アオイは、クラスメイトのハルに淡い恋心を抱いていた。 ハルは、アオイの完璧な仮面を前にしても、たまに「抜けてくれる笑顔」を見せてくれた。その笑顔を褒める時、アオイは本当に自分自身でいられるような「迷い」を感じた。

しかし、その感情はすぐさまイアによって打ち砕かれる。 鏡の中のイアは、ハルを見つめるアオイの目を冷笑した。

「おい、お前、その子の何を知っている？ お前が愛しているのは、お前の理想を映す鏡としてのハルだろ？ 自分の半身を隠したいお前が、誰かを愛せるわけがない」

愛は知らず、取り繕う関係。

アオイは、ハルに対して深入りすることを恐れた。もし、自分の完璧な演技が崩れ、「絶望だけがお前だ」とイアに断じられた現実が露呈したら、ハルは去っていくだろう。

ある日、ハルがアオイに尋ねた。 「アオイくんはさ、本当に全部、心から楽しんでる？」 その素朴な問いかけに、アオイの心臓が激しく脈打った。 「え…？ もちろんさ、ハルのおかげで、毎日が楽しいよ」 アオイは、最高の笑顔を張り付けた。完璧な「いい人」の笑顔だった。

しかし、鏡の中のイアは、満面の笑みで拍手した。 「上手い！ 最高の演技だ。お前の血が滾るほどいいじゃん！ 安寧など興味はない、ひたすらに、壊れろ！」

アオイは、ハルとの関係を維持するために、ますます「いい人」の仮面を厚く塗っていった。その行為は、自分自身を欺き、イアを喜ばせるだけだった。