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春の陽射しが、ゆるやかに街を包んでいた。
東京郊外にある名門私立大学・鳳栄大学。四月上旬。入学式や新学期の準備でにぎわうこの季節、大学近くの住宅街にある築浅の3LDKマンションの一室に、ひとりの青年がスーツケースを引いて立っていた。
「……ここで合ってるよな」
目黒蓮。21歳。鳳栄大学経済学部の3年生。クールな顔立ちと物静かな性格で、学内でも“無駄に近づけない”オーラを放つ存在。
鍵を差し込み、扉を開ける。新築の匂いがまだかすかに残るその部屋に、一歩足を踏み入れると――
「おおっ、来たな目黒!」
背後から元気な声が飛んできた。
「道枝……お前、もう来てたのか」
「んふふーん、やっぱ新しい部屋って気持ちええなぁ。角部屋で日当たりもバッチリやし!」
そう言ってリビングで床に転がっていたのは、文学部心理学専攻の道枝駿佑。明るく、どこか天然で、初対面でもすぐに距離を詰めてくるタイプだ。
二人はルームシェア制度を利用して、この春から一緒に暮らすことになった。
「でも、もう一人いるんやろ?ルームメイト。誰なんかなぁ。今日来るって言ってたよな?」
「さあな。性格良ければいいけど……」
そんな会話を交わしていた、そのときだった。
カチャッ。
玄関のドアが静かに開く音がした。
現れたのは、黒いフードパーカーにキャップを目深に被り、長い髪をひとつに束ねた少女だった。片手には重たそうなキャリーケース。だが、それを苦もなく片手で持ち上げている。
「……お前らが、新しい同居人?」
口数は少なく、低い声。無愛想だが、なぜか引き込まれるような雰囲気を持つ。整った顔立ちだが、どこか近寄りがたい冷たさがある。
「えっ……えっ、女の子?」
「ちょっと待って?同居人って女の子!?俺ら、男二人やで!?運営、何考えとんねん!」
「大学公認のルームシェアだし……名前で判断できなかったのかもな」
彼女の名前は――青龍 星奈(せいりゅう・せな)。
「ルールは三つ。私の部屋には入るな。朝は5時起床。夜は騒ぐな。以上」
そう言い放つと、星奈は自分の荷物を持ち、寝室の一つへとすたすた歩いて行った。
道枝は目を丸くしていた。
「なんか……めっちゃ変わった子やな……てか、女子やのにこの空気……なんかこわない?」
「確かに、ただものじゃない感じはあるな」
だが、この時はまだ、二人とも気づいていなかった。
彼女が“裏社会を支配する暴走族の総長”だということを。
* * *
数日間の同居生活。
星奈は無口なままだったが、生活は非常に几帳面だった。
洗濯物のたたみ方がプロ級。包丁さばきも無駄がなく、下ごしらえの手際も完璧。朝は毎日5時に起床し、1時間のランニング、その後筋トレ。夜はストレッチしながら読書かノートまとめ。
「なぁ目黒……この子、もしかして軍人とかやない?」
「いや……下手すりゃそっちより強いかもな」
と冗談を飛ばしていたある日の夕食。
星奈が無言で食事を済ませる中、道枝が恐る恐る話しかける。
「なぁ、星奈ちゃん。なんでそんなに毎日筋トレとかしてるん?ボクサー目指してるとか?」
「……護身」
「まじか……あれ、護身ってレベルやないと思うけど……」
目黒もちらりと彼女を見る。星奈の瞳には、何か深い闇が宿っている気がした。
翌日。
大学の裏路地で、星奈が知らぬ間に話していた女子の一人がこぼした。
「あの子、星奈って子……あんま関わらん方がいいよ。あたしの兄ちゃん、ちょっと悪い人なんだけど……“あいつには絶対手ぇ出すな”って言ってた」
「え、それマジ?」
「うん。なんか……やばい筋の噂があるらしいよ。“青龍”とか……なんかそんな通り名があったとか……」
それを聞いて、道枝がぞっとする。
「“青龍”……?」
目黒もまた、心の奥で何かがざわついていた。
彼女の正体に気づくには、もう少しだけ時間が必要だった。
――その夜。
