番外編
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怪盗キッドによる予告がまた届いたのは、帝丹高校で行われる文化祭の前日だった。
標的は「怪盗キッド展」として一般公開予定だった模造宝石「蒼碧の涙」。
悪戯のような予告状に、周囲は騒ぎ立てたが、関係者の一部だけは静かに対策を練っていた。
星奈もそのうちの一人だった。
降谷零に同行する形で校内に入った彼女は、展示室の防犯カメラチェックを手伝っていた。
その最中――
「よっ! こんにちは、他校の子? かわいいね、帝丹に転入してこない?」
星奈に気安く話しかけてきたのは、明るく笑う男子生徒だった。
癖のある黒髪に、少し生意気な笑み。
声も、動きも軽快で、ひどく自由だった。
「……誰?」
「あー、ごめんごめん、オレ、黒羽快斗! 二年! よろしく!」
軽薄なようで、どこか観察力のある目――その一瞬の目線に、星奈の胸が静かに揺れた。
(……見覚えが、ある)
◇
その夜、怪盗キッドは現れた。
完璧なタイミングで、見事なトリックとともに、偽の宝石を手に笑っていた。
「Ladies and Gentlemen──お騒がせしました♪」
月明かりを背に、白いマントを翻す怪盗の姿を、星奈は地上から見上げていた。
(やっぱり――あの人と、似ている)
仕草、身長、あの“間”の取り方。
黒羽快斗と、怪盗キッドの“重なる部分”が、星奈の中で次第に浮き彫りになっていく。
◇
数日後。
帝丹高校を再訪した星奈は、偶然を装って快斗に会いに行った。
「黒羽快斗くん。少し、聞いていい?」
「ん? なんでもどーぞ。オレ、モテるから、質問慣れしてるよ♪」
「……怪盗キッドの変装って、あなたの声にすごく似てると思うの。
それに、あの予告状のクセ、筆跡、回し蹴りのフォーム、全部あなたに共通してる」
「…………」
快斗が、一瞬だけ止まった。
星奈は続けた。
「あと、私に初めて声をかけた時、わずかに“警戒してた”。
本物の“無表情”を見たことがある人間の反応だった」
「……参ったなぁ」
快斗は頬をかき、苦笑いを浮かべた。
「そんな静かに追い詰められると、ドキドキするじゃん。
で、どうするの? 警察にバラす?」
「……しない。私、あなたの“仮面”が嫌いじゃないから」
その言葉に、快斗は目を丸くした。
「……へぇ。君、面白いね」
「あなたも」
星奈はそう言って、ふっと笑った。
いつも無表情な彼女の、ほんのわずかな“笑み”だった。
それを見た快斗は、ひどく驚いたように目を細めた。
「……なんだよ、その笑顔。
盗まれそうになるじゃん」
「……盗まれてもいいものなんて、ないよ」
「じゃあ――“盗みたくなるようなもの”、作っといてよ。君の中に」
それが、彼なりの“口説き文句”だったのか、それとも“励まし”だったのか。
星奈には分からなかったけれど、不思議と心はざわつかなかった。
「仮面の怪盗さん。……あなた、本当は、優しい人なんですね」
「優しさってのは、バレると損するんだけどな」
「私には、見えるよ。
仮面の裏の“本当の顔”」
二人は、少しだけ目を合わせた。
そしてその日は、なにごともなかったように別れた。
ただ、星奈の心の中に――
「本当の顔を、知っても壊れなかった人間がいる」
そんな確かな事実が、そっと灯った夜だった。
標的は「怪盗キッド展」として一般公開予定だった模造宝石「蒼碧の涙」。
悪戯のような予告状に、周囲は騒ぎ立てたが、関係者の一部だけは静かに対策を練っていた。
星奈もそのうちの一人だった。
降谷零に同行する形で校内に入った彼女は、展示室の防犯カメラチェックを手伝っていた。
その最中――
「よっ! こんにちは、他校の子? かわいいね、帝丹に転入してこない?」
星奈に気安く話しかけてきたのは、明るく笑う男子生徒だった。
癖のある黒髪に、少し生意気な笑み。
声も、動きも軽快で、ひどく自由だった。
「……誰?」
「あー、ごめんごめん、オレ、黒羽快斗! 二年! よろしく!」
軽薄なようで、どこか観察力のある目――その一瞬の目線に、星奈の胸が静かに揺れた。
(……見覚えが、ある)
◇
その夜、怪盗キッドは現れた。
完璧なタイミングで、見事なトリックとともに、偽の宝石を手に笑っていた。
「Ladies and Gentlemen──お騒がせしました♪」
月明かりを背に、白いマントを翻す怪盗の姿を、星奈は地上から見上げていた。
(やっぱり――あの人と、似ている)
仕草、身長、あの“間”の取り方。
黒羽快斗と、怪盗キッドの“重なる部分”が、星奈の中で次第に浮き彫りになっていく。
◇
数日後。
帝丹高校を再訪した星奈は、偶然を装って快斗に会いに行った。
「黒羽快斗くん。少し、聞いていい?」
「ん? なんでもどーぞ。オレ、モテるから、質問慣れしてるよ♪」
「……怪盗キッドの変装って、あなたの声にすごく似てると思うの。
それに、あの予告状のクセ、筆跡、回し蹴りのフォーム、全部あなたに共通してる」
「…………」
快斗が、一瞬だけ止まった。
星奈は続けた。
「あと、私に初めて声をかけた時、わずかに“警戒してた”。
本物の“無表情”を見たことがある人間の反応だった」
「……参ったなぁ」
快斗は頬をかき、苦笑いを浮かべた。
「そんな静かに追い詰められると、ドキドキするじゃん。
で、どうするの? 警察にバラす?」
「……しない。私、あなたの“仮面”が嫌いじゃないから」
その言葉に、快斗は目を丸くした。
「……へぇ。君、面白いね」
「あなたも」
星奈はそう言って、ふっと笑った。
いつも無表情な彼女の、ほんのわずかな“笑み”だった。
それを見た快斗は、ひどく驚いたように目を細めた。
「……なんだよ、その笑顔。
盗まれそうになるじゃん」
「……盗まれてもいいものなんて、ないよ」
「じゃあ――“盗みたくなるようなもの”、作っといてよ。君の中に」
それが、彼なりの“口説き文句”だったのか、それとも“励まし”だったのか。
星奈には分からなかったけれど、不思議と心はざわつかなかった。
「仮面の怪盗さん。……あなた、本当は、優しい人なんですね」
「優しさってのは、バレると損するんだけどな」
「私には、見えるよ。
仮面の裏の“本当の顔”」
二人は、少しだけ目を合わせた。
そしてその日は、なにごともなかったように別れた。
ただ、星奈の心の中に――
「本当の顔を、知っても壊れなかった人間がいる」
そんな確かな事実が、そっと灯った夜だった。
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