番外編
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ライブ後の深夜1時。
イベント会場近くのホテルのロビーには、まだ灯りがぽつんと残っている。
LANはロビー奥のソファに深く座り込み、スマホで今日のライブ映像をぼんやり眺めていた。
「……LAN、まだ寝てなかったのか」
声に気づいて顔を上げると、そこにはいるまがいた。
ゆったりしたパーカーのフードをかぶって、片手に紙コップのカフェラテを持っている。
「……いるまこそ。もう2時近いよ?」
「うん、なんか寝つけなくて。LANは?」
「……俺も。ライブの余韻、ちょっと引きずっててさ」
「それわかるなぁ」
いるまはLANの隣に腰を下ろす。二人の間に、少しの沈黙が流れる。
心地いい、深夜の空気と眠気の境界。
「LANのステージ、マジすごかった。照明もかっこよかったし、音の抜き差しがほんと気持ちよかった」
「……ありがと。でも俺は、いるまの歌の方がずっと刺さったよ。声、伸びてた」
LANが少し照れくさそうに目を伏せると、いるまは小さく笑った。
「こうやって褒め合うの、なんかアイドル同士って感じだな」
そう言って、いるまはLANのスマホに目を向けた。
「それ、今日の映像?」
「あぁ、さっきスタッフさんからもらった素材。ほら」
LANがイヤホンを外し、片方をいるまに差し出す。
ためらいもなく、いるまはそれを耳に装着した。
センターで歌っているLANの姿が映る。
「……LANのステージって、“美しい”って思う」
「美しい?」
「うん。ダンスも音も、削ぎ落とされてて、“これだけあればいい”って感じがして。……すごく、孤独にも見えるけど」
LANの手が止まった。
「……たまに、そう思うことあるよ。“俺じゃないとダメな何か”を、ずっと探してる感じ」
「それ、すごくしんどくね?」
「うん、しんどい。でも……いるまの歌、今日、それをちょっと溶かしてくれた。……なんか、心がゆるんだっていうか」
LANはそっといるまを見た。
イヤホンを片耳にしたまま、いるまは優しく、微笑んでいた。
「俺もLANの音が好き。……言葉選ばずに言うと、“苦しそうな音”が、好きなんだ」
LANの目がわずかに見開かれる。
「俺、ああいう音を出せないから。……“ちゃんと傷ついてる音”って、嘘つけないだろ?」
「……それ、褒めてるの?」
「もちろん」
また、ふたりの間に沈黙が落ちた。
でもその時間は、どこかあたたかい。
「LANさ」
ふいに、いるまが口を開いた。
「……たまに、また話そうね」
「……うん」
「LANのこと、俺はずっと“観てる側”でいたい。……なんて言うか、君が崩れないように、遠くから見守っていたい感じ」
「……もしかして、それって好きってこと?」
LANの問いに、いるまは驚いたように、少しだけ言葉に詰まる。
「……あはは、どうだろ。好き、なのかな。俺、自分でもよく分かんねぇ。でも、LANの音が、俺のなかの“何か”を動かすのは、ほんと」
LANは、ほんの少しだけ目を細めて微笑んだ。
「そういうの、俺は“好き”って呼んでもいいと思うけどね」
いるまは黙って頷く。
ふたりはもう一度、イヤホンを分け合いながら、映像を再生する。
音が流れ、ライブの熱気が静かに蘇る。
その夜、同じ音を聴きながら、
ふたりはそっと、誰にも言えない“繋がり”を確かめていた。
**
夜のロビー、二人だけのライブが、続いていく。
イベント会場近くのホテルのロビーには、まだ灯りがぽつんと残っている。
LANはロビー奥のソファに深く座り込み、スマホで今日のライブ映像をぼんやり眺めていた。
「……LAN、まだ寝てなかったのか」
声に気づいて顔を上げると、そこにはいるまがいた。
ゆったりしたパーカーのフードをかぶって、片手に紙コップのカフェラテを持っている。
「……いるまこそ。もう2時近いよ?」
「うん、なんか寝つけなくて。LANは?」
「……俺も。ライブの余韻、ちょっと引きずっててさ」
「それわかるなぁ」
いるまはLANの隣に腰を下ろす。二人の間に、少しの沈黙が流れる。
心地いい、深夜の空気と眠気の境界。
「LANのステージ、マジすごかった。照明もかっこよかったし、音の抜き差しがほんと気持ちよかった」
「……ありがと。でも俺は、いるまの歌の方がずっと刺さったよ。声、伸びてた」
LANが少し照れくさそうに目を伏せると、いるまは小さく笑った。
「こうやって褒め合うの、なんかアイドル同士って感じだな」
そう言って、いるまはLANのスマホに目を向けた。
「それ、今日の映像?」
「あぁ、さっきスタッフさんからもらった素材。ほら」
LANがイヤホンを外し、片方をいるまに差し出す。
ためらいもなく、いるまはそれを耳に装着した。
センターで歌っているLANの姿が映る。
「……LANのステージって、“美しい”って思う」
「美しい?」
「うん。ダンスも音も、削ぎ落とされてて、“これだけあればいい”って感じがして。……すごく、孤独にも見えるけど」
LANの手が止まった。
「……たまに、そう思うことあるよ。“俺じゃないとダメな何か”を、ずっと探してる感じ」
「それ、すごくしんどくね?」
「うん、しんどい。でも……いるまの歌、今日、それをちょっと溶かしてくれた。……なんか、心がゆるんだっていうか」
LANはそっといるまを見た。
イヤホンを片耳にしたまま、いるまは優しく、微笑んでいた。
「俺もLANの音が好き。……言葉選ばずに言うと、“苦しそうな音”が、好きなんだ」
LANの目がわずかに見開かれる。
「俺、ああいう音を出せないから。……“ちゃんと傷ついてる音”って、嘘つけないだろ?」
「……それ、褒めてるの?」
「もちろん」
また、ふたりの間に沈黙が落ちた。
でもその時間は、どこかあたたかい。
「LANさ」
ふいに、いるまが口を開いた。
「……たまに、また話そうね」
「……うん」
「LANのこと、俺はずっと“観てる側”でいたい。……なんて言うか、君が崩れないように、遠くから見守っていたい感じ」
「……もしかして、それって好きってこと?」
LANの問いに、いるまは驚いたように、少しだけ言葉に詰まる。
「……あはは、どうだろ。好き、なのかな。俺、自分でもよく分かんねぇ。でも、LANの音が、俺のなかの“何か”を動かすのは、ほんと」
LANは、ほんの少しだけ目を細めて微笑んだ。
「そういうの、俺は“好き”って呼んでもいいと思うけどね」
いるまは黙って頷く。
ふたりはもう一度、イヤホンを分け合いながら、映像を再生する。
音が流れ、ライブの熱気が静かに蘇る。
その夜、同じ音を聴きながら、
ふたりはそっと、誰にも言えない“繋がり”を確かめていた。
**
夜のロビー、二人だけのライブが、続いていく。
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