死刑執行までの1週間
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「この証言、俺が見たときと違うんです。」
フリー記者・東雲透(しののめ とおる)は、取材用のボイスレコーダーを止めて、まっすぐ藤崎遥を見た。
薄暗い喫茶店の片隅。窓の外では雨が降っていた。彼女は小さく頷く。
「心春ちゃんの母親の供述、再提出された文書には“17時に見た”と書かれてます。でも、初期報道では“夕方6時ごろ”って言ってたはず。」
「あなたもそう思いましたか?」
「ええ。気になって録画ニュースを洗い直した。そしたら…」
東雲はノートパソコンを開いた。そこには、事件直後のニュース映像。心春の母親がインタビューに答えている。
──「あの先生が心春を叱っていたのは、夕方6時過ぎでした。ほんとに、怖い顔で……」
映像が止まる。
「これが、供述と食い違ってる。」
「6時に九条さんは、児童たちと一緒に学童にいた記録があります。」
「ならアリバイが成立する。」
遥は唇をかんだ。
「でも、検察は“証言の時間の誤差は記憶違い”として扱った。映像の裏取りも、していない。」
東雲は深くため息をついた。
「この証言自体に恣意的な編集があった可能性がある。報道か、あるいは……供述の“訂正”を誘導した誰かがいた。」
「真犯人、ということですか?」
東雲は首を横に振る。
「まだわからない。でも一つ言えるのは、あの母親は何かを“隠してる”。ずっと。」
一方、拘置所では、蒼が一通の手紙を読んでいた。
差出人は、姉の紗英だった。文字は震え、ところどころ滲んでいる。
蒼へ
遥先生が証言の矛盾を見つけてくれました。あの人は本気です。
東雲さんも取材を続けてくれています。
まだ間に合うかもしれない。諦めないで。
どうか、生きて。
紗英より
蒼は、指先で文字をなぞった。
ほんのわずかだが、胸に残っていた“生きたい”という想いが、ふたたび揺れ動いていた。
面会で佐伯刑務官に尋ねた。
「俺に、もし本当に無実の可能性があったら、執行は止まりますか?」
佐伯は、淡々と答えた。
「原則、止まります。法務省が証拠の再審請求を受け入れ、裁判所が再審を開始すれば、執行は凍結されます。」
「……“原則”ですよね。」
佐伯は少しだけ目を伏せた。
「法は万能ではありません。」
執行まで、残り三日。
だが、時計の針は、まだ止まってはいなかった。
フリー記者・東雲透(しののめ とおる)は、取材用のボイスレコーダーを止めて、まっすぐ藤崎遥を見た。
薄暗い喫茶店の片隅。窓の外では雨が降っていた。彼女は小さく頷く。
「心春ちゃんの母親の供述、再提出された文書には“17時に見た”と書かれてます。でも、初期報道では“夕方6時ごろ”って言ってたはず。」
「あなたもそう思いましたか?」
「ええ。気になって録画ニュースを洗い直した。そしたら…」
東雲はノートパソコンを開いた。そこには、事件直後のニュース映像。心春の母親がインタビューに答えている。
──「あの先生が心春を叱っていたのは、夕方6時過ぎでした。ほんとに、怖い顔で……」
映像が止まる。
「これが、供述と食い違ってる。」
「6時に九条さんは、児童たちと一緒に学童にいた記録があります。」
「ならアリバイが成立する。」
遥は唇をかんだ。
「でも、検察は“証言の時間の誤差は記憶違い”として扱った。映像の裏取りも、していない。」
東雲は深くため息をついた。
「この証言自体に恣意的な編集があった可能性がある。報道か、あるいは……供述の“訂正”を誘導した誰かがいた。」
「真犯人、ということですか?」
東雲は首を横に振る。
「まだわからない。でも一つ言えるのは、あの母親は何かを“隠してる”。ずっと。」
一方、拘置所では、蒼が一通の手紙を読んでいた。
差出人は、姉の紗英だった。文字は震え、ところどころ滲んでいる。
蒼へ
遥先生が証言の矛盾を見つけてくれました。あの人は本気です。
東雲さんも取材を続けてくれています。
まだ間に合うかもしれない。諦めないで。
どうか、生きて。
紗英より
蒼は、指先で文字をなぞった。
ほんのわずかだが、胸に残っていた“生きたい”という想いが、ふたたび揺れ動いていた。
面会で佐伯刑務官に尋ねた。
「俺に、もし本当に無実の可能性があったら、執行は止まりますか?」
佐伯は、淡々と答えた。
「原則、止まります。法務省が証拠の再審請求を受け入れ、裁判所が再審を開始すれば、執行は凍結されます。」
「……“原則”ですよね。」
佐伯は少しだけ目を伏せた。
「法は万能ではありません。」
執行まで、残り三日。
だが、時計の針は、まだ止まってはいなかった。