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世界は驚くほど冷たく、そして速かった。逮捕の報道が出た瞬間、御影レイの名前は無数のメディアに掲載され、彼の顔写真と共に過去のライブ映像や楽曲が切り取られ、スキャンダルの象徴のように拡散された。数時間のうちに、彼が十年以上かけて築き上げてきたキャリアは粉々に砕け散った。SNSのタイムラインには、「裏切られた」「信じていたのに」「最悪の偶像」といった文字が並び、かつて「レイくん」と親しげに呼んでくれていた声が、一斉に憎悪と失望へと変わっていった。
彼のスマホに入る通知は止まらない。怒り、失望、罵倒、冷笑、同情――ありとあらゆる感情が一方的に押し寄せてきて、レイの内側をぐちゃぐちゃに掻き乱した。守ってくれていたはずの事務所からの契約解除の知らせは、短く冷たい文章で届いた。「今後の活動については関知いたしません」――かつて一緒に夢を語り合った担当マネージャーの名前すらそこにはなかった。
取調室で交わされた言葉の一つ一つが頭に残っている。刑事の落ち着いた声、弁護士の淡々とした説明。すべてが現実であるはずなのに、レイにとってはどこか遠くの話のように思えた。まるで自分の人生が他人のドキュメンタリーのように流れていく。罪を犯したのは紛れもなく自分自身であり、言い訳の余地もない。だからこそ、胸の奥で押し寄せるのは恐怖ではなく、空虚だった。なにもかもを失った人間に、恐れるものなどもうない。ただ、何も感じたくなかった。
保釈後、帰宅したのはかつての「創造の部屋」。無数のアイデアを生んできたスタジオの扉を開けると、そこは静寂に包まれていた。ギターの弦はホコリを被り、パソコンの画面は真っ暗なまま。椅子に腰を下ろしても、メロディは一音たりとも浮かんでこなかった。何度も机に突っ伏し、何度も頭を抱え、何時間も空を見上げた。だが沈黙は動かず、時間だけが無情に過ぎていった。
電話は鳴らなくなった。仲間からのメッセージは最初こそ数件届いたが、それもすぐに止んだ。かつて一緒にステージを踏んだ同志たちも、コメントを避け、沈黙を貫いていた。それが当然であることも理解していた。誰もが自分の立場を守らなければならないのだ。だが、その沈黙が、レイの胸に鋭く突き刺さる。まるで世界全体が自分という存在を「なかったこと」にしようとしているかのようだった。
沈黙は、やがて檻となった。音楽を作ろうとしても、罪が頭をよぎる。ギターに触れようとすると、ファンの泣き顔が脳裏に浮かぶ。歌おうとすれば、自分の声が醜く響いた。音楽という救いは、もはや自分を追い詰める刃となっていた。逃げ場はなかった。謝罪しても、泣き叫んでも、どれだけ悔やんでも、壊した信頼は戻らない。過去の楽曲が流れるたび、それが誰かを救った曲であることを思い出し、同時にその手で壊してしまった未来を思って胸が張り裂けそうになった。
時折、かつてのライブの情景がフラッシュバックする。歓声、拍手、涙、笑顔、何千人もの「ありがとう」。あの瞬間こそが、自分が生きている証だったはずなのに――いまはそれらすべてが、自分の愚かさを強烈に突きつける過去としてしか残っていない。未来は白紙ではなく、真っ黒に塗りつぶされていた。御影レイという名前は、もはや夢を象徴する光ではなく、罪と失墜の象徴として刻まれることになるのだと、彼自身が誰より理解していた。
彼のスマホに入る通知は止まらない。怒り、失望、罵倒、冷笑、同情――ありとあらゆる感情が一方的に押し寄せてきて、レイの内側をぐちゃぐちゃに掻き乱した。守ってくれていたはずの事務所からの契約解除の知らせは、短く冷たい文章で届いた。「今後の活動については関知いたしません」――かつて一緒に夢を語り合った担当マネージャーの名前すらそこにはなかった。
取調室で交わされた言葉の一つ一つが頭に残っている。刑事の落ち着いた声、弁護士の淡々とした説明。すべてが現実であるはずなのに、レイにとってはどこか遠くの話のように思えた。まるで自分の人生が他人のドキュメンタリーのように流れていく。罪を犯したのは紛れもなく自分自身であり、言い訳の余地もない。だからこそ、胸の奥で押し寄せるのは恐怖ではなく、空虚だった。なにもかもを失った人間に、恐れるものなどもうない。ただ、何も感じたくなかった。
保釈後、帰宅したのはかつての「創造の部屋」。無数のアイデアを生んできたスタジオの扉を開けると、そこは静寂に包まれていた。ギターの弦はホコリを被り、パソコンの画面は真っ暗なまま。椅子に腰を下ろしても、メロディは一音たりとも浮かんでこなかった。何度も机に突っ伏し、何度も頭を抱え、何時間も空を見上げた。だが沈黙は動かず、時間だけが無情に過ぎていった。
電話は鳴らなくなった。仲間からのメッセージは最初こそ数件届いたが、それもすぐに止んだ。かつて一緒にステージを踏んだ同志たちも、コメントを避け、沈黙を貫いていた。それが当然であることも理解していた。誰もが自分の立場を守らなければならないのだ。だが、その沈黙が、レイの胸に鋭く突き刺さる。まるで世界全体が自分という存在を「なかったこと」にしようとしているかのようだった。
沈黙は、やがて檻となった。音楽を作ろうとしても、罪が頭をよぎる。ギターに触れようとすると、ファンの泣き顔が脳裏に浮かぶ。歌おうとすれば、自分の声が醜く響いた。音楽という救いは、もはや自分を追い詰める刃となっていた。逃げ場はなかった。謝罪しても、泣き叫んでも、どれだけ悔やんでも、壊した信頼は戻らない。過去の楽曲が流れるたび、それが誰かを救った曲であることを思い出し、同時にその手で壊してしまった未来を思って胸が張り裂けそうになった。
時折、かつてのライブの情景がフラッシュバックする。歓声、拍手、涙、笑顔、何千人もの「ありがとう」。あの瞬間こそが、自分が生きている証だったはずなのに――いまはそれらすべてが、自分の愚かさを強烈に突きつける過去としてしか残っていない。未来は白紙ではなく、真っ黒に塗りつぶされていた。御影レイという名前は、もはや夢を象徴する光ではなく、罪と失墜の象徴として刻まれることになるのだと、彼自身が誰より理解していた。