死刑執行までの1週間
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薄暗い独房に、鉄の扉が軋む音が響いた。朝の点呼とは違う、不自然に早い足音。九条蒼はベッドから体を起こした。
「九条蒼、起床を。」
静かな声。けれど、その語尾にわずかな緊張が滲んでいた。
佐伯刑務官だった。長年、ここに勤めるベテランで、余計な言葉は一切発さない。彼の表情は、いつも水面のように揺れず、冷たかった。それなのに、今日はどこか様子が違う。
扉の向こうで、佐伯が立ち止まる。
「立ってこちらに来てください。…法務省から連絡がありました。」
蒼は喉がからからに乾いているのを感じた。背中に汗がにじむ。
――来たか。
この瞬間が、いつか来ることは分かっていた。けれど、「いつか」は「今日」ではないと、ずっと信じていた。いや、信じたかっただけだ。
廊下に出され、無言のまま面会室ではなく別室へ通される。薄い机の上には、一枚の書類が置かれていた。中央に、赤い判子が押されている。
「死刑の執行が、一週間以内に行われることが決まりました。」
佐伯の声が落ちると同時に、鼓膜がどこか遠くへ行ってしまったように感じた。世界が音を失った。机の上の書類が、滲んで見える。
「…今日じゃ、ないんですか。」
震える声で聞いた自分の声が、自分のものではないようだった。
「そうです。七日以内。正確な日は、あなたには告げられません。規定通りです。」
蒼は目を閉じた。息が浅くなる。胸の奥に溜まったものが、喉元まで押し寄せる。だが泣いてはいけない。泣いてしまえば、もう終わってしまう気がした。
「弁護士と…会わせてください。」
「はい、要望は通します。」
そう言って佐伯は立ち上がった。蒼の肩に視線を落とす。まるで、それが最後の礼儀のように。
「あと七日です。心の準備を。」
扉が閉まった瞬間、蒼は深く息を吐いた。
あと七日。
七日間で、俺は死ぬ。
それが決まった。変わらない現実として、彼の目の前に、いま突きつけられた。
「九条蒼、起床を。」
静かな声。けれど、その語尾にわずかな緊張が滲んでいた。
佐伯刑務官だった。長年、ここに勤めるベテランで、余計な言葉は一切発さない。彼の表情は、いつも水面のように揺れず、冷たかった。それなのに、今日はどこか様子が違う。
扉の向こうで、佐伯が立ち止まる。
「立ってこちらに来てください。…法務省から連絡がありました。」
蒼は喉がからからに乾いているのを感じた。背中に汗がにじむ。
――来たか。
この瞬間が、いつか来ることは分かっていた。けれど、「いつか」は「今日」ではないと、ずっと信じていた。いや、信じたかっただけだ。
廊下に出され、無言のまま面会室ではなく別室へ通される。薄い机の上には、一枚の書類が置かれていた。中央に、赤い判子が押されている。
「死刑の執行が、一週間以内に行われることが決まりました。」
佐伯の声が落ちると同時に、鼓膜がどこか遠くへ行ってしまったように感じた。世界が音を失った。机の上の書類が、滲んで見える。
「…今日じゃ、ないんですか。」
震える声で聞いた自分の声が、自分のものではないようだった。
「そうです。七日以内。正確な日は、あなたには告げられません。規定通りです。」
蒼は目を閉じた。息が浅くなる。胸の奥に溜まったものが、喉元まで押し寄せる。だが泣いてはいけない。泣いてしまえば、もう終わってしまう気がした。
「弁護士と…会わせてください。」
「はい、要望は通します。」
そう言って佐伯は立ち上がった。蒼の肩に視線を落とす。まるで、それが最後の礼儀のように。
「あと七日です。心の準備を。」
扉が閉まった瞬間、蒼は深く息を吐いた。
あと七日。
七日間で、俺は死ぬ。
それが決まった。変わらない現実として、彼の目の前に、いま突きつけられた。