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「なあ、ほんとにReluやったのか?」
昼休み、教室の片隅でくにが声を潜めながら呟いた。
教室の空気は、先週とはまるで違うものに変わっていた。誰もが目を逸らし、声を落とし、気まずそうに席を立ったり座ったりしている。中心にいるのは、沈黙を守るRelu。窓際の席に座って、黙々とノートに何かを書いている。視線は上げない。
「……だって、あれ、川上さんが叫んでたし。『やめて』とか、『痛い』とか……それに血も出てたんでしょ?」
くにの声はどこか不安げだったが、それでもReluの方を見ることはなかった。
こったろは机に肘をついて、首を小さく横に振った。
「俺も信じたくないけど、見たよ。あのときRelu、確かにカッター持ってた。手、震えてたし……」
「それがさ、なんか引っかかるんって……。Relu、そんな奴じゃないでしょ。」
「でも、証拠ってのは……残ってるからな」
こったろの声は穏やかだったが、その目にはどこか諦めが宿っていた。
「みんなも言ってた。最近、Relu、目つき変わってたって。話しかけてもあんま反応しなかったし、ぶっちゃけちょっと怖かった。何か抱えてたのかもな」
くにはそれ以上言葉を返せなかった。ただパンを見つめたまま、手の中でしわを寄せる。
教室の空気は変わった。いや、正確には“変えられた”のだ。まるで誰かが無言のまま境界線を引いたように、Reluの周囲には半径1メートルの空白が生まれていた。誰もそこに踏み込まない。机も、鞄も、椅子も、少しだけ距離を置かれていた。
Coe.は教室の後方でスマホをいじりながらも、ときどきReluの方をちらりと見ていた。
(何か、言うべきなのかな……でも、今さら何を?)
自問するたびに、指先が止まりそうになる。だけど、言葉が出てこない。Reluの口から何か言ってくれるなら――そう思っても、Reluは沈黙を守り続けていた。
午後の授業が終わると、藍はゆっくりと席を立った。周囲がどっと教室から出て行くなか、藍だけが廊下に立ち止まり、後ろを振り返る。
Reluはノートを閉じ、無言のまま教室を出て行く。その背中を見つめる藍。
(おかしい……)
声に出しそうになった言葉を喉の奥で飲み込む。
Reluの手元に血の跡はなかった。あの“事件”の日も、Reluが流血していた記憶はない。
でも、川上の腕には確かに包帯が巻かれていた。そして、周囲はそれを根拠に「Reluがやった」と信じ切っている。
屋上に続く階段を上がっていくReluの背を、藍は追いかけなかった。まだ、自分の中で何が正しいのか確信が持てない。
(でも、あの目は……誰かを傷つける目じゃなかった)
静かに、確実に、藍の中で何かが芽生え始めていた。
その頃、屋上の隅。
Reluは一人、手すりにもたれて空を見上げていた。曇りがかった空が広がる午後。
「…………」
風が吹き抜け、シャツの裾が揺れる。
誰にも気づかれないように、小さく笑った。
「……馬鹿らし」
その声を、誰も聞くことはなかった。
昼休み、教室の片隅でくにが声を潜めながら呟いた。
教室の空気は、先週とはまるで違うものに変わっていた。誰もが目を逸らし、声を落とし、気まずそうに席を立ったり座ったりしている。中心にいるのは、沈黙を守るRelu。窓際の席に座って、黙々とノートに何かを書いている。視線は上げない。
「……だって、あれ、川上さんが叫んでたし。『やめて』とか、『痛い』とか……それに血も出てたんでしょ?」
くにの声はどこか不安げだったが、それでもReluの方を見ることはなかった。
こったろは机に肘をついて、首を小さく横に振った。
「俺も信じたくないけど、見たよ。あのときRelu、確かにカッター持ってた。手、震えてたし……」
「それがさ、なんか引っかかるんって……。Relu、そんな奴じゃないでしょ。」
「でも、証拠ってのは……残ってるからな」
こったろの声は穏やかだったが、その目にはどこか諦めが宿っていた。
「みんなも言ってた。最近、Relu、目つき変わってたって。話しかけてもあんま反応しなかったし、ぶっちゃけちょっと怖かった。何か抱えてたのかもな」
くにはそれ以上言葉を返せなかった。ただパンを見つめたまま、手の中でしわを寄せる。
教室の空気は変わった。いや、正確には“変えられた”のだ。まるで誰かが無言のまま境界線を引いたように、Reluの周囲には半径1メートルの空白が生まれていた。誰もそこに踏み込まない。机も、鞄も、椅子も、少しだけ距離を置かれていた。
Coe.は教室の後方でスマホをいじりながらも、ときどきReluの方をちらりと見ていた。
(何か、言うべきなのかな……でも、今さら何を?)
自問するたびに、指先が止まりそうになる。だけど、言葉が出てこない。Reluの口から何か言ってくれるなら――そう思っても、Reluは沈黙を守り続けていた。
午後の授業が終わると、藍はゆっくりと席を立った。周囲がどっと教室から出て行くなか、藍だけが廊下に立ち止まり、後ろを振り返る。
Reluはノートを閉じ、無言のまま教室を出て行く。その背中を見つめる藍。
(おかしい……)
声に出しそうになった言葉を喉の奥で飲み込む。
Reluの手元に血の跡はなかった。あの“事件”の日も、Reluが流血していた記憶はない。
でも、川上の腕には確かに包帯が巻かれていた。そして、周囲はそれを根拠に「Reluがやった」と信じ切っている。
屋上に続く階段を上がっていくReluの背を、藍は追いかけなかった。まだ、自分の中で何が正しいのか確信が持てない。
(でも、あの目は……誰かを傷つける目じゃなかった)
静かに、確実に、藍の中で何かが芽生え始めていた。
その頃、屋上の隅。
Reluは一人、手すりにもたれて空を見上げていた。曇りがかった空が広がる午後。
「…………」
風が吹き抜け、シャツの裾が揺れる。
誰にも気づかれないように、小さく笑った。
「……馬鹿らし」
その声を、誰も聞くことはなかった。