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それは、思いもよらぬ形で訪れた。
ある日、撮影の合間。
宮舘がふと、資料を整理していた星奈に声をかけた。
「この名前……知ってるか?」
それは偶然手にした、過去の美術展のパンフレット。
そこには、“響堂仁”という名があった。
──星奈の心を最も深く傷つけた、たった一人の男の名前。
彼女の表情が一瞬で凍る。
「……それ、どこで?」
「資料倉庫にあった旧プロジェクトの記録。たまたま手に取っただけ。……気に障ったなら、すまない」
「……いえ。私が驚いただけです」
星奈はそれだけ言うと、パンフレットを受け取って、静かにその場を離れた。
その背中に、宮舘はふと確信を覚える。
(この人の“今”を形づくったのは、たぶん……この名前だ)
──
その夜、星奈は部屋でパンフレットを開いた。
そこには、“過去の自分”が映っていた。
若かった自分。希望に満ちていた自分。
そして、そのすべてを信じて預けた響堂仁とともに歩んだ日々。
──彼は、有名な現代芸術家だった。
孤高の美学を持ち、媚びず、妥協せず、いつもどこか遠い目をしていた。
でもそんな彼が、唯一心を許していたように見えたのが、自分だった。
そう……思い込んでいた。
実際には、星奈のアイディアを“利用”していただけだった。
展覧会、プロジェクト、メディア対応。
すべて彼の名のもとに発表され、星奈の存在は“影”だった。
「君は、表に出るより、俺の後ろで支える方が似合ってる」
そう言われたことすら、当時は誇らしかった。
でも──
展覧会の打ち上げパーティーの夜。
彼は、別の若手女性プロデューサーの腰に手を回して、こう言った。
「青龍? あれは便利な助手だよ。優秀だけど、情が重い」
──星奈のすべてが、あの瞬間に崩れた。
それ以来、誰にも期待しなくなった。
信じることは、傷つく準備だと思った。
仲良くなることは、裏切られるリスクだと定義した。
(忘れたはずだったのに)
パンフレットに映る“あの日の自分”が、微笑んでいるのがつらかった。
──
次の日。
何かが違っていた。
彼女の目には、少しだけ曇りが戻っていた。
「……おい、星奈さん、なんか元気ないよな」
向井が気づいて、みんなも同時にうなずいた。
「笑顔が、無理してる気がした」
佐久間がぽつりと言った。
そのとき、宮舘が小さくつぶやいた。
「……昨日、昔の資料に“響堂仁”の名前があった」
その名を聞いた瞬間、全員がピンときた。
目黒が、少し低い声で聞いた。
「それ、……あの人の“過去”か?」
「たぶん。驚いてた。……あんな顔、初めて見た」
阿部がそっと呟く。
「それが……星奈さんを“誰も信じない人”にした理由、なのかもしれないな」
深澤は、何かを決意したようにうなずいた。
「……でもさ。俺たち、やっぱり無理に“助けよう”としなくていいんじゃない?」
「え?」
ラウールが振り向く。
「助けるんじゃなくて、“そばにいる”だけでいい。あの人が過去に戻されそうになったとき、俺たちが今を守る。そういう距離感で、いいんじゃないかな」
それは、“攻める”でもなく、“引く”でもない。
ただ、彼女が必要とするときに、そこにいる。
「“信じてもらえる自分でいたい”って、前に阿部ちゃん言ってたよな」
岩本が、ゆっくりと言う。
「そのためには、焦るな。……何年かかってもいい」
──
その日、星奈が帰ろうとしたとき。
誰かが、入口で静かに待っていた。
「……宮舘さん?」
「星奈さん。すみません、無理に聞くつもりはありません。でも、何かあったなら、俺たちは、聞かないふりはしません」
星奈は、目を見開いた。
「どうして、そこまで……?」
「理由なんて、ないですよ。ただ──あなたが今まで誰にも言えなかった気持ちを、少しでも軽くできるなら、そばにいたい」
星奈は、ぎゅっと拳を握った。
(誰にも言わないはずだったのに。なのに今、“言ってしまいたい”って思った)
でも、言葉はまだ出ない。
ただ──
「ありがとう。……宮舘さん」
それは、彼女が初めて“自分から”メンバーの名前を呼んだ瞬間だった。
