番外編
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宝石強奪予告が届いたのは、帝丹美術館で開催中の特別展だった。
展示されていたのは、かつて王侯貴族が所有していたという名宝「ミルククラウンの涙」。
怪盗キッドは、例のごとく白鳩とともに予告状を送りつけてきた。
警備が強化される中、青龍星奈は降谷零とともに見学者の中に紛れていた。
公安としての正式任務ではない。
ただ、なぜか降谷が彼女を連れてきたのだ。
「人を欺く術を学ぶには、“怪盗”を観察するのが一番だ」
そう言って。
◇
その夜、星奈は誰にも気づかれぬように美術館の上階へと足を踏み入れた。
――妙な胸騒ぎがしたからだ。
そして、月明かりが差し込むホールに、彼はいた。
真っ白なマントに、シルクハット。
まるで物語から飛び出してきたような、美しき幻。
「……あれ? おやおや。まさか、こんな可憐なお嬢さんに先を越されるとは」
怪盗キッドが、冗談めかして言った。
「“可憐”……なんて言われたの、初めてです」
星奈の声は淡々としていた。
それが逆に、キッドの目を惹いた。
「おや、君は……笑わないタイプかい?」
「笑わないんじゃなくて、笑う必要がないだけです。あなたこそ、なぜそんなに“笑う”んですか」
「そりゃあ、“正体”を隠すには、笑顔が一番効果的だからさ」
「じゃあ、あなたも“仮面”なんですね。私と同じ」
キッドの目が、一瞬だけ鋭く光った。
「……ほう。君、自分のことを“仮面”って言えるんだ。なかなか珍しい」
「必要だからつけてるだけです。感情は、見せると“邪魔”になる」
「それは違うな。感情があるからこそ、人は“綺麗な宝石”を見て心が動く。
それに――」
キッドは月を見上げた。
「君みたいに“全部隠してる子”って、案外、誰よりも感情豊かなんだよ」
星奈の眉がわずかに動いた。
その表情の変化を見逃さず、キッドはふっと笑う。
「図星かな?」
「……そうだとしても、あなたに読まれる筋合いはありません」
「そう? でも君、“本物”だ。君の目は、嘘を見抜く目をしている」
「だったら――私の目には、“あなた”が嘘だらけに見える」
静寂。
けれど次の瞬間、キッドは少しだけ真面目な顔になって言った。
「君、何かをなくしたんだね。たぶん、それは“自分”」
「……」
「でも、僕は思うよ。盗まれたものは、取り返せる。
それが怪盗の流儀ってもんさ」
「あなた……何者ですか」
「僕? 僕は――」
キッドは笑った。
そしてマントを翻し、月の中へ跳ねるように飛び立った。
「――夜を遊ぶ幻さ。おやすみ、お姫さま」
◇
後日、美術館の屋上に落ちていたカードが、星奈の元に届けられた。
降谷零が「君宛だ」と言って渡したものだ。
そこには、こう書かれていた。
【To. 仮面の少女へ】
仮面の下にある“本物”の心、
君はそれを取り戻す日が来る。
そのとき、きっと世界は今より優しく見えるよ。
― 怪盗キッド
星奈はそのカードを、静かに手帳に挟んだ。
そして思う。
――あの人は、嘘でできていた。
けれど、“優しい嘘”だった。
その嘘は、なぜか、苦しくなかった。
展示されていたのは、かつて王侯貴族が所有していたという名宝「ミルククラウンの涙」。
怪盗キッドは、例のごとく白鳩とともに予告状を送りつけてきた。
警備が強化される中、青龍星奈は降谷零とともに見学者の中に紛れていた。
公安としての正式任務ではない。
ただ、なぜか降谷が彼女を連れてきたのだ。
「人を欺く術を学ぶには、“怪盗”を観察するのが一番だ」
そう言って。
◇
その夜、星奈は誰にも気づかれぬように美術館の上階へと足を踏み入れた。
――妙な胸騒ぎがしたからだ。
そして、月明かりが差し込むホールに、彼はいた。
真っ白なマントに、シルクハット。
まるで物語から飛び出してきたような、美しき幻。
「……あれ? おやおや。まさか、こんな可憐なお嬢さんに先を越されるとは」
怪盗キッドが、冗談めかして言った。
「“可憐”……なんて言われたの、初めてです」
星奈の声は淡々としていた。
それが逆に、キッドの目を惹いた。
「おや、君は……笑わないタイプかい?」
「笑わないんじゃなくて、笑う必要がないだけです。あなたこそ、なぜそんなに“笑う”んですか」
「そりゃあ、“正体”を隠すには、笑顔が一番効果的だからさ」
「じゃあ、あなたも“仮面”なんですね。私と同じ」
キッドの目が、一瞬だけ鋭く光った。
「……ほう。君、自分のことを“仮面”って言えるんだ。なかなか珍しい」
「必要だからつけてるだけです。感情は、見せると“邪魔”になる」
「それは違うな。感情があるからこそ、人は“綺麗な宝石”を見て心が動く。
それに――」
キッドは月を見上げた。
「君みたいに“全部隠してる子”って、案外、誰よりも感情豊かなんだよ」
星奈の眉がわずかに動いた。
その表情の変化を見逃さず、キッドはふっと笑う。
「図星かな?」
「……そうだとしても、あなたに読まれる筋合いはありません」
「そう? でも君、“本物”だ。君の目は、嘘を見抜く目をしている」
「だったら――私の目には、“あなた”が嘘だらけに見える」
静寂。
けれど次の瞬間、キッドは少しだけ真面目な顔になって言った。
「君、何かをなくしたんだね。たぶん、それは“自分”」
「……」
「でも、僕は思うよ。盗まれたものは、取り返せる。
それが怪盗の流儀ってもんさ」
「あなた……何者ですか」
「僕? 僕は――」
キッドは笑った。
そしてマントを翻し、月の中へ跳ねるように飛び立った。
「――夜を遊ぶ幻さ。おやすみ、お姫さま」
◇
後日、美術館の屋上に落ちていたカードが、星奈の元に届けられた。
降谷零が「君宛だ」と言って渡したものだ。
そこには、こう書かれていた。
【To. 仮面の少女へ】
仮面の下にある“本物”の心、
君はそれを取り戻す日が来る。
そのとき、きっと世界は今より優しく見えるよ。
― 怪盗キッド
星奈はそのカードを、静かに手帳に挟んだ。
そして思う。
――あの人は、嘘でできていた。
けれど、“優しい嘘”だった。
その嘘は、なぜか、苦しくなかった。