二人が血にまみれ、痛みに呻きながら地下のコンクリート床に倒れるまでは。
東京郊外にある名門私立大学・鳳栄大学。四月上旬。入学式や新学期の準備でにぎわうこの季節、大学近くの住宅街にある築浅の3LDKマンションの一室に、ひとりの青年がスーツケースを引いて立っていた。
「……ここで合ってるよな」
目黒蓮。21歳。鳳栄大学経済学部の3年生。クールな顔立ちと物静かな性格で、学内でも“無駄に近づけない”オーラを放つ存在。
鍵を差し込み、扉を開ける。新築の匂いがまだかすかに残るその部屋に、一歩足を踏み入れると――
「おおっ、来たな目黒!」
背後から元気な声が飛んできた。
「道枝……お前、もう来てたのか」
「んふふーん、やっぱ新しい部屋って気持ちええなぁ。角部屋で日当たりもバッチリやし!」
そう言ってリビングで床に転がっていたのは、文学部心理学専攻の道枝駿佑。明るく、どこか天然で、初対面でもすぐに距離を詰めてくるタイプだ。
二人はルームシェア制度を利用して、この春から一緒に暮らすことになった。
「でも、もう一人いるんやろ?ルームメイト。誰なんかなぁ。今日来るって言ってたよな?」
「さあな。性格良ければいいけど……」
そんな会話を交わしていた、そのときだった。
カチャッ。
玄関のドアが静かに開く音がした。
現れたのは、黒いフードパーカーにキャップを目深に被り、長い髪をひとつに束ねた少女だった。片手には重たそうなキャリーケース。だが、それを苦もなく片手で持ち上げている。
「……お前らが、新しい同居人?」
口数は少なく、低い声。無愛想だが、なぜか引き込まれるような雰囲気を持つ。整った顔立ちだが、どこか近寄りがたい冷たさがある。
「えっ……えっ、女の子?」
「ちょっと待って?同居人って女の子!?俺ら、男二人やで!?運営、何考えとんねん!」
「大学公認のルームシェアだし……名前で判断できなかったのかもな」
彼女の名前は――青龍 星奈(せいりゅう・せな)。
「ルールは三つ。私の部屋には入るな。朝は5時起床。夜は騒ぐな。以上」
そう言い放つと、星奈は自分の荷物を持ち、寝室の一つへとすたすた歩いて行った。
道枝は目を丸くしていた。
「なんか……めっちゃ変わった子やな……てか、女子やのにこの空気……なんかこわない?」
「確かに、ただものじゃない感じはあるな」
だが、この時はまだ、二人とも気づいていなかった。
彼女が“裏社会を支配する暴走族の総長”だということを。
* * *
数日間の同居生活。
星奈は無口なままだったが、生活は非常に几帳面だった。
洗濯物のたたみ方がプロ級。包丁さばきも無駄がなく、下ごしらえの手際も完璧。朝は毎日5時に起床し、1時間のランニング、その後筋トレ。夜はストレッチしながら読書かノートまとめ。
「なぁ目黒……この子、もしかして軍人とかやない?」
「いや……下手すりゃそっちより強いかもな」
と冗談を飛ばしていたある日の夕食。
星奈が無言で食事を済ませる中、道枝が恐る恐る話しかける。
「なぁ、星奈ちゃん。なんでそんなに毎日筋トレとかしてるん?ボクサー目指してるとか?」
「……護身」
「まじか……あれ、護身ってレベルやないと思うけど……」
目黒もちらりと彼女を見る。星奈の瞳には、何か深い闇が宿っている気がした。
翌日。
大学の裏路地で、星奈が知らぬ間に話していた女子の一人がこぼした。
「あの子、星奈って子……あんま関わらん方がいいよ。あたしの兄ちゃん、ちょっと悪い人なんだけど……“あいつには絶対手ぇ出すな”って言ってた」
「え、それマジ?」
「うん。なんか……やばい筋の噂があるらしいよ。“青龍”とか……なんかそんな通り名があったとか……」
それを聞いて、道枝がぞっとする。
「“青龍”……?」
目黒もまた、心の奥で何かがざわついていた。
彼女の正体に気づくには、もう少しだけ時間が必要だった。
――その夜。
二人が血にまみれ、痛みに呻きながら地下のコンクリート床に倒れるまでは。