宮舘の目が、少し驚きに見開かれ、それから静かに、深く、頷いた。
ある日、撮影の合間。
宮舘がふと、資料を整理していた星奈に声をかけた。
「この名前……知ってるか?」
それは偶然手にした、過去の美術展のパンフレット。
そこには、“響堂仁”という名があった。
──星奈の心を最も深く傷つけた、たった一人の男の名前。
彼女の表情が一瞬で凍る。
「……それ、どこで?」
「資料倉庫にあった旧プロジェクトの記録。たまたま手に取っただけ。……気に障ったなら、すまない」
「……いえ。私が驚いただけです」
星奈はそれだけ言うと、パンフレットを受け取って、静かにその場を離れた。
その背中に、宮舘はふと確信を覚える。
(この人の“今”を形づくったのは、たぶん……この名前だ)
──
その夜、星奈は部屋でパンフレットを開いた。
そこには、“過去の自分”が映っていた。
若かった自分。希望に満ちていた自分。
そして、そのすべてを信じて預けた響堂仁とともに歩んだ日々。
──彼は、有名な現代芸術家だった。
孤高の美学を持ち、媚びず、妥協せず、いつもどこか遠い目をしていた。
でもそんな彼が、唯一心を許していたように見えたのが、自分だった。
そう……思い込んでいた。
実際には、星奈のアイディアを“利用”していただけだった。
展覧会、プロジェクト、メディア対応。
すべて彼の名のもとに発表され、星奈の存在は“影”だった。
「君は、表に出るより、俺の後ろで支える方が似合ってる」
そう言われたことすら、当時は誇らしかった。
でも──
展覧会の打ち上げパーティーの夜。
彼は、別の若手女性プロデューサーの腰に手を回して、こう言った。
「青龍? あれは便利な助手だよ。優秀だけど、情が重い」
──星奈のすべてが、あの瞬間に崩れた。
それ以来、誰にも期待しなくなった。
信じることは、傷つく準備だと思った。
仲良くなることは、裏切られるリスクだと定義した。
(忘れたはずだったのに)
パンフレットに映る“あの日の自分”が、微笑んでいるのがつらかった。
──
次の日。
何かが違っていた。
彼女の目には、少しだけ曇りが戻っていた。
「……おい、星奈さん、なんか元気ないよな」
向井が気づいて、みんなも同時にうなずいた。
「笑顔が、無理してる気がした」
佐久間がぽつりと言った。
そのとき、宮舘が小さくつぶやいた。
「……昨日、昔の資料に“響堂仁”の名前があった」
その名を聞いた瞬間、全員がピンときた。
目黒が、少し低い声で聞いた。
「それ、……あの人の“過去”か?」
「たぶん。驚いてた。……あんな顔、初めて見た」
阿部がそっと呟く。
「それが……星奈さんを“誰も信じない人”にした理由、なのかもしれないな」
深澤は、何かを決意したようにうなずいた。
「……でもさ。俺たち、やっぱり無理に“助けよう”としなくていいんじゃない?」
「え?」
ラウールが振り向く。
「助けるんじゃなくて、“そばにいる”だけでいい。あの人が過去に戻されそうになったとき、俺たちが今を守る。そういう距離感で、いいんじゃないかな」
それは、“攻める”でもなく、“引く”でもない。
ただ、彼女が必要とするときに、そこにいる。
「“信じてもらえる自分でいたい”って、前に阿部ちゃん言ってたよな」
岩本が、ゆっくりと言う。
「そのためには、焦るな。……何年かかってもいい」
──
その日、星奈が帰ろうとしたとき。
誰かが、入口で静かに待っていた。
「……宮舘さん?」
「星奈さん。すみません、無理に聞くつもりはありません。でも、何かあったなら、俺たちは、聞かないふりはしません」
星奈は、目を見開いた。
「どうして、そこまで……?」
「理由なんて、ないですよ。ただ──あなたが今まで誰にも言えなかった気持ちを、少しでも軽くできるなら、そばにいたい」
星奈は、ぎゅっと拳を握った。
(誰にも言わないはずだったのに。なのに今、“言ってしまいたい”って思った)
でも、言葉はまだ出ない。
ただ──
「ありがとう。……宮舘さん」
それは、彼女が初めて“自分から”メンバーの名前を呼んだ瞬間だった。
宮舘の目が、少し驚きに見開かれ、それから静かに、深く、頷いた。