ハルの言葉は、アオイに最後の選択を迫った。 このまま「いい人」という名の檻に戻るか。 それとも、「嘘も真実も君が決めろ！」という衝動論に従い、ハルと共に壊れるか。

アオイは、ハルの手を握り返した。

「J0KER×JOK4R…けったいね」 アオイは、初めて心から笑った。それは、イアのニヒルな呪いのような笑いではなく、解放された人間の、純粋な歓喜だった。

「僕が君に言えるのは、絶望は消えないということだ。でも…」 アオイは、ハルの目を見つめた。 「その絶望も、演技も、全部ひっくるめて、僕を手に取って、舞い踊ってくれるなら。僕はもう、誰にも殺されない」

「この世界はしょうがないよ。好きがあれば、傷つける」 だからこそ、傷つけ合うことを恐れず、本能のままに生きていく。

アオイとハルは、摩天楼を見下ろす屋上で、手を繋いでいた。 宵闇に溶け、唸り上げるハイウェイの音だけが、彼らの衝動を祝福するように響いていた。

アオイは、もう「いい人」ではない。 彼は、自分の中のイアを受け入れ、嘘と真実を、自分で選ぶ人間になった。

そして、その選択こそが、彼にとって初めての、本当の「愛」の形だった。