように囁く。
「…あの声、まだ聞こえる気がする…」
俺は軽く肩を叩き、舌打ちで笑った。
「気にすんな、Coe.…でも、あの時はお前、しっかりしてたで」
それでも、あの日の恐怖が完全に消えたわけじゃない。目にわずかな陰が残っていた。
ゆうは相変わらずふわふわしてるけど、夜になると無意識に部屋の角を確かめる癖がついている。
「…れるち、暗いと怖い…」
ぽつりと言うその声に、俺は思わず舌打ちを忘れ、優しく答えた。
「せやけど、もう誰も一人にはせえへんからな」
くには、いつもラップで笑わせてくれるけど、あの時の影の記憶が残り、時折声が震える。
みことは夜空を見上げるたび、「うわぁ…」と呟く癖が残っている。
こったろやすちも、無言のまま紙切れや影の幻覚に目をやる瞬間がある。
でも、俺はわかっている。
あの恐怖が、俺たちを壊すことはない。
「…くそ、みんな怖がりすぎや」
舌打ちを混ぜつつも、心の中でそう呟く。
「でも、自分らは一緒や。絶対に見捨てへん」
夜になると、俺はスタジオのことを思い出す。
赤く蠢いた文字、影に飲まれそうになった仲間たち、逃げ場のない恐怖。
その記憶は消えないけど、それと同時に確かめた仲間との絆も消えない。
拳を握りしめ、静かに笑った。
「誰も死なせへん…絶対にな」
スタジオでの恐怖は、まだ自分たちの胸に影を落としている。
でも、それ以上に、互いを信じる心が強くなったのも確かだった。
あの夜を越えた俺たちは、もう以前の俺たちじゃない――
怖くても、絶望しても、自分たちは生きる。共に。
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